京都と私と妹と(1)

私は京都が好きです。どこが好きかときかれると「京都で空気を吸ってるだけで幸せをかんじるくらい好き」と答えています。なぜか京都のどこが好きなのか明確に答えられないので、そう曖昧に答えるようになってしまうのです。

ハワイもまた然りで「ハワイのどこが好き?」と聞かれると、私の口から出てくることばは曖昧な言葉で、相手を納得させるような言葉がでてきません。どういう風に好きかを言葉にするとなにか嘘をついているような気がしてならないのです。

いつか機会があったら、そういった京都への思いを表現できたらなぁと思っていました。HP開設がそのいい機会だと思って、少しずつ過去の記憶を紐解きながら書いていくことにしました。
そのうち京都のどこが好きなのかちゃんと言えるようになるかも知れません。気長におつき合いくださいね。

はじめての京都は中学校の修学旅行でした。しかし、京都のことで印象に残っていることは、余りありません。

夜、とても綺麗な夜景を見に行った事、

バスガイドさんが、「ここが沢田研二の家よおうっ」と興奮して案内してくれて、ガイドさんが
沢田研二ファンだということがわかった事・・・それくらいでした。

と、いうのも、私が卒業した中学校は生徒数が多いことで知られた中学校で、私の学年も10クラスまであり、ちょっとした移動にも時間がかかり、疲れてしまっていたのです。なにしろ京都に来る前に奈良を旅していたものですから。京都に着いたときには、疲れてはやく眠りたいとばかり思っていました。

ニ度目は高校時代の友だち4人と、3月はじめに京都を訪ねました。まだ、十代のころです。3月にはいったばかりの京都はとても寒くて、天気もくもったり薄く日が差してきたりで、清水寺への階段をのぼる足の先が、かじかんで痛かったのを覚えています。

清水寺の本堂まで来ると、見晴らしがよくなり、遠くにうっすらと京都タワ−と市内が見えました。京都タワ−のあるあたりだけ日がさしていて、街が白く優しげに光って見えています。私たちの居る清水寺のあたりは「どんより曇っているのになぁ」
なんて思っていたら友だちの一人が「おっ、雪だ」と声を挙げ、同時に私の目にも白く細かい雪が映りました。
陽を浴びて光り、春を思わせる京都市内をバックに降る雪は、不思議な感じ…

まるで神様がうっかり間違って降らしてしまった雪のような…。清水寺に雪がつもる様を想像してうれしくなった私でしたが、春の雪はぱらっと挨拶程度にふっただけで、すぐにやんでしまいました。

三度目は京都にこだわって京都行きを決めたわけではありませんでした。当時、京都で「世界都市博」が開催されていて、ヨ−ロッパ旅行から帰国したばかりだった私は、その「都市博」が見たくて見たくてそれが目的で秋に京都へいったのです。 

しかし旅行が終わって気がついてみると、世界都市博より、京都の町を歩いていることのほうが思い出に残っていました。帰る時、京都を離れるのが名残り惜しくて切なくて「また絶対京都に来ようね」と妹と約束したほどてす。その約束は守られており、その後、何度も京都行きを重ねました。

そんなある時、私は気ままに京都を歩きたくなって、ひとりで京都を訪れたました。気ままにのんびり京都を歩くなんて楽しいだろうなぁと思っていたのですが、一人で旅してみると、寂しくて気ままに歩くどころではなかったのです。今が盛りと咲き誇る桜を見ても「綺麗だね」と、ひとこと言える相手がいないということが予想以上に寂しかった…。

「京都の恋」という本のなかに、恋人と別れる決心をした主人公の女性が、最後の思い出づくりに、恋人との思い出が沢山ある
京都を旅したいと思うシ−ンがあります。
このとき主人公の脳裏にフラッシュ・バックのように蘇る京都の思い出は有名な観光名所でもなく、いかにも京都らしいとされる風景でもありません。
百万遍と書かれた市バスのバスプレ−トであったり、鳩の笛のような信号音を頼りに横断歩道を歩く老婆の姿だったり、北白川のテニスクラブを囲む青葉、

北山通りの銀杏並木とハンバ−ガ−ショップのモノクロの看板、黒光りした格子戸が並ぶ袋小路、比叡の山の雪化粧。彼女が思い出している風景は、恋人の肩ごしにみた京都の風景です。恋人の運転する車の車窓に展開する京都の何気ない風景。

彼女が思い出す京都の風景には恋人の姿があるはずです。

私も関東の自宅にいて、こうして京都を思う時、浮かんでくる風景は何気ない京都の風景で、そしてその風景にはかならず妹の姿があるのでした。妹とは、もう数えきれないくらい京都の町を歩きました。どこの街角の風景を思い出しても、妹の姿が当然のようにあるのです。
これから先、あと、何度妹と京都に行けるでしょうか。
それを考えると、寂しくなる私なのですが・・・・

しかし、妹はひとりで京都を旅しても、少しも寂しくないようです。京都独り旅を終えた妹に「寂しくなかった?寂しくなかった?」と、しつこく聞いたのですが「ひとりって気ままでいいや、楽しかった」と言われてしまいました。・・・姉の心妹知らずだ(笑)

このペ−ジで使用した写真はすべて京都で写したものです。上から
*東山・石塀小路
*清水寺で雪がちらついた直後に撮影した若かりしころの私
*三条大橋のうえからみた京都の空

                             

ほ−む

めにゅ−

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