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★プロフィール★

帖佐 隆。。
久留米大学法学部教授(法律学科、知的財産法)
弁理士。

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★出版のお知らせ★

このたび、帖佐隆。。は、
著書「職務発明制度の法律研究」を完成させ、
出版することとなりました。




「職務発明制度の法律研究」久留米大学法政叢書16
帖佐 隆 著
株式会社 成文堂より出版。

本体価格: 5,000円
判型: A5判上製

ISBNコード: ISBN4-7923-3225-9


URLはこちら↓。
http://www.seibundoh.co.jp/book_s/book.cgi?Isbn=ISBN4-7923-3225-9


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帖佐隆。。の知財政策日記
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★2009年6月30日(火)★

結局、荒井寿光さんは発明者の保護なんて考えていないのではないか。

馬場錬成さんのお友達の荒井寿光さんが2002年にこんなことを述べています。

荒井寿光さん 知的財産国家戦略フォーラム 代表(当時)(元特許庁長官)。

***(以下、引用)***

 プロパテントの議論は,メーカーの開発現場にいる研究者や技術者にとって人ごとではない。自分のこととして意識してほしい。私は,職務発明制度を廃止すべきだと主張している。
 職務発明制度に「相当の対価」というあいまいな表現があるのが問題だ。「相当」とは何か,これに対して,会社と技術者の間でコンセンサスができていない。中村修二さんの裁判が好例といえる。日亜化学工業は「2万円で十分」といい,中村氏は20億円を要求する。つまり,10万倍の開きがある。こんな中途半端な制度があるから技術者が浮かばれない。会社と技術者が個別に契約する方がどれだけすっきりしていることか。
 ただ,そうなると,優秀な技術者が他国に流出するという意見がある。それはその通り。他国の企業に負けない条件を日本企業が提示することができなければ,残るはずがない。むしろ大事なことは,世界中から優秀な技術者が集まってくるような環境をつくることです。技術に国境はないわけで,日本のエレクトロニクス企業は国際的なサバイバル・ゲームを既に始めてしまった。今更鎖国するわけにはいかず,もう後戻りはできない。

***(引用終わり)(日経エレクトロニクス2002年8月12日号176頁~178頁 荒井寿光氏インタビュー記事「立派な猫は居るだけで鼠が来ない」記事中178頁より。)***

 昔の記事をいまさらネタにするのもなんですが、まあ、考え方はかわっていないようですし、ちょっと論評してみたいと思います。
 しかし、官僚のいうことって漫然と聞いているとだまされそうになりますが、きわめて世論をミスリードするようなことを言っていますね。あきれるというか、なんというか。欺瞞に満ち溢れた発言だと思わざるをえません。この発言の問題点を分析してみますと、次のような問題点がみえてきます。

①あえて反対のことをいう。
 「こんな中途半端な制度があるから技術者が浮かばれない。」などと一言放つことによって、特許法35条が技術者の処遇を悪くしているようなことを言う。そうすると、法制度をよく知らない人はそのような先入観を持ちますよね。私でさえ漫然と聞いているとだまされそうになります。なんともインチキですよね。
 しかし、冷静に考えると、荒井さんがいう「中途半端な制度」のおかげで中村修二さんは6億円の対価を受け取ることができたのです。なので、中村さんからすると不満かもしれませんが、35条があるからこそ、2万円から6億円に「浮かばれ」たのです。このへんをどう説明するのでしょう。
 もし、35条がなかった場合、日亜化学工業(株)は中村さんに6億円を支払ったでしょうか。私には到底そのように思えません。また、キヤノンの箕浦さんにも5600万円の対価額が認容されていますが、では、対価請求権がなかったら、キヤノンは当初出した87万円以上の額を出しますかね。私は出さないと思います。ちなみに、この箕浦さんの事例はキヤノン自ら社長賞を与えているのです。すなわち、キヤノンとして自ら最上級の評価をしているのです。でも87万円しか出さない。そうなると、対価の是非はともかくとして35条がなくなったら高額の報酬が得られるなどということを示唆するのはきわめてミスリードです。大間違いです。
(もっとも、荒井さんがうまいのは、35条がなくなったら高額の報酬が得られる、などとは言っていないのです。「浮かばれない」としかいっていない。言質はとられていない。まさに官僚のタヌキ度100%。うまいなあ。潜在的に35条が廃止されれば技術者の待遇が上がるようなニュアンスは述べていますが、報酬が上がるとはいっていない。)


②荒井さんは35条廃止が技術者の不利益になることを認識していること。
 荒井さんは、「ただ,そうなると,優秀な技術者が他国に流出するという意見がある。それはその通り。」と述べていますよね。だから、35条を廃止したら、技術者の待遇が下がることを認識しているのです。認識しておいて、「こんな中途半端な制度があるから技術者が浮かばれない。」などと述べるのはちょっとどうなんですかね。ひどくないですか。
 結局、荒井さんは技術者保護なんてなにも考えていないと思わざるをえないのです。荒井さんは官僚の嗅覚として、35条廃止が技術者保護になるといわなければ35条廃止が実現できないからそういっているのだと思います。その辺り、とてもタヌキオヤジだと思いますね。


③技術者が流出してしまう政策って、理念としてどうなんですかね。
 荒井さんは、「ただ,そうなると,優秀な技術者が他国に流出するという意見がある。それはその通り。」といいますが、いくら“暫定的”とはいえ、技術者の流出を是とする政策に私は賛成できません。
 例えば今の営業秘密保護法制をみてください。やたら刑事罰でしょ。その合言葉としては、海外に技術流出をしてもいいのか、というものです。これに対して、技術者が海外流出してOKという政策でよいならば、情報の流出はNGだが、人間の流出はOKということになってしまいます。生身の人間より無体物にすぎない情報のほうが大事だと。とてもじゃないけど、こんな政策、到底のむわけにはいきませんよ。
 一般に、知財の保護が必要なのは、人間が幸せになるためだと私は思うわけです。ですから、人間が幸せになるために知財がある。知財の保護によって人間が幸せになる。このために知財があるのです。にもかかわらず、知財の流出はいけませんが知財を創出する人間は流出しなさいというのはおかしいでしょう。なんのために知財を保護するのかわからない。本末転倒です。これでは
知財栄えて万骨枯るではないですか。
 このように考えると、荒井さんの知財観というのは、けっして創作者の保護ではなく、創作者から横取りした知財を、日本にいる一部の人間がむさぼり食う、という構図を目指しているのではないか、と思ってしまうのです。営業秘密を海外流出させず、技術者の海外流出はOKというのはそういうこと。そうではなくて、知財はその創出した人に適正に還元をすることによって、知財を創出した人が幸せになるようにすること、そうあるべきだと私は思うのです。
 このへん安念潤司さんとも私は怒鳴りあったことがあるのですが、安念さんも、流出して幸せになるならそれでいいじゃないか、というのです。しかし、以下の⑤とも関係するのですが、祖国で生活できなくて何か幸せなんですかね。ちょっと違うと思わざるをえないのです。


④制度の代償として掛け声かよ。
 荒井さんは、「ただ,そうなると,優秀な技術者が他国に流出するという意見がある。それはその通り。他国の企業に負けない条件を日本企業が提示することができなければ,残るはずがない。むしろ大事なことは,世界中から優秀な技術者が集まってくるような環境をつくることです。」というが、これって単なる掛け声ですよね。
 掛け声も大いに結構ですが、結局、制度の代償にはなっていない。「世界中から優秀な技術者が集まってくるような環境をつくる」ためにどのような制度をつくるかが問題なのであって、「世界中から優秀な技術者が集まってくるような環境をつくる」ためには何をするのか。技術者を優遇している企業に補助金を出すのか。表彰をするのか。また逆にそういう環境がない企業にペナルティを科すのか、まあそういったことがよいとは思いませんが、結局そこは何もしないということでしょう。結局、制度の代償としては何もないのです。まやかし。
 荒井さんにいわせれば、「企業よ、環境を作れ」という掛け声を述べているだけで、結局何もしない。結局、企業もそういった環境は作らないし、技術者はおそらく低処遇なだけです。掛け声をかければ自然にそういった環境ができるとでもいうのですかね。そういった環境ができているのであれば、35条があったってできているのですよ。35条は対価請求権の保障以上の待遇を禁止していないですしね。自然に任せればうまくいくなどということは従業者の問題については、ないと思いますね。企業は皆、人件費は削減したいのです。


