いつものように二人でチョコレートを食べていると、
「ねぇカール、歌が聞こえるよ?」
ティックがそう言って耳をすます。
確かに歌声が聞こえる。
「あれは子守り歌だね。」
「子守り歌?」
「ああ、お隣りに坊やがいるだろう?もう眠りなさいって、
母親が歌ってるのさ。」
「カールはもう寝なくていいの?」
「いいんだよ。」
「どうして?」
「もう、大人だからさ。」
「ふーん。もう大人だからか。」
ティックはうなずいて、チョコをかじった。
僕も一口かじった。
ほろ苦いビターの香りが広がった。