10萬ヒット記念投稿作品 「豪萌えセリオさん」 ※前作の続きのようで続きではありません。でも、頭悪いのは相変わらずですので、 不健全な青少年以外は読まないで下さい。 ※どのあたりが10萬ヒット記念なのかは、尋ねないでください。  HMX−13型メイドロボ、通称セリオ。来栖川エレクトロニクスが開発したメイドロ ボの試作機である。今日は、そんな彼女の一日を追ってみたいと思う。   *  * * * * * * * * <AM6:30/来栖川本家邸宅>  セリオの朝は、彼女のユーザーである来栖川綾香を起して学校まで随行することか ら始まる。 「綾香お嬢様、お時間です。どうかお目覚めになってください」 「…む〜〜〜〜…」 「綾香お嬢様、これ以上の遅滞は本日のスケジュールに重大な支障をきたします。即 座に起床なされることが望ましいと思いますが」 「おねがい〜〜〜、あと5分、いや3分、1分でいいから〜」 「1秒たりとも待てません」 「うう〜〜いけず〜〜〜いじわる〜〜〜〜〜」 「そんな、意地悪などと…そんなつもりは」 「イジワルなセリオなんか、こうだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」  油断していたセリオは綾香に袖を捉まれ、ベッドの中に引っ張り込まれてしまっ た。朝は低血圧で本調子ではないとはいえ、エクストリーム女子チャンプの綾香の体 力と手管はあなどっていいものではなかった。 「ああっ、綾香お嬢様、お戯れはお止めください」 「ふふーん。セリオってば今日も美人よねー」 「はあ…」 「キスしちゃお☆」 「お止めください綾香お嬢様!ん、んうぅ…ん…ふぅ………ん……」 「……………」 「…ん……むぐぅ……」 「……………」 「…む…ん・・・………ふぁ・・・」 「……………ふ〜、堪能☆お陰ですっきり目が覚めたわ」 「ううっ…またしてもこのようなお戯れを…」  結局、この日も綾香はセリオと共に慌しく家を飛び出すと、登校途中のリムジンの 中でサンドイッチをぱくつくといういつもの朝を過ごしたという。   *  * * * * * * * * <AM10:55/西園寺女子学院調理実習室>  セリオは一応、西園寺女子学院高等科1年に在籍している。 「へえ…」 「?どうかなさいましたか、田沢さん?」  ショートカットがよく似合う、クラスメートの田沢圭子にしげしげと見詰められ て、セリオは不審そうに尋ねた。彼女はセリオにとっては親友といってもよい存在 だった。小柄で体重も相応だが、見た目はどこか良い意味でむっちりとした印象のあ る、「愛くるしい」と分類される外観だ、とセリオは認識している。 「いやー。セリオって美人だけどさー、こう、なんていうか意外に家庭的な格好も似 合うんだなって思って…セリオのエプロン姿って、いいね」 「そうですか?自分では、よくわかりませんが」 「そうよねー。スーツとか制服とか、ビシッ!とした格好が似合いそうなんだけど」 「うんうん。意外とエプロン似合うよねセリオ。なんていうか、メイドさんっていう か」 「まあ、セリオはメイドロボなんだけど…」  いつの間にかまわりのクラスメートも加わって、話が盛り上がってきた。 「あの、皆さん、授業中なのですから私語はもう少し慎んだほうが…」  一応、自分を誉めてくれているのだから悪い気はしないのだが、根が真面目にでき ているセリオは皆の注意を喚起しようとする。 「だからさ、裸エプロンの賞味期限は新婚二ヶ月目くらいなのよ」  ってなんだか話が変な方向に向かってるし。 「新妻が昨夜の情事の後そのまま眠っちゃって、時間が無いから裸でエプロンをつけ て朝食の準備をするわけよ、シチュエーションとしては」 「そんでもんてその後姿にムラムラッときちゃったダンナが後ろからむしゃぶりつい てきて、『ああっ、ダメよアナタお料理できないじゃない』とか言いながらも流し台 に手をついて後ろから」 「流し台の上に乗せられちゃってお料理されちゃうってのもいいんじゃない?」 