No.006 東海旅客鉄道 (西日本旅客鉄道) 100系新幹線「ひかり104号」(104A)
新大阪 ⇒ 東京 試乗日 2000年2月15日(火)
北風が吹きつける新大阪駅に入線してきた「ひかり104号」
「新幹線新時代」 こんな言葉を最近よく耳にする。 来る3月11日には、2000年最初のダイヤ改正が行われ、
東海道・山陽新幹線では速達列車の「のぞみ」化がさらに進むという。 また、山陽新幹線では従来の「ひかり」にも
手が加えられ、「のぞみ」用とは異なったコンセプトを持つ700系を使用した、「ひかりRailStar」として新たに走り出
す事となった。 これにより大幅なスピードアップと、快適性が提供される事となりそうだ。
しかしその一方では、昨年の東海道区間からの0系引退に引続き、山陽区間でも今改正で、0系による定期「ひ
かり」運用が、消滅してしまう事となった。 そんな状況下、唯一営業が続けられてきた100系「グランドひかり」の
食堂車が、今改正にてとうとう営業終了する事となった。 実際は食堂車自体、当面非営業で編成に組込まれる事
になるのだが、事実上、博多開業を控えた昭和49年9月より続く「新幹線食堂車」の歴史は、これで終焉を迎える
事となる。 またこれは、日本の鉄道上から、昼行列車の食堂車が消える瞬間でもある。
今後も一部豪華寝台特急の食堂車や、僅かに残ったビュフェ等で、車内の供食体制は残るとは言うものの、もは
や完全に車内供食の主流は、ワゴンサービスや自販機によるサービスに移ったものと思われる。
今回はこの消え行く「食堂車」と、登場後約10年を経た、100系「グランドひかり」の旅を楽しんで行こうと思う。
2月15日(火) ここ大阪は、降雪の恐れがあるという天気予報に反して、早朝から晴れ渡っていた。
しかしながら、吹きつける北風が冷たく、「そんな予報もまんざらでもない。」といった感じの空模様だった。 確かに
日本海側は既に雪の様である。 私は早朝から、大阪駅構内にて撮影を行っていたが、北陸・山陰から到着した列
車は、一様に雪を付けたまま入線してきた。 そんな天気の下、東京に向け100系新幹線「グランドひかり」の旅を
始める事にしよう。
撮影をしていた大阪駅から、207系電車で新大阪駅に移動したのは、10:45分頃であった。 在来線ホームよ
り2Fのコンコースに上がってみると、まず来る3月11日にデビューする「ひかりRailStar」の告知広告が目に入る。
また、昨日泊まったホテルで見たテレビでも、スポットCMが頻繁に流れていた。 この事からも、JR西日本の力の
入れ様がよく分かる。
すっかりお馴染みになった?新幹線用自動改札をくぐると、早速26番線ホームに上がってみた。 ここは新大阪
駅の1番山側にあり、しかも障害物が無いので、北風に直接さらされ寒々していた。 そんな中、ホーム上は自由
席車入口付近を中心に、大勢の乗客が既に列をなしていた。 また、食堂車付き新幹線にも関わらず、事前に駅
弁を買い求めている客も多く見られた。 それは「もう新幹線には食堂が無い」という事実が、常識となっている事を
証明している様でもあった。 一方下り線ホームには、消え行く運命にある0系新幹線の姿も垣間見れた。
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(左)新大阪駅コンコース ひかりRailStarの広告 (右)新大阪駅26番線より |
11:15分、新大阪駅26番線ホームに「ひかり104号」が入線してきた。 この列車は博多始発7:59分で、もう
既に3時間以上の長旅をしている訳だ。 早速ドアが開いたので、車内に入ってみる。 指定・自由席とも大阪での
乗降が多い為か、発車時刻の11:17分ギリギリまで車内は慌しかった。
そしてとうとう発車時刻になった。 「ひかり104号」は、ゆっくりと新大阪駅を離れていった。
この「ひかり104号」は博多からの直通運転なので、この先の停車駅も京都、名古屋、新横浜と少ない。
「のぞみ」への立て替え等で、今では少なくなった「ひかり」らしいスジで、走って行くのである。
早速車窓に目をやるのだが、辺りはすっかり晴れ渡りすがすがしい天候だ。 この時点で私は、その後の天候の
変化を、全く想像することが出来なかった。 車内が落ちついた所で、お目当ての「食堂車」に行ってみる事にした。
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(左)大阪〜京都間を快走
(右)間もなく京都に到着 |
食堂車は、編成中央の8号車に連結されており、私が乗車した6号車からは至近距離にあった。 食堂車に近づ
く程に、独特の「匂い」がしてきた。 この食堂車は他の100系食堂車(X編成車)と同じく、2階建て構造の食堂車
である。 しかし登場当初、既存の食堂車と差別化を図る為、若干豪華志向に振った内装になっている。 これは
