投稿SS
「しんでれら」

※大変馬鹿な内容ですので、健全な青少年、及び痕に純粋な思い入れのある人は読ま
ないでください。





 むかしむかし、あるところにシンデレラというかわいい娘が住んでいました。シン
デレラのお家は温泉郷の名士で、やさしいお父さんとお母さんにかわいがられて、シ
ンデレラは幸せな日々を過ごしていました。
 ところが、ひょんな事からお母さんは病気をこじらせて、手当の甲斐もなく亡く
なってしまいました。悲しむシンデレラのためと思ったのでしょうか、お父さんは四
十九日が済むとすぐに再婚し、お家には新しいお母さんがやってきたのです。
 でもなんということでしょう?新しいお母さんはズン胴で年増で偽善者で料理が下
手で、おまけに三人の連れ子までいました。この連れ子というのが料理は上手だけど
ガサツで乱暴な長女、無口で何を考えているのかわからない次女、昔は素直で優し
かったのだけれど、今は変なキノコ中毒でヤンキーになってしまった三女と、どれを
とっても問題児ばかりでした。ここまでひどいとお父さんも何を考えて再婚したのか
少々疑ってしまいます。
 ところが悪いことは重なるもので、お父さんまで飲酒運転、もとい馬車の事故で亡
くなってしまいます。こうなるとそこは童話の定番、底意地悪くて性根の腐った継母
たちの天下です。かわいそうなシンデレラはコンビニのバイトの傍らたまに学校に行
くという気侭で自堕落な生活は許されません。来る日も来る日も労働基準法から逸脱
した過酷な労働条件の中、馬車馬のように働かされる辛い日々を送ることになりまし
た。

