舞が、樹の上から剣を構えて飛び降りる。

「ざっ・・・せい!!」

「あはは〜」

ギィィ・・・ン!

  しかし、舞の全体重をかけた斬撃は、耳障りな音と共に、佐祐理さんの前に展開した魔力障壁によって阻まれた。

「ああ・・・ああああああ・・・・・・」

呆然と呻き声をあげるしかない、俺・・・。

かつての親友同士は、今は、敵同士でしかなかった。

(何で・・・何でこんな事になっちまったんだよぉーーーーーー!!!)

俺の、誰にも聞こえないであろう心の叫びが木霊した・・・。


     

裸エプロンの賞味期限は新婚2ヶ月、長くて3ヶ月


「・・・じゃあ、行って来るから」

「あはは〜、おば様によろしくね」

「はちみつクマさん」

「舞、お義母さんにお大事にって伝えといてくれ」

ぽかっ!

チョップ一閃。

俺の『おかあさん』のニュアンスの違いを聞きつけたらしい。

顔を真っ赤にしている。

「あはは〜、舞ったら照れる事無いのに」

ぽか!

今度は佐祐理さん。

「未来の息子としては心配だからな・・・お義母さんが」

ぽかっ!

今度は俺に。

「『舞をよろしく』って頼まれましたもんね〜、祐一さん」

ぽか!

佐祐理さんに。

「・・・祐一、佐祐理・・・」(ぐしゅ)

!?

いかん!!

舞がぐずりだした!!

「す、すまん!舞。ちと悪ふざけが過ぎた!!」

両手を顔の前で合わせて謝る俺。

「あ、ほら舞。飴あげるから泣かないでね〜」

飴を取り出して舞を宥める佐祐理さん。

「・・・飴さん、嫌いじゃない」

泣き止む舞。



舞と佐祐理さんが高校を卒業して3ヶ月・・・。

俺たち3人は一緒に暮らしていた。

舞と佐祐理さんの親御さんは、案外簡単に俺たちの同棲を許可してくれた。

秋子さんに至っては・・・

「了承」(1秒)

の一言だった。

・・・まあ、名雪は

「うー」と唸っていたし、

真琴は

「あうー」と叫んでいたし、

あゆは

「うぐぅ」と鳴いていたが、秋子さんの『ぢゃむ・・・』と言う鶴の一声で納得してくれた。

・・・・名雪達の気持ちに気付いていないわけじゃない。



でも、それでも俺は、舞を選んだ。

夜の校舎・・・10年と言う永い時間をたった一人で闘ってきた。

幼い日の俺との約束を守るために・・・・。

たった一人で・・・。

傷つき、倒れ、そしてまた、立ち上がる。

笑顔を忘れ、涙を捨てて、たった一人で闘ってきたんだ・・・。

これから舞は俺と、佐祐理さんの3人で取り戻す。

失われた10年と言う月日を。10年間の幸せを。

舞にはその権利があり、俺にはその義務がある。

・・・・・違う。

義務とか権利とか、そんなんじゃない。

唯・・・舞は俺の手で幸せにしたい。

これは、俺の勝手な思い込み・・・エゴだろうか?

エゴだろうがなんだろうが、関係ない。

きっと俺達3人は、お互いを幸せにする為に生まれ、そして出会ったのだから。

・・・・・それに・・・・・・。

名雪達じゃあ、舞のこの『ないすばでい』はどうにもできまい!

別に俺は巨乳フェチというわけではない。

しかし!!

(おとこ)として、クるもんはクる!!

舞のあの肉体(からだ)を観てなんとも思わない(おとこ)が居るだろうか!?

否!否!!断じて、否!!!

もしもそんな奴が居るなら、俺はそいつとそいつのご子息に『役立たず』及び、『無能者』の称号をプレゼントしてやろう。



ぽかっ!

