「人の気持ち、機械の恋」



今日は浩之とあかりちゃんと志保と僕の4人で来栖川メイドロボ開発研究所に来ていた。

何故かというと、うちの学校にいたマルチちゃんの一般家庭審査に浩之が選ばれたからだ。

「うわ〜、ここが研究所…」

「おっきいわね〜」

あかりちゃんと志保は研究所の広さに驚いている。

「さて藤田君、マルチの事をよろしく頼むよ」

「わかってます」

浩之と喋っているのはここの主任の長瀬さんだ。

「主任」

若い研究者の人が来た。

「なんだ?」

「HMX −13セリオの感情ユニット組み込み成功しました」

「そうか、これも一般家庭審査に出したいところだが…そうだ」

突然長瀬さんが僕のほうへ来た。

「君、セリオの一般家庭審査をしてくれないかね?」

「えぇ!僕がですか?」

「心配することはないよ。ただメイドロボの機能をテストするだけだからさ」

「はぁ」

「特別手当も出すから、お願いできるかな」

「僕でいいんでしたら…」

「そうか、引き受けてくれるか、ありがとう。ではこっちだ」

僕は三人と別れ、別の研究室に向かった。

そこには一体のメイドロボが眠っていた。

外見はマルチちゃんとはまるで正反対のメイドロボ。

高身長、長髪、巨乳、スタイル良し。

はっきり言って美人だった。

「あのメイドロボを…僕でいいんですか?」

「心配はいらないよ、ちょっとこっちに来てくれるかな」

そこで僕は顔、声紋、指紋照合を行った。

「さぁ、これで君はセリオのご主人様だ」

「ご、ご主人様…」

こんな大人にはならないようにと心の中で密かに思った。

と、メイドロボが目覚めた。

「セリオ、この人が君の新しいご主人様だよ」

「HMX-1 3、通称セリオです。よろしくお願いします、ご主人様」

「はぁ、どうも」

「という訳で佐藤君、一週間、テスト頼むよ」

「わかりました、あの…」

「何かな?」

「セリオに服ありませんか?あの水着みたいなのだと僕が恥ずかしくて…」

「そう言うと思って用意しておいたよ。セリオ、奥で着替えてきなさい」

「わかりました、主任」

待つこと数分。

なんとセリオは寺女の制服で出てきた。

「長瀬さん、なんで寺女の制服がここに…」

「はっはっは、細かいことは気にしない気にしない」

「……」

まぁ似合ってるからいいけど。





さっきの場所に戻ると志保しかいなかった。

「あれ?浩之とあかりちゃんは?」

「マルチを連れて先に帰ったわよ。なんかあれは修羅場になりそうね」

「そ、そうなんだ」

「ところで、あんた今まで何やってたの?あたし待ちくたびれたわ」

「それは…」

「初めまして、ご主人様のご学友の方ですか?私、 HMX-13、通称セリオです。」

「ご、ご主人様って雅史……」

「い、いや、ちがうんだ志保」

「あんたがそんな人間になってるなんて思ってなかったわーーーーーー」

「あ、待って!志保!」

志保は走って行ってしまった。

「?、志保さんはどうかなされたのですか?」

「あの、ご主人様って呼び方は止めてくれないかな?」

「それではなんとお呼びいたしましょう?」

「雅史でいいよ」

「それでは雅史様ということで」

「……」





「ただいま〜」

あれ?返事が返ってこないな。

「雅史様、机の上にこのようなものが」

[お父さんと一週間ほど旅行に行ってきます。留守よろしくね。母より ]

