2000TYPE−MOON 『月姫』

「秋葉ちゃんの社会実習」
  その5 「トラブルデート・本格戦


 

出掛けてすぐにトラブルがあったが、やっと始まった志貴と秋葉のデート
秋葉も初めのトラブルで不機嫌だったが、有間啓子との出会い・優しさに触れた事に
気を良くした気持ちでデートを楽しむ事ができる

「兄さん、予定通りに服を買いに行くのですか?」

「いや、秋葉が制服を着たままというのが変だったから、先に服を買いに行こうとしただけだよ。
取り合えず着替えたし、先に買うと荷物になるから映画を見に行こう」

「はい」

志貴の提案により映画館に行く事になった
そんな2人の後ろに一匹の黒い猫・・・

 

(アルクェイドさま。 志貴さまは映画館に向かうようです)

(ええ、こっちでもわかっているわ。 そのまま2人を追うのよ)

(わかりました)

琥珀からの指示が無い為、レンに追跡を任せるアルクェイド
ふと、琥珀の方を見ると難しい顔をしていた

「ねぇ、琥珀。 レンに何かしなくていいの?」

「・・・ええ。 今の所は結構です」

アルクェイドの質問に気落ちした声で答えた
琥珀にとって先程の作戦(その3)がメインだったのだ
志貴に秋葉をデートに誘うように提案をしたのも、
遠回しに自分たちも誘ってほしいという意味を込めていたのだが、
鈍い志貴は全く気付かなかった
その為に志貴が誘ってくれる状況にしようと考えたのである
志貴にとって頼りになるのは自分だと自負していた
だから、あの状況なら自分に連絡が来ると疑っていなかった
しかし、現実は有間啓子に連絡された
このことが琥珀にとってショックを受けていた

「姉さん・・・」

翡翠も姉の考えがわかったが、この事実に多少ショックを受けていた

「やっぱり、このままでは晶さんの言う通りになってしまいますね・・・」

現状を整理してもレンが加わった以外には、晶の未来視に直進である

「もう、我慢できません!!  アーパー吸血鬼の使い魔に任せていられません!!
私が遠野君を取り返しに行きます!!」

デートを止めるのではなく、奪いに行くという少しずれた考えのシエル

「だめですよ、シエルさん」

「・・・」

ドアを防ぐように琥珀と翡翠がシエルを止める

「どうしてですか!? 貴方達はこのまま2人がキスをしてもいいのですか!?」

「いいえ、そういう訳ではありません」

「私達にとって、秋葉さまも大切な方なんですよ」

今でこそ幸せだが、8年前から遠野家の苦しみを3人で耐えてきた
秋葉が2人を大切に思うように、2人に取っても秋葉は大切なのだ
まぁ、この3人の絆は志貴が関わると切れたりする事もある・・・(秋葉VS翡翠・琥珀)
今回のデートは秋葉を喜ばせたいという気持ちもあり、琥珀が提案したのだ
真意は先程の通りだが・・・

「今は引いてください、シエルさま」

「そういう時の為にレンちゃんがいるですから」

「・・・」

2人の心境を少なくとも感じ取ったシエルは、しぶしぶテレビの前に戻って行く
そんな会話がされているとは全く知らない志貴と秋葉はデートをしていた

 

―映画館―

映画館に着いた2人だが少し時間があった為、パンフレットを買って見ていた

「に、兄さん・・・ この映画って・・・」

「ああ、最近話題のSF映画だよ」

少し気落ちした声で聞く秋葉に、明るく答える志貴
秋葉は、てっきり恋愛物を期待していたのだ
しかし志貴は、世間で話題になっていて3DCGを使っているこのSF映画が、
秋葉にとって良いと思い選んだ
ちなみにこの映画の提案者は琥珀である・・・

