トコトンやさしい『プラズマ』の本
「4章 超高温プラズマで人工太陽を創ろう(夢のエネルギー編)」より抜粋
48 化石エネルギーは枯渇するのか?
■究極可採埋蔵量とは?
●残存可採埋蔵量は確実に減っています
●薪、石炭、石油、天然ガス、そして、新エネルギーへの時代変遷
49 環境問題と新エネルギー開発
■自然の太陽と人工太陽
●人口増加とエネルギー消費は限界に近い
●将来のエネルギーは太陽、核融合、そして、2次エネルギーとして電気と水素
50 地上に太陽を創ろう!
■核融合炉の原理
●太陽は重力閉じ込め、地上の太陽は磁場閉じ込め
●核融合炉は燃料が無尽蔵、核暴走が無い
51 有名なアインシュタインの式E=mc2
■エネルギーと質量は等価
物理の数式は一般の人にはなじみが薄いと思われますが、世界で最も有名な現代物理学の式、それはE=mc2でしょう。化学式のH2Oと同じように若者のTシャツなどにプリントしてあるのを見かけることがあります。これは、エネルギー(E)は質量(m)に等価である事を示しており、アインシュタイン博士により発見されました。ここで、cは光の速度です。
宇宙線の素粒子反応や原子炉での原子核反応はもとより、我々の日常生活での化学燃焼反応でのエネルギー放出も、実は質量とエネルギーの相互変換として理解することができます。宇宙の創生期は高エネルギーの世界であり、エネルギー自体から物質がつくられました。逆に原子炉の反応では質量の一部がエネルギーに変わったことによる反応です。
宇宙のエネルギーは究極的には第4節で述べた4つの力に起因しています。これら4つのエネルギーは、運動エネルギーや熱エネルギーに変換されて、例えば電力エネルギーとして使われています。
人間社会では、一人では孤独で寂しく、大勢では喧嘩になります。幸せな2人の生活(核融合)や、派閥への分裂(核分裂)により安定するように、原子にも丁度安定な原子核の質量があります。原子1個あたりの結合エネルギーの放出量を図に示しましたが、最も安定なのが鉄です。
重水素と三重水素からヘリウムと中性子ができる反応を考えてみましょう。ヘリウムと中性子の各々の質量の和が、重水素と三重水素の各々の質量の和より小さいことがわかります。質量の一部が反応によって失われ(質量欠損)、エネルギーに変換されます。
水素のように軽い原子核が融合すると、エネルギーを出してより安定な状態になります(核融合反応)。一方、原子炉では、ウランのような重い原子核に中性子が当たると、より軽い原子核に分裂し、その時にエネルギーが発生します(核分裂反応)。
原子力発電では、ウランなどの核燃料が分裂するときの核分裂エネルギーを利用するのに対して、核融合発電では、重水素などの燃料同士が融合しあう時に発生する核融合エネルギーを利用します。これらの核エネルギーを熱に変換して蒸気タービンをまわし発電する方式は両者とも同じであり、二酸化炭素を発生しないので地球の温暖化や酸性雨被害を起こさない長所があります。
要点BOX:
●軽い元素は2つで融合、重い元素は2つに分裂
●質量欠損の相当分がエネルギーとして発生
52 トンネル効果で核反応
■不確定性原理
●不確定性原理、トンネル効果は量子力学の基本概念
●量子トンネル効果により核反応促進
53 常温核融合は可能か?
■熱核融合と低温核融合
●試験管核融合は幻の実験
●極低温・高密度でのピクノ核融合
54 新しい核融合反応
■ミュオン触媒核融合とスピン偏極核融合
●ミュオン触媒核融合では常温で可能だがエネルギー利用は難しい。
●スピン偏極核融合では反応率を上げ中性子発生を制御できます。
55 核融合炉の点火条件とは?
■プラズマ臨界条件と自己点火条件
●プラズマ臨海条件は外部プラズマ加熱入力と核融合熱出力が等しい
●ローソン条件は外部プラズマ加熱入力と核融合電気出力が等しい
56 プラズマを閉じ込めるいくつかの方法
■磁場核融合と慣性核融合
●磁場核融合はトカマク型、ヘリカル型、ミラー型。
●慣性核融合はレーザー型、荷電粒子ビーム型。
57 直線型で閉じ込めが可能か?
■磁気モーメント保存
●磁気鏡(磁気ミラー)の原理による粒子の反射
●磁力線方向の粒子の端からの損失が問題
58 ドーナツ型がなぜ良いのか?
■トロイダルドリフト
● 単純トーラスはトロイダルドリフトにより不安定
● プラズマ電流を利用するトカマク型と外部磁場のみによるヘリカル型
59 慣性で閉じ込める
■アブレーションと高速点火
●慣性核融合の「ドライバー」はレーザー光線または荷電粒子ビーム
●中心点火法はディーゼルエンジン、中心点火はガソリンエンジン。
60 磁場とプラズマの押し合い
■平衡と安定性
●平衡は力の静的バランス、安定性は擾乱に対する動的応答
●圧力不安定性は、プラズマ圧力、ベータ値を決定する。
61 プラズマの電流と圧力で不安定になる
■キンク、フルート不安定性とその安定化法
●キンク不安定性は導体壁により安定化。
●フルート不安定性は磁場のねじれ(磁気シア)で安定化。
62 粒子衝突と波によりプラズマは失われる
■古典輸送と異常輸送
●粒子衝突に起因する古典輸送、新古典輸送。
●波動による対流に起因する異常輸送。
63 閉じ込めを良くできるか?
■閉じ込め障壁と磁場構造の最適化
●半径方向電場の形成によりプラズマが回転しプラズマ中の渦を抑制できる
●電流分布を制御することで内部輸送障壁(ITB)を形成できる
|
山崎耕造 著
2004年7月 |
http://pub.nikkan.co.jp/cgi-bin/html.cgi?i=ISBN4-526-05316-3