「サッカー部!次ランニング!」
「はい!」
コーチの声がグランドに響き渡る。
「よし、行くか佐藤」
「うん」
ランニングに行こうとした時ふと弓道場が目に入った。
そこで金髪の子と目が合った。
同じクラスの宮内レミィだ。
レミィは僕を見つけるとにっこり笑って手を振ってくれた。
僕は内心ドキッとしながら手を振り返した。
「レミィは人懐っこいから知り合いには誰にでもああなんだ」
僕は半ば自分に言い聞かせるようにしてランニングに行った。

僕、佐藤雅史は宮内レミィが好きだ。

「自分の心、相手の心」

「もうすぐ修学旅行だなぁ」
「クマ牧場は絶対絶対行こうね!」
「あかり…あんた熊のことになると興奮するわね…」
「って言うか志保、別のクラスのお前がなんでここにいるんだよ」
「だって〜あたしのクラス暇だもん」
浩之、あかりちゃん、志保、僕のいつもの4人で雑談をしている。
「どうした雅史?何も喋ってないけど」
「ううん、なんでも無いよ。それよりうちの班って誰が居たっけ?」
「俺、お前、あかり、垣本、レミィ、だな」
「そうだったね」
レミィが同じ班なのは正直うれしい。
「しっかし、今時修学旅行が日本だなんてな。寺女なんて海外だぜ」
「僕は外国より日本がいいよ」
「あたしは外国がいいわね」
こんな感じで昼休みは過ぎていった。

「サッカー部、練習終わり!当番の奴はちゃんと片付けて帰れよ!」
「はい!」
はぁ〜終わった終わった。
「垣本は当番だし先に帰ろうかな」
歩いていると弓道場が目の前にあった。
「ちょっと覗いてみようかな…」
窓の隙間から弓道場の中を覗いてみたが、レミィはいなかった。
「そりゃそうだよな、帰ろう…」
と、その時後ろから誰かに声をかけられた。
「Hi!マサシ!」
「レミィ!どうしたの?」
「マサシの姿が見えたから声かけただけ」
「そうなんだ」
僕はほんのちょっぴり勇気を振り絞った。
「あ、あのさ、レミィ、途中まで一緒に帰らない?」
「うん!いいヨ!」
二つ返事でOKだった。
やった。

「レミィは修学旅行楽しみ?」
「もちろん!ホッカイドー楽しみだヨ!」
「そういえば同じ班だったね、よろしくね」
「こちらこそ」
そこで会話が途切れてしまった。
気まずいな、どうしよう。
「あのね、マサシ」
「な、何?」
突然レミィから話しかけられた。
「マサシって今好きな人いるの?」
「なっ…」
いきなりの質問で驚いた僕。
「い、一応いるけど…」
まさか目の前のあなたが好きですって言えないな。
「フーン、そうなんだ」
「そ、そういうレミィこそいるの?」
「フフフ、それはヒミツネ!」
「なんだよ、ずるいよ」
「バイバイ、マサシ!」
分かれ道でレミィは走って行ってしまった。
レミィは何であんなこと聞いたんだろ?

次の日の部活中、僕はずっと弓道場の方ばかり見てた。
昨日の質問はなんだったんだろうか?
そんなことばかり考えてたら練習が終わってしまった。
弓道場に寄って帰ろうかなぁ。
でも下心見え見えだしなぁ。
「あの…」
突然誰かに話しかけられた。
知らない女の子だ。
見たところ一年生みたいだけど。
「あの、僕に何か用?」
「あの、佐藤先輩…これ読んでください!」
ピンクの便箋を渡された。
女の子はそのまま走って行ってしまった。
「これってもしかして…」
ラブレター!?
「いや、中を見てみないとわからない」
・・・・・・・・・・・
「ラブレターだ」
どうしようこれ。
僕はレミィが…
ふと誰かの視線を感じたような気がした。
「気のせいかな?」
その視線は弓道場から感じた。
「やっぱり気のせいだよな」
便箋をかばんの中に入れ、帰宅した。
今日はレミィに会えなかった。


