Happy Xmas 綾香・・・・・・

Happy Xmas 浩之・・・・・・


12月
街はどこもかしこも赤と緑にデコレーションされ、夜ともなれば幾百もの電球でドレスアップされた木々が通りを
光で彩り、街角からは多くのクリスマスソングが流れるこの時期の休日。
街は、いつもとは比べ物にならない数の人手でにぎわっていた。
恋人たちに親子連れ、友人同士・・・・・・・・・・・・彼と彼女もそんな中の二人だった。



「セリオの話」第一話(?) 「セリオと綾香が笑う夜」
byたっきぃ


「それにしても、よくもまあこれだけ買ったものだよなぁ〜〜〜〜〜」
一日中買い物に付き合わされ、ようやく腰を落ち着けたスターバックスで、浩之は目の前の荷物の山に呆れていた。
「大体、グッズだけでも相当な数買ってないか?ツリーはまだ分かる。リースもな。しっかし、スノースプレーまで
買うとはなぁ・・・・・・・・何で『あんたが大将!』なんてタスキまであるんだ?!」
「ごめんねぇ〜、浩之。あそこに行くとついつい買い過ぎちゃうのよ。『あれもいいわね〜、あっこれもいいかも』って
感じで、目に付いたものがみんなよく見えちゃって、気がついたら、ね」
浩之に軽い口調で詫びると、綾香はキャラメルマキアートを一口飲んだ。
「それに、浩之だって結構ノってたじゃない。この部屋に飾るモール、浩之が買おうって言ってたのよ。それに、この
キャンドルも」
げほげほげほげほげほげほげほげほげほげほっ!
綾香の言葉に、カプチーノを飲んでいた浩之は思わずむせた。
「口じゃ何だかんだ言ってても、浩之だってクリスマスを楽しみにしてたんじゃないの、ふふふっ」
そう言うと、綾香は悪戯っ子が何かいいアイディアを思い浮かべた時のような笑みを浮かべた。
今の綾香は、完全に浩之をおもちゃにして楽しんでいる時の顔だった。
「あ〜〜〜〜〜、はいはい、その通りですよ、お・じょ・う・さ・ま。大体、ハンズでクリスマスグッズを買おうとしたら、
いくら俺でも関係ないものの一つや二つは買ってしまうって」
浩之は敵わないと思ったのか、開き直ってしまった。
「ふふふっ、そういう事にしといてあげるわ♪」
もっとも、綾香にあっさりとかわされてしまうのだが。まあ、いつものパターンといえばパターンである。
「それに、グッズもだけどプレゼントも結構買ってるしなぁ・・・・・・・・誰にあげるんだ?」
二人の周りには、ハンズ以外で買ったとおぼしき大小様々な形をした商品がいくつもあった。
さすがに綾香にはかなわないと思ったのか、浩之はそれらに話題を変える事にした。
「プレゼントはね・・・・・・・まずは姉さんに、これは絶対よね。それから両親にも。セバスチャンにはいつも世話になって
るから、感謝の意味もこめてと・・・・・」
綾香はそこで一旦区切ると目の前のカップに手を伸ばし、いくばくかぬるくなった液体を口に流し込んだ。
「・・・・・ふぅ。セバスチャンまでは言ったわよね?で、学校の友達とパーティーやるからその時に持っていく分でしょ。
そして最後が・・・・・・・・・セリオね」
「セリオにもか?」
綾香の言葉を遮るようにして浩之が尋ねた。
「勿論よ。セリオは私の一番の親友だもの。何もしてあげなかったらバチが当たるわ。それに、いつも迷惑かけてばかりだし」
「そっか・・・・・・親友か・・・・・セリオを来栖川家で引き取るよう最後まで頑張ったのってお前だもんな・・・」
浩之は自らを納得させるかのような口調で呟いた。
本来ならば、セリオはテスト期間終了後は研究所でデータを抜かれ、永遠に覚めない眠りにつく筈であった。
だが、その事を知った綾香が強硬に反対し、挙句の果てにはセリオを連れて自分の部屋に立てこもってしまったため、
テスト期間を無期限に変更すると、彼女をメイド兼綾香の友人という形で来栖川家で引き取るという結果に落ち着いたのである。
ちなみにマルチの方だが、こちらは現在あかりの家に引き取られて家事の勉強に励んでいるらしい。
適材適所というべきであろうが、何度教えてもスパゲッティがミートせんべいになってしまうとあかりは嘆いているとか。
閑話休題
「そうね。それに・・・・・あの娘は本当だったらクリスマスを知らないまま眠りに就くはずだったのよ。だから、あの娘
にはクリスマスを思いっきり味わせてあげるつもり♪」
「そうだな、そうするのが一番だよな・・・・・・・・・・・・って、ところで綾香さん?さっき『最後はセリオ』って言ってた
けど、俺へのプレゼントはどうなったんでしょうかねぇ〜〜〜?さっきからちょ〜〜〜っと気になってたんですけど」
「えっ?!あ、えーっと・・・・・それはその・・・・・・・・・ちょ、ちょっと言い忘れただけよ」
浩之の問いに対し、綾香は明らかに動揺していた。さらに浩之の追求が続く。
「お前の事だから色々と考えていてはくれるんだろうけど、先に言っておく。頭にリボンつけて『プレゼントはわ・た・し(はぁと)』
というのはナシだからな」
ぎっくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!
どうやら図星を突かれたらしく、綾香は真っ白になって固まってしまった。
「マジで考えてたのかよ・・・・・・・・・ふぅ、分かったから早く出ようぜ。まだ買い物が残ってるんだろ?
それから、プレゼントはお前自身でも構わないけど、何かしらひねりは加えてくれよな」
「え、えぇ。そ、そうするわ・・・・・・」
ショックが未だに覚めやらないのか、そう言うのが精一杯の綾香を連れ、浩之は店を後にした。
今日の買い物は、まだまだ先が長そうである。



