チャンバワンバ・ドキュメンタリー映画

『WELL DONE. NOW SOD OFF』

  

2000年10月18日 リーズ・シティ・アート・ギャラリー


イングランド北部の秋の夜は、なかなか外出する気分になれないほど寒い。会場近くのパブでメンバーと待ち合わせ。私とジェフが一番乗りかと思いきや、エンジニアのサイモンがいた。続いてダンスタンがやって来た。彼はこの映画のプロデュースを手がけていて、編集がギリギリまでかかり、昨日ロンドンから戻ったばかり。かなり疲れているようで、雑談中も笑顔だけど、ちょっとナーバス。

「私、よしあきサンのチャンバ・ホームページに、感想書こうかなぁーって思ってるんだけど…」
「え?(@o@ そりゃぁ、マイった。」と、恥ずかしそうなダンスタン。
「とりあえず、ホメといてねぇ〜(^^;」と、横から顔をのばすボフ。みんな、相変わらずハッピーだ。

私と同行のジェフは、アルバム『Shhh』でヴァイオリンとマンドリン、『Anarchy』でもマンドリンでゲスト参加している良き友人。また、コンピレーション・アルバム『Sporchestra』のジャケット画も手がけ、ボフとはフェルランニング(山や丘を走るスポーツ)友達でもある。

さて、初めてのチャンバワンバ・ドキュメンタリー映画は、「第14回リーズ国際映画祭」での上映。チャンバの生まれ故郷リーズとあって、200人ほどで満員になる会場は活気に満ちていた。上映時間は1時間半。とにかくチャンバらしくて、実に楽しかった。

メンバーや友人が語る、バンド結成当時からのエピソード。ライブスケジュールが先に決まってしまい、慌てて担当楽器を決め練習し始めたとか。初レコーディングでサイモンが「チューニングして」と言うと、メンバーは「チューニングって何?」と答えたとか。

メジャーバンドとなった現在、普通なら隠しておくだろうこんなことも、この映画の中では紹介されている。例えば、ドラムのハリーがサイモンにキーボードを弾いてもらっているシーン。ハリーの頭の中では旋律が流れているのに、それが自分では弾けなかったのだ。彼らは楽器は上手く弾けなかった。けれど、当時のパンクバンドの多くがそうであったように、情熱とアイデアは誰よりも持っていた。

彼らは長い間、リーズのサウスヴューハウスという大きな家をスクワットして共同生活を送っていた。現在は誰も住んでいる様子はなく、半分廃虚と化している。その家を、ダンスタンが訪れる。89年初来日時も、彼らのチームワークの良さ、それでいて一人一人が独立していて、良い友人関係を保っているのを目のあたりにして感心した。サウスヴューハウスこそが、彼らのベースを作ったのかもしれない。

2年ほど前、ダンバートの手料理をごちそうになった時、とても美味しかった。彼いわく「サウスヴューハウスでは、週に1回食事当番が回ってきて、7〜8人分作ってた。だから、自然と料理ができるようになった。」と。スクワットといっても、16年前に体験したブリストル・パンクスのそれとは全く違い、そこには彼らなりのルールがあったことが容易に想像できる。

ダンスタンがサウスヴューハウスの屋上で、イギリス国内のチャンバについてのレビューを読み始める。どれもこれも、悪意に満ちたものばかり。あまりのヒドさに笑いがこみ上げる。彼らは、それさえも逆手にとって楽しんでいた。「チャンバがいかにつまらないバンドか」を、次々と説明していくジャーナリスト達。その姿が、だんだんと滑稽に見えてくるのだから、チャンバはさすが上手い!

イギリスの音楽業界は、過去も現在もチャンバが憎くて仕方がないのだろう。彼らがいくらケナしても、いつだってライブは成功するし、ファンも満足している。なんたって、彼らの助けなしにアメリカで500万枚売ってしまったんだから。イギリスとアメリカでは、チャンバの評価はあまりに違い過ぎる。アメリカでのテレビ出演やニュースが映し出されると、観客は思わず「オーッ!」とうなる。「チャンバはアメリカで大成功したんだなぁ。」とあらためて思い知らされた。

大ウケしたのが、アイススケートの男性選手が『タブサンパー』に合わせて滑っている姿。本人は大マジメだから、よけいに可笑しく場内大爆笑。いったい、どこの国の選手だったんだろうか? また、画像はメチャクチャひどい状態だったが、よくぞ残っていたと思わせる初期の貴重なライブ映像を観ることもできた。懐かしくもあり、年月が経ったことをあらためて実感した。

ボフは、シニカルなユーモアセンスたっぷり。アリスは、正直にハッキリ物事を語る。ダンバートはシリアスで、ルーは暖かい。ハリーはチャーミングなユーモアの持ち主。ダンスタンは明るく、ジェイドは自然体。そんな彼らの個性は、この映画の中でも垣間見ることができる。元ベーシストのメヴが出てこなかったことは、少し残念だったけど。今後、多少のメンバーチェンジがあろうが、成功しようがしまいが、彼らは彼らのペースで、ずぅーっと続いていくんだろうなぁ。映画を観終わった時、私は率直にそう感じた。

『WELL DONE. NOW SOD OFF(たいへん良くできました。そして、もうお呼びじゃないよ)』

これは、イギリスの某プレスのチャンバ評だ。それをそのままタイトルに使ってしまうセンスは、実に彼ららしい。「いつかはビデオ化したい。」それが実現し、日本で手に入る日はそう遠くないだろう。

(by Mitsuko in England)


BACK to