夢。
誰もが見るもの。朝日と共に終わるもの。
怖いもの、楽しいもの、変なもの、悲しいもの、色々なのが存在するもの。
これはそんな夢の一つ。とある男が見た短い夢。
 
 
 
 
 
 
チュン チュン チュン
 
窓の外で鳥が鳴いている。朝が来たらしい。
今は冬。とても寒い。布団から出たくない。しばらくすればマルチが起こしに
来るだろう。俺はそう思いながら寝返りをうった。
 
ゴツ
 
耳のあたりに何かあたった。なんだ?
俺はそれを手で触れてみた。何か金属製のとがった物が耳にくっついている。
 
「なんなんだよ、これ?」
 
俺は寒いながらも起き、眠い目を擦りながら洗面所に向かった。
 
「マルチの奴・・・・寝坊か?」
 
俺はそうつぶやきながら洗面所の所まで来た。鏡を覗いて見る。すると・・・
 
「・・・・・・・なんだよ、これ・・・」
 
鏡にはマルチについていた耳カバーを付けた俺が映っていた。
 
そう、俺はメイドロボになっていた・・・。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
浩之の見た夢
「俺の可愛いご主人様」
 
 
 
 
「マルチ、マルチ、マルチよーい」
 
俺はマルチを探した。マルチなら何かを知っているかもしれない。
そう思い俺が自分の部屋のところまで来ると、もそもそと布団が動いた。
 
「うるさいですね〜、なんなんですか朝っぱらからあ」
 
眠たげな目をこすりつつマルチが起きた。ていうか寝てる時に気付けよ、俺。
そしてその耳にはいつもの『あれ』はついてなかった。
 
「おい、マルチ、なんで俺の耳にはこれがついてて、
お前の耳には何も付いてないんだ?」
「はあ?何いってるですか〜?メイドロボのあなたに耳カバーがついてて、
人間の私についてないのは当然じゃないですか〜」
 
ガーン(古典的)
 
俺はその言葉を聞いて呆然となった。
俺がメイドロボ?んな馬鹿な・・・。大体男のメイドロボなんて聞いたこと無いぞ。
 
「マルチ!お前、人をおちょくるのもたいがいに・・・」
「こら、ヒロユキ!私のことは『ご主人様』と呼ぶですぅ〜」
 
ぺち ぺち
マルチがそう言いながら俺の頭を叩く。
『ご主人様』?まじで?しかも俺呼び捨てだし・・・
 
「あう〜、ところで朝御飯はできたんですかぁ?」
「え?いや、何も準備してないけど・・・」
「だったらとっとと準備する出すぅ。本当にお前はとろいですからぁ」
 
お前が言うなお前が。俺は心の中でつぶやいた。
・・・信じられんが俺は本当にメイドロボで、マルチが『ご主人様』らしい。
 
「わ、分かったよ、すぐ準備するから」
「急ぐですぅ。遅刻したらヒロユキのせいですからねぇ」
 
俺は速攻でトーストとウインナーを焼いた。
 
「うーん、今日は御飯が食べたかったのにですぅ」
「わがまま言わないでくれよ」
「しかたないです。これで我慢しますぅ」
 
ぶつくさ言いながらも全部平らげるマルチ。
 
「ふー、ごちそうさまですぅ」
「どうも、美味しかったか?」
「うむ、美味しかったですぅ。ご褒美になでなでしてあげますです」
 
おなかいっぱいになったら機嫌が良くなったのか、マルチはさっきとは
打って変わって俺を誉めてくれた。ころころと言ってることの変わる奴だ。
 
なでなで なでなで なでなで
 
俺はなんとも言えぬ気持ちになった。これが『なでなで』の力と言う奴か(笑)。
 
「よし、おしまい!後は帰ってからしてやるですぅ」
「どこに行くんだ?マルチ」
 
ぺち
またマルチが俺の頭を叩いた。
 
「ご主人様と呼ぶようにいったですぅ」
「えー、それだけは勘弁してくれよ。なんか恥ずかしくて」
「むぅー、仕方ないです。特別に許してやるです。こんなやさしいご主人様を持った
ことを感謝するがいいですぅ」
「へいへい、ありがとーごぜーますだ」
「分かればいいですぅ。私は学校に行ってきますからお留守番頼むです」
「了解」
「じゃ、お昼過ぎには帰ってきますからねー。変な人が来てもドア空けちゃ
だめですよー」
 
