雫  アストラルバスターズ 〜最初はやっぱり自己紹介〜






部屋に入った僕は、多少緊張しながらこう言った。
   「本日付でアストラルバスターズの隊長に就きます、長瀬祐介といいます!!」



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「オイオイ、そんなこといわれなくても知ってるよ」
しかし…入った部屋には、男の人が一人いるだけだった。
しかも、その人は………。
「叔父さん!?」
そう、その男の人は、僕の叔父であり、先生、上司である長瀬源一郎だった。
「………他の人達は?」
自分でもわかるぐらいに顔を赤くして、僕は叔父さんに言った。
「ほかのヤツらは全員用事があって遅れるんだと。しかし、祐介……」
叔父さんはそこまで言って、顔を歪める。
ひどく、意地の悪い笑み。
「青春だな〜」
「…………忘れてください」
さらに顔を赤くして、僕はなんとか声を絞り出す。
「はっはっは。ま、気にするな。そんな事よりも、そこらに座ったらどうだ?
連中が来るまでまだ少しかかりそうだからな」
相変わらずにやけた笑みを浮かべて、叔父さんが言ってくる。
僕は憮然とした表情で、叔父さんの向かいのソファーに座る。
………ついさっきまでは緊張したりしてて気付かなかったけど、ずいぶんと豪華な部屋だ……。
そんなようなことを思いながら、辺りを見まわす。
なんて言うか、こぎれいな感じ。
ゆったりと広めに面積を取ってるし、パソコンが何台も置いてある。
観葉植物や、応接用のテーブル、今僕が座っているようなソファーもある。
その座りごこちからして、かなり高そうだ。
「どうした? きょろきょろしたりして」
僕があちこちを眺めていると、叔父さんが声をかけてきた。
「いや……すごく豪華な部屋だと思って…」
部屋のつくりに少し気圧される形で、僕は言った。
アストラルバスターズってどちらかというと研修のために組織されてるって聞いてから、この部屋のつ
くりには正直驚く。
「ま、そりゃそうだろうな」
そんな僕の内心を知ってか知らずか、こともなげに、叔父さんは続ける。
「なんせ、いくら金をつぎ込んでも自分の財布は痛まないからな。いや〜、経費様様だよ」
「お、叔父さん………」
こ、この人は……。
「税金を何に使ってるんですか!」
僕が若干大きな声で言うと、叔父さんは少し顔をしかめた。
「まぁまぁ、そう怒るな。まったく、そんな頑固な所は親父と変わらんな〜」
「そう言う問題じゃないでしょう!」
「良いじゃないか。俺達は安い給料で御国のために戦ってるんだ。
ちょっとぐらい経費を使ったところで罰はあたらんよ」
しれっと言う。
「……結構給金は良かったと思いますけど?
まだ見習いみたいな扱いの僕でも普通のサラリーマンの人達より良い給金貰ってますよ」
僕はじと目で叔父さんを見る。
「いやまぁ、人の価値観は個人個人だからなぁ………」
明らかに僕から視線をそらす叔父さん。
はぁ、コレ以上言っても意味無いかな。馬耳東風って感じがするし(見るからに)。
「そんなことより」
叔父さんは、視線を戻し、若干真面目な顔になって言う。
「どうだ? ナノマシンには慣れたか?」
その問いに、僕は苦笑しながら答える。
「慣れてなかったら、この部屋には入れませんよ」
アストラルバスターズ〜このチームの名前で、他のチームはまた別の名前がある〜は、基本的にナノマシ
ンによって強化された人間で構成されている。
強化された人間、というととかく酷い改造をされたという印象を持たれがちだが、実際はそんな事は無い。
現在の技術によって生み出されたナノマシンは、起動さえしなければその人間の体細胞と限りなく同化し
ている(もちろん、その技術は国家規模での機密になってはいるが)。
そのナノマシンは単純な肉体強化に加え、個人によって異なる特殊な才能を引き出す。
しかし。
「僕はまだ、能力を見つけてないんですよ」
嘆息しながら、僕は言う。
この能力を使いこなせるかどうかも、その本人の資質にかかわってくる。
あっという間に使いこなせるような人もいれば、なかなか感覚をつかめない人もいる。
僕はその後者だった。
「ま、それほど深刻に考える事も無いさ」
にやけた笑みを崩さず、叔父さんが言う。
「ナノマシンの拒絶反応も無いんだし、なによりここに配属されたんだ。
そのうち見つかるさ、お前の家事以外の才能もな」
「悪かったですね。家事以外に才能が無くて」
叔父さんの冗談に、憮然とした表情で僕は答える。
大体僕が家事をしなくちゃならなかったのは僕の両親と叔父さんに原因がある。
僕の両親も"こういう"仕事に就いているため、僕が本当に小さい時から外国に赴任していた。
そのため、物心つく前から叔父さんと暮らしていたんだけど…………。
叔父さんがまったく家事をしないのだ。
そのものぐささは、どこぞの学生をそのまま老けさせたみたい(ぎくっ)。
そう言うわけで、僕は小学生のころから家事を行ってきた。
そんな背景があるため、僕はある程度の事なら自分で出来る。
最も、高校に入ると同時に僕は一人暮しを始めたため、叔父さんの家事の面倒はもう見ていない。
付き合いきれない、というのが本音だけど。
僕がそんなようなことを考えていると。