「痛っ!な、なんばしよっとですか!?舞!!」

突然襲った舞の一撃によって、現実に戻った俺は、思わず九州弁を吐いた。

「・・・目つきがイヤらしい」

「はえ〜。祐一さん、エッチなんですかぁ〜?」

「ぐっ・・・」

思わず言葉に詰まる俺。 

は、反論できん・・・。

「ま、まあ・・・兎に角、気をつけて行ってこいよ」

「・・・・・・はちみつクマさん」

今一腑に落ちない、と言った顔で舞が実家に帰っていった。

別になんでもない。

舞のお袋さんが風邪を引いたので看病しに帰るのだそうだ。

「はえ〜。二人っきりになっちゃいましたね〜、祐一さん」

「うん。そうだね・・・・・何時までも此処に居てもしょうがないし、そろそろ家に入ろうか?佐祐理さん」

「はい☆」

そのとき、佐祐理さんの瞳が妖しく輝いたことを、俺は知らなかった。





夢。

夢を見ている。

黄金色の麦畑で遊ぶ二人の子供。

夏の日差しがまぶしかった。

麦の穂を揺らす風が優しかった。

「私のこと、怖い?」

それは、誰の言葉だっただろう? 太陽が、

風が、

樹々たちが・・・

全てが、輝いていた。

美しかった。 ・・・夢・・・

・・・夢を見ている・・・

それは、過去の記憶。

輝く季節の・・・

尊い思い出・・・・





「・・・さん・・・ゆ・・いちさ・・・・・おき・・・ください・・・・」

「・・・・・ん?」

優しげな声で俺の意識は覚醒していく。

「祐一さん。起きてください。ご飯ができましたよ」

「・・・夢・・・?」

 眠っていたのか? 

「・・・懐かしい・・・夢を見た・・・」

「大丈夫ですか?祐一さん?」

「うん・・・大丈夫だよ、ありがとう。佐祐理さ・・・」

「はえ?どうしました、祐一さん?」

不自然に途切れた俺の言葉に、佐祐理さんが首をかしげる。

「さ、佐祐理さん・・・?その格好は・・・」

俺を起こしに来てくれた佐祐理さん。

それはいい。

問題はその格好だった。

「なんで・・・」

「はえ?」

「何で素肌にエプロン一枚なんスかああーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

    そう!

佐祐理さんは素っ裸にエプロン一枚しかつけていなかったのだ!!!

専門的に言うと、『裸エプロン』!!!



裸エプロン・・・

新婚の夜の営みの後、そのまま疲れて眠ってしまい、翌朝時間がないので、生まれ たままの姿の上にエプロンだけを着て朝食と、だんなの弁当の用意をする妻。此処 から発生したのがこの『裸エプロン』である!! この日本古来よりの伝統行事は、現代でも根強く残っている。

・・・なお、新婚の亭主がよく仕事に遅れたり、常にダルそうにしているのはこの 裸エプロンの為であると言う事は言うまでもない。

民明書房刊『哀しき(おとこ)運命(さだめ)』より。



『裸エプロン』!!

『メイドさん』や、『ダブダブの男物のTシャツ一枚』と並んで、常に『萌える装い』の上位にランキングされている『あの』裸エプロンである。

「何でって・・・祐一さんこういうの嫌いですか〜?」

ぐはっ!!

め、目を潤ませて上目遣いに見ないで下さい・・・。

「祐一さ〜ん(はぁと)」すりすり

のおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!

す、擦り寄らないで!佐祐理さん!!

胸がっ、胸がああああ!!!!

!!!

先っぽ!!見える!見えるぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!

真っ赤で小さなサクランボがあああああああああああっっ!!!!!

理性がっ!理性がーーーーーーー!!!!

た・・・助けて・・・舞。

このままでは・・・。

俺が危ないっ!!!!!!!!!