  ***********

「うぉりゃーーーーーーー!シンデレラーーーーー!!」
 ぐきゃっ!
「おぷすっ!!」
 アメリカンコミックのような悲鳴を上げて、シンデレラは宙を飛びました。三女、
ハツネの電光のようなケリが綺麗に鳩尾に決まり、しばらく息をすることもできませ
ん。それでもどうにか、シンデレラは声を絞り出しました。
「な、なんですかハツネお姉様…」
 立ち上がると、シンデレラの方が頭二つ分は背が高いです。シンデレラは普段は
ちょっと間が抜けた平凡な大学生にしか見えませんが、マジメな顔をしていれば
結構りりしい雰囲気をもった、割と逞しくて頼りがいのある美少女です。
(※無茶な表現であることは重々承知しております)
「なんですか、だとぉ?」
 たちの悪いチンピラそのものの、下から掬い上げるような目つきでハツネはガンを
切ります。元はなかなか可愛らしい妹のような美少女であるだけに、こんな役柄は書
いてる人間も時々後悔しています。
「別にどーもしねーが、気にくわねぇから単なる八つ当たりだ!」
 すげー自分勝手です。
「うぉらーーーーーーー!シンデレラーーーーーーーー!」
 ごきゃっ!
 殴られた痛みを感じたのは、ほんの一瞬です。
 鼻血を撒き散らして本日二度目の空中浮遊を行いながら、シンデレラはその浮遊感
覚を妙に心地よいものに感じていました。
 ふわふわと宙を漂う感覚は、これはこれでなかなかです。
 どぎゃっ!
 そして脳天から床に激突し、シンデレラの甘い錯覚は激痛で過酷な現実に引き戻さ
れました。
「なっ…なにしやがるアズサーーーーーーーーーー!」
「うるせえっ!たかだか台所の片づけにいつまで時間かけてるんだこのノロマ!った
く米も満足に炊けねぇくせに、無駄飯ばっかり食らいやがってこのバカ耕一っ!」
「…アズサ姉さん、今は耕一さんじゃなくてシンデレラ」
 ショートカットで、服の上からも豊かな胸の膨らみが特徴的な長女のアズサを、次
女のカエデがたしなめます。こちらは日本人形のような静かで神秘的な雰囲気を漂わ
せた美少女です。
「シンデレラ」
「な、なんでしょうカエデお姉様」
 優しくシンデレラの鼻血をティッシュでふきふきしながら、カエデはシンデレラに
言いました。
「昨夜、私が寝る前に夜空を見上げると、東の空にオレンジ色の光を放つ謎の飛行物
体が近づいてくるのを見ました」
「は、はい?」
「やがて家の庭先に着陸した物体から、緑色の小人が出てきて、私にこう言いまし
た。…マ・ヒ・ナ、と」
「あ、あの、カエデお姉様…?」
「私は自分でも夢でも見たのかと思ったのだけれど、翌朝目が覚めて見ると、耳の後
ろに三角形の傷痕が」
「ほ…本当なんですか?」
「全部ウソです」
 ずがっしゃあああああああああああああああああああんんんん!
「あらあらあら、みんな賑やかねぇ。…アズサ、ハツネ、シンデレラ、何をきれいに
ずっこけてるの?」
「チ、チヅルお母様…いや、ちょっと、久々にワケのわからん攻撃を喰らってしまっ
て…」
「くぅ、油断したぜ…くだらねーギャグは下手すると命にかかわるからな」
「ハツネちゃん、その言い方だけでもなんとかなんないかなー」
 唯一平然としているカエデと、妙にけだるい雰囲気の皆をしばらくチヅルお母さん
は見比べていましたが、本来のんきな性格のチヅルさんはあっさり興味を無くしたよ
うでした。
「ほらほら、それより今日はお城で舞踏会ですよ。みんなそろそろ準備なさいな」
 年に一度、タカヤマで開かれる恒例の舞踏会ですが、今年は王子様の后選びを兼ね
ているということで、妙齢の娘を持つ上流階級の家庭には必ず招待状が届けられてい
ます。無論、鶴来屋グループの会長を務めるチヅルお母さんにも招待状は届きまし
た。
「さあみんな、綺麗におめかしして王子様のハートをバッチリキャッチ(死語)する
んですよ。首尾よく貴方達の中から王子様の御后が選ばれたら、私たちも皇族です。
王子様は御飾りとして実権を握ってしまえば、ゼネコンからのワイロもインサイダー
取引もやり放題、幾らでも蓄財に務めることができるんだから、気合を入れて御化粧
なさいな」
「やっぱ偽善者だな千鶴姉…」
 ギラッ!!
「ア・ズ・サちゃん………?」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。
「ひ、ひいっ!?」
「い・ま・な・に・か、いっ・た・か・し・ら?」
 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。
「いえっ!何も!何も言ってませんチヅルお母様!」
「そう?ならいいのよ」
 ニッコリと、血に飢えた観音様のような微笑を湛えてチヅルさんは部屋から出て行
きました。我ながら仏罰があたりそうな表現です。
「…やっぱ最強だな、千鶴さん」
「だよね。千鶴姉だけは怒らせないようにしよう」
 妙にしみじみと頷きあうシンデレラとアズサです。書き手としては、一応役柄とい
うものを考えて欲しいものですが。
「しゃーねー。とりあえず、着替えるとしようかね」
「おう。メンドクセーが、まあうまいメシぐらい食えそうだしな」
「…………」
 頭をかきながら出て行く義姉たちに、シンデレラはおずおずと話し掛けました。
「あ、あの、私は…」
「当然、留守番に決ってるだろ」
 ヘラヘラ笑いながら、アズサがバカにしたように言います。
「まー、気が向いたら御城のご馳走折り詰めにして持ってきてやるから、あんまし期
待しないで待ってな」
「俺たちがいねーからって仕事サボってっと承知しねーぜ」
「…手を抜いたら一晩中軒先に逆さに吊るして冷水垂らしますよ」
「楓ちゃん…」
 何気に物騒なことを呟くカエデに戦慄しながら、シンデレラは黙って自分の仕事に
戻りました。やがて、馬車に乗って継母達はお城に出かけて行きます。
 シンデレラはメイドロボの耳カバーをつけると、真面目に掃除に励みました。ちな
みにこのカバーをつけて掃除をすると、何故か普段より掃除上手になれるということ
で、最近は一家に一揃いは常備してあるヒット商品です。
 仕事を終えると、シンデレラは屋根裏部屋の自室に入ると、万年床に横になりまし
た。窓からは遠く、東京ネズミーランドのように綺麗にライトアップされたお城が臨
めます。その華やかな光景を見ていると、しみじみとシンデレラは悲しくなってきま
した。
 シンデレラだって、年頃の女の子です。
 ……………。
 す、すいません、今ちょっと自分でもクラッときてしまいました。でもこうなった
ら皆さん最後までつきあってくださいね。
 とにかく、シンデレラだってお城の舞踏会に行ってみたくてたまりません。それは
それは綺麗で、楽しくて、華やかな場所なのでしょう。
 目を閉じれば、昔の幸せな生活が瞼に浮かんできます。毎日毎日、学校にも行かず
パチンコ屋で時間を潰したり、ゲーセンで生意気な小学生を対戦台でボコにしてやろ
うとして返り討ちにあったり、エロい雑誌をレジに持っていくといつものじーさん
じゃなくてアルバイトの女の子でちょっぴりビビったりといった、どーでもいいよー
なくだらねー思い出が走馬灯のように浮かんでは消えていきます。
「あ〜あ。俺も舞踏会、行ってみてえなぁ〜」
 尻をかきながら、シンデレラがそう慨嘆した時です。
 パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…!
「う、うわあああああっ!?」
 窓の外がいきなり眩い光で一杯になりました。ゴンゴンゴンという機械的な音が耳
に響きます。圧倒的な光に包まれて、シンデレラは、そのうち何もかもわからなく
なってしまいました。