⑤流出と進出は違う。
 私は、この問題について、流出と進出は違うと思うのです。野茂やイチローは進出であって流出ではない。中村修二さんやノーベル賞の南部さんや利根川さんも進出であって流出ではないと思うのです。
 昔から外国に進出する日本人はいました。その人々は、自らが望んで海外へ挑戦しているわけです。こういった人々は海外へ自ら跳んで幸せを得る。これについては何の文句もありません。
 ところが、ここで荒井さんがいう「優秀な技術者が他国に流出」とは、これは進出ではない。すなわち、日本で待遇が悪いから仕方なく外国へ行く人々でしょう。これって幸せなことですかね。繰り返しになりますが、こういう政策がいいとは思いませんし、こういう事態を野茂、イチローと一緒にするのは間違っていると思うのです。野茂、イチローらは日本でも充分高処遇なのですが、夢を求めていくのです。ところが後者は日本でどうにも生活が苦しいので行く。全然違います。
 こういう流出がいいだなんてとても言えませんね。発明者が全然幸せになれない流出。進出とは違います。とてもよい政策だなんていえません。


⑥実際問題として35条廃止で高処遇はありえない。
 で、この荒井的政策ですが、何も手を打たず、自然に委ねるのでは絶対に技術者の処遇UPはありません。対価請求権廃止だけで終わり。今まであった対価がなくなるだけです。処遇等はそのぶん間違いなく下がる。
 結局、日本社会って優秀な技術者をとるために処遇を上げる、という習慣が少ないのです。また、日本企業は横並びであり、横並び団体まであるくらいですから、結局、日本全体が処遇は安値安定となります。
 そうした場合に日本人が外国に流出することによって日本の企業が危機感を持ち、日本での処遇が上がるためには、かなり大量の人々が外国へ移動しなければ、日本企業が高処遇を与えるインセンティブにはならないと思われます。若干の人々が外国に渡るだけでは、代わりの人がいますから、そういうふうな高処遇にはならない。高処遇にするのは、新大陸を目指すイギリス人くらい大量に移民が増えないと高処遇にはなりません。
 しかしながら、日本人にとって外国へ移住するというのは、そこにはとても大きな障壁があるわけです。やはり距離の問題、家族の問題、環境の問題、なんといっても故郷がいい。日本がいいわけです。ですから、そう簡単には外国には移住できない。移住者は少なくならざるを得ず、大量の流出というのはありません。
 そうなると、結局は、日本の技術者は低処遇で安定した横並びのままです。
 (この場合、まさか、海外へ流出しない日本の技術者が悪い、なんていわないでしょうね。荒井さん。安念さん。馬場さん。)
 ゆえに、35条を廃止しても、対価分がなくなるだけで、その分高処遇になるということはないと考えざるをえません。これが私の結論です。



 以下、推測なのですが、結局、荒井さんは単に亜米利加の真似をしたいだけなのではないでしょうか。結局、なんだかんだいって荒井さんは亜米利加の政策がお好きなよう。亜米利加の猿真似をした制度をやることが大好きなだけなのではないかと思うのです。亜米利加と異なる制度が日本にあるのが気に食わない。そういった程度だと思うのです。だから亜米利加と同じにするために、発明者受け狙いのセリフを吐いたりしている。私はそう思ったりしています。逆に、荒井さんが発明創作の活発化を本気で考えているとは到底思えないのです。
 日本発の発明者啓発制度を作ろうなどとは遠く思考回路は及ばない。そんなことでいいのですかね。結局、充分にインセンティブを発揮できない技術者が多くなるだけ。これでは発明の創作そのものが沈滞しますよ。よって、いい加減なことをいうのはやめにしてほしいと思ったりするのです。


2009年6月27日(土)

どうにも支離滅裂な馬場錬成氏の主張。

 6月13日と14日は知財学会なるものに行ってきた。

よせばいいのに、6月14日の東京理科大の馬場錬成氏の発表「画期的な発明を生かすことができない日本社会」(2B3)なるものを聞いてしまったのであった。

 その発表の趣旨としては、

①日本の個人発明家や中小・ベンチャー企業からは優れた発明がしばしば出てくる。

  ↓

②しかし、日本の大企業が特許権のライセンス交渉を受けない。潰しにかかる。

  ↓

③結局、日本固有の優秀な技術が潰されたり、海外企業で実用化されたりする。

  ↓

④日本の中小・ベンチャー企業に対する保護政策が必要だ。

というものだった。 

そして、その④にいう実行すべき保護政策の内容として馬場氏は、

「同一者の無効審判の回数の制限や、登録後に一定期間が過ぎた特許は、無効審判はかけられない」

「日本でもディスカバリー制度を導入」

「技術を評価する認証機関を設置し、この機関でお墨付き(技術認証)を出した場合は、ライセンス交渉の席につかせる。(交渉出頭請求権)」

「技術認証された技術には、融資の優先権を与えるとか開発助成金を付与」

(いずれも馬場氏2B3同発表予稿より引用)

というのである。

 

 確かに、日本の中小・ベンチャー企業に対する何らかの保護・育成が必要という点は私も同感である。

 しかし、この馬場氏の意見には私はさすがに納得がいかないのである。

 というのは、馬場氏は、職務発明についての特許法35条を廃止しろ、ということをかねてから言っていて、企業内技術者のインセンティブの問題については契約自由の原則に委ねればすべてうまくいく、というのである。この意見は変えるつもりはないらしい。

 それにひきかえ、馬場氏の意見だと、上記のとおり、中小・ベンチャー企業に対しては最大限の保護政策を与えるべきだという。馬場氏が主張する中小・ベンチャー保護の内容は究極の至れりつくせりである。

 中小・ベンチャー企業については至れりつくせりにしろ、といっておいて、企業内技術者に対しては、しっかり契約すればいいだろう、新自由主義的政策をとればすべてうまくいくのだ、といった、あまりにも従業者に冷淡で正反対なことをいうのである。このギャップがまったく理解できない。まったく意味不明であり、支離滅裂である。

 また、無効審判の制限等は主張としては理解できるにしても、中小企業において「交渉出頭請求権」までいくと、さすがにちょっとどうかと思ってしまう。ここまで至れりつくせりになると、もはや「手取り足取り」の世界になってしまい、さすがにやりすぎと思わざるをえない。大企業が中小企業の技術を買うのは義務だ、みたいな話だろう。これは企業活動という観点からすればちょっと違うだろうが。

加えて、またどこからお金が降ってくるのかわからない補助金政策。財源はどこにあるのかね。なんとも手厚い保護政策である。

 

馬場さんは、上記②の現象である

「日本の個人や中小ベンチャー企業の発明は大企業がライセンスしない」(馬場氏2B3同発表予稿より引用)

の背景を分析しており、馬場さんは、

「独創的な技術開発よりも同業者で群れる企業文化」

「日本企業の体質は総じて、次のようなことが言える…(中略)…人の特許やアイデアに敬意を払わない…(中略)…自社の利益のためなら個人ではできないことでも会社のためという大義名分のもとに何でもやる…(中略)…同業者が参加することに参加しないと村八分になる…(中略)…余計な金(ライセンス、ロイヤリティなど)を使いたくない」

「なぜ、技術競争ではなく、仕事を取り上げることで発明者をいじめるのか…(中略)…なぜ、個別企業だけでなく業界団体が無効審判に加わったのか…(中略)…なぜ、…(中略)…を実施していない企業まで無効審判に加わったのか…(中略)…ここに日本の業界の談合体質が余すことなく出ている。こうした技術とは縁のない談合体質がある限り、革新的な発明が世の中に出てくることは難しい」

(いずれも馬場氏2B3同発表予稿より引用)

という。

 

これらの点については、私も同感な部分がある。でも、馬場さんはそこまでわかっておいて、なぜ職務発明制度については冷淡なのか、それがわからない。なぜ35条を廃止すればうまくいく、というのであろうか?。

馬場さんは、35条については、35条を廃止→従業者が報われない→創作意欲の低下→いずれは日本企業のどこかがこれに気づいて優位な処遇をする企業が現われる→優秀な技術者には高報酬が支払われる世の中になる、というサイクルによって有能な技術者は報われる旨を説明している。

しかし、馬場さんいわく、「日本の業界」は「談合体質」なんでしょ?。日本企業は横並びなのでしょ?。だとしたら、日本企業は横並びであるのだから、日本企業は全体として従業者の処遇を抑えこみに行くのではないだろうか。そして、日本全体が低い処遇だとすると、技術者は他へ行きようがないから、いつまでもその低い処遇で我慢し続けなければならない。そうなると、いつまでも日本の従業者のインセンティブは活性化しない。そうなると、日本企業の従業者はいつまでも幸せになれない、ということになる。