「それにしても・・・・・・・・・・・・・これはいくら何でも買い過ぎじゃないのか、綾香?」
「それが分かってるから、こうやって私も荷物持ちやってるんじゃない・・・・・・・・・・」
その日の夕刻
空の色が、夕焼けの赤から夜の闇へと変わりつつある頃、二人は来栖川家への帰路を急いでいた。
二人の両手には、スターバックスを出た時以上の手提げ袋がぶら下がっていた。
無理もない。
なにしろ、あれから二人はロフトやソニープラザ、ティファニーやカルティエといった高級宝飾店、果てはキディランドにまで
行ったのだ(休憩する前は高島屋タイムズスクウェアを一回りしていた)。
こうなるとさすがに浩之一人では持ち切れるものではない。途中からは綾香も荷物を持ち始めたというわけである。
もっとも、彼女にはなるだけ軽い物やかさばらない物を持たせているのが、浩之らしいといえばらしいのだが。
「・・・よっと。ところで・・・・・・・・・セリオについてなんだけど、あいつ最近様子がおかしくないか?」
荷物を一旦持ち直した後再び歩き始めると、浩之は綾香に尋ねた。
「浩之も気が付いた?そうなのよねぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの娘、最近変なのよ」
「声をかけても反応がない時があるし、スパーリングの時だって丸っきりガードしてない時があるだろ?
軽いジャブぐらいだったら大した事ないけど、まともに蹴りが入ったら・・・・って考えたらこっちも思い切って行けないぜ。
セリオ、家じゃどうなんだ?」
浩之の問いに綾香はため息混じりに答えた。
「ふぅ・・・・・・・そっか、わたしん家でも似たようなものね。皿を落としただのバケツをひっくり返しただのなんて
最近はしょっちゅうだもの。セバスチャンもあきらめてるわ。何か心当たりはないの、浩之?」
「あったらこうやって綾香に聞いてないって。それに、研究所の方でも原因を調べてるんだろ?だったら、そっちの結果が出て
くるのを待つしかないぜ。研究所からは連絡が入るはずなんだろ?」
「多分そうなると思うわ。原因が分かったら浩之に連絡するわ。対策はその時に考えましょ」
「そうだな、今はそれしか手段がないしな・・・・・・・・・・・・・・・・」
いつしか無言になる二人。セリオが二人にとって親友や大事な仲間といった単なるメイドロボ以上の存在だからこそ、
心配せずにはいられないのである。
しばしの沈黙の後、それを嫌うかのように、浩之が口を開いた。
「話は変わるけど・・・・・・・・・・クリスマスのお前の予定ってどうなってるんだ?」
「クリスマスの予定?そうねぇ・・・・・・・23日は来栖川グループのパーティーがあるでしょ、24日は家族だけでの
パーティー、そして25日が学校でのパーティーといったところかしら?」
「じゃ、クリスマスは全て予約済みって事か・・・・・・・・・綾香と何とか一緒にいられたらなぁって思ったんだけど、
遅かったか・・・・・・・」
綾香の答えに、浩之はがっくりと肩を落とした。
「あ、でも・・・・・・・・24日ならパーティーの後は空いてるから、浩之の家に行けるかもしれないわ」
「本当なのか、綾香?!って、男の家に行くんだぜ。そんなことして親とかは平気なのか?!」
「大丈夫よ〜〜〜。私の両親、浩之の事気に入ってるのよ。会った事あるから知ってるでしょ?」
「まあ、確かにな」
「それに・・・・『早く孫の顔を見せてくれ』って最近うるさいのよ。だから、喜んで浩之の家に送り出すかもしれないわね♪」
「ま、孫だって?!な、な、何言ってんだよ!俺はそんなつもりでだな・・・・・」
「ふ〜〜〜ん、まあいいわ。そういう事にしておきましょ♪」
思わず焦りまくる浩之に対し、綾香は余裕たっぷりの態度を取っていた。。
「・・・・・・・しょうがねぇな、ったく。で、その時にセリオも連れてきてくれないか?」
「セリオを連れてくるって、二人っきりになりたかったんじゃなかったの?」
意外な浩之の言葉に、綾香は驚きの表情を隠せなかった。
「セリオ、最近あんな調子だろ?3人で楽しく盛り上がったら調子を取り戻すんじゃないかな・・・・・って思ってな」
「それなら勿論賛成よ。その日はセリオと二人で行くことにするわ」
そんな事を話しているうちに、いつの間にか来栖川家の前まで二人は来ていた。
「荷物は玄関まで持って行けばいいんだろ?」
「悪いわね、そこまでさせちゃって。荷物置いたらお茶でもご馳走するけど?それとも、時間が時間だから夕食食べていく?
浩之なら、父と母は大歓迎よ」
「だったらお言葉に甘えるとするか。だけど・・・・・いつ来ても俺が親父さんとお袋さんのおもちゃになってるように思えるの
は気のせいか?」
「気にしない気にしない。ほら、遠慮しないで入って入って〜」
「それじゃ、お邪魔します・・・・・・・っと」
綾香に促されるようにして、浩之は屋敷の中へと入っていった。
その後、彼は綾香と芹香、彼女達の両親と夕食を共にしたが、案の定、浩之は二人に綾香との関係を話のネタにされ、綾香共々赤面
しっぱなしの目に遭うのだが、それはまた別の機会にということで。