「そうですか・・・」

「そろそろ時間だから行くよ」

秋葉の心境に気付く事なく、志貴は秋葉を連れて中に入っていった
最初は気に乗らなかったが、テレビも見ていない秋葉は圧倒され最後まで食い入るように見ていた
志貴と秋葉の後ろの席に人型状態のレンも映画を見ていた
どうやら彼女も最近の映画を見ていなかったようだ
だが、小さいレンでは志貴の後ろの席はスクリーンが見にくかった
レンはちょっぴり志貴を恨んだ

 

―昼食―

昼過ぎになった為、昼食にする事になり某ハンバーガー店に来ていた

「秋葉は何にする?」

「・・・兄さんにお任せします」

志貴が注文を済ませ、秋葉に聞くとこんな答えが返ってきた
ハンバーガーはもちろん秋葉は知っていたが、多数な種類を見ると分らなくなってしまった
一瞬、志貴と同じメニューにしようと思ったが量が多すぎた為却下

「そう? それじゃぁ・・・ これをお願いします」

「はい、ありがとうございます」

店員から注文したハンバーガーを受け取り席に着いた
志貴が食べていたが、何も手を付けずじーっと志貴を見ている秋葉に声を掛けた

「秋葉? 食べないの?」

「いいえ、そういう訳ではありませんが・・・」

周りをきょろきょろと見る秋葉に志貴は原因がわかった

「秋葉、ここではマナーなんて最低限の事を守れば気にしないんだよ。 
別に手で食べてもいいし、見られていてもいいんだよ」

「しかし・・・」

マナーを大事にしている秋葉にとって、今の現状に多少のカルチャーショックを受けていた

「取り合えず、今日の目的は秋葉に世間を知ってもらおう事なんだから、ちゃんと食べなよ」

「わ、わかりました・・・」

ハンバーガーを両手に持って睨んでいたが、再度周りを見ると意を決して食べ始めた

「どうかな?」

「・・・・・・」

顔を真っ赤になりながら黙々と食べている秋葉に、志貴は苦笑しながら自分の分を食べ始めた
そんな2人をレンは猫型状態で外で見ていた・・・

 

「・・・・・・(怒)」

どうやら2人が良いムードなのが許せないようだ
だが・・・

きゅるる・・・

「・・・・・・(恥)」

食事を見ていると少しおなかが空いたようだ
映画館は猫型状態になり忍び込みただ見だったが、
食べ物はそういう訳にはいかず我慢する事にした

 

「兄さん。 そろそろ行きましょうか?」

「そうだな」

2人が席を立ち出て行こうとしたが・・・

「秋葉。 ちょっと、待ってくれ」

「え、ええ」

出口で志貴に言われ外で待つ秋葉
その志貴はレジでハンバーガーを1つ買ってきた

「おまたせ」

「にいさん、まだ食べるのですか?」

「いいや、違うよ」

そのまま歩いていく志貴を慌てて追い駆ける秋葉
どうやらレン(猫状態)の所に行くようだ
本来は志貴に見つかってはいけないのだが、レンは動かなかった

「にゃあ?(志貴さま?)」

「お腹が減っているんだろ? 遠慮せずに食べな」

レンは志貴の顔と目の前に置かれたハンバーガーを交互に見ると・・・

「にゃにゃ!(志貴さま、ありがとうございます!)」

ちょこんと頭を下げると食べ始めた

「礼するなんて賢いな、お前」

そう言いながら膝を曲げて猫(レン)の頭をなでる志貴
そこで追いついた秋葉がその光景を見ると苦笑を1つ

「こういう事でしたのね」

「ああ、俺達が食べている時から見ていたからな。
ほっとけなくてさ」

「ふふ、そういう所がやっぱり兄さんですね」

秋葉もその猫を見ると何か嫌な感覚がした

(何? この感覚は?)