馬場さんは、日本企業が「同業者で群れる企業文化」とか「余計な金」を「使いたくない」とか「人の特許やアイデアに敬意を払わない」というが、そこまでわかっていて、従業者に対してはどうして35条廃止、新自由主義、なのかがわからない。

横並びであるのだから、どんなに優秀な技術者でも日本企業で高く雇ってくれるところはほとんどない(いつも給与水準は他社を気にしているでしょ。賃金を抑えるときの理由って他社がうちよりも低いから、うちもそれにあわせる、ですよ)。そう「余計な金」は「使いたくない」のである。だから優秀な技術者でもあっても安く使いたいのである。

「人の特許やアイデアに敬意を払わない」、それは企業内でも同じである。優秀な発明者であっても決してリスペクトはしていない。一種のコストとしてしかみていない場合が多い。また、企業の論理では、発明者が偉いのではなくて組織からなんとなく出てきたのが職務発明。そんな意識である。企業からすると、職務発明は技術者を雇っていれば自動的に出てくる、という立場なのだから。

よって、賢明な人ならばわかると思うが、この点、馬場氏がいう中小・ベンチャー企業における問題点がそのまま職務発明にもあてはまるのである。つまり同じ構造なのである。にもかかわらず、馬場理論では、企業従業者と中小・ベンチャーの対比において、言っていることが正反対。ゆえに支離滅裂なのである。

 

馬場さんは、優秀な技術者を処遇することが自社利益につながることが、いつか日本企業にはわかる、だから、契約自由でも日本の技術者の処遇は上がる、旨をいいますが、この職務発明における馬場理論を中小・ベンチャー企業に援用するならば、日本の大企業も中小・ベンチャー企業を評価して彼らの技術にお金を払うことによって、よりよいオープンイノベーションの関係が築け、ひいては自社企業の利益につながる、ということが、いつかは日本企業がわかるはずなのではないだろうか。でも、馬場さんによれば、日本企業はいつまでたってもそれがわからないのだろう?。この結果からみれば、企業内技術者だって、同様に、発明者をリスペクトせずに低処遇に抑え込むことになるのだよ。すなわち、職務発明についても、35条を廃止してもまったく同じことが起こるのだよ。中小・ベンチャーに対する態度について日本企業がいつまでたってもかわらないのであれば職務発明についての態度も日本企業はかわらないはずなのだよ。そこが彼にはみえていない。

 

職務発明についてはきわめて冷淡な新自由主義で、中小・ベンチャーには過剰ともいえる保護主義。まったく意味不明で支離滅裂だ。同じ構造なのに。

まったくわからないよ、馬場理論は。

 



★2009年1月29日(木)★

ロクラクⅡが勝ったね。

 久しぶりに営業秘密保護法制以外の話です。

 著作権法におけるTV中継型の問題で、
 ロクラクⅡ事件が高裁で、非侵害との判断を受けたようです。
 http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=AT1G2703H%2027012009&landing=Next

 判決文を読んでみたいところですね。

 私は、ロクラクⅡ事件は、仮処分決定(侵害認容)の後に、
 評釈を書いています。
 http://www.chosakai.or.jp/intell/contents07/0706.htm
 私の評釈は、ロクラクⅡのサービス内容ならば非侵害である、という趣旨で書いたのですが、
 本訴の地裁判決も仮処分同様に侵害との判断だったので、
 裁判所としては侵害の流れなのかな、とも思っていたのですが、
 ひっくりかえりました。びっくりしました。

 私は、録画ネット事件は侵害との結論でよいのかな、と思っております(裁判所=侵害)。
 一方、まねきTV事件は非侵害との結論でよいのだ、と思っております(裁判所=非侵害)。
 そのような中、私はロクラクⅡ事件は非侵害であると言っていたのですが、

 
裁判所が私に近づいて来たのでしょうか(笑)。

 判決文が読みたいところです。

 録画が介在するサービスではじめて非侵害が出たので、影響はあるのかもしれません。


★2009年1月27日(火)★

経済産業省の方向性が憲法違反でないならば、日本が海外を侵略したって憲法違反ではない。
(不正競争防止法(営業秘密保護法制)改正問題を考えるにあたって。その5)


 経済産業省は、営業秘密の刑事訴訟の秘密裁判化をあきらめてはいないのでしょうか。
 http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090123AT3S1800Z22012009.html

 周知のとおり、刑事裁判を秘密で行うことは、刑事裁判を公開で行うことを規定する憲法の規定に違反しているわけです。

 しかし、彼らは、犯罪被害者のプライバシー等に配慮した非公開の制度等があることを理由に、
 それと同様にしろ、と言っているわけです。

 しかし、この犯罪被害者のプライバシー関係の事項を非公開にすること等の措置は、
 被告人の刑事罰構成要件を検討するという点ではあまり関係のない事項です。

 これに対して、営業秘密に関する刑事訴訟は営業秘密の内容こそが
 被告人の刑事罰構成要件を検討するうえでは中心部分、核心部分なのです。

 ですから、これらは決して一緒にはできません。

 営業秘密に関する刑事訴訟において、
 営業秘密が非公開であった場合、
 もし、被告人が冤罪であっても、第三者は誰も検証できませんし、誰も冤罪を晴らすことはできません。
 本人ですら冤罪であることを証明できないのです。
 こんなこわい制度はない。
 秘密裁判のおそろしさをどう考えるのでしょうか。まったくひどい役所&官僚たちです。

 法務省のペーパーはもっともであり、私の考え方と基本的に同じような認識を持っているようです。
 http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g81204c05j.pdf 
 (産業構造審議会知的財産政策部会技術情報の保護等の在り方に関する小委員会(第7回)
 配付資料 資料4 営業秘密侵害罪に係る刑事訴訟手続における営業秘密の保護のための措置について)
 この後、法務省が抱き込まれないことを祈りたい。(まさか、もう抱き込まれてはいないだろうな・・・。)

 とにかく、私が思うのは、

 
これが憲法違反でなくて、何が憲法違反か。

 いったい何のために憲法があるのでしょうか。それほどの話です。


★2009年1月24日(土)★

企業における従業者の日常業務は、間違いなく刑事罰の対象となりうる。
(不正競争防止法(営業秘密保護法制)改正問題を考えるにあたって。その4)

 引き続き営業秘密保護法制の改悪問題です。

 導入されようとしている刑事罰の構成要件をまとめますと、次のとおりです。
 営業秘密を示された者について、
 『営業秘密を管理する任務を負う者が、不正の目的*で、その管理任務に背く行為により、営業秘密が記録等された記録媒体等を領得する方法又はその複製を作成する方法で営業秘密を領得する行為を刑事罰の対象とする方向で考える。』(*1)

 『不正の目的』とは『自己又は第三者の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的』を意味します(*2)。

 『営業秘密の領得』とは『保有者から示された営業秘密を不正な行為によって保有者の管理下から離れさせて、自己の管理する情報のように用いることができる状態に置くこと』または『不正な取得行為』をいうことになります(*3)。

 一応、図を用意してみました。もっとも、図を用意するほどのことでもないし、また、下手な図なのですが、ご勘弁いただき、参照しながら考えてみてください。



 外側の点線の範囲が企業(使用者)の範囲です。当該企業内には、(使用者)が秘密管理する営業秘密管理サーバーが設置されており、ここでID・パスワードをもって営業秘密が秘密管理されつつ、蔵置されているとします。そして、企業の中には従業者がおり、使用者企業内に机や従業者個人用パソコンを貸与されています。その従業者個人用パソコンは、プリンターや構内LANに接続されており、構内LANを通じて、使用者企業の営業秘密管理サーバーに接続されています。
 ちなみに、使用者企業としては、ID・パスワードで情報を管理していることは必須です。でなければ、秘密管理性を満たさなければ営業秘密としての保護を受けられないからです。
 このような中で、従業者は営業秘密へのアクセスを許可されるとID・パスワードを発行されます。
 ID・パスワードが発行されると、従業者は業務上使用すべく、使用者が管理する営業秘密を閲覧します。この閲覧をするためには、従業者は①に示すように、ID・パスワードを従業者個人用パソコンから入力して使用者の営業秘密管理サーバーにアクセスします。認証が終わってはじめて、②に示すように使用者の営業秘密管理サーバーから営業秘密の情報が送られてきて従業者は営業秘密の閲覧を行うことができます。
 ここでは、おそらく、②に示すように営業秘密の閲覧を行うだけでは、いくらなんでも、今回の営業秘密構成要件は満たさないでしょう(但し、問題なしとはしません(*4))。
 しかし、②’に示すような営業秘密(情報)のダウンロードを行ったらどうなるでしょうか。これは、従業者個人用パソコンに営業秘密(情報)の複製を行うことを意味します。
 今回の報告書案だと、②’の行為を行うと、それによって従業者は構成要件を満たす可能性が出てきます。すなわち、このように営業秘密をダウンロードすると、日常業務であっても刑事罰を科されるおそれがあるのです。
 また、先日もいいましたが、営業秘密をみやすくするためにプリントアウトしたらどうなるでしょうか。これについても同様の問題が起きます。