それから数日後の放課後、神社の境内
いつものようにエクストリーム部の練習を終え、一息ついていた浩之に綾香が近づいてきた。
「ん、どうした綾香?何か用か?」
浩之の問いかけに対し、綾香は何やら耳もとで話し始めた。
(小声で)「セリオの事なんだけど・・・・・・・原因が分かったって研究所から連絡があったのよ」
「・・・・・・・・・・・マジか?!」
思わず浩之は大声を上げてしまった。
「センパイ、どうかされたんですか?」
「浩之サン、ナニカアッタンデスカ?」
浩之の出した大声に反応し、何事かと葵とセリオが尋ねてきた。
「あ、ふ、二人とも何でもないんだぜ、は、はは、ははははは・・・」
「そ、そうよ、ちょっとした話だから心配しなくても大丈夫よ。葵、ストレッチが終わったら帰ってもいいわよ」
「あ、はい、分かりました、綾香さん」
「セリオも今日は先に帰っていいわ。私は浩之とこれから用事があるから」
「綾香サマ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、カシコマリマシタ」
二人は笑ってごまかすと、葵トセリオに先に帰るよう促した。
(小声)「声が大きいわよ、浩之!セリオに勘付かれたら元も子もないのよ」
(小声)「悪ぃ、綾香。で、原因が分かったんだって?一体何が原因なんだ?」
(小声)「ここじゃ二人がいるから、場所を買えて説明するわ。いいでしょ」
(小声)「ああ、いいぜ。場所は・・・・・・・・・・・・いつものマックはどうだ?」
(小声)「・・・・いいわ。二人が帰ったら移動するわよ」
「先輩と綾香さん、何を話してるんでしょうね?セリオさん」
「私ニモヨクワカリマセンガ・・・・・・・・・・・・・・・何カ大事ナ事ナノデショウ、オソラク」
小声で何やら話し続ける二人を、葵とセリオはただ遠くから眺めていることしか出来なかった。
だが、セリオだけはいつまでも二人の姿を目で追い続けていたのだった・・・・・・・・



30分後
商店街の中程にあるマックの2階、その奥まった席に浩之と綾香は腰を落ち着けた。
「綾香、セリオの方はどうだ?」
「真っ直ぐ家に帰ったみたいね。さっき電話したら、家に着いたみたいだし」
「そっか・・・・・・・・・・・・なら大丈夫だな。それじゃ、その原因とやらを教えてくれないか?」
安心したのか、浩之はストローに口をつけるとコーラを一口飲んだ。
「聞いて驚かないでよ、浩之・・・・・・・・・・セリオはね・・・・・・・・」
神社の時以上に声量も声のトーンも低くなる綾香。聞き取ろうとするため、勢い浩之も彼女と自分の顔を突き合わせる
格好にならざるを得ない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もったいぶらずに教えてくれよ。何なんだよ、原因ってのは?」
「・・・・・・・・それじゃ言うわ。セリオは・・・・・・・・・・・・・・セリオはね・・・・・・・・・・」
ゴクリ。
浩之は思わず息を呑んだ。
辺りが喧騒に包まれている中、一瞬の静寂が二人の間に広がる。
時間にしたら10秒も経っていないだろう。しかし、二人にとってはとてつもなく長く感じる時間が過ぎていく。
そんな静寂を破るように、綾香がようやく口を開いた。
「セリオは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・恋をしてるのよ」
「はぁ?」
思わず浩之は間抜けな返事を返してしまった。というよりも、それしか言えなかったのだ。
メイドロボが、それも“あの”セリオが恋だって?!
マルチなら分からない話でもない。感情プログラムと学習機能が搭載されているから、恋というものが何なのかを学習さえ
すれば、そういった感情を抱かないわけでもないだろう。
だけど、今の話はセリオが恋をしているというのだ。
サテライトサービスからデータをダウンロードすれば何でもこなせる、有能な美人秘書然とした、一言で言ってしまえば
“クールビューティ”な彼女が、恋?!
それに、彼女には感情プログラムが搭載されていないから、そんな感情は生まれてこないはずではないのか?
浩之の頭の中は混乱していた。だから、もう一回綾香に聞き直した。
「綾香・・・・・・・・・・・もう一回聞くけど、セリオが恋をしてるってのは・・・・・・・・・・本当か?」
「本当よ、浩之。何だったら・・・・・・・・・・・・・・・誰に恋をしてるか聞きたい?」
「ああ、聞きたいさ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・相手は一体誰なんだ?」
その瞬間、不吉な感情が浩之によぎった。まさか・・・・・・・・・・・・・・そんな事はないよな。
セリオに限ってそんな事は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あってたまるか!
だが、綾香の口から出た人物の名は、彼を絶望させるにふさわしい名前だった。
「セリオが恋してるのはね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・浩之、あなたよ」
最も聞きたくなかった名前。そう、自分の名前を聞いた瞬間、浩之はテーブルに突っ伏し、そのまま動けなくなってしまった・・・・