  がちゃ

「こんにちは〜」
この部屋の扉を開けて、人が入ってきた。
「ん、こんちは」
叔父さんが視線をそちらに向けて挨拶するので、僕も視線をそちらに移す。
……かなり小柄な女の子だ。
癖の強い髪をショートカットにして、メガネをかけている。
少し気弱そうで、なんて言うか、守ってあげたくなる感じ。
と、僕がその女の子を見ていると……目が合った。
「あの……長瀬さん。こちらの方は……?」
しばらく僕を見て、その女の子は叔父さんに問い掛けた。
「ああ。そいつは今日から君達の隊長になる人だよ」
あっさりと答える叔父さん。
「え!? あ、そうなんですか?」
女の子は一瞬驚いたような表情を浮かべると、改めて、まじまじと僕を見た。
………僕ってそんなに隊長に見えないのかな……。
「…あ、そうでした!」
またしばらく僕を見ていた女の子は、はっとした顔をしてポン、と手を打った。
「確か…長瀬祐介さん…でしたよね?」
女の子は納得したような表情になると、その右手を自分の胸に当て、言う。
「私は、これから長瀬さんと一緒にお仕事をさせてもらいます、藍原瑞穂といいます。
よろしくお願いします」
そして、深深とお辞儀する。
「あ、こちらこそ」
つられて、僕もソファーから立ちあがって礼を返す。
と、部屋の外から、騒音が聞こえてきた。
その騒音は、一度この部屋の前を通りすぎて、他の部屋に向かったみたい。

  だだだだだだっ  きぃぃぃぃぃっっ   がちゃっ 

「あ、間違えました!!」

ばたん、と、勢いよく扉を閉める音が聞こえる。
そして、また騒音が近付いて来る。

  だだだだだだっ  きぃぃぃぃぃっっ   がちゃっ

「ど〜も!遅れましたぁっ!」
大声で、そう言って入ってきたのは、赤い髪を長く伸ばした女の子だった。
目が大きくて、すごく明るそう。なんか、猫をイメージしてしまう。
「ちょっとちょっと、部活のミーティングが長引いちゃって……ごめんなさい!」
パチン、とその場で手を合わせる。
少しオーバーなリアクションだけど、すごく違和感が無い。
「て、みずぴー。そこにいる男の子、誰?」
ようやく僕に気付いたのか、こちらを見ながら赤い髪の女の子は言う。
「あ、こちらは今日からアストラルバスターズの隊長になる、長瀬祐介さんです」
「ええっ! ………あ、そう言えば、昨日見た写真の人だ〜」
瑞穂ちゃんの説明を受けて、赤い髪の女の子はちょっと驚いたみたいだ。
………言われないと気付かれない、僕って……。
「私の名前は、新城沙織、よろしくね。タ・イ・チョ・ウ・さん♪」
笑いながらそう言って、ウインクしてくる。
なんて言うか、ころころと表情が変わる。
………かわいいかも。
不謹慎ながら、ついついそんな事を思ってしまう。
「ん、とりあえず、これで三人のうち二人がそろったな」
あごの不精髭をなでながら、叔父さんは言った。
「後残ってるのは……月島だけか」
「あ、司令〜。るりるりの事なんだけど」
突然ポン、と手を打つと、沙織ちゃんはそういって続ける。
「今日学校早退して、もう帰っちゃったらしいですよ?」
「はぁ? そうなのか?」
叔父さんにとってそれは初耳だったらしく、沙織ちゃんに聞き返す。
「うん。なんか、大事な用事があるって言ってたけど」
「ったく、新人の顔合わせだってのに…。まぁいい。んじゃ、今からミーティング始めるぞ〜」
そう言って、叔父さんは僕達にプリントを配り始めた………。