 ****************

 パ・ペ・ピ・ポ・プ〜〜〜〜…
 気が付くと、チープな電子音が鳴り響く、不思議な空間にシンデレラは立ち尽くし
ていました。
「…照明抑えたスタジオにシーツかけたダンボールをあちこちに置いて、スモーク炊
くとこんな感じだよなぁ」
 そういう身も蓋も無い感想を述べてはいけません。
「はっはっはっはっはっ。シンデレラ、君の願い、叶えて差し上げようじゃありませ
んかー」
 どことなく妙な文法の言葉とともに、緑色で電話ボックス程の大きさの地球外生命
体が、触手をうねらせながら現れました。
「死ねっ、バケモノーーーーーーーーーー!!」
「ぐはあああっ!?」
 シンデレラの鉄拳をマトモに喰らい、緑色の体液を撒き散らしながら謎の生物はに
2、3度床を転がりました。が、案外あっさりと復活してきます。
「…あのですね。私は宇宙のコズミック魔法使い、ガチャピンです。今日はブラザー
の電波を受信して、恵まれない貴方に多面的支援を行うためにやってきました。ま
あ、私の宇宙科学力にまかせておきなさい」
「…今まで色んな魔法使いがいたんだろうけど、あんたくらいふざけた魔法使いは初
めてじゃないか?」
「はっはっはっ。おもしろいことをおっしゃる」
「マジなんだけど」
「まあまあ。とりあえず、お城までは転送装置で電送するとして」
「だから、どこが魔法だっつーの!」
「はっはっはっ。これは魔法の転送装置ですから。さて、とりあえずはその薄汚くて
不衛生な格好を何とかしないといけませんね」
「ああっ、事実なんだけどなんかすっげームカツク」
 という、シンデレラを無視してガチャピンは何やらケースをごそごそ引っ掻き回し
ました。
「とりあえず、そこにシャワーありますから使ってください。それからこのドレスに
着替えて」
「…それこそそんなの魔法とか科学力でパパッとなんとかならないのかよ?」
「あ、それからこの服はレンタルですから、超過料金払いたくなければ12時までに
お城から帰ってきてくださいね」
「…こんな現実的なシンデレラのパロディ、嫌だなおい」
「まあ、滅多になくていいんじゃないですか?」
「よくねーよ!」

