トコトンやさしい『太陽』の本
「第1章 太陽とは?」より抜粋
3 太陽の中身と大きさは?
■アナクサゴラスの「燃える石」説
太陽は何でできているのでしょうか?「燃える石」でできていると説いたのは、古代ギリシャのアナクサゴラス(紀元前五百年頃〜紀元前四二八年頃)でした。「太陽はペロポネソス半島(ギリシャ南部の半島でギリシャ全土の約6分の1に当たる)くらいの大きさで地上6400キロメートルにある」と推論しました。当時の人々には途方もない大きさであり、とても信じてもらうことはできませんでした。
アナクサゴラスは、上ナイルの現在のアスワンダムの近くの町シエネでは、太陽が頭上にありまっすぐ立てた棒に影がない時、シエネの北方800メートルのアレキサンドリアでは太陽の傾きが7度であることを知っていたとされています。地球は平らであると信じて、アナクサゴラスは左図のように考え、太陽の高さを6400キロメートルと推定したのです。また、太陽の大きさの角度(約0.5度)から、太陽半径を56キロメートと考えました。これは、実際の太陽半径(約七十万キロメートル)に比べて1万分の1以下のはるかに小さな値です。地球が平らであるとの彼の仮定が間違っていたのです。
200年後のギリシャの哲学者エラトステネス(紀元前二七五年〜紀元前一九四年)は、太陽は非常に遠くにあり、むしろ地球が曲がっているからであると唱えました。同じ様なデータを用いて、地球の半径を6400キロメートルと算出し、今日のデータ6370キロメートルに非常に近い値を得ています。
太陽までの距離の現実的な測定は古代天文学の父とも呼ばれるヒッパルコス(紀元前一六〇年〜紀元前一二五年)によりなされました。月食時の月の満ち欠けの時間(約10時間)と皆既月食の時間(約5時間20分)から、視差法(角度差を用いた三角測量法)により月までの距離と太陽までの距離を比較したのです。
太陽は46億年前にできた天体です。大きさは半径で地球の109倍、重さは33万倍です。
要点BOX:
●アナクサゴラスの太陽までの距離と大きさ推定
●エラトステネスの球としての地球の認識
●古代天文学の父としてのヒッパルコスの推論
今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい
「太陽の本」
山ア耕造
第1章
太陽とは?
1 太陽は父なる星か?母なる星か?「神話から現代社会まで」
2 神々の中心には太陽神がいた「世界各地の太陽神崇拝」
3 太陽の中身と大きさは?「アナクサゴラスの「燃える石」説」
4 地動説は古代ギリシャにあった「アリスタルコスの太陽中心の地動説」
5 中世に体系化された天動説「アリストテレスからプトレマイオスへ」
6 近代の地動説の苦悩「ガリレオの宗教裁判と名誉回復」
7 夜空に輝くギリシャの神々「太陽の道にある黄道12宮」
8 太陽系惑星の発見「チチウス・ボーデの法則」
9 冥王星を惑星と呼べない理由「TNO(海王星以遠)天体」
10 星の明るさと年齢「HR図(ヘルツシュプルング・ラッセル図)」
11 宇宙の「凡人」としての太陽「主系列の星」
12 宇宙の「ものさし」としての太陽「太陽質量と天文単位」
第2章
太陽内部はエネルギーの宝庫
13 太陽の内部はどのように調べるのか?「太陽の地震学=日震学」
14 太陽の中心は圧力釜「重力によるプラズマの閉じ込め」
15 エネルギーは太陽の中心から「太陽は巨大な核融合炉」
16 太陽の光はどこからくるのか?「放射層は光を閉じ込める」
17 対流層からの太陽の鼓動「不透明な対流層と5分振動」
18 光球と放射温度の関係「黒体放射の法則」
19 太陽の光は白色の連続光か?「フラウンホーファーの暗線」
20 太陽磁場はどうしてできる?「太陽の中の発電機(太陽ダイナモ)」
21 太陽のあばた=黒点「バタフライ・ダイアグラム」
22 真っ赤な輪郭=彩層「皆既日食の紅色」