「あの夫婦は……」

パンとセリオが手を叩いた。

「ちょうどいいです。ご両親がいないのであれば私が雅史様のお世話をすることが出来ます」

「え?」

「それではさっそく、洗濯、掃除から始めたいので、掃除道具の場所を教えてもらえますか?」

「え、えっと、洗面所に全部あると思うから、あと、掃除機はここ……」

「わかりました、不肖このセリオ、一週間頑張って雅史様のお世話をさせていただきます」

「……」

もう何も言葉が出なかった。

これからの一週間、どうなることやら……





その日の夕食、これまでに見たこともないほど豪華な料理だった。

「セリオ、これはどうしたの?」

「今日は初日ということで張り切って作りました。お口に合えばいいのですが」

「それじゃ、早速いただくよ」

唐揚げを食べてみる。

「うん、この唐揚げ、ジューシーでおいしいよ」

「ほんとですか、よかったです。他にもどうぞ」

その他の料理もどれもおいしかった。

「ごちそそうさま、さて、お風呂でも入れてくるか」

「あ、お風呂の準備は整っていますのですぐに入れます」

「そう?ありがとう」





ザバ〜

「ふい〜、気持ちいい。しかし、セリオと二人っきりなんて……」

とその時、脱衣所から声がした。

「雅史様、入ってもよろしいでしょうか?」

「うん、いいよ…って!」

「失礼します」

バスタオル一枚のセリオが入ってきた。

「セセセセセ、セリオなんで」

「あ、バスタオル一枚お借りしました」

「それはいいいけど」

「お背中を流しに来ました」

「いいいいいよ、自分で洗えるから」

僕はもうパニック状態だった。

「いえ、これもメイドロボとしての勤め、さあ、このいすに座ってください」

「わわわかったよ」

なるべくセリオの方を見ないようにいすに座る。

「では、失礼して」

シュコシュコシュコ

あぁ、すごく気持ちいい。疲れが全部吹き飛んで行きそうだ。

「痛くないですか?」

「うん、すごく気持ちいいよ」

ザバー

「さあ、次は前を」

「うぇ!も、もういいから、後は自分で洗えるから」

「そうですか、それではごゆっくり」

セリオは出て行った。

「ふう、なんか余計疲れたような……」





次の日

セリオの料理は相変わらずおいしかった。

一緒に食べられないのは残念だけど。

セリオは炊事、洗濯、掃除を何でも完璧にこなしていた。

まぁ、寺女の制服だからスカートの中が見えそうになったり……って違う違う!

とにかく、彼女がいてくれて助かった。

僕一人だと多分、何も出来なかっただろうから。





二日目

新聞屋さんが遊園地のチケットをくれた。

「ねぇ、セリオ、遊園地にいかない?ちょうどチケットが手に入ったんだ」

「遊園地…行ったことがないので楽しみです。すぐお弁当の用意をします」





それからセリオと遊園地で遊んだ。

ジェットコースター、コーヒーカップ、ウォータースライダーなどとにかくなんでも乗った。

お昼はセリオお手製のサンドウィッチを食べた。

そろそろ閉館時間間際になったので二人で観覧車に乗った。

「セリオ、今日は楽しかった?」

「はい!見るもの体感するものすべてが新鮮で、ありがとうございました」

「そう言ってくれるとうれしいよ」

観覧車から見えた景色は綺麗だった。





それからもセリオは一生懸命、僕の世話をしてくれた。

学校へ行くときは、お手製のお弁当と一緒に笑顔で送ってくれたし、

帰ってきたときも笑顔で迎えてくれた。

一度セリオの着替え中に僕が部屋に入っちゃって枕を投げられたこともあったけど

それはさておき、順調に日々は過ぎていった。

そして、僕の心にも変化が起きていた。





六日目

いつも通り、セリオが洗い物をしていて僕はテレビを見ていた。

「雅史様、一通りの家事が終わりました」

「ご苦労様。あの、セリオ、話があるんだ」

「何でしょう?」

「あの、ここでずっと暮らしてくれない?」

「え?それは……」

「僕はセリオが好きになったんだ、だから……」

「雅史様……」

僕は抱きつこうとした。

けれどセリオはそれは拒否した。

「セリオ、何で……」

「すみません、雅史様」

セリオは部屋へ走って行ってしまった。

「そうだよな……たった六日だもんな……」

僕は早めに寝る事にした。







うつらうつらしてきた。

と、部屋のドアが開いた。

「雅史様、もうお休みになられたでしょうか?」

「私、雅史様と過ごしたこの六日間、すごく楽しかったです」

「なにもかもが新鮮で、雅史様も優しくて、研究所には帰りたくないぐらいです」

「でも、雅史様は私なんかより人間の方と恋をなされたほうがいいと思います」

「私はメイドロボ、最初から恋する権利などなかったのです」

ポタッ

「さようなら雅史さん」

「好きでした」

ちゅっ

バタン



今のは夢だろうか?