志貴が猫(レン)の頭を撫でるのを見ながら考えている

(そう、あの未確認生物やカレーマニアに会った時と同じ感覚・・・)

秋葉のその感覚は当たっていた
レンも志貴を狙う1人なのだから・・・

「兄さん、そろそろ行きましょう」

先程の店を出る時にも言ったセリフだが、問い掛けでなく断言だった

「そうだな。 猫も食べ終わった様だし」

確か猫(レン)は食べ終わっていた

「にゃあーー(しきさまーー(はーと))」

レンは志貴の膝に手を掛けて頬を舐めた

「ははは、くすぐったいよ」

嬉しそうに言い猫(レン)のあごの下をごろごろしていた
その光景を見せられた秋葉は・・・

「に・い・さ・ん!!」

志貴の腕を持ち上げ無理やり引っ張って行く

「な、なんだよ、秋葉?」

「い・い・か・ら!!」

その状態のまま歩いていく2人をレンは秋葉を睨みながら、
気付かれないように付いて行った

 

一方、屋敷では・・・

「さすが志貴さん。 お優しいですねー」

「そうですね」

「そういう所がやっぱり志貴さんですね」

志貴の行動に翡翠・琥珀・晶は、改めて志貴の優しさを知った
だが、今の優しさに向いているのはレンなのだ
志貴の優しさとレンに対する嫉妬で複雑な心境だった
後の2人は・・・

「むぅーーーー」

「むすぅーーー」

ひたすらレンに嫉妬していた・・・
しかもアルクェイドはレンの喜びがストレートに流れてきている為、拍車をかけていた

 

―デパートへの通り道―

最後に秋葉の服を買いに行こうと、デパートに向かっている途中でちょっとしたトラブル発生

「・・・・・・・・・ーん」

「? 何か言ったか、秋葉?」

「いいえ」

何か聞こえた志貴だったが・・・

ずどどどどどどどど・・・

「何!? この地響き!?」

「こ、これは・・・」

『何か』が迫ってくる音に混乱する秋葉
逆に志貴は少しの呆れらめが入っている声で後ろを振り向いた

「志貴にいちゃ――――ん!!」

ずどっ!!

その『何か』は志貴にタックルをかました

「やっぱり都古か」

「へへ、久しぶりだね! 志貴兄ちゃん!!」

「そうだね。 それにしても相変わらずのタックルだね・・・」

「うん!」

その『何か』は有間啓子の娘、有間都古である

「ねぇ志貴兄ちゃん、この人誰?」

と秋葉を指差す都古

「俺の妹の秋葉だよ」

「よろしくね、都古ちゃん」

「うん! 秋葉お姉ちゃん!」

早くも馴染んでいる秋葉と都古
そんな2人を笑顔で見ている志貴

「志貴兄ちゃん。 お母さんには会ったの?」

「ああ、さっき会ったよ」

経緯を説明しても良かったが、話すのも秋葉に悪いと思い話さなかった

「それでね・・・」

「なあ、都古。 友達と一緒に来てるんだろ?
いいのか?」

「あ、忘れてた・・・」

「おっちょこちょいな奴だな」

「だって、久しぶりに志貴兄ちゃんに会ったんだよ」

「これからはおばさんの家にも遊びに行くから。
とりあえず友達の所に戻りな」

「うん! 絶対だよ! 秋葉お姉ちゃん、またね!」

「ええ。 また会いましょう」

手を振りながら走っていく都古に、手を振り返している志貴と秋葉

「都古ちゃん、元気な子ですね」

「そうだろ。 まだ小学生だからな。 ちょうどいいさ」

都古が去った後を向きながらポツリと言った

「それじゃ、俺たちも行くか?」

「ええ」

そのまま2人はデパートに向かった
この時、レンは都古のタックルの余波で道の端で気絶していた・・・

 

