えいえんの中で…






見渡す限りの、白と青
視界の中には、海と空と……雲しかない
なぜここにいるのだろう
いつからここにいるのだろう
いったいここはどこなのだろう
そんなようなことを考えて、ぼくは苦笑した
別に考える必要も無い
ここは、終わった世界
ここは、閉ざされた世界
ここは、ぼくの世界
ここは…………

えいえん

だ




どのくらいこうしていたのだろう。

ここは、一日がとても曖昧だ。

日が暮れたかと思えばすぐ上り

突然夕日になったりする

そこには法則もなにも見出せない

ただ………長い時間が過ぎた



「さみしいの?」
目の前に、<彼女>が立っていた
「うん」
無気力に答える、ぼく
「わたしがいても?」
「うん」
ただそっけなく、返す





この、ただ流れていく悠久の時の中
ぼくは、ただ反芻していた
あの人との思い出を……
まるで、牧草を食べる牛のように
ただ、反芻していた





ぼくが、ここで唯一持っているモノ
それは、あの人との思い出……
あの人とのたったひとつの絆……
屋上……あの人と、初めて出会った場所
廊下……あの人と、偶然出会えたことに感謝した場所
食堂……あの人と、楽しい時間を過ごした場所
図書館……あの人の、恐怖を、強さを実感した場所
公園……ぼくが、消えた場所
決して比喩ではなく、手に取るように思い出せる
ぼくが、ぼくだと実感できる、思い出……
でも
なぜだろう
この思い出を持っていると























イタイ























「ねえ」
<彼女>が言う
「なに?」
「さみしいなら、つれてこようか?」
「いったいだれを?」
えいえんには……ぼくしか入れない
「あの人」
ここで、あるひとつの考えが浮かぶ
まさか……
「そう」
<彼女>は、笑いながら続ける
「あなたの、たいせつな人」
言うな!
そう思うが、声にならない
「川名みさき」























自分でも動揺しているのがわかる
「こ、ここにはぼくしか……」
「あの人はね」
<彼女>は、今までには無い、強い口調で言う
「あの人はね、別格なの。あなたと、とても強い絆で結ばれてる。あなたは、あの
人を思ってる。あの人も、あなたを思ってる。あなたがここに、えいえんにいるの
に、だよ……」
<彼女>がいつも浮かべている無邪気な笑顔は、いつのまにか消えている
「わたしじゃ埋められないあなたの孤独を、あの人は癒せるんだもん。すごいよ」
<彼女>が初めて見せる、悲しい表情
「わたしはね、もう見たくないだけなの。あなたが、あの人に支えられて、あの人
に苦しめられているところなんて…」
苦しめられる?
「苦しめられてなんか……」
「苦しめられてるの!」
<彼女>は突然大声を出して、続ける
「苦しめられてるの!わからないふりしたってだめだよ!?ここにいる限り、わた
しはあなたに限りなく近いんだよ!あなたの感情、思ってること、なんでもわたし
に伝わるんだよ!あの人との思い出はあなたを暖めてくれるけど、同時に、あなた
が感じている孤独をより引きたててもいるんだよ!」
なにも、言い返せない
「ねえ、本当に、どうするの?」
<彼女>は、今にも泣きそうに見える
「あなたとあの人との絆はとても強いよ。あたしとあなたの盟約にも劣らない。その
絆で、あなたのたいせつなあの人を、ここに引きこむこともできるよ。ここで、え
いえんにあの人といられるよ。」
<彼女>はそこまで一息で言うと、こちらに背を向けた
甘美な誘惑
あの人と、ずっといっしょにいられる……
でも……
「やっぱり、忘れられてしまうの?あの人も……」
「それは、さけようがないよ……」
背を向けた<彼女>の表情は、読み取れなかった