5分後
浩之はようやく立ち直ると、さっきより幾分薄くなったコーラを飲んでいた。
「それにしても・・・・・・・・・・何でセリオが恋を、それも俺にだなんて分かったんだ?」
「研究所で彼女のデータを解析したら分かったのよ。勿論、複数のデータを調べた結果だけどね」
一旦そこで言葉を区切ると、綾香は目の前のコーヒーに口をつけ、喉を潤した。
「話を続けるわ。セリオの電圧変化を示したデータで、著しく不安定になっている個所が幾つかあったのよ。そのデータ
単独だけでは、原因がまるで分からなかったらしいのよ。ただ、電圧が不安定になった時間を調べたら、彼女が部活に出
ていた時間にその現象が集中している事が分かったの」
「部活に出ていた時間?」
「そうよ。で、電圧が不安定になっている時に彼女が何を見たりしてるのかを知るために、映像データを調べたの。
そうしたら・・・・・・・・・・・」
「そうしたら・・・・・・・・・・・何だよ。何か言いにくいモノでも写ってたのか?」
綾香が話を途中で切ってしまったので、浩之は不安げに彼女に尋ねると、綾香はもう一回コーヒーに口をつけた後、話を
再び続けた。
「その時、彼女の映像データに残っていたのは・・・・・・・・・・・・私と浩之が仲良くしてるところだったのよ。
どうも、セリオは私に嫉妬してたらしいのよ・・・・」
「という事は・・・・・・・・嫉妬が原因で電圧が不安定になっていたという事か?」
「その可能性は非常に高いわね・・・・・・・・・・・・はあ〜〜〜っ」
そう綾香がつぶやくと、どちらからともなくお互いに深い溜息をついた。
「・・・・・・・・・・で、セリオが反応しなくなった原因ってのは分かったのか?」
「ええ、こっちは彼女のメモリの中身を調べたら分かったわ。彼女のメモリね・・・・・・・・・・殆どが浩之、あなた
に関しての情報で埋まってたのよ。つまり、浩之の事をずーーーーーーーーーーーーっと考えていて、他に頭が回らなく
なってしまっていたようね。」
「それじゃ、スパーリング中にガードをしなかったというのは?」
「今のと理屈は殆ど同じだわ。あの娘、浩之に見とれててスパーリングどころじゃなかったってわけなのよ。それで
ガードしてなかったようね。今のセリオは、文字通り『恋する女の子』状態だわ・・・・・・」
そこまで言い終わると、綾香は天井を見上げたまま固まってしまった。
「お、おい綾香・・・・・・まだ聞きたい事があるんだけど、大丈夫か?」
「な、何とかね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・聞きたい事って何?」
「いや、肝心な事を聞いてなかったからな。そもそも、何でセリオは俺の事を好きになったんだ?何かきっかけでも
あったのか?」
「そう言えば言ってなかったわね・・・・・・・いいわ、今から話すわ」
綾香はそう言うと、浩之の前に向き直って再び話し始めた。