 使用者側はID・パスワードを発給しているのですから、この従業者は間違いなくアクセス権者です。そうなると、ID・パスワードを発給されアクセス権者になれば、黙示の許諾を得たとして、また実情として、自分のローカルのパソコンにダウンロードすることって日常的にやりませんか?。これは完全に日常業務でしょう。
 それは従業者は自分の個人用パソコン(ローカルPC)にデータがなければ快適に仕事をすることはできないからです。また、時としてサーバーが停止していることもあるからです。また、構内LANの速度が遅くて、一度自らのPCへダウンロードしなければ快適にアクセスできないことだってあるからです。さらには、サーバーの仕様によっては、閲覧=ダウンロードのもの、すなわち、従業者個人用パソコン(ローカルPC)へのダウンロード(複製)を必ず行ってから閲覧に使用するタイプのものだってあります。ゆえに、従業者個人用パソコン(ローカルPC)へのダウンロードは一般に悪ではないはずなのです。
 また、アクセス権者であれば、普通しばしばプリントアウトしませんかね。見やすくして業務効率を上げることは普通にやるでしょう。これも一般に悪ではありません。むしろ業務効率を上げる行為です。

 しかし、このようなダウンロード(複製)を行うことは刑事罰構成要件を満たしうることとなり、従業者にとって非常に危険な状況におかれます。これではおそろしくて仕事ができませんよね。従業者からみればアクセス権を与えてもらったからダウンロードしただけなのに、後々刑事罰を食らうのでは不意打ちというか、不測の不利益を受けるわけであり、とんでもない話であります。

 
おそろしくないですか?。

 では、このような従業者個人用パソコン(ローカルPC)への複製行為について、上記提案されている刑事罰構成要件をみてみましょう。ここでは、アクセス権を与えられているのですから、この従業者は『営業秘密を示された者』であります。そして、『不正の目的』=『自己又は第三者の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的』の要件については、その人が怪しいと睨まれたらすべて「図利加害目的」に該当しうることは1月20日付で述べました。

 あと、他の要件である、『その複製を作成する方法で』は、従業者個人用パソコン(ローカルPC)にダウンロードするのは文字通り複製ですから、当然要件を満たします。そして、『営業秘密を領得する行為』は『保有者から示された営業秘密を不正な行為によって保有者の管理下から離れさせて、自己の管理する情報のように用いることができる状態に置くこと』ですが、これは、1月23日に述べたとおり、営業秘密を現実に示されれば、示された者全員がこの要件を満たします(1月23日参照)。

 そうなると、残るのは、『その管理任務に背く行為』の要件と、『営業秘密の領得』の定義の中の『不正な行為によって』ですが、確かに日常業務を忠実に行っている間は、理論的には、これらの要件は満たしません。ですから、自らの心にやましいところがなければ、神様はすべてをわかってくれるでしょう。
 しかし、これらの要件を判断するのは神様ではありません。裁判所です。さらには、最終的には裁判所でありますが、その判断の根拠は証拠です。そして、出てくる証拠は使用者側の影響を受けやすいものが出てくるわけです。そして、これらの文言はきわめて抽象的でもあるので、業務に忠実に行っていても、使用者の感じ方で、『その管理任務に背』いた、『不正な行為』を行った、とされる可能性は充分にあります。つまり、これらの要件を満たすか否かは使用者次第なのです。
 従業者からみれば、使用者からID・パスワードを発給されているがために、当然に黙示の複製の許諾を得ていると考えるのが普通です。従業者の立場としてはID・パスワードを発給されたからこそダウンロードしたのです。しかしながら、後からこの行為が悪だとされる事態がまったく出てこないとは限りません。

 この点、デンソー事件(*5)がそうでしょう。本報告書はデンソー事件(*5)を起訴するためにできていると思量されますから、参考になります。
 しかし、デンソー事件(*5)で出てくる(元)被疑者の『私用パソコン』は壊れていて証拠にならないのですから、デンソー事件が起訴できるとするならば、使用者からの『貸与パソコン』(ノートパソコン)へのダウンロード(複製)を問題とするしかないわけです。これをみてみると、この(元)被疑者はID・パスワードを発給されていたわけですからダウンロードしたのでしょうが、彼は、後になってから『その管理任務に背』いた、『不正な行為』を行った、とされているわけです。表に出てきていないのではっきりしませんが、状況からして、事前にはっきりダウンロード禁止を言われていたとは思えません。(もっとも、彼をかばうつもりは毛頭ありません。)
 そうやって、後から『その管理任務に背』いた、『不正な行為』を行った、とされうるのですから、上記の私の設例においても、事前の明示のダウンロード禁止の指示がなくても、後から事実認定で悪とされる場合はありえます。ID・パスワードを発給されていたことはこの点においてはまったく抗弁になりません。

 かくして、
通常業務が刑事罰の対象になりうることがおわかりになっていただけたでしょうか。けっして、私の言っていることは飛躍ではないと思います。
 つまり、今回の報告書案にある刑事罰の新たな構成要件は、

 悪質な行為と正当業務の切り分けができず、
 無実の従業者が罪を着せられる可能性が高いのです。


 お手数ですが、読者のみなさまもよく考えていただければ幸いです。

 また、長くなってしまいました。読む気しないですよね。
 だからこの危険性がわかってもらえないのかなあ(愚痴)。

(*1)前掲審議会「技術情報の保護等の在り方に関する小委員会」報告書案
「営業秘密に係る刑事的措置の見直しの方向性について(案)」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595208037&OBJCD=&GROUP=
の9ページ。

(*2)上記報告書案8ページ~9ページ。
(*3)上記報告書案10ページの注釈欄。
(*4)ID・パスワードを発給したからといって、ダウンロードを許諾したわけではない、という論法が成り立つのであれば、ID・パスワードを発給したからといって閲覧を許可したわけではない、という論法も成り立つ可能性もあり、きわめて危険である。また、閲覧だけでもデータは従業者個人用パソコン(ローカルPC)にまでは転送され、少なくともRAMには格納される。場合によっては閲覧だけでもハードディスクに格納されることもあるのではないか。かかる場合に複製が問われることはないか。ゆえに問題なしとはしない。
(*5)上記報告書案6ページ、上から2番目の例。および、当HPの1月19日、20日のエントリーを参照。


★2009年1月23日(金)★

無体物である情報(営業秘密)に「領得」という概念はありうるのか、また、適切なのか。(不正競争防止法(営業秘密保護法制)改正問題を考えるにあたって。その3)

 引き続き営業秘密保護法制の改悪問題です。
 いよいよ、刑事罰構成要件の変更について考えますが、
 前掲審議会「技術情報の保護等の在り方に関する小委員会」報告書案「営業秘密に係る刑事的措置の見直しの方向性について(案)」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595208037&OBJCD=&GROUP=
の9ページには、

『2.営業秘密を管理する任務を負う者が、不正の目的*で、その管理任務に背く行為により、営業秘密が記録等された記録媒体等を領得する方法又はその複製を作成する方法で営業秘密を領得する行為を刑事罰の対象とする方向で考える。』

とあります。これが、今回の報告書における重要部分だろうし、一番問題となるところです。
 しかし、気になるのは、無体物の情報である営業秘密について、はたして「領得」なる概念はありうるのでしょうか?。また、その営業秘密の「領得」という概念を導入することが適切であるかどうかを考えます。

 一応、上記報告書案には、その10ページの注釈欄に「営業秘密の領得」の定義があり、ここでは、

『保有者から示された営業秘密を不正な行為によって保有者の管理下から離れさせて、自己の管理する情報のように用いることができる状態に置くことと不正な取得行為とを総称して、「営業秘密の領得」ということとする。』

