森本六爾著作紹介


『日本農耕文化の起原』
-考古学上より見たる日本原始農業の研究-                       

葦牙書房  昭和16年

 森本六爾先生の七回忌に藤森栄一が編集したものである。雑誌『考古学』上に発表された原始農業関係の論文をまとめたものである。序文として、聖書の中の一節からとった 「一粒の籾、若し地にこぼれ落ちたらば、遂にただ一粒の籾に終わらないであろう。」という有名な部分がある。本書は、初版は昭和16年8月であるがごく少数の出版であったらしい。私の所蔵している第二版は昭和18年2月で千部となっている。そして、藤森氏の出征後に出版された第三版は昭和22年12月であるが、第二版が初版と同体装をとっているのに対して当時の出版事情を反映してか雑誌状のものとなっており、紙質もかなり落ちている。その後、昭和44年3月に神田神保町の小宮山書店から初版と同体装で復刻されているが、この小宮山書店版は表紙の紙質が変わっており、必ずしも完全復刻ではないが初版の特徴をよくとらえている。

 現在では、古書店での初版の相場はかなり高くお目にかかったことはない、しかし、第二版は私の購入した平成3年当時の5500円であった。小宮山書店版は今でもときおり、小宮山書店の売場に並んでいることがある。価格は6000円程度のことが多いが価格は上昇気味である。 (97年7月1日現在の価格は8000円であった)なお、小宮山書店では雑誌『考古学』の復刻も行っており、多くの大学図書館に所蔵されている赤い表紙のものであるが、後に復刻された示人社版『考古学』と違って「考古学評論」「考古学年報」は含んでいない。


森本六爾 著

『日本農耕文化の起原』

昭和16年8月15日初版
昭和18年2月15日再版
(1000部)
発行者 藤森栄一
葦牙書房

処女出版が、私が心血をそそいで編輯改訂した森本六爾先生の『日本農耕文化の起原』だった。内容はむろんのこと、編輯、装幀、自分でいうのだから間違いなし、じつにしゃれた可愛いい本だった。 (『かもしかみち以後』より)

(本館所蔵・神田小宮山書店にて購入)


森本六爾 著

『日本農耕文化の起原』
-考古学上より見たる日本原始農業の研究-

昭和21年9月10日発行
昭和22年12月15日3版
発行者 藤森みち子

あしかび書房  

「私は思いきって、疎開して無事だった森本六爾先生の『日本農耕文化の起原』と直良信夫さんの『古代の漁労』の紙型を、中央印刷へほうり込ませた。この企画は成功して、紙は特配、できた新刊は日本出版配給株式会社即日買切ですぐ現金になった。

しかし、昭和十六年に出した初版のような精魂をかたむけたかわいい本とはちがっ、みじめさがあるばかりだった。それでも、当時の仙花紙横行のところへ、この二作は上ザラ紙であった。まがりなりにも「あしかび書房」は出発したのである。

(『考古学とともに』より)

(本館所蔵・NIFTY-Serve会員森川氏より寄贈されたもの)

 


森本六爾 著

『日本農耕文化の起原』
-考古学上より見たる日本原始農業の研究-

昭和16年8月15日初版
昭和18年2月15日再版
昭和49年9月15日覆刻
小宮山出版
 

 

(本館所蔵・神田小宮山書店にて購入)

 


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