「あれ?・・・・これって・・・」

「クスクス・・・」

「?どーしたの?祐クン。るりるりも」

「・・・電波だ・・・それも凄く強力な」

「欲情の電波だね・・・クスクス」

「ふーん。どうでもいいから早く行こうってば!」

「あ、沙織ちゃん待って。・・・瑠璃子さん、行こう」

「そうだね長瀬ちゃん・・・クスクス」




1時間後・・・。

「ふう・・・ごっそうさん」

「はい。お粗末さまでした♪」

あの後、なんとか佐祐理さんを説得して、普通の服に着替えてもらうことに成功したのだが・・・。

ヤバかった・・・。

危うく俺の理性が『永遠の世界』にトラベりかけたからな・・・。

「祐一さん。お風呂沸いてますから、先に入っちゃってくださいね」

「お!さすが佐祐理さん.気が利くねぇ」

「あはは〜」

「んじゃ、入らせてもらうかな」

「どうぞごゆっくり〜」



カポーン・・

「ふう・・・」

「風呂はいいねぇ・・・リリンが生み出した文化の極みだよ・・・」

どっかで聞いたことのあるような台詞を吐きながら、湯船の中で体をのばす。

コンコン

「祐一さん。お湯加減はいかがですか〜?」

「ああ。丁度いいよ」

「あはは〜。よかったです」

カラカラ・・・

!?

「さ、佐祐理さん!?」

「あはは〜。お背中流しますよ〜」

そう言って、風呂場に突入してきた佐祐理さんは・・・

バスタオルを巻いただけだった。

「さ、あがってください。祐一さん。お背中流しますよ〜」

「い、いや!遠慮します!!」

「ふえ・・・佐祐理には洗わせてくれないんですか?」

ぐっ!

佐祐理さん・・・目を潤ませて上目遣いは反則です。

で、結局・・・。

「あはは〜。いたくないですか〜?」

「い、いや・・・気持ちいいよ・・・」

「あはは〜、祐一さんおっきな背中ですね〜」

「そ、そう?」

「はえ?祐一さん?」

「な、何?」

「どうして前屈みなんですか〜?」

うう・・・察してください佐祐理さん・・・。

男の悲しい『熱膨張』なんです。

「はい。もういいですよ〜」

ほっ・・・・

助かっ・・・・。

「次は、前を洗いますね〜」

助かってないっ!!

「さ、佐祐理さん!それは色々とまずかとです!!」

なぜか九州弁。

「あはは〜、遠慮しないで下さい〜」

遠慮させて・・・お願いだから・・・。(泣)

「・・・えい!」

「おわっ!?」

なんと佐祐理さんは、俺に抱きついてきた。

「洗いますよ〜」

「いやああああああ!!!!」

!!!

「あ・あああ・・・あああああああ」

「はえ?この硬いのはなんでしょう?」

シュッシュッ

「ををををををををををををおおおおおぉぉぉぉおお・・・・」

佐祐理さんの手が・・・・石鹸が・・・ヌルヌルがああああああっ!!!

「あっ!!」

「きゃっ!?」





















ドピュッ











「・・・・・」

「あはは〜」(/////)

「・・・・・」

「あはは〜」(/////)

「あはは〜」(/////)

 最低だ、俺って・・・。 



「ああああ・・・・つ、疲れた・・・」

俺は疲れきって自分のベッドに倒れこんだ。

「はあ・・・佐祐理さん・・・今日はどうしたんだろう?」

仰向けになって、天井を見ながら呟いてみる。

今日の佐祐理さんの態度・・・どう考えても腑に落ちない。

「ま、考えてもしゃあないか・・・・寝よ」

コンコン・・・

遠慮がちなノック。

こんなことをする人は今この家に一人しかいない。

すなわち・・・。

「・・・佐祐理さん。どうしたの」

カチャ・・・

「あはは〜・・・」 「どうしたの?眠れないの?」

「はい・・・。いつもは、舞がいてくれますから・・・」

「・・・・」

「佐祐理はバカな女の子なんです」

「え?」

「祐一さん・・・一弥のことは、前にお話しましたよね」

「・・・亡くなった、弟さん・・・だったよね」

「はい」

「佐祐理は・・・舞や祐一さんにあの子を重ねているのかもしれないんです」

「・・・・」

「一弥を幸せにして上げられなかった分・・・舞や、祐一さんを幸せにしてあげることで・・・佐祐理は一弥に許してもらおうとしているんです」

「幸せになりたいのは・・・佐祐理なんです」

「祐一さんと舞を・・・ダシにつかって・・・」

佐祐理さんは・・・泣いていた。

常に笑顔を絶やさなかった女性(ひと)が・・・

今、俺の目の前で泣きじゃくっている。

俺は何もいえなかった。

この人はまだ・・・過去と言う名の亡霊に囚われているのだろうか?