綾香は再び話し始めた。
「私にも詳しい事は分からないけど、研究所の連中曰く『メイドロボとしてでなく一人の女の子として接していたから
ではないか』ですって」
「それってどういう事だ?」
「あの娘って、見かけはああだし感情プログラムが入ってないから、学校でも同級生じゃなくメイドロボとしてしかみなされて
ないようなのよ。私も現場は押さえてないけど、使い走り同然の扱いも受けてたようだし・・・・」
いつの間にか綾香の表情が厳しいものに変わっていった。親友が酷い扱いを受けている事が許せなかったのと、それを見抜く事が
出来なかった自分が許せない、そんな表情だった。
すっかり冷たくなってしまったコーヒーを飲みながら、彼女はさらに説明を続けた。
「そんな日々の中で、浩之からしたら何でもない一言かもしれないけど、『サンキュ』とか『いつも悪いな』とかいつも言われたら、
彼女の中で浩之が特別な存在になるのも無理ないかもしれないわね・・・・・・
実際、彼女のメモリから浩之に関するデータを抜き出してその内容を調べたら、『お礼を言われた』とか『作業を手伝ってくれた』
とかそんなものばかりだったみたいだし・・・・・・・・・・・・・・・」
「そっか・・・・・・・・・・・そういう事だったのか・・・・・・・それで、これからどうするんだ?」
綾香の説明を聞き終えた浩之が綾香に尋ねると、綾香は頭を抱えてしまった。
「私だって知りたいわよ!どうしてセリオが浩之の事を好きになっちゃったのよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「綾香・・・・」
「他の娘が浩之の事を好きになったらまだよかったのよ、遠慮なくつぶす事ができたから!
でも、相手はセリオなのよ・・・・・・・浩之の事は渡したくない。でも、あの娘を傷つける事は出来ない・・・・・・・・
どうすればいいのよ・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
自らの思いを吐露する綾香に、浩之はかける言葉が見つからなかった。
綾香はさらに続けた。その言葉は浩之の心に鋭く突き刺さるものだった。
いつの間にか、二人は真正面から向かい合っていた。空気が自然と緊張感に包まれていくのが分かる。
綾香が言葉を発した。
「・・・・・・・・・・・浩之はセリオの事をどう思ってるの?私とどっちが好きなの?」
「おい綾香・・・・・・・・」
「答えて、浩之。私とあの娘のどっちが好きなの!お願いだから答えてよ・・・・・・・・・・・・・」
正直な話、ここまで取り乱す綾香を見た事は今までなかった。
だからこそ、ここではぐらかしたりする事は決して許されない、そう浩之は確信していた。
浩之は言葉を選ぶようにして、話し始めた・・・・・・・・



「綾香・・・・・・・・・・・俺は、お前の事を愛してるぜ。お前を他の誰にも渡したくない、そう思ってる」
「浩之・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だけどな・・・・・・・・・俺にとってはセリオも大事な友達だ。その大事な友達が苦しんでるってのに、黙って
見過ごす事なんて俺には出来ねーよ。何とかしてあいつの気持ちに応えてやりたいんだけどな・・・・・・・・・・」
浩之はコーラの入った容器に手を伸ばし、ストローから中身を吸い出そうとしたが、いつの間に飲み終えてしまったのか
溶けた氷の味しかしなかった。
「空か・・・・・・・。正直な話、綾香とセリオのどちらか一方だけを取るっていう事は、俺には出来ねーな・・・・・
だったらいっその事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二人まとめて面倒みてやるよ。」
そう言い切った彼の目には、迷いはなかった。
「・・・・・・・・ふふっ、二人まとめて面倒をみるなんて・・・・・・・・・・・・・・浩之らしいわね
もっとも、浩之のことだからそう言うんじゃないかしらとは思ってたけど♪」
綾香の顔に再び笑みが浮かんでいた。浩之をからかって楽しんでいる時に浮かぶ、あの笑顔である。
「分かってたのかよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・だったら何で聞いたりしたんだよ?」
「不安だったのよ・・・・・・・・浩之の事、信じていないわけじゃなかったけど、やっぱり本人の口から聞くまでは
安心できなかったわ。だから聞いたのよ。
もし、私だけとかセリオだけとか言ってたら・・・・・・・・・・・・・・病院送りじゃ済まされなかったかもね♪」
たら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ
思わず浩之の額から冷や汗が流れ落ちた。
「何考えてるんだ、ったく・・・・・・・・・・まあ、これからはセリオがいるおかげで、どっかの口も出るけど手も足も
出るお嬢様をちったぁ扱いやすくなるかもな」
「ひ〜〜ろ〜〜ゆ〜〜き〜〜ぃ〜〜、それってどういう意味かしらぁ?」
「こういう意味に決まってるじゃないか?」
浩之の言葉に思わず立ち上がりかけてしまった綾香だったが、浩之がニヤリとしたのを見るとその勢いもどこかへ消え失せて
しまった。
「全く、しょうがないんだから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
呆れたように綾香は呟いたが、その表情にはさっきまでの深刻さは微塵もうかがえなかった。
いつしか、二人の間の空気もいつものものへと戻っていた。
「さてと、そろそろ出ようぜ、綾香。もうこんな時間だしな」
「あら、もうこんな時間じゃない。夜道の女性の一人歩きは危ないから送ってくれるわよね、浩之?♪」
店内の壁掛け時計に目を向けると、いつの間にか6時をとうに過ぎていた。
綾香の場合、門限は特に設けられていないが(あっても守られた試しがなかった)、それでも早く家に帰るに越したことはなかった。
「ったく、しょーがねーなー。お前の場合、襲った奴のほうに同情してしまうよ」
「んもう、そんな事ばっかり言ってるんだから。私だって、浩之と少しでも長く一緒にいたいんだから・・・・・」
「それは俺も同じだけどな。ま、とにかく出ようぜ」
そんな事を話しながら、二人はマックを後にし、来栖川家へと向かっていった。
いつの間にか空は闇に覆われ、西の空には宵の明星が、東の空には満月がぽっかりと浮かんでいた・・・・・・・・・・・・