とあります。
 但し、注意したいのは、有体物である「記録媒体等」については、従来から、不正競争防止法にも「領得」の概念は登場していました(現・不正競争防止法21条1項3号)。しかし、あくまでこれは「記録媒体等」の「領得」であって、「営業秘密」自体の「領得」ではありません。ゆえに、同報告書もしっかりと定義をしているのでしょう。
 しかし、この定義では、言っていることがよくわからないとともに、その範囲はきわめて不明確であります。私が思うに、有体物についての「領得」と錯綜をおこしているのではないでしょうか。
 すなわち、複数人が同時に利用できるという情報の性質から考えると、情報が『保有者から示された』時点ですでに、その情報は『保有者の管理下から離れ』、『自己の管理する情報のように用いることができる状態』にあるのではないでしょうか。
 これは、有体物の場合とは明らかに異なります。例えば、企業の従業員が記録媒体の管理を任されている場合、その記録媒体を自分のみが支配できるようにしてはじめてその記録媒体は保有者の管理下から離れるわけです。しかし、情報の場合はどうでしょうか。情報を従業者に示した場合、依然として使用者の下に情報はあるのですが、従業者の下にも情報がある。そういう意味でその時点から従業者は(やろうと思えば)当該情報を『自己の管理する情報のように用いることができる』ようになるわけですから、『保有者の管理下から離れ』ているということもできるのではないでしょうか。
 ゆえに、私が思うに、保有者から営業秘密を示されたならば、その示された者は、その時点ですでに、みな『営業秘密の領得』を行った状態にあるのではないでしょうか(それは、媒体があってもなくても関係ないはず)。

 だからこそ、こういった情報の特性があるがゆえに、違法性を複製行為などでは切り分けず、守秘義務という形を課して、これが守られているあいだは秘密管理性を失わないとし、違法性については、第三者に開示したり、自己が使用したりする時点で切り分けているわけです。
 すなわち、有体物であるからこそとりうる概念である『領得』の概念を、無体物である情報に持ってきている点で、まず、事態をおかしくしていると思うわけであります。


★2009年1月20日(火)★

「図利加害目的」との要件は、何も要件がないのと同じ。(不正競争防止法(営業秘密保護法制)改正問題を考えるにあたって。その2)

 更新頻度が上がってきましたが(笑)、引き続き不正競争防止法改悪問題です。
 前掲審議会「技術情報の保護等の在り方に関する小委員会」報告書案「営業秘密に係る刑事的措置の見直しの方向性について(案)」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595208037&OBJCD=&GROUP=
の8ページにある『第2 目的要件の在り方について』についての話です。

 同報告書の当該部分(8ページ~9ページ)によれば、
 『営業秘密侵害罪の目的要件を「不正の競争の目的」から「図利加害目的」とする方向で考える。』
とあり、
 『そこで、自己又は第三者の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的を要件とすれば、保有者のために行った場合等の違法性が比較的低い行為や内部告発行為等を対象外とした上で、当罰性の高い行為を刑事罰の対象とすることができると考えられる。』
とあります。
 この要件は、主観的要件とよばれるものでありますが、従来は「不正競争の目的」だったものを「図利加害目的」に変更したい、というわけです。
 「図利加害目的」が法文でどのようになるかわかりませんが、とりあえず上記報告書にあるような
 「自己又は第三者の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的」に変更されるとしましょう。
 すなわち、「不正競争の目的」が「自己又は第三者の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的」にかわるわけです。

 これは、一見、まっとうな改正のように聞こえるかもしれませんが、実は、とんでもない改正だと思います。
 というのは、こういった主観的要件である「~目的」の要件は、
 人間の心の中をコピーして証拠として提出できれば、すっきりとした形で立証されるのですが、
 実際はそうはいきませんよね。すなわち、人間の心の中を正確に立証することはできないのです。
 ゆえに、彼の行為や彼の置かれた状況等から状況証拠を積み上げて主張立証することになるわけであります。

 このような状況の中で、昨日掲げたデンソー事件を再び採り上げてみましょう。すなわち、本報告書はデンソー事件の”反省”から、
 デンソー事件を起訴できる、という目的で作られていると考えられます。
 であるがゆえに、デンソー事件が起訴できるとの前提で書かれているはずですから、デンソー事件で検証してみます。

 ちなみに、後日述べますが、改正案では、開示や使用を伴わない「複製」行為で刑事罰構成要件を満たすわけですから、
 この目的要件と合わせて、
 ①「自己又は第三者の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的」での②「複製」を行えば、報告書案では刑事罰が下る、ということです。

 このような前提で、昨日も掲げたデンソー事件について、上記報告書の当該部分を再び引用します。

『<従業員による機密情報の不正な持ち出し>
 ある企業に勤務する従業員が、当該企業が秘密として管理する図面データを貸与パソコンに大量にダウンロードし、無断で繰り返し自宅に持ち帰っていた。同社が同従業員に事情聴取を行ったところ、データは残っておらず、さらに不正にコピーがなされたと見られる私用パソコンは破壊されており、貸与パソコンに記録媒体を装着した痕跡はあったものの、データの使用や外部への送信について確認することはできなかった。
 同従業員は、貸与パソコンの横領罪で逮捕されるも、既に貸与パソコンを返還しており、起訴猶予処分となった。』


繰り返しますが、改正がなったならば、この状況で刑事罰が下るわけです。
となると、この状況があれば、「自己又は第三者の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的」(=図利加害目的)を満たすということです。
となると、次のことがいえるわけです。
①正当アクセス権があっても、データを大量にダウンロードしたならば図利加害目的を満たす。
②私用パソコンが破壊されていれば図利加害目的を満たす。
貸与パソコンに記録媒体を装着すれば図利加害目的を満たす。

もっとも、①②③は単体ではなく、3つ揃ったからこそ図利加害目的あり、ということになるのでしょうが、それでも、
①業務のため大量にデータをダウンロードしたときに、②たまたま自宅パソコンが壊れていて、
③貸与パソコンで仕事をしてデータのバックアップをとったならば、
⇒「図利加害目的」の完成です。

こわくないですか?。

このように考えると、要は、「図利加害目的」で足りるのならば、
その人が怪しいと睨まれたら、すべて「図利加害目的」に該当しうる、
のです。

その人が怪しければ、その人の行った行為は「図利加害目的」でやったのだろう、ということになってしまうわけです。

私って飛躍しすぎてますかね?。決してそんなことはないと思うのですけど。

つまり、使用者に損害を与える目的、という要件をたてれば、それは実際の従業者の心の中を立証できない以上、
いくらでもでっちあげが可能であると思うわけです。

言い換えれば、正当行為と不正な行為の切り分けがこの要件ではまったくできないのです。

***
このように考えると、「図利加害目的」があれば、
確かに内部告発は除外されるのでしょうが、内部告発は違法性阻却の事由になるであろうし、また、報告書にあるように、
他の法律で内部告発が保護されるならば、
「図利加害目的」の要件があったとしても、何も要件がないのと同じになってしまいます。

***
一方、労使間の事例として、中村修二さんと日亜化学工業の例を挙げてみましょう。
こういうと、私は中村修二さんの味方をしているように聞こえるかもしれませんが、そうではなくて、両者はどちらも悪くない(喧嘩両成敗の状況)、とします。
しかし、両者はそれぞれの著書などで互いに労使間で批判しあっていたことは事実ですので、そのような前提で考えます。

このように使用者を批判するような言動を行う従業者が存在した場合、
当該従業者は、
「図利加害目的」が認定されやすくなってしまうわけです。
すなわち、使用者を批判すると、それが正当な批判であっても、「保有者に損害を加える目的」の動機とされ、
「図利加害目的」を認定されてしまうのではないでしょうか。

つまり、労使間に対立があった場合、使用者側には何らペナルティがないにもかかわらず、
労働者側は使用者を批判すればするほど、「保有者に損害を加える目的」=「図利加害目的」が認定されやすくなる、という問題があります。
すなわち、労使間の紛争に対して、使用者側に一方的に強力な武器を与える、ということになるわけです。

つまり、例えば、中村修二さんが、日常業務に必要で、会社内において、
日亜の営業秘密の書かれた設計図をダウンロードし、プリントアウトして保管していた、というような状況を考えます。
このような状況で、当局が中村さんの会社の引き出しの中に設計図があることを写真にとり、証拠保全をしたとします。
そうなると、中村さんは「使用者を批判している」⇒「保有者に損害を加える目的」があった、とされるうえ、
設計図を「複製」して領得していた、となり、刑事罰構成要件に該当してしまうこととなるのではないでしょうか。