「それは夕食の時がいいんじゃないかな」 「それで今度は玄関で第2ラウンドが始まっちゃうんだこれが。『だめっ、早くしな いと会社遅刻しちゃうわ』とかー、『ヤメテッ、ご近所に声きかれちゃう〜』って抵 抗するんだけど、エプロンめくられちゃって、ドアに背中を押し付けられた状態で前 から」 「ドア越しにご近所さんの声なんか聞こえちゃって、喘ぎ声を必死に抑えて」 「エプロンの端を咥えて必死に声を押し殺すのよその場合」 「あ、あの、皆さん…田沢さんまで…」  内容が内容だけに、みんなのお喋りを止めさせるのが適切であろうとセリオは判断 したが、かといってどう制止すればいいのか?ロボットである自分が無理矢理人間で あるクラスメートの会話に介入して、強制的に止めさせるわけにもいかない。  …ふと、気づくと皆がセリオに視線を向けていた。 「どうなさいました、皆さん?」  圭子が、妙に重々しく腕を組んだ。 「セリオの裸エプロン…見てみたいよね」 「…た、田沢さん?ご冗談もほどほどに…」 「いいえっセリオ!外観が人間に与える印象もまたメイドロボには必要な資質なのよ !裸エプロンが似合うかどうか…それはセリオの価値が問われていることなのよ!?」 「一応筋は通っていますが、メイドロボの性能に裸エプロンは関係ないと思います」 「筋が通っていればいいのよ!なによりあたし、セリオの裸エプロンが見たい〜!」 「拒否します!」 「そんな〜。あたしたち、友達じゃないー」 「そう言って下さるのは光栄ですが、それとこれとは話が別です」 「…わかった。じゃあセリオだけ、っていうのは不公平だから、みんな一緒にやるっ ていうのはどう?それならセリオも恥ずかしくないでしょ?」 「そんなこと先生が許可するわけ…!」 「了承」  ……………。 「と、いうわけで後は自習にしますね」  そう言って微笑むと、秋子理事長はさっさと教室を出ていった。 「…ってなんで!?今回は了承シリーズじゃないのに!?」 「いや〜セリオ。もうあの人はなんでもアリだって」  なにやら達観したように圭子が呟いた。 「まあ、それじゃあそういうことで…」「セーリオちゃん☆」 「あ、あの、田沢さん?皆さん?」 「覚悟…決めちゃってね?」  いつの間にか、セリオの周囲をクラス全員が取り囲んでいた。 「ほら。みんな一緒なんだから…恥ずかしがる必要ないよ?」 「ホント、かわいいんだからセリオって」 「み、みなさん…」  圭子の手が、セリオのネクタイを解いた。  右からの手がペストをたくし上げ、左側の手がブラウスのボタンに手をかける。  そして、スカートのホックを、誰かがゆっくりと外した。  結局、その時間はクラス40名全員が裸エプロンで調理実習を行うという、女子高で はたまにある光景が展開されたという。  って、そんなバカなーーーー!?   *  * * * * * * * * <PM12:50/西園寺女子学園図書室> 「はぁ。セリオ…すっごくかわいかったよ。あたし一生、今日のセリオの裸エプロン 忘れないからね。大事な思い出だよ」 「田沢さん。お願いですから可能な限り速やかに忘れてください…」  心なし沈んだ表情のセリオは、メンテ及び充電用のノートパソコンを閲覧用テーブ ルの上で開いた。セリオはいつも昼休みに図書室に来ては、人気のない席を選んで充 電をする。手早くコードを右手首に接続すると、セリオは圭子に顔を向けた。 「それでは私はしばらく待機状態に入りますので…後はよろしくお願いいたします」 「うん、お休みセリオ」 「…変なことしたらイヤですよ?」 「しないって。