Feeling Serio 藤田浩之…私のマスターにあたる来栖川姉妹の恋人であり、      私の姉のHMX-12マルチのマスターにあたる人物 そう、私のメモリーにはそうとだけ記憶されている…… …だけど、最近メモリー内のデータを整理する時に 彼のデータが私のメモリー内を移動すると 私のシステムがまるでオーバーロードしたように熱くなり、 データ整理がそこでフリーズしてしまう。 最初にこんな事が起こったのは二週間前。 綾香お嬢様のキックで気絶なされた浩之さんを膝枕していた時の事をデータ整理していた時。 その次は三日前。 その時は綾香お嬢様と芹香お嬢様をお迎えに上った時に 偶然浩之さんと会った時の事をデータ整理していた時。 私はこの異常を心配し一昨日長瀬主任に相談した。 すると長瀬主任は嬉しそうに、 「そうかそうか分かった、明後日までに何とかするから気にするな。 明後日の九時に俺の部屋に来てくれ」 とおっしゃられた。 そして私は今長瀬主任の部屋の前にいる。 こんこん 「うーい、誰だ?」 「セリオです」 「おー入れ入れ」 「失礼します」 がちゃり 私が部屋に入るとそこには長瀬主任の他にマルチさんと 綾香お嬢様と芹香お嬢様が居た。 「?」 一瞬私のシステムが混乱した。 マルチさんがここに居るのはおかしい事ではない。 しかし、このお二人がこんな時間に こんな所にいらっしゃる筈が無い。 「まあそんな顔せずにこっちへ来い。渡したい物が有る」 私は言われた通りに長瀬主任のデスクまで行くと、 一枚のDVDを渡された。 「これは?」 私は長瀬主任に尋ねてみた。 「それはお前の心理システムデータのアップデートソフトだ。 今回のお前の異変はお前の『心』の問題なんだ」 「私の『心』?」 「そうよ、貴方の『心』の暴走が原因なの」 その時、私には綾香お嬢様の言ってることが分からなかった。 「まぁ、とりあえずそのソフトをインストールして、  明日にでも浩之に会ってみなさい。きっと答えが見つかるわ」 そう言うと綾香お嬢様は意味ありげに笑った。 「セリオさん頑張ってください」 なでなで なぜか芹香お嬢様とマルチさんが励ましてくれた。 「分かりました。 ではこれから自室に戻りインストールしてみます」 そう言って私が部屋から出ようとドアのノブに手を掛けた時、 「負けないわよ」 「わわわわわわ、私もです」 「……………………」 最後の芹香お嬢様の言葉は私の高感度センサーによると、 『私も負けません』 だった。 しかし、これらの言葉の意味もやはり私には分からなかった。 そして翌日私は綾香お嬢様に連れられて 浩之さんの通う学校へとやって来た。 「ハロー浩之、姉さん」 校門から出てきた浩之さんと芹香お嬢様に綾香お嬢様が声を掛けた。 「よう綾香とセリオじゃねーか珍しいな。どうしたんだ?」 「実は今日はあんたに用事があってね」 「俺に?どんな?」 「用があるのはあたしじゃなくてセリオの方よ」 「セリオが?」 浩之さんがまじまじと私の顔を除きこむ。 まただ。 急に私のシステムの計算速度が鈍った。 それと私の頭部の人工皮膚の温度調整が上手くいかない。 「はいはい今日はお邪魔虫のあたし達は消えるわね。 いくわよ姉さん」 「…………………………………………」 「えっ、セリオの事をよろしくって、  先輩いったいそれどういう意味?」 ぶろろろろろろろろろ 浩之さんの質問に答える前にお二人はリムジンで行ってしまった。 「………、とにかくここで立ち話ってのもなんだから 近くの公園にでも行くか」 「はい」 そして私達は浩之さんのお宅の近くの公園へとやって来て、公園のベンチに腰掛けることにした。 「で、話って何だセリオ」 「実は…」 私は浩之さんに最近の私の原因不明の不調や 昨晩の長瀬主任とお嬢様たちの様子を伝えた。 この話をしている間も私のシステムはオーバーヒートを続けていた。 「浩之さん私の不調の原因は何なのでしょうか?  知っておられるなら教えてください」 「それは…」 浩之さんは照れ臭そうに俯くと少し考えている様だった。 「浩之さん、お願いします」 私がそう言うと浩之さんはやはり恥ずかしそうな顔をして 私の方を見つめながら話し始めた。 「多分これは俺の推測なんだけど……、 今セリオは俺に『恋』をしてるんだと思う」 「私が浩之さんに『恋』をしている………」 「それと昨日セリオが渡されたって言うソフトはセリオを マルチみたいに『好き』と言う感情を 理解できるそうにするための物じゃないかと思う」 「私がマルチさんみたいに………」 私が呟きながら浩之さんの方を見ると 私と浩之さんの目と目が合った。 かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ 私と浩之さんの顔が一瞬で朱に染まる。 「こう堂々と言うと恥ずかしいもんだな、ははっ」 「私には良く分かりません」 私は自分の『心』と言う物が分からなかった。 なでなで 「?」 浩之さんの手が私の頭を撫でている。 「そんな悲しそうな顔すんなって。 セリオの心はまだ赤ちゃんみたいなもん何だろ? だから焦る事なんか無いって。 俺なんかで良ければ助けになるからさ」 浩之さんはやさしく微笑みながら私にそう言った。 どくんっ その笑みを見た時、私の『心』に何かが走った。 (そうかこれが人を『好き』になるって事なんだ、 これが『恋』をするって事なんだ) 「どうしたんだセリオ?」 浩之さんが私の顔を心配そうに覗き込んでいる。 「いえ、ただ私だけこんなに浩之さんに優しくしてもらったら お嬢様達やマルチさんが羨ましがるだろうなって思って」 この時私は笑っていたと思う。 そして、その笑みは私がこの世に生まれて 初めての心の篭った笑みだったと思う。 そして、私はその時思った。 ここに居て良かった…………… 心を持てて良かった…………… そして、『愛すべき人』に出会えて良かったと……………… <あとがき> はじめまして、聖天太子と申します。 今回で初投稿となりますが実は予定では東鳩ではなく、 Kanonの予定だったのですが……… うちのハードが飛んでしまって(涙) 近いうちに書きたいとは思っているのですが。 さて話は変わって今回の作品についてですが、 はっきり言って難しかったです。 特にセリオの敬語が難しかった。 よくよく読み返して見ると所々セリオの台詞回しが変です。 しかしここらが僕の文章力の限界なんで勘弁してください。 感想・苦情等は下記のメアドにお願いします。 ba0729@mail.goo.ne.jp  



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