結局、そのミーティングは滞り無く終了した。
そのミーティングの内容を要約すると…………。
いわく、アストラルバスターズはやはり半分研修生のような人の、実習のために組織されている。
いわく、そのためそれほど危険度の高い仕事は回ってこない。
いわく、任期の設定は教官(この場合は叔父さんだ)に任されている。
いわく、授業中などでも問答無用で収集がかかるが、授業の単位はいくらでも貰える(再就職先に困ら
ないように、という配慮らしい)。
まぁ、これで僕の無事に高校を卒業できるか、という不安は解消された。
そして、ミーティングが終わって他の人が全員帰った後に、僕はまだこの部屋に残っている。
それは叔父さんが面倒ぐさがって、前任の人の任期が切れて、僕が引き継ぐまでの間のデスクワークを
ためてた事に理由がある。
叔父さんは気にしていないみたいだったけど、さすがにパソコンのメールボックスに大量の抗議のメー
ルがあると目覚めが悪い。
そんなこんなで、僕は今この部屋のパソコンに向かってるって言うわけ。
しかし……その仕事の多い事多い事。
………下手したら朝までかかるかな、これ。
一瞬、絶望的な考えが頭に浮かんだけど、なんとか打ち消す。
でも、こんな事なら好意に甘えて瑞穂ちゃんや沙織ちゃんに手伝ってもらえばよかったなぁ。
さっきはカッコつけちゃって、隊長の仕事だから一人でやるよ、とか言っちゃったし…。
…いかんいかん、弱気でどうする長瀬祐介!
そう思って、僕は自分の頬をパンパンとたたく。
それにしても、隊長って大変なんだな…今までは訓練しかしたこと無かったし、そう思って当然か…。
そんなようなことを思いつつ、ディスプレイを眺めること数時間。
「……目が痛い」
普段あまり使わない目を酷使した代償が一気に僕にのしかかってきた。
これだけやったのに、仕事の進行状況は……30%。

  開発まにあわせるん できんのじゃぁ〜

  開発まにあわせるん 延びるもんしゃあないやん

  発売日のばさんと無理やわ〜 もうにげよぉかなぁ〜

…………今聞こえた声は、一体…。
ひょっとして……神の声!?
…なんて馬鹿言ってる場合じゃない。
素直に休憩しよう。こんなんじゃ、能率もあがりそうに無いし。
そう思って、僕はイスから立ちあがって伸びをした。ついでに、首なんかもコキコキしたりする。
そして、僕は生徒会室から出た。廊下は既に真っ暗になってる。
まぁ、僕の腕時計も8を指してるし、当然だけど。
とりあえず、最寄の自販機の前に言って、カフェオレのボタンを押す。
出てきたパックにストローを刺し、それに口をつける。
しかし…夜の学校で、一人たたずんでカフェオレのパックを吸ってる男子生徒………。
想像するだけで、寒い。
せめて、夜の校舎にたたずんでいる、っていう状況だけでも消すため、僕は歩き出した。
なんていうか、暗いだけでいつも見慣れている教室までもが違って見えるから、不思議だ。
な〜んて、変な事に感心しながら歩くうち、僕はいつのまにか屋上への扉の前に来ていた。
そして、僕は何気なくそのひんやりとした鉄の扉を開ける。
…………っ。
春先とはいえ、夜特有の身を切るような冷たい風が吹きつけてくる。
そして、その冷たい風の中、女の子が、いた。


