まさか、本当に城島君が来るなんて・・・ 先生だ・・・確かに紗江子先生がいる・・・ 「城島君?」 「紗江子先生!」    永遠との邂逅、そして・・・ 後編 「本当に、本当に城島君なの?」 「はい、本当に城島司ですよ」 「まさか・・・本当に来るなんてね・・・」 難しい表情をしている紗江子の顔を司は不安げに見つめた。 「どうかしましたか?」 「いいえ、何でもないわ・・・ところでここはどこなんですか?」 突然の質問だったが、司は迷うことなく答えた。 「ここは俺と紗江子先生だけの世界。望んだことをすることも出来る。そして俺と紗江子先生は永遠に この世界で暮らすんだ。ずっと・・・永遠に・・・」 (この虚無の世界で?ずっと?) 紗江子はふとそんなことを考えたが、とりあえずその考えはしまっておくことにした。 「ところで、あなたはどうやってここに来たの?事故で死んだ私ならともかく・・・まさか自殺したわけじゃ ないでしょうね?」 司は今の発言に疑問を感じた。 「あれ?なんで事故に遭ったことを知ってるんですか?」 「何でって・・・それは事故にあった本人だから知ってて当然でしょう」 「・・・・・・・・・・・・」 (何故だ?この世界では俺が望んだ紗江子先生がいるはずだ) (だったら事故のことは知らないはずだ) (なのに何故事故のことを知っているんだ?) (まさか現実の世界にいた本当の紗江子先生なのか?) (いや、そんなことはないはずだ) 司は明らかに混乱していた。 それははたから見ている紗江子にも分かった。 「ちょっと、城島君、大丈夫?」 「えぇ、大丈夫です」 「そう、それならいいんだけど・・・」 ほっと紗江子は胸をなでおろした。 まだ幾分心配しているようだが・・・ 「いきなりですけど・・・本物の紗江子先生なんですか?」 「あら、変なこと聞くわねぇ。本物に決まってるじゃない。南条紗江子、24歳、中学校社会教師、と言っ てももう死んじゃったけどね」 この時点で司は確信した。 この人は現実の世界にいた本物の紗江子先生だと。 「ところで、さっきの私の質問に答えて頂戴。どうやってここに来たの」 司は若干動揺していたが、まぁどっちでも紗江子先生は紗江子先生だと考え直した。 そして質問の内容を再確認して答えた。 「紗江子先生が死んだって知った後、ずっと俺と紗江子先生の二人だけの世界を願ったんですよ。そう したらだんだんとその世界だ出来ていくのが感じられたんです。そのうちみんな俺のことを忘れ初め て、そして自然とこの世界に行くことが出来ると思って。そしてそろそろだなって思ってからすぐにこっち の来ることが出来たんです」 「そう・・・ところであなた、みんなあなたのことを忘れたって言ったわよね?」 「えぇ、そうですけど・・・」 そう言うと紗江子は急に真面目な顔をした。 「あなたが現れるちょっと前に現実の世界が見えたわ。そこには一人の少女が立っていたわ。あなたも 良く知っている人よ」 「え・・・誰ですか?」 「・・・里村茜さんよ」 「茜が?でもどうして・・・」 「彼女・・・泣いていたわよ・・・」 「!?」 「それも、あなたが居たところを見ながらね」 「そんな!みんな俺のことを忘れたんだ。だから茜だってきっと・・・」 「もし忘れていなかったら?」 「え・・・」 紗江子は一呼吸おいて話しなじめた。 「もしかしたら里村さん、あなたのこと好きなんじゃないのかな?」 「え・・・でも俺はちゃんと先生のことが好きがって言ってたのに・・・」 「どうしても諦められないんじゃないかな?女の子のそういう気持ちって一途なのよ。簡単には諦めき れるものではないのよ」 「それでも・・・」 「それじゃあ、あなたはちゃんと里村さんがあなたのことを忘れたと確認したのかしら?」 「それは・・・・・・」 「好きだから忘れなかった・・・ということなのよ、きっと」 「・・・・・・・・・・・・」 司は絶句してしまった。 確かに茜は司が記憶している限りでは一番最後まで司のことを覚えていた。 「そしてあなたが消えてしまったから泣いている・・・」 「・・・・・・俺は、そんな茜に何も言わずに目の前から消えてしまった・・・」 「あなたはこのままでいいの?きっと彼女はあなたはきっと帰ってくるって何ヶ月でも、何年でも待ち続 けるわ。そしてきっと苦しむでしょう。あなたがあの時自分のことしか見ていなかったせいで、何も言わ なかったせいでね」 「・・・・・・・・・・・・」 「確かにあなたの私を好きでいてくれているその気持ちはうれしいわ。でもね、それが人をひどく傷つけ た上で成り立っているのなら、それは許せることではないわ」 「先生・・・」 「今あなたがしなくちゃならないのは、現実の世界に戻り、あなたを待ち続けている里村さんに謝ること なのよ。そして彼女を苦しみから救い出してやらなければいけないのよ」 「先生・・・でも、どうしたら・・・」 「諦めないこと」 「え・・・・・・」 「あなたが私のことを想ってこの世界を作ったように、今度は里村さんに謝りたいと強く想うのよ。大切 な幼馴染なんでしょう?大切なものを諦めちゃ駄目。諦めたらすべてが終わってしまう。大切なものを 失ってしまう。そんな悲しいことをしてはいけない。だから諦めちゃ駄目なのよ」 「先生・・・」 「今すぐには無理かもしれない。でも可能性があるなら・・・少しでも可能性があるのなら、頑張ってみ るべきじゃないかな?」 「先生・・・はい!」 「ふふふ、いい返事ね。これでこそ教職員をやっていた甲斐があったわ」 「でも・・・もし戻れたとしたら、先生はどうなっちゃうんですかね?」 「・・・さあ?考えてなかったわ」 「ぷっ・・・先生ってやっぱりどこか抜けてますね」 「そうかしら?でもまぁ、もう死んじゃった人扱いだから消えちゃうのかなぁ?」 「・・・俺は諦めませんよ」 「え?」 「俺はきっと戻って見せます。もちろんそのときは先生も一緒ですよ」 「城島君・・・」 「諦めるなっていったのは先生なんですからね。絶対先生と一緒に戻って見せます」 「・・・・・・ありがとう」 「そのときには返事を聞かせてもらいますよ。もう先生が好きだという事言っちゃいましたからね」 「ふふふ、じゃあ楽しみにしててね」 「はい!」 その日はすぐには来なかった。 それでもゆっくりと・・・ 確実にその日は近づいてきた。 そして・・・ 「城島君、いよいよだね」 「えぇ」 「それじゃ行きましょう、一緒にね」 「はい!」 二人は『永遠の世界』からその姿を消えた・・・ そして・・・ 了 あとがき ど〜も、マサです。 書き方を変えるという理由で前後編に分けたわけですが・・・ いや〜、大変でした。 特に最後が・・・ 本当に迷いましたからねぇ。 結局ああなったわけですがね。 まぁ、どんな苦情でも受け付けます。 それではまた会う日まで・・・・・・ でわ〜  



戻る