―デパート・服売り場―

「兄さん、これはどうでしょう?」

「そうだな・・・ いいんじゃないか」

秋葉は目についた服を一つ一つ志貴に意見を求めたが・・・

「さっきから同じ返事ですね、兄さん」

腕を組みジト目で志貴を睨む秋葉

「俺に言われても分るわけないだろ」

「別に詳しくなくていいですから、率直な意見を言ってくだされば結構です」

志貴はデート自体初めてなので、そんな意見を求められても困るだけである
それでも志貴なりに必死に意見を述べ、3着に絞る事が出来た

「これ以上は着てみなくてはわかりませんね」

「あそこに着替え室があるから着替えておいで」

がしっ

志貴が場所を教え出て行こうとすると秋葉に手を掴まれた

「に、兄さん。 まさかあんな所で着替えろとおっしゃるつもりですか」

「あ、ああ。 そうだけど・・・」

「嫌です!! あんなカーテン1枚では覗かれるじゃないですか!!」

「大丈夫だよ。 ここは婦人服コーナーだから女の人しか居ないし、場所的にも見えないようになってるだろ」

そう、実際志貴は先程から居心地の悪さを耐えて秋葉に付き合っていた
正直に言えば今すぐに出て行きたいのだ
だが、いくら志貴が説得してもこればかりは秋葉は聞こうとしなかった

「じゃ、どうすればいいんだよ」

少し投げやり口調で聞く志貴に、秋葉は残酷な答えを出した

「せめて、私が着替え終わるまで見張ってください」

「ええっ!?」

「・・・・・・・だめですか?」

珍しくシュンとなる秋葉に志貴あっさり折れる

「わ、わかったから。 その代わり早く決めてくれよ」

「ええ。 ありがとうございます、兄さん」

結局待つことになった志貴
志貴は早く終わる事を願ったが、20分くらい待つことになる
それでも、服が決まり嬉しそうな妹を見ると・・・

(ま、いいか)

と結論付けた
この近くではレンも服を見ていたが、
気にいった服で志貴と一緒にいる妄想をしていた

 

―デパート・喫茶店―

行く所も行った為、休憩を取る事になった

「お疲れさまでした、兄さん」

「いや、そっちこそお疲れ」

「・・・ふふ」

「・・・はは」

お互いに言う『お疲れ様』に思わず笑いがでる2人

「秋葉、慣れない事ばかりで本当に疲れただろ?」

「疲れていないと言えば嘘になりますが、こんな心地よい疲労感は久しぶりです。
本当にありがとうございます」

「そこまで喜んでくれたら誘ってよかったよ」

秋葉の言葉に明るく笑う志貴
しかし、志貴にとってバイトをしていた1ヶ月間は必死に頑張っていた
それこそ翡翠が言っていた『大変だったの一言ではすみません』の通りなのだ
その志貴が『苦労した甲斐があったよ』ではなく、『誘ってよかったよ』と言うのが志貴らしい

「それじゃ、暗くなってきたしそろそろ帰ろうか?」

実際夕日が出てきている時間だ
夕食は琥珀に作ってもらおうと思っているし、
有間の家にも寄らなくてはならないので早く帰らなくてはならない
この時レンは近くの席でオレンジジュースをストローでちゅうちゅうと飲んでいた

「兄さん、もう一ヵ所寄りたい所があるのですが・・・」

「え、う〜〜ん・・・」

「おねがいします」

「わかったよ。 どこに寄りたいんだ?」

秋葉にそこまで言われたら断らないのが志貴
だがその後の秋葉の一言は、隠しカメラで一部始終見ている5人にとって危惧していた内容だった

「公園です」

 

 

その言葉を聞いた5人は

「ね、姉さん・・・ どうしよう」

顔中真っ青な翡翠が琥珀に聞くが、その本人も困っていた

「どうしましょうかねー」

メイド2人が困っている間、キレまくっている人外兵器達は・・・

「・・・・・・」

「・・・・・・」

もう言葉もないようだ
しかし体が震えている所が怒りを表している
晶は琥珀の後ろに回ってその怒りから逃げていた

「このままじゃ、本当にキスしちゃいますねー」

『キス』の部分で一瞬震えが止まった
その後、お互いに頷きあいスクッと立ち上がり、
そのままドアの方に向かい始めた

「・・・琥珀、もう止める事は出来ないわよ」

「・・・琥珀さん、私たちは行きますよ」

静かだが低すぎる声に誰も止める事は出来ないだろう

「結構ですよ。 みなさんで行きましょう」

以外に琥珀が賛成した
しかも、全員で行くとまでいったのだ
やはり彼女なりにキレていたのだろう

「それでは、志貴さんが公園に着く前に先回りしますよー」

「「「「「おお――――!!」」」」」

 