そのように考えると、私は、この不正競争防止法改悪問題は、
物言う技術者の封じこめ!
というのが、その大きな目的のひとつではないかと思ってしまうのです。

結局、使用者に刑事告訴という大きな武器を与えることにより、物言う技術者を黙らせる。

そういう目的があるのではないかと思ってしまいます。
これは、私は労使間の関係において使用者にばかり有利な状況を付与し、従業者に不当な抑圧をもたらすのではないか、と危惧するのです。


これらの観点からも、結論として、私は、
「不正の競争の目的」を「図利加害目的」に変更する改正は到底容認できません。反対です。

理由は、刑事罰構成要件において正当行為との切り分けをできなくするとともに、労使間の力関係において不当に使用者に力を与えるものだからであります。


※追記
長い文章だと読む気しませんよね。ここまで読んでいただいてありがとうございます。ワンフレーズで危険性を説明できたら、どんなによいことか。
これに対し、推進論はワンフレーズでいけるのです。スパイ天国これでいいのか、とかね。
だが、正確に伝えるには一生懸命詳しく書くしかない。ああ。

愚痴です。


★2009年1月19日(月)★

デンソー事件は現行法でも防げた。(不正競争防止法(営業秘密保護法制)改正問題を考えるにあたって。)


 昨今語っている営業秘密保護法制の改悪問題なのですが、
 経済産業省サイドや賛成論者たちが、これを推し進める上での大義名分(錦の御旗)として掲げているものの1つに、
 デンソー事件の存在があります。
 まずは、このデンソー事件の問題から考えてみましょう。

 デンソー事件は、当該審議会である、「技術情報の保護等の在り方に関する小委員会」の報告書案「営業秘密に係る刑事的措置の見直しの方向性について(案)」にも掲載されています。
↓ここから「営業秘密に係る刑事的措置の見直しの方向性について(案)」を開いて参照してみてください。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595208037&OBJCD=&GROUP=
 その6ページの2つ目の例がデンソー事件です。
 同報告書の当該部分から引用しますと、

『<従業員による機密情報の不正な持ち出し>
 ある企業に勤務する従業員が、当該企業が秘密として管理する図面データを貸与パソコンに大量にダウンロードし、無断で繰り返し自宅に持ち帰っていた。同社が同従業員に事情聴取を行ったところ、データは残っておらず、さらに不正にコピーがなされたと見られる私用パソコンは破壊されており、貸与パソコンに記録媒体を装着した痕跡はあったものの、データの使用や外部への送信について確認することはできなかった。
 同従業員は、貸与パソコンの横領罪で逮捕されるも、既に貸与パソコンを返還しており、起訴猶予処分となった。』

とあります。
 そこで、経済産業省サイドや賛成論者たちの主張は、この被疑者を起訴できなかったのは、法の不備であり、そうであるがゆえに、法改正が必要なのだ、というものであります。であるがゆえに、この改正問題の報道では、デンソー事件に関するプロパガンダがさんざんなされてきたわけです。また、デンソー事件のこの被疑者が中国人であったがゆえに、アジアに技術が流出してもいいのか、という、技術流出論、スパイ防止論といった、国家主義的情念論に結びついてしまうわけであります。
 すなわち、デンソー事件では被疑者を起訴できなかった。わが国法制は不備でスパイ野放し、これでいいのか、という論調です。

 もちろん、私も、営業秘密の流出は防止しなければならない、と思う。
 しかし、私がいいたいのは、

 
これは、現行法でも充分に防げたはずである、ということです。

 とにかく私が言いたいのは、
 『当該企業が秘密として管理する図面データを貸与パソコンに大量にダウンロードし』とありますが、最大の疑問は、デンソーが、
 
なぜ、このような大量の図面データについて、当該従業員をアクセス権者にしていたのか、
 という点であります。
 私は、この従業員をかばうつもりは毛頭ありません。
 しかし、この従業員はハッキング行為を行ったわけでも、なりすましを行ったわけでもないわけです。
 すなわち、彼は一切不正アクセスを行ったわけではなく、情報の正当アクセス権者だったわけです。
 だからこそ、彼は、情報をダウンロードすることができた。また、だからこそ、捜査当局は彼を起訴できなかったのです。
 このような状況の中で、デンソーは後で気づいて告訴に及ぶのでしょうが、なぜデンソーはこの従業員をおかしいと思ったのか。この従業員が自己の業務に関係のないデータを大量にダウンロードしていたからこそでしょう。
 ではなぜ、デンソーは、彼をこのような業務に関係のない大量の情報へのアクセス権を与えたのでしょうか?。私はそこがまったくわからないし、まったく理解できない。アクセス権を与えなければすむだけの話ではないか。
 現在の技術にあっては、アクセスされるべき情報に応じてアクセス権を分けるくらいたやすくできるはずであります。でもデンソーはそれをやっていなかった。
 だからこそ、起訴できないということ、それだけのことでしょう。
 
 これに対し、彼が情報のアクセス権者でないのならば、現行法においても、
不正競争防止法21条1項2号が使えたはずだし、
 加えて、
不正アクセス禁止法による刑事罰だって使えるわけです。
 もっとも、彼はアクセス権がなければダウンロードは行わなかったであろうし、そうであれば、技術流出もないわけです。
 ゆえに、
業務上必要な範囲でのみアクセス権を与えていれば、このような事件はないし、流出もないのです。ゆえに、現行法にて充分に対応できたはずなのです。
 このことを私は声を大にしていいたい。

 また、新聞報道によれば(引用しますと)、
 『データは、産業用口ポットや各種のセンサー、ディーゼル燃料の噴射装置など1668種類の製品のもので、このうち約280種類は同社の最高機密にあたるという。デー夕の取得は06年10月に約1万件、11月に約12万件、12月に約4千件と集中していた。』(朝日新聞2007年3月17日付39面より)という。

 しかし、これを読むかぎり、私に言わせれば、こんなに大量のデータが、彼の業務に必要であるとは思えないわけです。
 また、そんなに重要かつ大量の『最高機密』が、一般の従業者が合法的にダウンロードできる管理状態にあるということは、
 どんな秘密管理だ、と思うわけであります。
 ああ、なんと軽い『最高機密』よ。
 こんな秘密管理の状況において、法が悪い、といわれても、私はまったく賛同ができません。

 いや、デンソーさんは責めますまい。要は、いいたいのは、適切な管理をすれば防げた、ということだけです。
 デンソーさんもきっとわかっていると思います。だからこそ、その後、秘密管理体制を見直しているはずです。

 問題は、鬼の首をとったかのように、人の不幸を、理不尽な法改正に結び付けようとする人たち
 (弊害必至、従業員技術者は正当行為もみな刑事罰)
 だと思います。

 弊害を生んでまで、改正を行う必要はまったくない、ということです。


★2009年1月17日(土)★

不正競争防止法(営業秘密保護法制)の改正はやはり反対。

 以前も触れたような(2008年11月16日、12月1日、12月6日、12月7日あたりも関連)、
 営業秘密保護法制の改悪問題ですが、
 これを審議している審議会である「技術情報の保護等の在り方に関する小委員会」は、
 その報告書案の「営業秘密に係る刑事的措置の見直しの方向性について(案)」について、
 パブリックコメントを募集しています。(2009年1月30日まで)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=595208037&OBJCD=&GROUP=
 まあ、一応、パブリックコメントを出すのでしょうね。無視するのはミエミエですが。

 で、その報告書案の内容ですが、やはりひどい。
 刑事訴訟の秘密化は、一応、先送りするかのような書き方になっていますが、
 その他の刑事罰の構成要件として挙げられているものは、やはりひどいですね。
 到底賛成できるものではありません。

 問題点が非常に多岐にわたって、ひとことでは説明しにくいのですが、
 いわゆるサラリーマンが日常業務を行っているだけで刑事罰構成要件に触れるおそれがあると思います。
 日本知的財産協会あたりも賛成のようですが、いいんですかね。
 いわゆる技術者はいうまでもなく、知財部や法務部の人間も危険にさらされます。
 企業の従業員がなんらかの形で営業秘密の「複製」行為を行うとそれが営業秘密に関する罪になってしまいます。
 きわめて危険な法案だと思うのですけどね。

 例えば、営業秘密を閲覧するのに、パソコン上ではみにくいからといって、
 それをプリントアウトすると「複製」でしょ?
 それをあとあと「不正領得」とかいわれてしまう可能性がありますよ。