俺や舞では・・・この人を救うことはできないのか?

無力だ・・・。

俺はなんて無力なんだろう・・・。

俺は前に秋子さんと交わした会話を思い出していた。




『奇蹟・・・ですか?』

『はい。真琴やあゆちゃん、栞ちゃんや舞ちゃんそして私・・・』

『皆がこうして居られるのは奇跡と言うしかありません・・・』

『そして、常にその中心に居る人物・・・』

『・・・俺・・・ですか?』

『そうです。・・・・もしかしたら祐一さんには・・・』

『俺には?』

『祐一さんには、奇蹟を起こす力があるのかもしれませんね』

『え?』

『・・・・・・冗談ですよ』

『え?あ・・・か,からかわないで下さいよ〜、秋子さ〜ん』

『うふふ・・・ごめんなさいね』




もしも秋子さんの言う通り、俺の中にそんな力があるのなら・・・

奇蹟よっ!!!

今一度!!起こってくれ!!

この女性(ひと)を!!

俺と舞の大切な親友を!!

佐祐理さんを!!!

過去の束縛から解き放ってくれっ!!!

奇蹟よっ!!!!













・・・違う。

そうじゃない。

奇蹟なんて、そんな抽象的なものに頼ることはない。

俺だ。

俺が助けるんだ。

何が出来る?

分らない。

だけど・・・。

俺がやるんだ。

そうでなければ・・・

意味がない!!





「佐祐理さん!」

「きゃっ!?」

俺は佐祐理さんの身体を抱きしめた。

「ゆ、祐一さん?」

「もういい・・・もういいんだ、佐祐理さん・・・」

「え?」

「もう、佐祐理さんは幸せになってもいいんだ」

「でも・・・」

「佐祐理さんは幸せになるために生まれてきたんだ。そのためだったら、俺や舞は努力を惜しまない」

「これからは、自分自身のために笑うんだ。佐祐理さん自身の為に」

「佐祐理・・・自身のため・・・」

「そうだ。それで、もしも何かあったら、俺や舞が助けてやる。必ずだ!」

「俺たちは、ずっと一緒だっ!」

「え・・・えぐっ・・・ゆ・・いちさ・・・・」

「泣きたいときは泣いたっていい。見えないように俺が隠してやる」

 俺の胸に顔を埋める様にして佐祐理さんを抱きしめる。

「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁっぁあぁっぁ」

「大丈夫。俺は、ずっと・・・此処に居る・・・・」

 俺は、泣きじゃくる佐祐理さんの髪を撫で続けた・・・。

 優しく・・・優しく・・・。





 どの位そうしていただろうか・・・・?

「祐一さん・・・・」

 俺の胸に顔を埋めたまま佐祐理さんが呟く。

「佐祐理を・・・抱いてください」

「!!それは・・・」

「お願いします祐一さん。佐祐理に・・・祐一さんの力と勇気を・・・分けてください」

「・・・・佐祐理さん」

「祐一さん」

 そして俺と佐祐理さんは静かに・・・唇を合わせた。





 そしてその日、俺と佐祐理さんは初めて、結ばれた。








 翌朝・・・。

 ドタドタドタ・・・・・。

 ・・・ん?

 何か騒がしいな・・・。

 バタンっ!

 バタバタバタ・・・。

 うー。騒ぐならもう少し、静かに騒げ・・・。

 俺の寝ぼけた頭ではそんなことを考えるので精一杯だった。

 今、まさに生命の危機が迫っていると言うのに・・・。



 すちゃっ・・・。

「ん・・・つめたい・・・」 

 首筋にひんやりした物が当てられる。

 薄っすらと目を開けた俺の網膜に飛び込んできた映像・・・。

 それは、羅刹のような表情で俺を見下ろしている、舞の姿だった。

 舞の手にはなにやら棒状のものが握られており・・・

 その先は・・・・俺の首筋だった。

 舞の手に握られた物・・・

 それは何体もの魔物(ちびまい)を屠ってきた剣であり、その切っ先は少し力を込めて引くだけで、俺の頚動脈から大出血サービスな場所だった。

「・・・・!!」

 俺の脳は急速にその活動を再開した。

「ま・・・舞!なんで・・・っ!」

「・・・祐一・・・コレはどう言うこと」

 舞の視線に沿って顔を動かした俺の視界に入ってきたもの・・・。

「っ!!」

 それは、俺の隣で気持ち良さそうに眠っている・・・素っ裸の佐祐理さんだった。

「・・・・」

 サー・・・

 自分の顔から血の気が引いていくのが分る。

「・・・ユウイチ。説明して」

「ま、待てっ舞!落ち着け!!」

「・・・私は落ち着いている」

 嘘だっ!