安心して眠りなさいな」 「はい。それでは…」  椅子に腰掛けて、セリオは静かに目を閉じた。人間と違って、即座に「眠り」に入 る。その姿をしばらく圭子は黙って見ていた。一旦眠れば、充電が終わるまでセリオ が再起動することはない。だからうるさく騒いでも彼女が目を覚ますことはない。 「うふふふふ…セリオって、寝顔もかわいいなぁ…キスしちゃおっかな?」  無論、セリオは無反応である。 「セリオってスタイルいいよねー。ムネ、触ってもいい?いいよね?いいんだ?じゃ あ、ちょっとだけ触らせてねー」  どう見てもちょっとだけとは思えない手つきで指をニギニギさせながら、圭子は ゆっくりと眠るセリオに近づいく。 「って、何をやっとるかーーーーーーーーーーーーーーっ!!」  ズガッ!  美しい弧を描いて放たれた綾香の回し蹴りがこめかみにヒットし、圭子は横面から 床に打ちのめされた。 「まったく油断も隙もありゃしない!あたしのセリオになにセクハラかましてんのよ !」 「…いくら来栖川先輩とはいえ、『あたしのセリオ』なんて言い方はちょっと横暴な んじゃないですか!?」  案外平気そうに復活してきた圭子を綾香は睨みつけた。 「あたしはセリオのユーザーよ!それ以上にセリオはあたしのかけがいのない親友な んだから!」 「ううっ、セリオの一番の友達は私ですっ!」 「ナマ言ってんじゃないわよっ!そんなの自称でしょうが!…あたしはセリオとキス したこともあるんだからっ!」 「えええええっ!…ううう、セリオのファーストキスはあたしのものにするつもり だったのにぃ…で、でも、あたしなんか今日はセリオを剥いて一緒に裸エプロンした んだから!」 「えええええっ!…くぅ〜、あたしのいない所でそんなおもしろいやらしいことを… こ、こうなったらセリオ裸エプロンドレスメイド化計画を…」 「そんなの二番煎じです!どうせなら猫耳メイドさん計画の方が…鈴付首輪装備で !」 「あーら、そんなありがちな企画…結構いいかもしんないけど…う〜ん…でもでも、 あたしはそれよりセリオの園児服姿を見てみたいっ!もうぱっつんぱっつんでツンツ ルテンなやつ!そして砂場で一緒にトンネル掘るのよ!そんでもって、そんでもっ てぇ、その後は一緒にオ・フ・ロ」 「とーぜん二人で背中を流しっこする展開ですねっ!」 「勿論!ボディブラシは痛いからって、素手で泡を塗りつけるの!そして恥ずかしが るセリオを焦らすように、ゆっくり、ゆ〜っくりと、前の方に手をのばして、おへそ いじったりなんかして…!」 「石鹸でヌルヌルになったセリオの背中に抱きついて、ゆっくりと、ムネをムッチリ と押付けて、滑らすの…」 「セリオったらもうそれだけで回路がショートするくらい興奮しちゃって、ぐったり して」 「もうその後はしたい放題のいじりまくりで」 「「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」」  図書室の一角を百合空間に染めて、綾香と圭子はしばらく自らの妄想に陶然として いた。が、はっと正気に返って再び睨み合った。 「とにかく!そういうわけであたしとセリオはラブラブになるんだから、ムネの小さ いちんちくりんは引っ込んでなさい!」 「あ、あたしだって人並みにはムネありますっ!だいたい、大きければいいってもん じゃないでしょ!タレるし!」 「ほ〜お、この極上のムネを前にしてよくもそんな暴言吐けたもんね?」 「どーせそんなの筋肉でしょう!」 「言ったわねー!うりゃ!これでもこのムネが筋肉というか!自分で触っても適度な 張りと弾力が気持ちいい、このムネがっ!」 「あっ、あああああっ、確かにこれはっ…!」  力ずくで押さえ込まれ、綾香の豊満な胸の谷間に顔面を挟まれた圭子は悔し涙 (?)に頬を塗らした。 