何とか志貴達より先に公園に着いた5人は、
とりあえず草むらの中に隠れていた
しかし外は完全に夜になっている

「もうそろそろ着きますね」

琥珀の手にある車につけるような液晶の小さなテレビを見ながら翡翠が言った
ことごとく現実の常識を抜いていくのは琥珀も一緒なのだ

「そうですね―」

「そういえば、アルクェイド。 あの使い魔はどうしたのですか?」

「レンも、もうこの辺にいるはずなんだけど・・・」

「みなさん、志貴さんが来ました」

晶の言葉に一斉に公園の入り口を見ると、
確かに志貴と秋葉だ

 

「なぁ、秋葉。 公園に何かあるのか?」

喫茶店を出てから志貴はずっと頭の上に?が浮かんでいたのだ
そんな志貴に秋葉は、微笑みながら何も言わず公園に向かっていた

「いいえ、特に来たい理由はありません。
ただ、来たかっただけです」

「・・・そうか」

「はい」

屋敷にいる筈の5人がすぐそこにいるとは全く気付かない2人

「兄さん、改めて本当にありがとうございました。
私の為にここまでしてくれて・・・ 」

「秋葉、楽しかったかい?」

「はい!」

「それで充分だよ。 やっぱり楽しみながらじゃないと」

いつも優しい志貴に秋葉は心から感謝している
それと同時に志貴を愛してる事にも・・・

「に、兄さん。 ぜ、ぜひお礼をしたいのですが・・・」

「いいよ、別に」

「兄さん・・・」

「わかったよ」

志貴はお礼自体はほしくなかったが、秋葉が納得するならと頷いた

「そ、それでは、目を閉じてください」

「あ、ああ」

耳まで真っ赤になりながら言う秋葉に志貴は言われた通り目を閉じた
秋葉も目を閉じそのまま志貴に顔を近づける・・・

「「「「「「だ・・・」」」」」」

この時に外野の5人は乱入しようとしたが、秋葉の行動の方が速かった
間に合わないと皆思ったが、5人の前に止めようとした人物がいた

がさっ

ぼふっ

秋葉は口どころか顔中に妙な感触がしたので目を開けてみると、
黒い物体があった

「きゃーーーー」

悲鳴を上げながら後ろに下がる秋葉に志貴も目を開けた

「うん? お、あの時の猫じゃないか!」

そう、あの一瞬に2人の顔の間にレン(猫型)が割り込んだのだ
そして止めようとした5人は上から重なるように倒れていた

「あ、貴方たち・・・」

「あれ、みんな。 どうしたの?」

「やっほー、志貴」

「こ、こんばんわ、遠野君」

「し、志貴さま・・・」

「あはー、奇遇ですねー」

「ど、どうも・・・」

「にゃー(ふう)」

みなそれぞれの反応だったが、気を取り直した秋葉は怒りをあらわにした

「アルクェイドさんにシエルさん! それに琥珀に翡翠に瀬尾! これはどういうことですか!!」

「あらー、秋葉さま。 そんなに怒っているとしわが増えますよー」

「大きな世話よ! なぜみなさんがここにいらっしゃるのですか!?」

秋葉が5人に食って掛かる間、レンは志貴に甘えていた

「にゃ〜〜〜ん(しきさま〜〜〜)」

「よしよし」

「・・・・・・レン」

秋葉の怒りに対決していたアルクェイドがその光景を見て割り込んだ

「アルクェイド、この猫知ってるのか?」

「ええ。 この子はレン。 前に話した夢魔よ」

ぽん

アルクェイドが説明している間に元の姿に戻り、深々と頭を下げるレン

「改めて初めまして、志貴さま。
お昼の食事、ありがとうございました」

「こっちこそ、初めまして」

レンの頭を撫でながら返事する志貴

「およ、驚かないんだね、志貴」

「普通の常識なら驚く事なんだろうけど、それ以上の事を体験したからなー。
それに、夢魔のことは聞いていたし・・・」

その言葉に、レンは自分が志貴に嫌われていないのだと安心した
だが、レンの頭を撫でている手が止まったのでレンは志貴の顔を覗くと、
冷や汗をだしながらこちらを見ていた