 *************

「王様、ここは禁煙です。タバコは控えてください」
「…嫌な世の中になってきたねぇ」
 うらぶれた中年男、もとい国王ナガセ2世は侍女のキョーコにタバコを取り上げら
れてくさっていました。その横では侍従官のユミコが何やら記録をつけています。
 お城のダンスホールでは、ワルシャワ交響曲楽団が静かに「ためいき」を演奏して
います。いい曲ですけど、でもダンス向きとは言えない曲なので、出席者たちはとて
も踊りにくそうでしたが。
「で、どうだねヤナガワ王子。好みの女性は見つかったかね?」
「…くだらんですな」
 長身で、メガネが似合うインテリヤクザといった印象のヤナガワ王子は、自分の少
女革命ウ○ナのような煌びやかな衣装を情けなさそうに見下ろしました。まあ、30
年ぐらい昔のマンガに出てくるようなカボチャブルマーでないだけ、まだマシだと
思っていただきたい。
「まあまあ。大体、今回の催しはお前がホモだという噂を払拭する目的もあるんだ。
ウソでもいいから女に興味があるフリだけでもしなさい」
「私は別にホモじゃありません!女だって人並みに好きです!」
「両刀使いってわけですね?」「うわ、サイッテー」
「…お前ら、まとめて狩ってやろうか?」
 好き勝手なことをいうキョーコとユミコに、思わず狩猟者の本能が鎌首を持ち上げ
ます。まあ、実をいうと確かに王子は女性にもちゃんと興味はありますが、今現在の
ところは御付の小姓のタカユキにぞっこんなのです。この時代、特に同性愛はタブー
というわけではありませんが、やはり一国の王子のシュミとしてはそう褒められたも
のではありません。
「しかし、先程の姉妹たちはなかなか見目麗しくはなかったかねぇ?」
「はぁ。ですが、イマイチハートにときめくものはなかったですな」
 その一家はタカヤマでも有力な温泉旅館の当主ということで、釣合いは王家と較べ
ても遜色はありませんでした。でも、王子がなかなかいいな、と思ったのは母親で、
流石に彼女を后に迎えるわけにはいきませんでした。娘達もそれぞれ美少女ではあっ
たのですが…。
 三女とは、壮絶なガンつけバトルに終始しました。
 次女は、なんだかアウターゾーンにでも案内されそうな雰囲気で即刻下がらせまし
た。
 長女は、少し性格がキツメでしたが中々良い女で、こういう気の強い女を屈服させ
る歪んだ欲望を王子も持たないではなかったのですが、突如横から侍女のカオリが彼
女にむしゃぶりついてきて、長女は逃げ出してしまいました。
 カオリは侍女の中でも有名なレズ娘で、しかもかなりしつこいタチの娘でしたか
ら、流石に無情なヤナガワ王子もほんの少しだけ、長女を気の毒に思っていました。
(思っただけ)
 そういうわけで、王子がちょっとブルー入っていた時です。不意に、ホールにざわ
めきが起こりました。不審に思った王子がそちらに視線を向けると同時、人ごみが
さっと開いて、一人の娘が王子の目の前に現れたのです。
(こっ、この娘は!?)
 王子は瞠目しました。彼は今まで色々な女性を見てきましたが、こんな女性は初め
て見たのです。
 逞しい胸襟、がっしりした肩幅、適度に引き締まった腕、大根のような太い足。
 ありふれた、平凡そうな学生のような顔立ちながら、ヤナガワ王子はその仮面に隠
された野生の魅力を嗅ぎ取っていました。さすがエルクゥです。
 一方その娘…無論誰あろうシンデレラも、初めてみるヤナガワ王子に何か魂の奥底
から感じる、宿命じみたものを感じていました。
(こ、この方が王子様?)
 二人は電光に打たれたかのように、しばし互いを見詰め合ったまま身動き一つとれ
ませんでした。が、やがて、ヤナガワ王子は静かにシンデレラに近寄ると、静かに問
い掛けました。
「お嬢さん。…あなたの御名前は?」
「シンデレラと申します、王子様」
 二人は再び無言で見つめあいました。見詰め合ったまま、二人はそっと手を大きく
広げ。
 ぐわしっ!
「うおりゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「どりゃりゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」
 互いの指と指を絡み合わせ、力比べの体勢で二人は野太い雄叫びを上げました。
 ギシギシギシッ、ミチミチッ…!!
 張り詰めた筋肉が、服の下で膨張し、凄まじいパワーを発揮します。
「ぬうううううううううう……」
「くぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……」
 ガゴッ!
 二人の足元でタイルがひび割れ、砕け散りました。全く互角の超パワーです。