「綾香様、田沢さん…」 「…へ?」  傍から見れば綾香が圭子を熱く抱擁しているようにしか見えない状態のまま、二人 は声の主に視線を向けた。  その先で、目覚めたセリオが珍しく目を瞠って二人を見ている。 「申し訳ありません、まさかお二人がそのような関係にあったとは…私の配慮が足り ませんでした」 「あの、セリオ?」 「私は、どこまでもお二人の味方ですから…微力ながら応援させていただきます。で すが、一つだけ申し上げますが、ここは公共の場なのですからもう少し場所柄という ものを考慮していただかないと」 「えっとね、あの、これは違うのよセリオ?」 「邪魔者の私は退散させていただきますので…それではお二人とも、どうぞ心置きな く」 「待って――!だから場所柄考えて心置きなくの相手はこの娘じゃないのよ――!」 「お願い待って違う違うのよセリオーーーっ!」  結局誤解は解けたが、それはそれで更に自分の貞操が危ういことを再確認してし まったセリオだった。   *  * * * * * * * * <PM4:47/来栖川EM行きバス車中> 「…どうかしましたか、セリオさん?」 「いえ、別に問題はありません」  八割ほど席の詰まった通学バスの中で、セリオは同じ試作メイドロボのマルチと並 んで腰を降ろしていた。見かけは下手をすると中学、いや小学生のような外見のマル チだが、開発コードでは一応セリオの「姉」にあたる。 「でも、なんだか今日は元気がないように見えるんですけど…まさか、学校でいじめ られちゃったとか?」 「いや、あの、いじめられたというか…」  むしろみんなから大事に、愛されてはいるのだが…少し度が過ぎているというか、 方向性が間違っているというか。 「あのっ、私、お役には立てないかもしれないですけど、でも、セリオさん、何か辛 いことがあったら…私、精一杯お力添えさせていただきますから、だから…」 「…ありがとうございます、マルチさん」  自分と違って豊かな感情を持つ姉の優しさと思いやりに、セリオは不可思議な感触 を覚えた。これが慰めというものだろうか?あるいは安らぎというものかもしれな い。ただ、その未知の感触が…何か心地よいものであるのは確かだった。  ふと気づくと、マルチの方も普段に比べて憂い顔をしていることにセリオは気づい た。 「マルチさんも、何か心配事があるのですか?」 「いえ、心配事というか、その…」  チラチラと自分に視線を向けながら、やや頬を赤くしているマルチの仕草は、セリ オから見ても「かわいらしい」ものだった。 「男の方って、やっぱり大きな胸が好きなのかなぁ、って思いまして」 「…藤田さんがそんなことをおっしゃっていたのですか?」 「そういうわけじゃないんですけど…その…色々思うところがありまして」  マルチはしばらく自分の胸に手をあてていたが、やにわにその手をセリオの胸元に 伸ばしてきた。 「ううっ、セリオさんやっぱりスタイルいいです」 「あっ…」  ほんの軽く触れる程度だったが、その行為に一瞬、セリオは身体を強張らせた。 「私って、どうしてこんなに良い所がないんでしょう。お皿を洗えば必ず割っちゃう し、お料理は下手だし、方向音痴だし、買い物も満足にできないですし…。  セリオさんに比べて、外見も中身も全然良い所なくて…」 「そんなことは…」  そう言いかけて、セリオは口を閉ざした。非論理的だが、言葉よりも行動で元気づ けた方が適切である。そんな気がしたのだ。 「マルチさん」 「あっ…?」  お返し、とばかりにマルチの胸元に伸ばした手に、微妙な感覚が伝わってきた。  これは…この感触は… 「マルチさん、確かに小さいですね」 「ううっ、そうですよねやっぱり」 「でも、小さいですけどしっかりと柔らかくて、弾力があって、…なんというか、小 さいからこそかわいらしくて、素敵だと…私は、そう思います」  ふにふに。