「ど、どうしましたか?」

「レ、レンちゃん、ちょっと・・・」

志貴はレンの腕を掴まみ周りから離れていく

「レンちゃん」

「なんですか?」

真剣な志貴の表情に、本当は嫌われていたのかと不安になるレン

「あの夢の内容、誰かに話した?」

「いいえ、話していませんが」

「本当に?」

「はい」

「よかったー」

「・・・ふふ」

真剣な表情から情けない顔になり、最後には力の抜けた顔に、
レンは不安な気持ちがなくなり、可笑しさと愛しさが出てきて笑ってしまった
その事に気付かない志貴はレンに頼み込んでいた

「お願い! 夢の事は秘密にしてくれないかな?」

実際アルクェイドとシエルは聞かないと約束しているし、
その他の3人も聞こうとしないだろう
1番聞きに来る可能性が高い秋葉は知らない
志貴が嫌がることをしたくないのはレンも同じだが・・・

「それでしたら、こちらのお願いも1つ聞いてください」

「な、何かな?」

「わ、私のご主人さまになってください」

「えっ? でも君の主はアルクェイドじゃ・・・」

「アルクェイドさまの許しは得ています」

本当はアルクェイドにはライバルの1人とは認められたが、
そこまでは認められていない
しかし、ライバル達から離れていてアルクェイドも動けない今しかないのだ

「・・・・・・」

悩んでいる志貴にレンは切り札を出した

「・・・・・・・・・夢(ボソ)」

「い、いいよ! こんな可愛い子なら大歓迎さ!!」

焦りまくりながら言う志貴
レンは志貴が言う『可愛い子』に照れていた

「それでは、よろしくお願いします」

「う、うん。 話もまとまったし戻ろうか」

2人が戻っても秋葉VS大勢の言い争いは続いていたが、
いつまでもそうしている訳にはいかず止める志貴

「だって、兄さん!」

「そんなに邪険にする事もないだろう?
きっと秋葉を心配していたんだろう」

「そうなんですよー」

志貴の言葉にすかさず肯定する琥珀
それでも秋葉の怒りは収まる事はなかった

「それより秋葉。 お礼はもういいのか?」

「結構です!!」

怒りとキスしようとした恥ずかしさに、志貴に八つ当たりしてしまう秋葉
その言葉を聞いて琥珀は・・・

「そうですかー。 志貴さん、秋葉さまのお話も済んだ事ですし、お帰りしましょう?」

「そうだね、お腹も減ってきたし」

「ふふ、志貴さんったら・・・」

「なっ! ちょ・・・」

琥珀に言われ公園の出口に向かっていく志貴に、
秋葉以外は志貴の後を付いて行った

(このままではすみませんわ。 兄さんは私のモノ!)

「兄さん!!」

走っていて志貴を追いかける秋葉
追いついた時に後ろを振り返った志貴に・・・

ちゅっ!

・・・頬にキスをした

「兄さん、大好きです!!」

「「「「「「ああ――――!!」」」」」」

 

 

―エピローグ―

こうして志貴と秋葉のデートは終わった
だが、秋葉だけでは気が引けてる志貴は、
初めから全員のお願い事を聞くつもりだった
だが、翡翠と琥珀は最後が良いという希望した

アルクェイドは初め、志貴の血を希望していたが却下された
結局秋葉と同じ志貴の所有権一日だった

シエルは志貴にカレーを作ってもらった
大好物なカレ―を愛する志貴が作ったのだ
かなりの量だったがシエルは満足していた

晶は結局、前に行った店で蕎麦を食べに行った
遠慮する事はないと志貴は言ったのだが、
その分思い切り甘えていたのでこちらも満足気だった

レンは1日中抱っこを希望した
猫でも人型でも常に志貴の膝の上に座っていた
レンは満足だったが、他の6人がその光景を見ると
嫉妬して八つ当たり同士のケンカがあったそうな・・・