 ナガセ2世がおもむろに、顔の前で手を交差させました。
「ファイト!」
「ぐおおおおおおおおっ!」
「でりゃあああああああっ!」
「クロスカウンターだっ!」
 観客の1人が思わず叫びます。目にも止まらぬ速さで繰出された拳は空中で交差
し、二人の顔面から同時に真っ赤な鮮血が飛び散りました。思わずよろめくのは、ほ
んの一瞬。
「はっ!」
「せいっ!」
 王子の回し蹴りとシンデレラの膝蹴りが激しくぶつかり、そしてその反動を利用し
て二人は間を広げました。
 タンッ!
 ヤナガワ王子は身軽に跳躍しました。思わず飛びのこうとしていたシンデレラの足
首を掴み、軽々と振り回すと壁に向かって投げつけました。
 が、そのままあっさり叩きつけられるシンデレラではありません。身軽に空中で身
を捻ると、足の裏から壁に着地します。頭の先まで達する衝撃を堪え、逆に壁を蹴っ
て王子に襲い掛かりました。
「甘いっ!」
 そんな単純な直線攻撃をむざむざ喰らう王子様ではありません。素早く飛びのくと
共に、最も反撃しやすい位置を狙います。
 しかし、それをシンデレラはちゃんと計算していました。シンデレラは着地と同時
に、足に履いていたガラスの靴をヤナガワ王子が移動するであろう位置に投げつけた
のです!どうでもいいですが、先程壁を蹴った際、よく壊れなかったものです。
「なっ!?」
 超音速で飛来するガラスの靴を辛うじて王子はかわしました。しかし、それは大き
な隙を生みます。殺到したシンデレラは、王子を捉えました。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオ
ラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオ
ラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオ
ラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオ
ラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
 拳の弾幕が雨あられと王子に降り注ぎます。が、このまま黙ってやられる王子では
ありません。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無
駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無
駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無
駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無
駄無駄無駄ッ!!!」
 負けじと電光のような拳を繰出します。お互い、防御を全く考えない凄惨な殴り合
いです。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」
 二人の攻防は全く互角に見えました。しかし。
「オラオラオラオラオラアアッ!」
「ぐはああっ!!」
 ほんの僅かな差でした。ですが、確かにシンデレラのパワーが勝っていたのです。
王子のボディーと顔面に、強烈な打撃が連続して叩き込まれ、大きく王子の体が泳ぎ
ます。
「オラアアアアアアアアアアッ!!」
 シンデレラの爆発的な蹴りが、王子の脇腹にヒット!まるでサッカーボールのよう
に宙を飛んだ王子の体は、観客の頭上を飛び越えて楽団の真っ只中に激突しました。
まるで爆発したように埃と楽器の破片が舞い散り、王子の姿はその中に消えました。
 ゴーーン…ゴーーン…
「ハッ!」
 勝利の高揚感に身を震わせる間も無く、12時の鐘が鳴りはじめます。さあ大変、
急いで戻らないとレンタル超過料を取られてしまいます。
「いい戦いだった。またやろう!」
 親指を立てて爽やかに言い放つと、シンデレラはスカートを巻くってあっという間
にホールから駆け出していきました。
「おっ、おのれ、シンデレラ…このままでは済まさんぞ…!」
 壊れた台と楽器の山から、案外元気にヤナガワ王子がひょっこり顔を出してきまし
た。手には御約束、ガラスの靴が握り締められています。
「ふ〜〜〜む…」
 ナガセ2世が、呆れたような感心したような声を漏らしました。
「今時、舞踏会と武闘会をひっかけるかね…?」
「「「「「「ハラホロヒレハレホレーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」」
 王様以外の全員が、あまりのくだらなさに思わず綺麗にずっこけてしまいました。