ふにふに。  指先から伝わるその感触は、先程のマルチの言葉から感じたものに、どこか似たと ころがあった。  ふにふに。ふにふに。  何故だろう。こうやって、いつまでも触っていたい。 「あ、あの、セリオさん…恥ずかしいです」 「…申し訳ありません」  顔を真っ赤にしているマルチに謝罪して、即座にセリオは手を戻した。しかし…指 先にはまだ、その感触が残っているような気がする。  しばらく二人はそのまま無言でバスに揺られていた。だが、やがて二人は互いの顔 を見詰め合った。 「あっ、あの」「あの」 同時に二人は口を開きかけ、そして慌てて閉じた。 「セ、セリオさんお先にどうぞ」 「いえ、マルチさんこそ」  二人は再び互いを見詰め合い…そして、場の空気に先に負けたのはマルチだった。 「あの、ですねセリオさん。…少し、気が楽になりました。ありがとうございます」 「私も同じです。…ありがとうございました」  マルチは微笑み、セリオも僅かに笑顔らしき表情を作った。 「…セリオさん」 「はい?」 「私、セリオさん大好きです。セリオさんみたいなお友達がいて、本当に良かったで す」 「はい。私もマルチさんが大好きですよ」  何となく落ち着いて、二人はそれぞれ周囲に視線を移し。 「ねえ、セリオさん?なんだか、体調の悪そうな方がたくさんいらっしゃると思いま せんか?」 「そうですね?下腹部を抑えてらっしゃる男性客が多いみたいですが…?」  周囲の男性がなぜか前屈みになっている原因が理解できず、二人は心底困惑した。   *  * * * * * * * * <PM11:02/来栖川本家邸宅> 「…何をやっているのだセリオ?」 「あ、長瀬様そこで止まってください」 「セバスチャンと呼ぶがよい!…まあそれはそれとして、なんじゃ、このワイヤート ラップは?」 「はい。切れると対人地雷に連動してベアリングと鉄釘をバラまきます」 「そんなものをお屋敷の廊下に仕掛けるなっ!」  来栖川邸の一角に与えられているセリオの自室前は、なにやら物騒な拵えになって いた。見た目は単にドアを中心として極細のワイヤーが張り巡らされているだけだ が、それぞれがいかにも物騒なシロモノに連動している。 「ちなみに参考データはパイ○ップルARMYです」 「ジェド○士かお前はっ!」 「大丈夫です、ベアリングと鉄釘というのは誇張ですから」 「だから、なぜそんなものを仕掛ける!?」  ピンク色のパジャマに身を包んだセリオは、一言、答えた。 「護身用です」 「…わかった。綾香お嬢様には私からもきつく言っておこう」  溜息をついて踵を返したセバスチャンを見送って、セリオは最後の仕掛けを終える と部屋に入った。後手で鍵をかける。 「やっほ〜、セリオ☆」  ずるっ。  自分のベッドの上で正座して手を振る綾香に、思わずセリオはバランサーの機能失 調を起してずっこけた。 「な、なぜ、どうして、どこからお入りになったのですか綾香お嬢様!?」 「うん、ちょっとテレポートの呪文を使って」 「ふざけないでください!」 「…………マジです」 「ああっ、芹香お嬢様まで!?」  ベッドの向こう側からひょっこり顔を覗かせてきた来栖川家の長女の姿に、セリオ は初めて頭痛という感覚を覚えた。 「…………ぶい」  小さくVサインを作る姉はとりあえず放っておいて、綾香はベッドの上で座りなお した。 「別に取って食ったりなんかしないわよー。ただ、寝る前にちょっとお喋りしたいだ けなんだから。…信用しろコラ」 「はあ…」  人間なら絶対信用しないのだろうが、メイドロボットのセリオはそれでも素直に近 づいた。綾香の隣に腰を降ろす。 「うんうん、そういう素直なセリオ、大好きだな」  ニコニコ笑う綾香の表情は無邪気なものだった。 