そして修学旅行当日
「いやー、北海道は涼しいな〜」
「クマ牧場♪クマ牧場♪」
「景色が綺麗だわ〜」
「だからなんで別のクラスのお前がいるんだ、志保」
「い〜じゃん別に」
「さて班行動だね」
「レッツゴー!」
こうして僕たちは北海道函館の町を歩き回った。
途中何度かレミィに話しかけようとしたが
タイミングが合わなかったり勇気が出なかったりで話すことは出来なかった。
陽も落ちてきたところで僕たちは函館の町が一望できる展望台へと行った。
「ふぅ、疲れたなぁ」
さすがに一日中歩き回っていると疲れてくる。
僕は班から離れ、近くのベンチに座った。
「ふぅ」
レミィと話せない、近くにいるのに…
そんなことを考えている時だった。
「マサシ、隣いい?」
レミィだった。
「え?レミィ。う、うんいいよ」
思いもしない事で僕は内心あたふたしてた。
「ここは夜景が綺麗ネ」
「…レミィの方が綺麗だよ…」
「ん?何か言った?」
「な、なんでもないよ」
落ち着いていないせいでベタベタでキザな台詞を口走ってしまった。
いかんいかん、落ち着け佐藤雅史。
「…マサシってもてるよね」
「へ?」
「女の子に人気がある。クラスの女子も後輩の子も」
「そんなことないよ」
「みんな言ってるヨ、佐藤君はカッコイイとか」
「そ、そうなんだ」
僕がそんなにもててるとは。
でもレミィは?
レミィは僕の事をどう思っている?
カッコイイ?
話しやすい?
それとも…ただの友達?
思考がまとまらなくなってきた。
そのまとまらない思考で僕は…
「クラスの女の子とか後輩の子とか関係ない。僕はレミィが好きだ」
言ってしまった。
つい拍子で。
レミィも驚いている。
「なんだ、そうだったんだ」
「あ、あのレミィ…」
「マサシ、目を閉じて」
「え?」
「目、閉じて」
「う、うん」
言われるままに目を閉じた。
函館の夜景も見れなくなり、視界は真っ暗になる。
ちゅっ
唇に暖かいものが当たった。
「え?レミィ…」
今のはもしかして…キス?
「…アメリカ式の返事。アタシもマサシが好き」
あまりの急展開に頭が追いつかなくなっている。
「レミィ…」
多分僕の顔は真っ赤だろう。
「いつ頃カナ?急にマサシの事が好きになっていた。キッカケとかはなかった」
僕とレミィとの肩は触れ合うぐらいまで近づいていた。
「マサシは?本当にアタシの事好き?」
「もちろん、好きだよ」
頭が冷えてきて思考もまとまってきた。
「レミィは今まで出会った女の子の中で一番素敵だよ」
「ありがとう、マサシ」
僕はレミィを抱き寄せた。
「アタシ不安だったマサシはかっこよくてもてるカラ、アタシなんか興味ナイのかと」
「そんなことない、僕だってレミィは綺麗だったから僕の事なんかと」
「アタシ、部活中にいつもマサシを見てた。目が合った時うれしかった」
「僕も部活中にいつも弓道場の方を見てレミィを探していた」
「アタシ達同じだったんだネ」
「そうだね」
「もったいないネ。モット早くに告白しておけばモット早くマサシと長く居れたのに」
「ねぇ、レミィ…」
「なぁに、マサシ?」
「もう一回…キスしていいかな?」
「そういうときは何も言わずスルのが基本ネ」
そして僕たちの唇はふたたび重なり合った。
今まですれ違っていた時間を埋めるかのようにちょっと長めに。
こうして僕とレミィは時間の許す限りベンチで語りあった。
「ねぇ、マサシ」
「何?」
「帰ったら、いっぱいデートしていっぱいキスしてずっと一緒にいようネ」
「あぁ、もちろんだよ」
函館の夜景は綺麗だった。
でも隣にいる恋人の笑顔はもっと綺麗だった。
僕にとってこの修学旅行は忘れられない思い出となった。





後書き
雅史です。
雅史ですねぇ。
このまま雅史で同級生制覇しようかな、なんて思ったり。
次は…誰にしようw






 ☆ コメント ☆

セリオ:「あらあら。若い人は大胆ですねぇ」

綾香 :「……セリオ。言い方がオバサンくさいわよ」

セリオ:「いいですねぇ、爽やかな恋愛。胸がキュンキュンしちゃいます」

綾香 :「キュンキュンって……」

セリオ:「羨ましいです」

綾香 :「それはまあ確かに」

セリオ:「まさに青い山脈って感じですね。石坂洋次郎です」

綾香 :「古っ」

セリオ:「わ〜かく明るい歌ご……むぐぐっ」

綾香 :「歌うな! いろいろとやばいから。つーか、若い人おいてきぼりだから!」

セリオ:「残念です。カラオケの十八番なのですが」

綾香 :「……何歳よ、あんたは」

セリオ:「まあ、それはさておき。
     佐藤さんもレミィさんも青春してますね」

綾香 :「そうね」

セリオ:「見ていて甘酸っぱいといいますか、むず痒いといいますか。
     なんというか……実に良いです」

綾香 :「ええ」

セリオ:「萌えです」

綾香 :「萌えとかゆーな」

セリオ:「ダメですか? じゃあ、激萌えで」

綾香 :「変わってないじゃない」

セリオ:「オー、モエモエデース」

綾香 :「どこのインチキ外国人だ、あんたは」

セリオ:「まあ、早い話が、最近の若い人は大胆で良いですよねぇってことなのですよ。
     おほほほほ」

綾香 :「だから、オバサンくさいっつーの!」






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