俺はガキかい。
 
マルチが去った後俺は掃除をはじめた。
普段自分の部屋の掃除すらしなかった俺がである。
 
「ふんふんふーん、ふんふんふん」
 
しかも鼻歌歌ってるし(爆)。
大きなモップを持ち家中を駆け巡る俺。自分でも『なにやってんだ・・・』とは
思っても体は言うことを聞かない。俺は家中を隅から隅まで掃除した。
 
「ぜえ、ぜえ。やっと終わった・・・。こんなに掃除したのは生まれて初めてだぞ」
 
俺が一息ついているとなんか目がチカチカしてきた。
どうやら電気が切れかけているらしい。
 
「えーと、充電充電っと」
 
俺は充電用のコンセントとノートパソコンを持ってきた。
 
「しかしどうすりゃいいんだ?」
 
そう。俺には充電の仕方がわからなかった。腕を触ってみるがそれらしいものは
見当たらない。だとしたらどこに・・・
 
「あっ、もしかしてここか?」
 
俺は俺の『穴』にコンセントを差し込んだ。すると・・・
 
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ
 
「ホゲゲゲゲゲゲゲゲゲ」
 
感電する俺。
やっぱり『鼻の穴』じゃなかったか。・・・漫画じゃねえんだし。
 
俺がこんがりと焼けていた所にとマルチが帰ってきた。
 
「ただいまですう・・・ってあれ?ヒロユキあなたなにやってるですかぁ?」
「・・・ケホッ。お帰り、マルチ」
 
俺はそう言ってぶっ倒れた。
 
 
 
 
 
「あう〜、やっぱりお前はボケボケさんですぅー。充電の仕方を忘れるメイドロボ
なんて聞いたことないですぅ。」
「・・・申し訳ございません」
 
俺は心の中でちょっとむかついたのを押さえつつ敬語で喋った。
・・・ったく人のこと言えるかっつーの。俺を居間まで運ぶのにに三度も落としやがって、
ボケボケはどっちだよ。あー、頭痛え。たんこぶできてるかも・・・
 
「さて、元気になったんならこれから買い物に行くので着いて来るですぅ」
「へいへい」
 
俺はマルチと買い物に出かけた。
なんかこの耳カバーして歩くのが気が引けたけど。
 
「よお、藤田さんとこのマルチちゃんにメイドロボのヒロユキじゃねーか。
今日は秋刀魚のいいのが入ってるぜ。どうだい?」
「はうー。じゃあそれ貰うですぅ」
「おや、マルチちゃんにヒロユキじゃないか。二人で買い物かい?
仲いいねえ」
「あうー(ぽっ)。ち、違うですぅ。こいつは単なる荷物持ちでそんな関係じゃ
ないですぅ」
 
そう言いながらも頬を赤く染めるマルチ。
どうやら俺とマルチの関係は周知の事実らしい。
 
「そうかい?まあいいけどね。大根のいいのがあるよ、持ってくかい?」
「お願いしますですー」
 
どうやら俺がメイドロボであるということに違和感はないらしい。
最初はマルチが俺を担いでるのかとも思ったいていたがその線は無くなった。
まあ、俺の知ってるマルチは嘘なんかつかないけど。
 
 
 