その女の子は、校庭の方を向いていた。
短めに切られた水色の髪が、風になびいている。
そして……ゆっくりと、僕のほうに、顔を、向ける。
透き通るような白い肌、整った顔立ち…でも、僕の目をひいたのは……。
焦点の合わない、彼女の瞳だった。
と、彼女はゆっくりと微笑んで、言った。
「こんにちは。私と同じ人。おそかったね」
……意味がわからない。
何を言っているのか聞こうと思って、僕が口を開こうとすると。
「ああ、まだわからないのかな? でも、いつかちゃんとわかるよ」
そこまで言うと、僕を無視するようにして、彼女は屋上の出口へと向かう。
「そうそう。忘れてたよ」
鉄の扉に手を掛けて、彼女は本当に今思い出したように言う。
「明日からよろしく、長瀬ちゃん」
「へ?」
今度こそ、僕は声を出す(気の抜けた声だけど)。
「ちょ、ちょっと。なんで僕の名前を?」
僕が慌てて聞くのにも構わず、彼女はその扉を開け、こう言った。
「月島瑠璃子…私も、アストラルバスターズに入っているからね。
それに、力が強いから、伝わってくるよ。私が何もしなくても、ね」
そして、彼女は後ろ手に扉を閉めた。
僕は呆然としながら、おもわずこんなような事を呟いていた。
「資料には、隊員は全員女の子だって書いてあったけど……変わった子達だなぁ…」



                                        引きます

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――〜後書き、というか反省会〜

どうも、キヅキです。なんとかかんとかアップしましたよアストラルバスターズ。
???「もっと早くアップする予定じゃなかったの?」
む、その声はこの反省会の司会兼、解説の太田さん。
太田「説明的なセリフをありがとう。そんな事より………なんか、全体的にネタ被ってない?」
ぎく。
太田「なぁ〜んか、エヴ●ネタがいっぱいって気がするし、ナノマシンなんか思いっきりアー●ズネタ
じゃないの」
ぎくぎく。
太田「………はぁ」
その溜め息はなんだよぉ(涙)。大体、友人Tと同じような事ばっかり言わ無くてもいいじゃない(泣)。
太田「まぁ、あんたの筆力が足りない事は前から知ってるけど…。
   でも、長瀬君がちょっと明るすぎない?」
う〜ん、むしろ、故意に明るく書いてます。
いくらなんでも、妄想癖が強すぎるとこのお話には合わないような気がしますし…。
太田「そりゃそうだけど…。あ、ひとつ聞いていい?」
答えられる範囲なら。
太田「あたしの出番は?」
無い(きっぱり)。
太田「(怒)」
嘘です嘘です。お願いだから消火器はやめてお願いします。
太田「んで? 本当はどうなの?」
とりあえず、基本的に後書きに…。
太田「あたしが聞きたいのは、本編の出番よ!」
企画中。とりあえず、この中のどれかになる予定です。

1、悪の大幹部  弐、一般ピーブル  V、アストラルバスターズの新入隊員  C長瀬君の初恋の人

太田「Cね(即決)」
もちろん、最有力候補は1ば……。
太田「(激怒)」
いややめてほんとに消火器はぁ〜!!!



 ☆ コメント ☆ セリオ:「なるほど。謎が解けました」(^^) 綾香 :「は? 謎って?」 セリオ:「綾香さんのことですよ」(^^) 綾香 :「あたしのことぉ!?」 セリオ:「そっかそっか。ナノマシンのせいだったのですね」(^^) 綾香 :「なんなのよ、いったい!?」 セリオ:「綾香さんの『ゴリラ並の馬鹿力』の理由に決まってるじゃないですか」(^^) 綾香 :「(げしげしげしっ!!)」(ーーメ セリオ:「あうあうあうっ!!」(☆☆) 綾香 :「失礼なこと言わないでよっ!!」凸(ーーメ セリオ:「あう〜。ホントのことじゃないですかぁ〜〜〜」(;;) 綾香 :「(げしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしっ!!)」(ーーメ セリオ:「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうっ!!      ……うう〜、ごめんなさい。ゴリラ並というのは訂正しますぅ〜」(;;) 綾香 :「……分かればよろしい」(ーーメ セリオ:「綾香さんの力はゴリラ並なんかじゃないです。      『恐竜並』です(ぼそっ)」(−o−) 綾香 :「…………ん!?」(ーーメ



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