 と、その時。

 もぞっ・・・。

「・・・・・・」

 佐祐理さんが起き出して来た。

 ボーっとした顔のまま俺を見つけると・・・

 ふにゃ

 っと笑った。

 そして・・・。

「ゆういちくん、おはようごじゃいましゅ〜」

 と言って、俺の顔に手をかけて・・・・

「ん〜〜〜〜〜〜♥」

 ・・・・・・キスしてきた。

 5秒経過・・・。

 1分経過・・・。

 5分経過・・・。

 チュポン

「・・・・・」

「・・・・・」

 思わずフリーズする俺と舞。

「あ・・・あの佐祐理さん?今のは一体・・・」

 いち早く解凍した俺が佐祐理さんに尋ねると・・・

「あはは〜、おはようのKISSですよ〜」

 と、笑顔でのたもうた。。

「・・・佐祐理、コレはどう言うこと?」

 あ、舞も解凍したみたいだな。

「はえ?舞帰ってたの?」

 気付いてなかったんスか?

「・・・・・・」

 あ、舞が部屋の隅で、のの字書いてる。

「はえ〜。舞ゴメンね〜」

「・・・佐祐理・・・祐一は私の物・・・」

 物かい。

「あはは〜。でも佐祐理も祐一君のこと、好きだから」

「いくら佐祐理でも、祐一は、渡さない」

「あはは〜。それじゃあ、力ずくで奪っちゃうよ〜」

「・・・望むところ・・・」

「それじゃあ、表に出よ、舞」

「はちみつクマさん」



「・・・・・・・・・・・・・・・・はっ」

 い、いかん!

 正々堂々ぶっちぎりで気絶してた!!

 二人を止めねば!!

 早まるんじゃねぇぞっ!舞!佐祐理さん!





 噴水のある公園。

 俺が辿り着いた時・・・

 すでにそこは、戦場だった・・・。



 舞が、樹の上から剣を構えて飛び降りる。

「ざっ・・・せい!!」

「あはは〜」

 ギィィ・・・ン! 

 しかし、舞の全体重をかけた斬撃は、耳障りな音と共に、佐祐理さんの前に展開した魔力障壁によって阻まれた。

「ああ・・・ああああああ・・・・・・」

 呆然と呻き声をあげるしかない、俺・・・。

 かつての親友同士は、今は、敵同士でしかなかった。

「やめろおおおぉぉぉぉぉおおーーーーっ!!舞ぃぃぃっ!!佐祐理さーんっ!」

 ブンッ!

 ギイィイィィンッ!!

 舞の斬撃が空気を引き裂き、佐祐理さんの障壁がそれを受け流す。

 駄目だ。

 今の二人には俺の声は届かない・・・。

「・・・クッ」

 一気に距離を詰めて佐祐理さんに斬りかかる舞。

「あはは〜。無駄無駄無駄ぁ〜ですよ〜」

 それを余裕で捌ききる佐祐理さん。

 バッ!!

 舞は一端距離を置くことにしたようだ。

「あはは〜、佐祐理は魔法が取っても得意なんですよ〜」

 胸の前で指を素早く組み合わせ、なにやら呟く佐祐理さん。

「ジ・エーフ・キース・・・・・」

 !?

 こ、この呪文の詠唱は・・・!?

「いっ、いかんっ!!!」  

「神霊の血と盟約と祭壇を背に我精霊に命ず雷よ落ちろ・・・」

 俺は肺の空気の全てを使い、吼えた。

「舞ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!!避けろーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

 俺の叫びと共に佐祐理さんの魔法が発動する。

轟雷(テスラ)ッ!!」

「っ!!!」



 ずがあああああああああああああぁぁぁあぁぁぁぁぁっぁっ!!!!