帰宅後俺は夕食の準備に取りかかった。今日の夕食は『ミートスパゲッティー』。
マルチが『今日はスパゲッティーが食べたいですぅ』と言ったからだ。
何ゆえ秋刀魚と大根を買ったのだろうか。てっきり秋刀魚の塩焼きかと・・・
 
ぺチ
 
またマルチが俺の頭を叩いた。
 
「なにボーっとしてるですかぁ、手を動かすですぅ。せっかく私が手伝ってるのに・・・」
 
マルチがなにやらブツブツ小言を言っている。だったら手伝わなきゃいいのに。
大体・・・
 
ガシャーーーーーン
 
「はわわわわ?お鍋を落っことしたですぅ」
 
・・・逆に仕事増やすんだよなぁ、マルチの奴。
まあこういう感じにマルチのおかげで見事に『ミート煎餅』(笑)は完成した。
 
「はうーーー、なんですかこれは―?」
「・・・・・・ミート煎餅」
「私は『ミートスパゲッティー』が食べたいっていったですのにぃ」
「その『食べたがってた人』のおかげでこんなになったんですが」
「は、はぅ!こ、弘法も川の流れのようにですぅー」
 
なんだその諺は。
 
「まあ、仕方ないからこれで我慢してやるです」
「そりゃどーも(怒)」
 
こうしてマルチはミート煎餅を平らげた。マルチ曰く、
「この焦げ具合が一級ですぅ」とのこと。言ってろ。
 
夕食後俺はテレビを見ていた。
そこに風呂上りで缶ビールを持ったマルチが現れた。
 
「ふぅー、やっぱり風呂上りはビールですぅ」
「おいちょっと待て、お前高校生だろ?普通はフルーツ牛乳・・・」
「うるさいですぅ、今の高校生はこれくらいは普通ですぅ」
 
マルチはそう言うと缶を開け腰に手を当てグイッと飲む。そして・・・
 
「うきゅう〜」
 
バタン
 
「だー、おい、しかっりしろ!!」
「ほにゃほねふにゃ」
 
なんかうわ言をいうマルチ。ったく飲めないなら飲むなよ・・・
 
 
 
 
 
 
「ったくなんでそんな無茶したんだよ・・・」
 
俺はマルチを部屋まで運び、ベットに寝かせで眠ってるマルチに問い掛けた。
 
「うにゅ〜、それはですねぇ」
 
マルチが寝ぼけながらも答えてきた。
 
「さっきの失敗を挽回しようと私の『ダンディー』なところを見せたかったからですぅ」
 
なるほどさっきの失敗を気にしてたらしい。でも何だよダンディーって。
 
「ったく、馬鹿だなお前」
「むー、馬鹿はヒロユキですぅ。とろくてボケボケでおっちょこちょいで・・・」
 
う゛っ
なんか痛いところ突きやがる・・・
 
「でもそんなところが・・・」
 
マルチは顔を半分布団に隠し頬を赤く染めながら・・・
 
「とってもとっても大好きですぅ」
 
と言った。
 
「マルチ・・・」
「エヘへ、オヤスミですぅ」
 
マルチは布団の中に引っ込み眠りについた。
 
 
マルチ。
こいつは我侭で乱暴者(?)で自分の方がドジなくせに人をドジ呼ばわりする奴。
でも俺はそんなこいつが・・・
 
「愛してるぜ、俺の可愛いご主人様」
 
そう言って俺は眠っているマルチの唇にそっとくちづけをした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・きさん」
「・・・ゆきさん」
「浩之さん!」
 
そばでマルチが俺を起こそうと懸命に体を揺すっている。
 
「う、う〜ん・・・」
「あっ、浩之さん起きましたか?」
「う〜ん、ご主人様?」
「はうっ?まだ寝ぼけてるんですかぁ〜」
 
そしてさらに体をゆさゆさするマルチ。てことは・・・
 
「やっぱり夢だったか・・・」
「はい?なんの話ですか」
「いーや、こっちの話だ。飯できてるか?」
「はい、今日は御飯にお味噌汁に秋刀魚の塩焼きです」
「秋刀魚・・・そうか、ハハハさすがだなマルチ」
 