 **************

 その後、復讐に燃える王子様は残されたガラスの靴にピッタリと合う娘を探して国
中を歩き回りましたが、ついにシンデレラを見つけ出すことはできませんでした。た
だ、その後献身的に王子様の看護に務めたメイドについ手を出してしまい、タカユキ
と三人でそれなりに幸せな家庭を築いたそうです。

 ************

 魔法使いのガチャピンは、刻限には間に合ったものの激しいバトルでボロボロに
なった衣服を結局買い取るはめになったそうです。でも、お人よしの彼はそれなりに
シンデレラの役に立てたことに満足したそうです。
 少しは懲りろよ、なぁ?

 ************

 シンデレラはお城から逃げ出す時に暗がりの中を走って、誰かを思い切り蹴飛ばし
てしまいました。
「ああっ、耕一!助かったよーーーーーーーー!!」
「な、なにやってんだ梓?って…ああっ、かおりちゃん?」
 どうやらおもいきり後頭部を蹴飛ばしてしまったらしく、かおりは昔のアメリカン
コミックのように壁に大の字の穴を開けて、その向こうでピクピク痙攣していまし
た。
「ううっ、もう少しで犯られるとこだったよ〜奪われちゃうところだったよ〜」
 なんか、微妙に詳しい事情を聞いていいものやらどうかためらわれるピンチだった
ようです。とりあえず、目撃者がいないことをいい事に、二人はさっさとトンズラこ
きました。
 ですが、油断はできません。二人は家に帰ると家族と相談した末、結局総出でしば
らく外国でほとぼりが冷めるのを待つことにしました。一応、鶴来屋グループの業務
拡大も兼ねていましたが。
 ただ、この事件をきっかけにシンデレラと継母たちの間は徐々に修好が進み、また
新たな支部でシンデレラの意外な商才が発揮され、シンデレラも継母を助けて経営に
参加することになりました。
 彼女達家族の働きで鶴来屋はますます発展し、三国一の観光グループとして末永く
その存在は世の人々に親しまれたそうです。
 めでたし、めでたし。











 ……………ホントかオイ?





【後書き】
 何も申しません。勢いだけで書きました。
 元ネタは、フルメタルパニックの番外編シンデレラ・パニックです。
 え〜〜〜〜、これはあくまでエンターティメントでありますので、柏木四姉妹はこ
んなキャラじゃないやい!という苦情は送ってこないで下さい。重々承知してますか
ら、ハイ。


 ☆ コメント ☆ セリオ:「ううっ、良かったです。感動の嵐でした。……ジーン」(;;)カンルイ 綾香 :「そ、そっかなぁ?」(^ ^; セリオ:「これは、子々孫々にまで語り継ぐべきお話ですよ」(^0^) 綾香 :「……伝えない方が良いと思うんだけど」(^ ^; セリオ:「わたしもシンデレラみたいになりたいです」(^^) 綾香 :「………………正気?」(^ ^;;; セリオ:「素敵な王子様との壮絶なバトル。      まさに『乙女の夢』ですね」(*^^*) 綾香 :「イヤな夢だなぁ」(^ ^; セリオ:「最後はみんなが幸せ。最高です!」(^-^)v 綾香 :「幸せ、ねぇ」(^ ^; セリオ:「……………………」(^^) 綾香 :「……………………」(^ ^; セリオ:「……………………」(^^) 綾香 :「……………………」(^ ^; セリオ:「…………といったところで、リッピサービス終了です。      それじゃ、帰りましょう」(−−) 綾香 :「リップサービスだったんかい!?      ……………あんたって……けっこうドライね」(^ ^;;;;;



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