 舞はとっさにバックステップして回避に成功した・・・しかし。

「あはは〜、甘いですよ〜舞」

「!!」

 舞の着地地点を狙って、佐祐理さんが新たな魔法を解き放つ。

「まじかる・サンダ〜」

 ギューーン!!!

 いくつもの雷の球が舞を襲うッ!!

 避けきれない!!喰らう!!

 俺がそう思った瞬間、ソレは起こった。

 ヴぁぢゅっ!!

 火の着いた煙草を水の中に突っ込んだ時の様な音がして・・・

「はえ!?」

 舞の直前で雷球は全て消滅していた。

 な、何が起こったんだ・・・?

 そんな俺の思いに答えるように舞がボソっと呟いた。

「・・・魔物の力」

 !!

「そうかっ!!」

 舞は魔物(ちびまい)の力を解放して防護幕を作り出したんだ・・・。

「はえ〜」

 佐祐理さんはただただ驚いていた。

















 動かない・・・否、動けないのか。

 舞と佐祐理さんはお互いを見据えたまま微動だにしなかった。

 生半可な技ではお互いのガードを敗れない。

 しかし大技を出そうと思えばその瞬間無防備になる。

 どれくらいの時間がたったのだろうか?

「・・・佐祐理」

 舞が沈黙を破った。

「・・・コレで・・・終わらせる」

 ソレは舞の最後通告。

 引かなければ全力で・・・殺る・・・と。

 佐祐理さんは一寸意外そうな顔をして、それから・・・

 いつものように・・・

「あはは〜」

 と、笑った・・・。

「いくよ〜、舞」

「・・・参る」

 二人は同時に大きくバックステップした。

「コォォォォォォォォ・・・・・」

 舞が腰を落として気合を溜める。

「カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク・・・」

 佐祐理さんも同時に詠唱に入る。

 !?

 舞の周りの魔物(ちびまい)達が舞に・・・否、舞の剣に吸い込まれる様に消えていく・・・。

「灰燼と化せ、冥界の賢者・・・」

 佐祐理さんの周りの空気がプラズマ化していく・・・。

「ォォォォォォォォ・・・・」

 パリィィ・・・ン・・・

 舞の剣の刀身が・・・・砕けた・・・。

 そして其処には・・・魔物の力が結晶化したような、漆黒の刃があった。

「七つの鍵をもて開け・・・・・・地獄の門っ!!!」

 佐祐理さんの詠唱が完了したっ!

「雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ォォォォォォォォォっ!!!!」

 !!!

 舞が吼えたッ!!!

 佐祐理さんとの距離を一気に詰め寄る!

 速いっ!速いッ!!!

 佐祐理さんの身体に魔界からの膨大な魔力が収束するっ!

七鍵守護神(ハーロ・イーン)ッ!!!!!」

 そして、舞に向けられた掌から・・・・撃ち出されたっ!!!

「佐祐理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!」

「舞ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

 吼え猛る二人の戦女神・・・。

 その横顔には・・・・・

 涙?

















 当たり前だ。

 親友同士が殺しあってその末に幸せなんか有るはずがない。

 喩えどちらが生き残ったって・・・幸せになんか・・・なれっこ無い!!

「止めろオオオオオオォォォォォォォォォォ−−−−----ッッ!!!!!!」

 そして・・・

 俺の身体は無意識のうちに・・・・動いていた・・・。

 走る!走る!!