「それで、お話とは…?」 「あ?うん、別に大したことじゃないんだ。参考までに聞いてみたいことがあって。  …セリオってさー、牝奴隷と女王様、どっちが好き?」 「失礼します!」 「あっコラ逃げるなーーーー!姉さん足!」 「……」(こくこく) 「ああっ、お放しください芹香様!」 「人の話を最後まで聞かないうちに逃げるんじゃないっ!よーし、そんなつもりはな かったけど、この際だから教育してあげる!」 「その割には目が嬉しそうです綾香お嬢様!」  ダッダッダッダッダッダッダッダッ………! 「何をやっておられるのですかお嬢様方―――!」 「あっ、長瀬様そこのワイヤーには…」  ちゅどばーーーーーーんん!! 「ぐおおおおおっ、本物の爆弾をしかけるでないわセリオーーーー!」 「も、申し訳ございません長瀬様!でも火薬の量は少な目…」 「セバスチャンと呼べーーーーーーーーー!!」 「なんで死なないのよあんたはーっ!!」 「……………………けむたいです」  ぱたぱたぱたぱたぱた…… 「ど、どうしたんですかセリオさーん?って、あれ?」 「ああっ、マルチさんそこにはフレア・トラップが」  すぱぱぱぱぱーーーーーーーーん!  途端に窓辺に設えてあったランチャーから照明弾が発射され、広大な来栖川邸の一 角を明々と照らし出した。 「ああっ、セリオ大丈夫!?なんだか胸騒ぎがしてちょっとそこの庭先に潜んでたん だけど!!」  そんなことを言いながら、額にスターライト・スコープをひっかけた野戦装備の圭 子が窓から侵入してきた。 「なにやってんのよこの不法侵入者!」 「来栖川先輩こそセリオの部屋でナニやってんですかっ!」 「貴様小娘、この屋敷に忍び込んだその愚かさ、たっぷり後悔させてくれる!」 「………けほ、けほ」 「はわわわわわわわ〜〜、セ、セリオさんこれは一体…」 「わ、私にももう何が何だか…」   *  * * * * * * * *   こうして慌しく始まったセリオの長い一日は慌しいままその幕を…ゴメン、まだ 当 分幕を閉じれそうにないわこりゃ。 <でも終わってしまう> 【後書き】  テーマはドタバタ。ただもう、ひたすらに。あとは溢れんばかりの煩悩。溢れてま す。耳から垂れ流れるくらい。  前回の激ラブセリオさんと違って、今回はセリオがもて遊ばれる役だったりしま す。ああっ、かわいそうな80%シリアス・セリオ!  ああ、セリオファンの皆様、ごめんなさい。マルチファンの皆様もごめんなさい。  綾香ファンの皆様、特にごめんなさい。芹香ファンの皆様もミニマムごめんなさ い。  圭子ファンの皆様、ムチャクチャごめんなさい。  セバスチャンファンの皆様。ミクロにごめんなさい。  ああ、でもマルチとセリオのソフトH(笑)が書けたからいいやもうなんでも。  ところでさ…オチはどこ?(爆)
 ☆ コメント ☆  >「……………ふ〜、堪能☆お陰ですっきり目が覚めたわ」  …………(*・・*)  あ、朝から……寝技の鍛錬ですか?  ぷ、ぷろれす?(*・・*)  >「了承」  どこにでも現れるひとだなぁ(^ ^;    >クラス40名全員が裸エプロンで調理実習  見てみたいような……見るのが怖いような……(^ ^;    >「そうですね?下腹部を抑えてらっしゃる男性客が多いみたいですが…?」  そりゃーねぇ。あんなのを見せつけられたらねぇ。  セリオにマルチ、もう少し、人の目を気にするように(^ ^;    >「護身用です」  トラップでも仕掛けないと、安心して休めないわなぁ。  う〜ん。セリオって、ものすご〜く哀れなのかも(^ ^;  阿黒さん、ありがとうございました\(>w<)/



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