体が動かない。

頭もボーっとしている。

起きろ、佐藤雅史。



はっっと目が覚めた。

まだ12時になってない。

と掛け布団に涙みたいな染みがあった。

そして頬の一部分が温かかった。

「セリオ……」

あれは夢じゃなかった。

家中を探してみる。

案の定、セリオはいなかった。

「急がないと!」

僕は慌てて家を飛び出した。

家の周り、公園、商店街、浩之の家、どこを探してもいなかった。

そして研究所へ向かった。

「長瀬さん!」

「佐藤君……」

「セリオがここに来てないですか?」

「いや、来てないが」

「そうですか……どこにいるんだセリオ」

「佐藤君」

「はい?」

「君はセリオの事をどう思っているかね?」

「…好きです。人間と同じように」

「そうか…セリオは水辺が好きだったな」

「本当ですか!ありがとうございます!」

水辺といったらあそこしかない!

僕は走って研究所を出て行った。



「セリオも幸せだな……」





走ってようやくたどり着いた河原。

そこにセリオはいた。

「セリオ!」

「!雅史様、何故」

「僕はセリオが好きなんだ!メイドロボとか人間とか関係ない!ただ一人の女性として好きなんだ!」

いつの間にか僕は泣いていた。

そしてその涙を吸い取るように、セリオの唇が僕の唇をふさいだ。

「後悔、しませんか?」

「あぁ、しない。それどころか絶対にセリオを幸せにしてみせる!」

「雅史様……」

「研究所へ行って長瀬さんに話そう」

「はい」





研究所に着いた。

「長瀬さん、お願いがあります。セリオを僕にください。お金は将来、働いて必ず払います、だから……」

「まぁまぁ、佐藤君、落ち着いて」

「はい…」

「この六日間で非常に貴重なデータが取れた。後のメイドロボ開発に役立つだろう」

「……」

「それで、初めに言ってた特別手当のことだが……そこにいるセリオはどうかな?」

「え?」

「セリオが恋をしている顔をしている。生みの親としてはこれほどない嬉しさだ」

「いいんですか?」

「あぁ、セリオの事、よろしく頼むよ」

「長瀬さん、ありがとうございます!セリオ!」

「はい、雅史様、私は一生あなたにお使えさせていただきます」

僕とセリオは抱き合っていた。

長瀬さんはそれを満足そうな顔をしてみていた。







帰ってきた両親にも事情を話し、セリオは晴れて家の一員となった。

セリオも僕の事を「雅史様」じゃなくて「雅史さん」と呼ぶようになった。

志保に冷やかされたが、どうでもいい。

志保も僕たちの事を応援してくれてるようだ。

もう、セリオに悲しい思いをさせたりはしない。

僕はそう誓った。













後書き

わかりにくいかもしれませんが、この作品の志保は雅史の事が好きという設定です。

まぁ、本文だけ読んでわかる人はいないでしょうが。

僕はもう雅史しか書けなくなったようです。

さて、あと残ってるキャラは誰かな?






 ☆ コメント ☆

コリン:「はいはい。幸せでよござんしたねぇ」

ユンナ:「なんでいきなりやさぐれてるのよ」

コリン:「んー、なんつーかさ。幸せな奴らを見てると妬ましい気持ちにならない?」

ユンナ:「あんた、本当に天使か」

コリン:「天使だからって祝福するとは限んないのよ」

ユンナ:「人々の天使像を木っ端微塵に破壊するような発言は慎みなさい」

コリン:「わーったわよ。ったくもう、ユンナってばウルサイんだから。……ほじほじ、フーッと」

ユンナ:「耳ほじるのやめなさい。はしたないでしょ」

コリン:「ユンナってば小言ばっかり。あんたはあたしのお母さんか」

ユンナ:「ガミガミ言われたくないのなら少しはちゃんとしなさいっての」

コリン:「へーへー。そんじゃお仕事お仕事。
     えっと……人間とメイドロボの恋、か。
     こういう異種間の恋愛ってのは結構ロマンよねぇ」

ユンナ:「確かに。尤も、それ故の苦労も多そうだけど」

コリン:「まーねー。でも、そんなのは乗り越えてくれるでしょ。
     愛は無敵なのよ。愛さえあればどんな苦難だって耐えられるわ」

ユンナ:「そうね。その通りだと思う」

コリン:「……」

ユンナ:「? どうしたのよ?」

コリン:「思ってもないこと言ったから蕁麻疹が……」

ユンナ:「おいおい」

コリン:「世の中そんなに甘くないっての。愛なんか無力よ、む・りょ・く。
     この二人もすぐにそのことを思い知るに違いないわ♪」

ユンナ:「……最低だ、こいつ」






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