「ところで浩之・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・セリオの事なんだけど、私にいい考えがあるの」
「いい考えだって?」
「そ。セリオの恋を実らせるいいアイディアがね♪」
商店街から来栖川家へ向かう途中、必ず通る事になる住宅街がある。この時間ともなると、あちこちの家の台所から
夕食の支度をしているのであろう、いい匂いが漂っていた。
路地には人通りはさほどなく、会社員や制服姿の学生が自宅へ帰るのであろう、時々すれ違う程度である。
その住宅街を3分の2ほど通ったあたりで、綾香が急に言い出したのである。
「24日だけど、私とセリオで浩之の家に行く事になってたわよね?セリオ、行くって言ってたわよ」
「それはいいんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・お前の両親とかは何も言ってなかったのか?」
「ぜ〜んぜん。『来年には初孫の顔を拝めるかもしれんな』って、反対するどころか喜んで行かせる気だわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんつー親だ・・・・・・・」
あんまりといえばあんまりな内容に頭痛がしてきたのか、浩之はこめかみを押さえた。
「で、その24日に浩之の家でセリオにプレゼントを渡そうと思ってるの。それを渡せば、あの娘の恋が実る事は間違いないわね」
「プレゼントって・・・・・・・・用意してただろ?もう一つ用意してたのか?」
「この前買ったのは、家で渡すのよ。浩之の家で渡すのは・・・・・・・・・・・・物じゃないの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・物じゃない??一体何なんだ??」
何が何だか分からないのか、浩之は頭に?マークをいくつも浮かべていた。
「教えてあげるわ。セリオに渡すのはね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なのよ(はぁと)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?もう一回言ってくれないか?
なんか今とんでもない事を聞いたような気がしたんだけど・・・・・・・・・」」
「もう一回言って欲しい?セリオに渡すプレゼントは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なの!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ?!」
「まぢです♪(ぶい)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(絶句)」
綾香から聞いたセリオへのプレゼントの内容に、浩之はその場で絶句したまま立ち尽くしてしまっていた。
「ひろゆき〜、どうしたの〜。生きてる〜〜〜?」
ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん
固まってしまった浩之の目の前で手を振り続ける綾香。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、ああ。な、何とかな・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しばらくすると、ようやく浩之は立ち直った。だが、未だショックから醒めやらずといった感じである。
「だけど綾香、そういったプレゼントって・・・・・・・・・・・・・立場が逆じゃないのか?普通は」
「ばっかね〜。立場が逆だろうと何だろうと、あの娘が本当に喜ぶプレゼントだったらそれに越した事はないじゃないの。
というわけで、当日は協力よろしくね〜♪」
そう言うと、綾香は一人で先に行ってしまった。
「お、おい綾香〜〜。ったく・・・・・・・・確かにセリオにピッタリかもしれないけど、あいつは一体何を考えてるんだ・・・・・?
って、お〜い、先に行くんじゃねーよ!送って行く意味がねーだろ!!」
綾香の説明に納得していた訳ではなかったが、彼女が先に行ってしまったため浩之は慌てて後を追った。
それにしても、綾香が用意したプレゼントとは一体何なのであろうか・・・・・・・?