俺は笑いながら答えた。
 
「はい?」
「だから気にすんなって。そうだ、マルチ、なんか俺にして欲しいことねえか?
今日は気分が言いからなんでも叶えてやるぞ」
「え、え、急に言われても・・・」
「いいから言ってみ」
 
うーんうーんと考えるマルチ。やがてなにかひらめいたらしい。
 
「『なでなで』お願いしますですー」
「結局それかい・・・」
「はぅー、だめですか?」
「ばーか、だめなわけねえだろ。今日は休みだから一日中なでなでしてやるよ」
「本当ですか?わーいです」
「ま、その前に飯とすっか。おっとマルチ、今日の夕御飯はミートスパゲッティ
が食いたいぞ」
「らじゃーです。今日の夕御飯はそうしますぅ」
 
 
 
 
 
夢。
誰もが見るもの。朝日と共に終わるもの
怖いもの、楽しいもの、変なもの、悲しいもの、色々なものが存在するもの。
これはそんな夢の一つ。とある男が見た短い夢。
 
END.
 
 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
ども、まおんです。
はじめて了承学園意外の物語を書いてみましたがいかがだったでしょうか。
この話、とにかくマルチがご主人様なので『偉そうなマルチ』を
書くのが大変だった(笑)。っつてもただ『ですぅ』がやたら多いだけかも(汗)
浩之の呼び捨てにも抵抗感じるし。やっぱりあのこは良い娘やなあ(謎)。
一応この話は『夢』という形なので祐介や耕一の話も考えていますが
書けるかどうやら(笑)。
まあこの話を楽しんでくれれば幸いです。
それでは。


 ☆ コメント ☆ アヤカ:「なんか、偉ぶっているマルチって違和感あるわねぇ」(^ ^; セリオ:「何を言ってるの、アヤカ? マルチさんはいつもあんな感じじゃない」 アヤカ:「へ? あ、あの……セリオ?」 アヤカ:「呼び捨てにするんじゃないわよ。ご主人様と呼べと何度言ったら分かるの?」 アヤカ:「え? え?」 セリオ:「まったく、物覚えの悪いメイドロボなんだから」(−−; アヤカ:「え? え? え?      め、メイドロボ!? あたしが!?」(@◇@) セリオ:「当たり前でしょ。いつまで呆けてるのよ」 アヤカ:「……………………ほえ〜?」(@◇@;;; セリオ:「本当にボケボケしてるんだから」(−−メ アヤカ:「あう。えっと……あの……ごめんなさい」(−−;;; セリオ:「『申し訳ありません、ご主人様』でしょ」(−−メ アヤカ:「…………も、申し訳ありません、ご、ご、ご主人様」(−−;;; セリオ:「いやよ。許してあげない」(−−メ アヤカ:「え?」(@◇@;;; セリオ:「だから……お仕置き」(−−メ アヤカ:「え? え? え?」(;;)  ・  ・  ・  ・  ・ 綾香 :「(ガバッ!)イヤーーー!! お仕置きはイヤーーー!!」(;;) あかり:「綾香さん!? どうしたの!? 綾香さん!?」 綾香 :「……………………ふにゅ? あ、あれ?」 あかり:「綾香さん? 大丈夫?」 綾香 :「……う、うん。大丈夫」 あかり:「なんか、ずいぶんとうなされてたけど……」 綾香 :「ちょっと、変な夢を見ちゃって……」(−−; セリオ:「変な夢、ですか?」 綾香 :「(ビクッ!)!!!!!!!!!!      イヤーーー!! セリオ、怖い〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!(ダッシュ!)」(;;) あかり:「………………ほえ? ど、どうしたんだろ、綾香さん?」(@◇@;;; セリオ:「………………さ、さあ?」(@◇@;;;



戻る