「―――」
ぼくは、はっきりと言った
不思議と、迷いは無かった
いや、考える必要さえないことだ
「え?……」
しかし、その答えは、<少女>にとっては意外だったみたいだ
「なんで……。どうして……?つらいんじゃないの?寂しいんじゃないの?……
どうして、いやなんて言うの!?」
勢いよくこちらに振り向く
<少女>は、もうほとんど泣いている
「寂しいよ、ぼくは」
自分に言い聞かせるように、言う
「寂しいよ。会いたいよ……。でも、この寂しさを、あの人にまで味あわせたくない
んだよ。自分を忘れられることのつらさを、味わせたくないんだよ。あの人はぼくの
たいせつな人、だからこそ、ぼくのわがままに付き合わせるわけには行かないんだよ」
「でも、あの人も会いたいんじゃないの?あなたと。あなたのことを忘れずに、絆を保
っているのは、あなたに会うためなんじゃないの?あの人は、あなたが一番好きなん
でしょう?」
「そうかもしれない」
いや、違う
「確実に、そうだと思う。」
今なら、確信できる
でも、
「でもね。代償が大きすぎるんだよ。あの人の両親、親友、クラスメイト……まだまだ
いるよ。そんなたくさんの、大事な人に忘れられるっていう代償はとても大きいんだ
よ。そんなたくさんの人をあの人から奪ってここに連れてきて、僕はあの人に、どう
接すればいいの?僕はあの人に、どんな顔をすればいいの?結局は僕だけの満足……
いや、あの人への罪悪感が生まれるから、僕も満足できないか。…結局、意味なんて
無いんだよ……」
「なんで、なんでそこまであの人を想うの……。いいじゃないわがままで!あの人に会
えば、罪悪感なんか関係無く、絶対にあなたは……あなたは……」
「ぼくは、いいんだ」
ぼくは<少女>に近づくと、もう涙でくしゃくしゃになっている顔を抱きかかえた
「ぼくには、盟約がある。だから、きみといっしょにいる。えいえんに…」
わずかな沈黙のあと、<少女>は呟いた
「ううん、だめなの」
そう言うと、<少女>はぼくから離れた。
「この世界、えいえんは、もう壊れるの…」
「え?」
いきなり沸き起こる、奇妙な感覚
「えいえんはね、世界を創った人だけの世界なの。ただし、絆がまったく無い人だけの
…ね。たったひとつでも、絆を持っていると、その絆を持っている人の絆によってほ
かの人とつながる。そして、人はその世界に存在できるの。絆は、錨みたいなものな
んだよ。世界という海で安定するための…。でも、人はひとつの世界にしか存在でき
ない。だから、えいえんに入るために、あなたは忘れられていったの」
あの時と、同じ感覚
「あの人との絆、ずっとつながってたよね?それは、向こうの世界とあなたのえいえ
ん、両方に存在していることと同じなんだよ。そして、えいえんは向こうの世界より
ずっと弱いの。あなただけの世界だから…。だから、もう限界なんだよ…」
自分の存在が希薄になっていくような…
「ごめんね…私、あなたが会いたそうだから、あの人をここに連れてこようとしたんじ
ゃないんだよ。この、あなたの世界…えいえんを少しでも長持ちさせようと思って
言ったんだよ…。あれだけ強い絆で結ばれているのなら、あなたのえいえんに入って
も大丈夫だと思ったから。あなたとの唯一の絆を持っていたあの人だから…。最後に
うそ、ついちゃったね…。ごめんね…。」
発したはずの声が出ない
「少しの間だったけど、あなたと一緒で、楽しかったよ、うれしかったよ」
青と白、たった二色だけで構成された風景が遠ざかっていく
「それじゃあ、ばいばい」
<少女>の顔が遠くなっていく、涙にぬれた<少女>の顔が…








「こうへい」









光に、包まれて…





俺は、この世界に帰ってきた。

あちらで、ずっと、ずっと待ち焦がれていた世界。

でも、俺の頬は……なんだか、冷たかった。











   <あとがき、というか独白>
 ども、キヅキです〜。
白状しますと…実はこのSS、結構前に、実験的に書いたのをウチのPCにほ
っぽいてあったヤツなんです。しかし……試験が終わった今日、先日買った
Oneのドラマアルバムの封印を解いたんです。聞いた結果……撃沈(爆)。
本編をやってない人には理解不能なシナリオでしたけど、やっぱりいいです、
One。じーんときます。と言う訳(どう言う訳?)でこのSSを持ち出し
て、少し手直しして見ました。
…かなり荒い、ヘボイSSですが、お付き合い頂き、ありがとうございましたっ!




 ☆ コメント ☆ 綾香 :「絆の強さだったら、あたしとセリオも負けてないわよ」(^^) セリオ:「はいです」(^0^) 綾香 :「何があっても、あたしたちの絆は切れないと断言できるわ」(^^) セリオ:「はい!」(^0^) 綾香 :「例えば、ボケに対するツッコミで……」(^^) セリオ:「ツッコミで?」(・・? 綾香 :「つい、勢い余ってしまって、本気で裏拳を入れてしまったとしても、      あたしたちの絆は切れないわ」(^^) セリオ:「……も、もちろんですとも……はい」(^ ^;;; 綾香 :「例え、あたしが、セリオが大事にしているフィギュアを壊してしまったとしても、      あたしたちの絆は切れたりしないわ」(^^) セリオ:「そ、そ、そうですね。      ……ちなみに、わたしが、綾香さんが楽しみに取っておいたケーキを食べてしまったとしても、      それでも、わたしたちの絆は切れません」(^ ^メ 綾香 :「そ、その通りよ(あのケーキを食べたの、やっぱりあなただったのね!?)」(^^メ セリオ:「ええ。その通りですね(あのフィギュアを壊したの、やっぱり……)」(^^メ 綾香 :「あたしたち、本当に強い絆で結ばれてるものね♪      (あとでじっくりとお話ししましょうね、セリオちゃん♪)」(^^メ セリオ:「はい。わたしたちは、強い絆で結ばれています♪      (望むところです、綾香さん♪)」(^^メ 綾香 :「ふふふふふ」(^^メ セリオ:「ふふふふふ」(^^メ 浩之 :「…………。      お前ら、実は何気に仲悪いのか?」(^ ^;;;



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