デートの時にはいなかったさっちんも入院中に志貴が訊ねて来て、
その1日中面倒を見てもらっていた

最後に翡翠と琥珀だが・・・

「それで翡翠と琥珀さんのお願い事はなんですか?」

「それは・・・」

「それはですねー」

「「「「「「「それは?」」」」」」」

「「一晩、一緒に寝てください」」

「えっ?」

「「「「「「ええェェぇ――――!?」」」」」」

 

 

「終わりです」

 

おまけ(予告?)

 

「・・・という一日でした」

「そうか。 まぁ、うまくいったようだな」

昼休みに、秋葉は蒼香にデートの事を話していた

「少し兄に頼りすぎている気もするが、楽しめたのなら良かったな」

「ええ。 でも琥珀たちもいた事には驚きましたわ」

「それほど、その兄さんを狙っているのだろう」

秋葉はいくら考えても公園に皆がいたのか納得できなかったが、
蒼香の方はなんとなく分かっていたが話さなかった

「だが、最後に思い切った事をするものだな」

「そ、それは・・・」

蒼香の言葉に顔を真っ赤にさせ照れている秋葉

「その兄さんも大変だな」

「ま、まぁ、そうですが・・・。
それより、兄さんに貴方の事を話して会ってみたいと言うと、
いつでも良いそうですよ」

「そうか、では今度の日曜でいいか?」

「それなら、土曜日にいらっしゃってお泊りになればいかがですか?」

「いいのか?」

「もちろんですよ。 こちらからのお誘いですから」

「そうか。 それで頼むよ」

「わかりました」

話がまとまり蒼香には珍しく浮かれた気分になっていた

「秋葉から話はかなり聞いているが、実際に会うとなると妙な気分だな」

「そうですか?」

「もしかしたら私も惚れてしまうかもな」

「な!?」

「冗談だよ。 私はそんなに惚れっぽい性格ではない」

「そ、それもそうですね・・・」

軽く冗談を言い合っていたが、志貴に会うと
冗談でなくなる事は秋葉はもちろん蒼香自身も知らない・・・

 


 

あとがき

どうも、siroです。
すみません、かなり遅れてしまいました。
本当に申し訳ありません。
色々と忙しかったもので・・・
とりあえずこのシリーズは完結しました。
おまけの所では『予告?』と書いているのは、
番外編で月姫蒼香の話を書きたいと思うからです。
でも、私も今は就職活動で忙しいので今は無理です。
就職先が決まったら作成します。
もしかしたらストレス解消に作るかもしれません。
早ければすぐに出せますが、遅ければ来年以降になるかもしれません。
(そこまでなりたくありませんが・・・)
こんなSSを見てくれた皆さんに感謝します。
それでは、いつかお会いしましょう。



 ☆ コメント ☆ 秋葉 :「ひ、ひょっとして……」(−−; シエル:「この話で一番良い思いをしてるのは……」(−−; アルク:「……レン?」(−−; 秋葉 :「な、なんか納得いかない」(ーーメ シエル:「なに言ってるんですか。秋葉さんはまだ良いですよ」 アルク:「そうよそうよ。最後に『ちゅっ!』なんてしちゃってさ!」凸(ーーメ 秋葉 :「べ、別にいいじゃないですか。この話のヒロインは私なんですから。      それくらいの特権は許されて然るべきですよ」(*^^*) シエル:「……それは……まあ……そうでしょうけど……」(−−; アルク:「…………うむむー」(−−; レン :「そうですね。わたしもそう思います。      もっとも、この作品の真のヒロインはわたしですけどね。……くすっ♪」(^〜^) 秋葉 :「…………」(ーーメ シエル:「…………」(ーーメ アルク:「…………」(ーーメ





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