12月24日PM9:30
自宅でのパーティーを終えた綾香とセリオは、藤田家の前に立っていた。
本当だったらもう少し早く着くところだったのだが、パーティーの片付けをやると言ってきかないセリオを連れ出すのに
時間がかかってしまったのだった。
綾香がぼやいた。
「全く・・・・・・・・・みんないいって言ってるのに、セリオはそういう所は頑固なのよねぇ」
「申シ訳アリマセンデシタ、綾香サマ。デスガ、メイドロボ本来ノ職務ヲ放棄スルワケニハマイリマセンデシタノデ・・・・・」
「・・・・・・・分かってるわよ、それ位。もっとも、そこがセリオらしい所でもあるのよね。気にしなくてもいいわ。
・・・・・・・・・・・・さ、中に入りましょ、セリオ。浩之がお待ちかねよ」
「ハイ、分カリマシタ。デハ・・・・・・・・・・・・失礼シマス」
綾香に促されるようにして、セリオは藤田家の玄関の扉を開き、中へと入っていった。
が、入ってすぐに彼女は異常に気付いた。
「綾香サマ・・・・・・・・・・・・・・・・・真ッ暗デスガ、誰モイラッシャラナイノデショウカ?」
そう、藤田家はどこも電気がついていない真っ暗な状態だったのである。
「浩之サンは・・・・・・・・・・・・・・・本当ニイラッシャルンデスカ?」
家の中の異常に訝しがるセリオ。だが綾香は違っていた。
「心配しなくても平気よ、セリオ。あなたへのプレゼントを用意するためにこうしてるの。見たらきっと喜ぶと思うわ」
「プレゼントデスカ・・・・・・・サッキ頂イタノトハマタ別ニマタ頂クトイウノハ、申シ訳ナイノデスガ・・・・・・・・」
「何遠慮してるのよっ♪・・・・・それに、このプレゼントがあなたが一番欲しかったものかもしれないのよ。
それじゃ、ちょっと眩しいかもしれないけど・・・・・・・・」
カチッ
「アッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
綾香が玄関の電気を付けると、それまで暗闇に慣れていたセリオの視界が白く覆われてしまった。
彼女のカメラが明るさを補正しきれていないからだ。
彼女に搭載されたセンサー類も、今はその役目を果たしているとは言い難い。
数秒後
ようやくカメラやセンサーが回復し、目の前の視界が広がったセリオの前に、見覚えのある人物が立っていた。
浩之だった。
「よっ、セリオ。よく来たな。それに綾香も」
「なんか私がついでのように聞こえるけど・・・・・・・・お招きありがと、浩之」
「浩之サン、オ招キアリガトウゴザイマス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
よく見ると、浩之の左手首には赤いリボンが結び付けられていた
「・・・・・・・・・・・・・セリオ。これがあなたが本当に欲しかったクリスマスプレゼントよ
「!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒ、浩之サンガデスカ?!」
綾香がセリオに用意したクリスマスプレゼントとは、浩之の事だったのである。
浩之も綾香の考えを見破っていたが、女性が男性に自分自身をプレゼントするというのはよくある話だ。
だが、逆のパターンはどうだろうか?それも、自分自身の意思ではなく恋人の意思によって他の女性へ自分が贈られるなんて
いうパターンは?
おそらく、誰も聞いた事がないはずである。
だから、綾香からこの考えを聞かされた時、浩之は驚き絶句したのである。
ちなみに、綾香曰く
「浩之に私の考えを読まれてしまったじゃない?だったら、何も知らないセリオだったらどうかな?って、そう考えたのよ」
とのことである。
綾香の話は続く。
「・・・・・・・・・・・あなた、浩之の事が好きなんでしょ。最近様子が変だったから、研究所に調べてもらったのよ」
「!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・綾香サマ、仰ッテイル事ガヨク分カリマセンガ」
綾香の言葉に一瞬反応したように見えたが、いつものように努めて冷静にセリオは答えた。
「誤魔化そうとしても無駄よ、セリオ。・・・・・・・・・・・・・あなたのデータ、全部見せてもらったもの。
あなたに最近ミスが多い事や声をかけても反応がない事は、浩之の事ばかり考えていたから。
電圧が極端に不安定だったのは・・・・・・・・・・・・・私に嫉妬していたからでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ソ、ソレハ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あなたの事を責めてるんじゃないのよ。・・・・正直言って、あなたが浩之の事を好きだと知った時は悩んだわ。
浩之に、私とあなたのどっちを取るか聞いたりもした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でもね、浩之はそんな私にこう言ってくれたのよ。
・・・・『二人まとめて面倒みてやるよ』って。
だから、このプレゼントを考えたってわけ♪で、セリオ。浩之の事はどう思ってるの?」
「私ニハ・・・・・・・好キとか愛シテイルトカイッタ事ハヨク分カリマセン。タダ・・・・・・気ガツクト浩之サンノ
事ガメモリノ大半ヲ占メルヨウニナッテイタ事ハ確カデス。
私ニトッテ・・・・・・・・・・・・浩之サンハソノヨウナ方デス」
「ふ〜ん・・・・・・・・・それじゃセリオは浩之の事が好きだ、そう思っていいのよね?」
「綾香サマ、ソウイウワケデハ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その時、それまで二人の会話を聞いていた浩之が口を開いた。
「・・・・・・・・・・・なあセリオ。俺には綾香は勿論だけど、お前もかけがえのない大事な存在だと思ってるんだぜ。
それに、綾香とセリオと俺の三人だからいつも一緒にいて楽しいんだよ。
誰か一人でも欠けるなんて、そんなの意味ねーよ」
「浩之サン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「遠慮しないで来いよ、セリオ。もう我慢する事はなんだからさ」
「デスガ・・・・・・・・・・・・・・・・」
ぽんっ
答えに迷っていたセリオの背を、誰かが押した。
とっとっとっ
セリオは2・3歩よろけるようにして前に出ると、浩之の胸の中へと飛び込む格好になってしまった。
「アッ・・・・・・綾香サマ・・・・・・ドウシテ・・・・・・・・・」
「全く・・・・・・・・・・・・・・・・本ッ当に頑固なんだから、セリオって。
さっさと素直にならないと、浩之は私が独り占めしちゃうわよ♪」
「ソ、ソンナ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
戸惑うセリオ。
そんな彼女に、浩之が優しく声をかけた。
「セリオ・・・・・・・・・・・・・・・・・今はまだ自分の気持ちが分からないかもしれない。だけど、そんなのはこれから
分かっていけばいい事だろ?今は自分の気持ちに正直になろうぜ、な?」
「浩之サン・・・・・・・・・アッ?!」
浩之がセリオを力強く抱き締めると、彼女は思わず声を出してしまった。
「これからは・・・・・・・・・・・・・・・・セリオも一緒だ・・・・・・・・・・・・・・いいな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ、浩之サン・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コレカラモ・・・・・ヨロシクオ願イシマス」
「セリオ、よかったわね〜。・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと妬けるけど」
浩之の胸の中で答えるセリオ。その傍らでは綾香が苦笑いしながらその様子を眺めていた。
「ん、綾香?お前もして欲しいのか?だったら来いよ」
そう言うと、浩之は綾香の手を引っ張って自分の胸の中に引き寄せてしまった。
「きゃっ!んもう浩之ったら・・・・・・・・でも・・・・・・いいわね、こういうのも♪」
浩之の胸の中で綾香が呟いた。
「そうだな・・・・・・・・・・・そういえば、遅れちまったけど、メリークリスマス!綾香、セリオ!」
「浩之・・・・・・・・・・・・・・・・そうね、今夜は楽しまなくっちゃね!何たって、イヴですもの♪」
「ソウデスネ・・・・・・・・・浩之サン、綾香サマ」
この瞬間から、浩之と綾香とセリオ、正真正銘3人による恋人たちのクリスマスが始まったのである。
その夜は、お互いの想いを確かめ合うように3人で朝まで愛し合ったらしいが、恋人達の愛の営みを詳しく描写するのは無粋の
極みなので、敢えて避ける事にする。