 この不毛な戦いと止めさせるべく・・・

 不思議と、怖いとは思わなかった。

 だって・・・・。

 大好きな舞と、佐祐理さんが幸せに成れるんなら・・・・

 ソレでいいと思った・・・・

 俺はどうなってもいい。

 だから・・・・

 二人に・・・幸在れ・・・・。

 沈黙・・・・。

 そして・・・・

 爆発・・・・・。

























『じゃあ、一緒にご飯でも食べましょう』

『犬さん・・・』

『あはは〜』

『相当に嫌いじゃない』

『・・・祐一は囮になる』

『続けて佐祐理とは踊っていただけませんか?』

『佐祐理を悲しませたら、絶対許さないから!』

『舞の誕生日プレゼント、何がいいでしょう〜?』

『はちみつクマさん』

『あはは〜、佐祐理は祐一さんのこと、好きですよ〜♪』

『・・・祐一は、相当に・・・嫌いじゃない』(/////)

『祐一さ〜ん♪こっちですよ〜』

『・・・祐一・・・こっち』

『あはは〜♪』

『みまみま・・・』

 楽しかった、舞と佐祐理さんとの想い出・・・。



 それを最後に、俺の意識は闇へと堕ちていった・・・。









夢を見ている

夢は現実の続き

現実は夢の終焉

ウロボロスの蛇のように

メビウスの輪のように

まわる・・・まわる・・・

狂々(クルクル)と・・・狂々(クルクル)と・・・

終わる事も、休む事も、止める事も無く

ただ・・・

まわり続けている

狂々(クルクル)と・・・狂々(クルクル)と・・・
















「はっ!?・・・・・・・・・・ゆ・・・夢?」

「祐一っ!」

「祐一君ッ!」

「おわっ!!」

 俺は二人の美女のタックルを受け・・・

 押し倒された。

「・・・舞・・・佐祐理さん。・・・よかった、無事だったんだな・・・」

 それは俺の最愛の女性・・・舞と佐祐理さんだった。

 そして俺たちは、お互いの無事と喜び合った。

「でも祐一が無事で何より」

「本当ですよ〜祐一君が佐祐理達の間に飛び込んで来た時にはビックリしちゃいました〜」

「・・・あのな、舞、佐祐理さん・・・・それ、俺じゃねぇの」

「・・・え?」

「はえ?」

 二人ともハニワ顔になって頭に『?』をつけている。

「いやな、俺も最初は飛び込もうとしたんだけど、間違いなく死んじまうだろ?」

「・・・はちみつクマさん」

「ん〜で、二人が助かっても、俺が死んじまったら二人とも嫌だろ?」

「勿論です!祐一君のいない世界なんて意味ありません」

 嬉しい事言ってくれるねぇ。

「そしたら丁度、久瀬が通りかかってな・・・」

「久瀬を投げ入れた!」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・あはは〜。まあ久瀬さんですからどうでもいいですね〜」

「ま、所詮は久瀬だし」

「・・・佐祐理お腹空いた」

「あはは〜。帰ってご飯にしましょうね〜」

「そういえば、朝飯食い損ねたからなぁ」

「舞〜何が食べたい?」

「・・・・牛丼」

「牛丼好きだなー舞」 「・・・・なまら嫌いじゃない」

「あはは〜」

「うっし、そんじゃ帰りますか・・・・・俺たちの家へ!!」

「はい♪」

「はちみつクマさん!」

 俺達は爽やかな気分で帰宅した。




【痕書もどき】 え〜と・・・すみません。パクり過ぎました(汗)

はっきり言って、その場の勢いだけで書いた駄文でございます。

ちなみにコレは、風邪引いてる最中に書いたものなので、電波受信してます(笑)

こんな私ですが、これからも宜しくしてやって下されば幸いです。

最後になりましたが、此処まで読んでくださった皆様に大感謝



 ☆ コメント ☆ 綾香 :「修羅場ってるわね」( ̄▽ ̄; セリオ:「修羅場ってますね」( ̄▽ ̄; 綾香 :「…………」( ̄▽ ̄; セリオ:「…………」( ̄▽ ̄; 綾香 :「……ま、まあ……いくら親友でも、こればかりは譲れないってとこね」(^ ^; セリオ:「ですね。その気持ちはわたしも分かります」(;^_^A 綾香 :「うんうん」(^ ^; セリオ:「わたしだって譲れない物がありますし」(^^) 綾香 :「へぇ。セリオの譲れない物ってなに?」(^^) セリオ:「それはもちろん、過疎レンジャーの限定生産フィギュア!」(^0^) 綾香 :「…………」(−−; セリオ:「こればかりは、いくら綾香さんでもあげませんよ」(−o−) 綾香 :「いらんわ!」凸(ーーメ





戻る