23 コロナはなぜ高温か?「太陽コロナ加熱問題」
24 太陽のための観測衛星「「ようこう」から「ひので」へ」
第3章
太陽から地球への贈り物
25 太陽光と日食「太陽での4つの力」
26 光を曲げる太陽の重力の威力「一般相対性理論の検証」
27 太陽はプラズマの風をつくる「超音速の太陽風」
28 美しいカーテンオーロラがゆれる「太陽風と地球地場」
29 太陽面爆発のエネルギーは磁気再結合から「フレアとマイクロフレア」
30 太陽からの宇宙線とは?「太陽宇宙線と銀河宇宙線」
31 太陽ニュートリノの謎を解く「ニュートリノ振動」
32 宇宙天気予報とは?「地球と宇宙の安全」
33 地球寒冷化と地球温暖化「自然の影響と人工の影響」
34 太陽活動と長期気温変動「ミランコビッチサイクル」
第4章
太陽系の広がりと宇宙の果て
35 地球と太陽系と宇宙の大構造「グレートウォールとクエーサー」
36 太陽系はどのように誕生したのか? 「原始太陽と原始惑星」
37 太陽系は何でできている?「水素とヘリウムで99%以上 」
38 地球型惑星は石の惑星「水星、金星、地球、火星」
39 小惑星は大小さまざま「小惑星の雄「セレス」とミニ小惑星「イトカワ」」
40 木星型惑星は巨大なガス惑星「木星、土星、天王星、海王星」
41 地球以外で生物は生存可能か?「ハビタブル・ゾーン」
42 短い周期の彗星のゆりかご「エッジワース・カイパー・ベルト天体(EKBO)」
43 太陽の重力圏と長周期彗星の源「オールトの雲」
44 我が太陽系と銀河系「天の川銀河」
45 局部超銀河団とは?「おとめ座超銀河団」
46 宇宙に果てはあるのか?「137億年のかなた」
第5章
太陽エネルギーの利用
47 太陽定数は定数か?!「太陽エネルギーの変動」
48 太陽熱をさまざまに利用する「光から熱エネルギーへ」
49 太陽光発電の現状は?「光から電気エネルギーへ」
50 太陽電池の原理は?「宇宙での活躍」
51 光合成は高効率か?「光から化学エネルギー」
52 宇宙太陽光発電(SSPS)とは?「マイクロ波送電と安全性」
53 レーザー宇宙太陽光発電と水素生成「近赤外レーザーの利用」
54 太陽光帆船(ソーラーセイル)と光子ロケット「夢の恒星間旅行船」
第6章
人工の太陽を創る
55 人工太陽の研究開発の歴史「水素爆弾」
56 自然の太陽と人工太陽の違いは?「重力、磁力、慣性力の利用」
57 核融合の原理「エネルギーと質量は等価」
58 ミニ太陽のいくつかの方法「磁場核融合と慣性核融合」
59 核融合エネルギーの生成の実証実験「重水素・三重水素核反応実験」
60 人工太陽ITERは燃えるか?「国際熱核融合実験炉」
61 太陽から月への贈り物「エネルギー資源としてのヘリウム3」
第7章
太陽と宇宙の未来
62 人類の未来は?「人口爆発と宇宙移住計画」
63 地球の未来は?「大陸移動の予測とNEOの脅威」
64 太陽の未来は?「老年期は白色矮星として」
65 銀河系の未来は?「棒渦巻銀河から楕円銀河へ」
66 宇宙の未来は?「膨張加速する平坦な宇宙」
67 太陽とともに「自然の太陽と人工の太陽」
【コラム】
芸術・文化・社会に見る太陽(1)
音楽:「ユア・マイ・サンシャイン」と「オ・ソレ・ミヨ」
芸術・文化・社会に見る太陽(2)
映画:「太陽がいっぱい」と「サンシャイン2057」
芸術・文化・社会に見る太陽(3)
文学、絵画、建築:「太陽の季節」、「ひまわり」、「太陽の塔」
芸術・文化・社会に見る太陽(4)
天文暦:太陽暦と曜日の名前
芸術・文化・社会に見る太陽(5)
国旗:日の丸と世界の太陽旗
芸術・文化・社会に見る太陽(6)
政治:太陽政策、太陽党
参考文献
索引
|
山崎耕造 著
2007年9月 |
http://pub.nikkan.co.jp/books/detail/00001569