ともあれ、これからの3人に幸あらん事を。



Happy Xmas セリオ・・・・・・

Happy Xmas 浩之サン・・・・・


了


あとがき
ども、たっきぃです。
今回は、季節ものという事でクリスマスを題材に書いてみました。
さらに、日頃ボケとツッコミのイメージが強い綾香とセリオで、シリアス色を強めて書いてみました。
何しろ、了承の方でやり過ぎてしまいましたからね・・・・・・(^_^;)
その罪滅ぼしもあります。
これだけの長い作品を書いたのは初めてなんで、細かいところにアラ等はあると思いますが、
読んで頂けたら光栄です。

>「セリオの話」由来
今回の話を書いてるうちに、「マルチの話」を意識するようになってきたんです。
向こうはあかりとマルチ、こっちは綾香とセリオといった具合に人物構成も似てますし。
そこから、「セリオの話」という題名が思い浮かんだわけです。
勿論、くのうなおきさんには許可は頂いていますよ。
くのうさん、どうもありがとうございますm(__)m
第一話(?)なんて書いてありますが、年中行事と絡める機会があったらぼちぼちと書いていきたい
と思います。
ただ、今回みたいな長いのはカンベンですけど(^_^;)

>ネタばらし
今回のSSのタイトルは、ドリカムの「サンタと天使が笑う夜」をもじってつけました。
“笑う”とありますが、“幸せそうな二人”というイメージを頭に思い浮かべて使ってみました。
それから、最初と最後の“Happy Xmas〜”という台詞ですが、これはジョン・レノンの
“Happy Xmas(War is Over)”の最初の台詞からです。
題材がクリスマスなんで、その辺にもこだわってみたつもりです。

>反省
とにかく長過ぎましたね。
あと、書いてるうちにテンションが下がって描写や台詞が投げやりになってしまった面も
否めないです。
ほどほどの長さを心がけたいですね・・・・・・

>今後
お正月にバレンタインにホワイトデーと行事には事欠かないですからね。
スキー旅行というのも悪くないかな?
自分の首を絞めてどうすると言われそうですが(爆)

では、この辺で失礼します。
綾香、セリオ、あとはヨロシク!(^。^)



 ☆ コメント ☆ セリオ:「トッテモイイオ話デスネ。ワタシ、感動シテシマイマシタ」(^0^) 綾香 :「なんで、喋りがカタカナになってるのよ?」(^ ^; セリオ:「いえ。特に意味はないです。      ただ、ちょっとそういう気分だっただけです」(^^) 綾香 :「どんな気分よ」(^ ^; セリオ:「それはさておき。      やっぱりわたしには、クールビューティーという言葉がよく似合いますね」(^0^) 綾香 :「……そう……かなぁ?」(^ ^; セリオ:「この作品で、そのことが証明されました」(^0^) 綾香 :「う〜〜〜ん」(^ ^; セリオ:「もう、『ボケボケ』なんて言わせません」(^0^)/ 綾香 :「……それは無理だと思うけどなぁ」(^ ^; セリオ:「これからは、常にクールビューティーで行きます」(^^) 綾香 :「マジで?」(^ ^;;; セリオ:「はい。大マジです。      クールがビューしてティーしたりなんかしちゃったりします」(^^) 綾香 :「……………………」(−−; セリオ:「……あ、あれ? どうかしました?」(;^_^A 綾香 :「セリオはやっぱりセリオよね。ちょっとだけ安心したわ」(−−) セリオ:「…………へ?」(・・?



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