 「複製」行為は企業における日々の活動で一般的な行為として頻繁に行われるわけですよね。
 そこに投網をかけて、企業の気に食わない人間はいつでも刑事告訴できる、というわけです。

 私は、この方向性の危険性を昨年9月の日本感性工学会
http://www.jske.org/conf/jske10/program2008.html
 (ここの22Gの22G-06)
 で、「技術情報保護新法構想の検証」として、
 すでに発表していたのですが、ここまで来てしまいました。
 誰か賢明な人が止めるのではないかとも思っていたのですが・・・。

 私が危険だなあ、と思っていると、
 他のネット上のブログでも危険といっている人が早速見つかったのは
 びっくりしました。

 もっとも、この分野のことを少しでも知ると、普通、危険と思うと思います。

 ご参考~他のサイト
 ①「企業法務戦士の雑感」さん(2009年1月13日付)
http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090113
 ②「無名の一知財政策ウォッチャーの独言」さん(2009年1月7日付)
http://fr-toen.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-b9c9.html
 

 あまりにひどくて書ききれないのですが、徐々に書いてまいりたいと思います。
 いいんですか?、特に一般企業のサラリーマンの人。
 使用者に睨まれたら、即、ブタ箱行きです。

 困ったものです。


★2008年1月14日(水)★

 
日本知的財産協会と”倫理”

 若干、追記します。下の1月10日(土)のエントリーをご覧になった後、ご覧ください。

 当該記事をみてさらに思うのは、そのような知的財産権の帰趨が確定しない技術をまったくの他人に展示会で見せて、サンプルを渡している、という行動に非常に疑問を覚えるわけです。
 無論、技術者や営業サイドは見せたくて仕方がないでしょう。技術者や営業サイドは本能的に見せてしまいます。しかし、知的財産部の立場からすると、絶対見せてはいけないものであるわけです。
 だとすると、「絶対見せるな!」という指示を現場に徹底することこそが知的財産部として最大の仕事であるはずなのですが、そのような指示が徹底されていたような雰囲気は当該記事にはまったくありません。だとすると、技術が相手側に伝わった責任は当該知的財産部にあり、そして、その知的財産部で責任ある地位にあったと思われるこの作者にも責任があると思わざるをえません。にもかかわらず当該記事は自分の責任をまったく感じておらず、他人が悪い、悪い、と言っているだけです。
 であるがゆえに、この点についても、「無能」という言葉が、どうしても私の頭に浮かんでこざるをえないわけです。

 あと、倫理の話ですが、
 澤井敬史さんというひとは日本知的財産協会の元理事長だそうですが、
 彼は、弁理士制度小委員会なる審議会の委員として企業代表として出かけておきながら、
「弁理士制度の中に知財専門職大学院をうまく活用するような構成とかやり方を考えてみることに意味があると思います。」 (「産業構造審議会 第1回弁理士制度小委員会 議事録」より。http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/benrisi_seisakubukai_gijiroku01.htm
などと発言しています。このように、自らが関与する大学院に利益を誘導しようとすることは、”倫理”違背ではないのでしょうか。

 また、同審議会の委員として企業代表として出かけておきながら、
 現に、「知財専門職大学院の弁理士試験科目免除」という、自らの関与する大学院への”利権”をゲットしてくることは、
 ”倫理”違背ではないのでしょうか。

 疑問はつきません。


★2009年1月10日(土)★

日本知的財産協会が”倫理”を語れるのか。

日本知的財産協会のホームページをたまたまみていたのだが、
こういう記事を発見してしまった。

「学者の倫理、弁理士の倫理」
http://www.jipa.or.jp/content/coffeebreak/yakuin/yaku081003.html
まあ、読んでみてください。

これを書いたのは、
JFEテクノリサーチの鈴木元昭氏である。

また、この日本知的財産協会の宗定勇氏は、このページにて
「社会的地位のある人や多くの普通の人の倫理観が狂ってくると、国は急速に衰亡し、生甲斐を見失う社会になってしまいます」
などと、ごていねいにこの記事に同調しておられる。

なんと筋違いな。

で、その鈴木氏は何を言っているか。
その内容は、自分が特許無効審判で負かされた話を恥ずかしげもなくさらしているのである。
(もっとも最終的には高裁でひっくり返して溜飲をさげたようだが。)

で、鈴木氏は、相手方の弁理士が、
自らの会社の実施技術を含むように補正で追加してきたり、
大学教授の陳述書を証拠に出してきたことなどを
倫理観がない、というようなことを言って、
相手方の弁理士を理不尽に批判しているのである。

しかし、補正で競業他社の実施範囲まで拡張することぐらい、
知財業界では普通にやっているのではないのだろうか。違うか。(補正違反のリスクは自ら背負うので、拡張には限界があるし、当初の開示範囲にあることならば、許される事項である。)

また、大学の教授に陳述書を頼む、というのも多くの企業が普通にやっていることだろう。
あっちこっちの訴訟記録を読んでみればわかる。たくさんある。
弁護士だって普通にやっている。

にもかかわらず、そのへんをいちいち弁理士倫理がないなどといわれたら、
弁理士はどう対応すればいいのか。
一生懸命仕事すればするほど、倫理観がないってことか?。

また、日本知的財産協会加盟企業はここで掲げられたようなことを一切やっていないといえるのかね。
冗談じゃない、まったく。

結局、この鈴木氏は倫理、倫理などといいながら、
単に弁理士に対するネガティブキャンペーンをやっているにすぎない。

まったく、弁理士に恨みでもあるのかね。

ここに書いた話は、
単に自分が審判に負けた無能さを恥ずべき話だろうが。

また、ここに書いている話で、同氏は、

「包袋をみますと、われわれが展示会に出展した「ある技術」のサンプルの断面写真が掲載されていました。会場から持ち去られたものです。持ち去ったのは、ドイツの会社の日本法人スタッフです。そのサンプルの内容は、最初の出願内容では、明らかに技術的範囲外にあったものでした。」

といい、あたかもそこに不法行為が介在したかのような言い方をし、悪質性を強調しようとしている。
しかし、
①「持ち去られた」とあるのだが、まず、外部の人が入れる展示会って、普通サンプルは持って帰れるのではないだろうか。②「持ち帰り不可」であったのならば、なぜ、窃盗罪で刑事告訴しないのか。証拠はそこにあるだろうが。③または、JFEサイドが持ち帰りを明示あるいは黙示で許可したからこそ、持って帰ったのではないのだろうか。
このように考えるとこの部分が不法行為であるとは断定できないのである。しかも、相手方の実施技術を入手したらそれに対応するのは特許人として当然のことではないのか?。それを倫理違背などというのであれば、逆にあんたの無能さを私は追及したいよ。

また、さりげなく読んでいると見逃すのだが、ここでサンプルを持ち帰ったのは当の相手方弁理士自身ではではないんだよね。相手方企業のスタッフが持ち帰ったという。
となると、弁理士からみると、クライアントから、競業企業の技術を提示されて、ここまで権利を膨らませてくれ、などと単にいわれたにすぎないのではないだろうか。だとすると、それに忠実に応じるのが弁理士のあるべき姿で、それができないようだと契約を切られてしまうではないか。そのへん、契約を切られたらアンタは責任をとってくれるのか。冗談じゃない。

こういう理不尽な前提で、弁理士が倫理違背をしているようにいわれたのでは、
さすがに私も言い返さざるを得ない。
そういうことで私はここに書かせてもらっている。

そもそも日本知的財産協会が”倫理”を語れるのかね。
職務発明訴訟でも、これまで発明者であるとして尊重していた人間を、
ある日、突然、発明者でない、などと言い出して攻撃を加えることは、倫理違背ではないのか。
または、自分が権利化した特許を、後から自分で無効理由がある、などというのは倫理違背ではないのか。(下手したら特許詐欺罪だよ(特許法197条)。)
まったく冗談じゃない。

弁理士は、例の改正で倫理研修なるものを受けなければならなくなっているのだが、
こういった”倫理”をはき違えた連中の働きかけで倫理研修が厚くなっているかと思うと、
さすがに腹が立ってくる。

そして、もうひとついわせてもらうならば、
この鈴木氏の記事は、相手方企業がドイツの企業であり、日本知的財産協会に加盟していない企業だからこそ、ホームページにUPしているわけだ。おそらく相手方が日本知的財産協会加盟企業だったら、UPはしないであろう。こういったことにも彼(ら)のずるさを感じるのである。
なんというか、日本知的財産協会の傲慢な意識というか、日本知的財産協会に加盟していない人間はみんな悪であるというような、思い上がりのようなものを感じずにはいられないのである。