「グランドひかり」車両登場時における、最大の売り物でもあった。 そんな様子は、2階席に上がる階段付近から
感じられた。 この階段室付近には、ステンドグラスが一部配置され、また車端部には「瀬戸大橋」のモニュメントが
飾られていた。 食堂室内に入ると早速、ウエイトレスが席の案内をしてくれた。
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(左)食堂車への階段 ステンドグラスが光る (右)食堂入口のメニュー |
時間は11:30分前で、だんだん昼食時間に入ってきた所だが、まだまだ席に余裕がある様でもあった。 私は
海側のテーブルに腰掛けた。 すると早速グラスに注いだ水が運ばれ、注文を尋ねられた。 そこで私は「ハンバ
ーグセット」を注文した。 ところで、新幹線食堂車の定番メニューといえば「カレー」か「ハンバーグ」だと、昔どこか
の本に書いてあった事を、私は記憶している。 その為か今回は迷わず「ハンバーグ」を選択してみた。
そして注文が出てくるまで、しばらく2階建食堂車からの眺めを楽しんでいた。 さすがに2階建て車両だけあって、
眺望は抜群であった。
やがて、注文した料理が運ばれて来たのだが、以外にも思った以上に早く出て来た。 これは待ち時間を忘れ
て、車窓に目が行っていた為だろうか・・・? ただ階下の調理室は、戦場の様な忙しさで調理をこなしている事は
確かであろう。 しかしこの2階席には、そんな様子を感じさせない「穏やかな空気」が流れていた。
また、2階席の食堂スタッフ達もゆれる車内の中、そんな事を感じない佇まいで、仕事をこなしていた。 ただ重労
働である事は確かで、時折疲れた様な表情をするのが気になった。 まあそれは差し置いて、早速食事をしてみる
事にしよう。
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(左)食堂車の車内風景
(右)運ばれてきた料理 |
「ハンバーグセット」はハンバーグ・ベーコンの炒め・野菜サラダに、パン又はライスを選択するというメニューで、
他にもドリンクがセットされている。 味はそれ程凄いという訳ではなく、普通のファミレスで出て来る「ハンバーグセ
ット」並みではあるものの、流れる車窓を眺めながらの食事なので、それ以上の醍醐味がある。
また2階建電車特有の優越感も、私の心を優雅にさせてくれた。 丁度食事をしている間に、京都への到着を告げ
る放送が流れてきた。 京都は11:32分の到着で、2分停車の後34分の発車となる。
この京都駅を過ぎると、急に食堂車の客足が増えてきた。 大体のテーブルが埋まっており、私の座ったテーブ
ルを含め、一部相席になる所もあった。 やがて走り出した列車は、山科の山を越え滋賀県内に入っていた。
この滋賀県内に入るや否や、先程までの青空が曇り空に変わっていた。 そして、いつの間にか雪が降り始め、
車窓は銀世界になっていた。
「雪の中を走る食堂車での食事。」これは全く、乗車時に予期できなかった展開だ。 確かに天気予報は当たって
いた様である。 そんな雪景色の中、私を乗せた食堂車は進んで行く・・・。
これは本当に貴重な経験で、去り行く食堂車にとっては、まるで「なごり雪」のような物だったのだろうか? こんな
時ならぬ「雪景色」を眺める内に、既に列車は米原付近を通過し、関ケ原越えに差しかかっていた。
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(左)琵琶湖東岸〜関ヶ原は 雪の中だった。 (右)2階建車両からのすれ違い |
私は、最後に運ばれてきたコーヒーに舌鼓を打ちながら、雪の関ケ原を眺めていた。 その関ケ原付近を通過
して、列車が岐阜県内に入って来た頃、私は食堂車を後にした。 結局ご会計は¥1.050−で、以外と安く上が
ってしまった。 聞く所によると、最後の1ヶ月間は「食堂車謝恩企画」という事で、全メニュー1割引に提供との事
だった。 また一部メニューは、昭和50年の「博多開業当時」を再現した特別メニューとなっている様であった。
今日の食堂車営業は、ジェイダイナー東海営業所が担当し、2階席ではウエイター・ウエイトレス計3名、1階調理
室ではコック2名と、他に併設された売店に1名。 計5名のスタッフで運用されていた。
(他に車内販売の方が2〜3人いますが・・・。)
食堂車の客層は、平日とあってビジネス客が殆どであるが、それでも食堂車営業廃止
のニュースを、新聞等で見て来たと思われる客もいた。 なお鉄道ファンらしい人影は無
かった。 こちらは休日や廃止直前になると、異常に増えるのでは無かろうか?
その後私は食堂車を後にし、各車両の様子を見て回る事にする。
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