最後にもうひとついおう。
本来自由競争を行うべきどうしである、日本の多数の企業の知財部どうしで、
ある種談合を行って、意見を統一して、
役所への圧力団体として機能することは、
”倫理”違背ではないのかね。

まずは、自分のふりから見直してみたらどうか。”副理事長”さんよ。


★2009年1月1日(祝)★

本年もよろしくお願いいたします。

新しい年になりました。

皆様、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

本年もがんばって研究を行ってまいりたいと思います。

また、知財政策における諸問題に対する意見等は引き続き発信してまいりたいと思います。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。


※追記
第59回NHK紅白歌合戦だが、デジタル投票を行いたい気持ちはわかるが、
やはり従来どおりの審査の方法に戻すべきではなかろうか。
デジタル集計の時間が間延びする感じ。

せっかく氷川きよしも大トリを歌いきって感動しているのに、
集計が終わるころは、すっかり冷静に戻っているではないか。
NHKは自ら興ざめを引き起こしている。

昔のように、大トリが歌い終わった勢いの中、
日本野鳥の会が出てきて集計を行って、特別審査員が箱に玉を入れて、
両司会者が、いち、に、さん、と数え上げるのが正しい。

デジタルの電光板で勝った負けた言われても実感がわかないだろうも。

NHKはデジタルの使い方を誤っている。

正月早々、言わせてもらった。ああ。



★2008年12月26日(金)★

今年も一年お世話になりました。

皆様、今年も一年お世話になりました。

業績欄を更新しました。本学の紀要に一本書いたのです。

書いたものは、
「判例評釈 ヤマダ電機事件(退職後の競業避止義務契約に関する事件)
(東京地裁平成19年4月24日判決、平成17年(ワ)第24499号。)
退職後の競業避止義務契約の考え方について」
というものです。

使用者である家電量販会社が、退職していく従業者(中間管理職)に競業避止義務契約を申込み、
これにサインをした従業者が競業他社に転職した事例であり、
使用者側の違約金の請求を認容したものであります。

本判決で裁判所は、形式的に契約違反をみて原告の請求を認容しているのですが、
これはおかしいのではないかと思うわけです。

私は、このような退職従業者へ要求される競業避止義務契約は原則無効とすべきだと思っています。

なぜならば、ひとことでいうと、従業者の自由意思で契約が締結されているとは到底いえないからです。

すなわち、競業避止義務契約を申込まれた場合、
これを断った場合もまた、トラブルになるのは必至だからです。
これを断るということは、競業他社へ転職することを自白するに等しいこととなるわけです。
そうすると、あらゆる方策によって、
競業他社への転職が妨害される可能性が高くなることを意味します。
退職手続は人質にとられているわけですし、
また、競業他社とのチャンネルが何らかの形で存在するので、
競業他社へ圧力をかけることもありえます。

つまり、断るもトラブル、サインするもトラブルなのです。
これでは、従業者は従業者は到底自由意思を発揮できず、
いわば究極の選択を迫られた上での行動をとっている状態なのです。

これを形式的にだけ見て、ある種の悪質性を認定する裁判所はとてもおかしいわけです。
裁判所はこのあたりの事情をわかってないのだと思っています。

このような判決だと、結果として、実質的に使用者は自らの一方的意思で
従業者の競業他社への転職を阻止できる結果となってしまいます。
これはおかしい。

その他、いいたいことはきわめてたくさんあったのですが、それは紀要の中で述べたわけです。

ちなみに、労働法の研究者と話しても、この判決はおかしいといっていました。
論ずるに値しないとまでいっていました。
私もきわめておかしな判決だと思っております。
おかしな説示のオンパレードです。
困ったものです。

みなさま、よいお年をお迎えください。


★2008年12月7日(日)★

普通、そう思うだろう。

昨日の記事を書いたら、関連する新聞(ネット)記事をみつけました。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/081204/trl0812042033024-n1.htm(産経新聞サイトより)

記事の見出しによれば、
裁判非公開に法務省が異議 「産業スパイ」に対して

当然ですよね。あの案を見れば、普通の人間はそう思う。

法務省がどこまで本気なのかわからないが、
冷静かつ正しい議論と認識がすすむことを祈りたい。


参考URL~技術情報の保護等の在り方に関する小委員会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_1/12.html
上記URLをスクロールして一番下ね。



★2008年12月6日(土)★

なぜ、裁判公開の原則があるのか。

経済産業省の審議会である知的財産政策部会の委員会の
技術情報の保護等の在り方に関する小委員会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_1/12.html(このURLをスクロールして一番下)
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g81028aj.html(このページの資料3。)
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g81028a03j.pdf
の資料を読むと、
彼らは、形式的に法廷を公開しつつ、
裁判にとって肝心な部分は非公開で行い、
裁判公開の原則を満たしたことにしようとしているように見えます。

つまり、
裁判の中で重要でない部分だけお客さん(=傍聴人)を入れて、
形式的には公開しているように見せ、
実際の有罪か無罪かの審理の核心部分については、
外部に見せずに行う、という制度を模索しているようです。

これっていいんですかね。

このことを考えるにあたっては、
なぜ、裁判公開の原則があるのか、
という原則論から考えてみる必要があります。

裁判公開の原則があるのは、
公正な審理を行うためです。
すなわち刑事裁判が、人を拘束し処罰するという
被告人にとって甚大な不利益を加え、
被告人の人権を侵害してしまうおそれがあるため、
より裁判の公正さが求められるわけです。
このため、裁判を公開するのだ、と考えることができます。

であるがゆえに、審理の核心について、外部に公開し、
客観的な第三者がこれを検証できる状況になければ、
裁判公開の原則の意味がありません。

こう考えたときに、いわゆる営業秘密に関する刑事事件においては、
いわゆる営業秘密の取得、開示、使用、といった罪に対して、
その審理の核心は、
①情報の保有者(企業の使用者等)が保有する営業秘密の特定、
②被告人が取得、開示、使用した情報(営業秘密)の特定、
(もっとも、何も取得、開示、使用していないこともありうる。)
③上記①と②を比較して、これらが同一であることの検証、
という点が核心になるはずであり、違法性の審理の中心となるはずです。

しかしながら、上記、経済産業省案では、
上記①②③を第三者が検証することは一切できません。

まず、①ですが、営業秘密を秘密にするための方策を考えているわけですから、
彼らの案では、①は絶対に外部に公開されません。

次に、②ですが、被告人が取得、開示、使用した情報について、
被告人の主張やその証拠がどのようなものなのか、ということですが、
これは、ひょっとしたら外部へ公開されるかもしれませんが、
これも外部に公開されない可能性のほうが高いです。
なぜならば、この②を公開すると、①が推測できる可能性が高くなるからです。

そうなると、①対象となる営業秘密は第三者に公開されず、
②被告人の主張や証拠も公開されず、
結果、③その比較を第三者が行うことはまったくできません。

これでは、到底公正な裁判なんてできるわけがありません。

例えば、退職した技術者Aさんが、元使用者のでっちあげによって、
刑事告訴されたとしましょう。
たとえどんなに彼が自分が行ったことの正当性を外部に主張しても
これは一切外部には出てきません。社会に対して冤罪の不当性を訴えても、
マスコミを含めて他の第三者は一切これを確認できないのです。

すなわち、自分の行った正当な行為を社会に訴えようとも、これは公開されない。
相手の営業秘密もまた公開されない。
よって、第三者がこれらを比較しようとしても誰もできない。
つまり被告人は、
自分の行為の正当性を一切社会に主張できないのです。

そうなると、これでは、
裁判に対するチェック機能が一切働かないのです。
また、被告人はいくら冤罪を訴えても、
その声は外部の誰にも届かないのです。

また、支援者などが出現しても、裁判記録の核心部分は
一切外部の人間が見ることができません。
よって検証もできないし、支援活動もできない。

こんなおそろしい刑事裁判があるでしょうか。

もっとも弁護人は営業秘密や本人の主張や証拠も見ることができるでしょうが、
これは固く外部への開示が禁止されるはずです。
でなければ営業秘密の保護になりませんから…。
よって、弁護人がマスコミに対して、
冤罪を訴えるべく、裁判の内容をマスコミ等の外部へ公開したら、
弁護人自体が秘密漏洩でまた刑事罰を食らうことになります。
弁護人はそこまでできませんよね。ですから弁護活動についても多くの制約を受けるわけです。

ゆえに、到底このような制度の導入を認めるわけにはいきません。
審議会は本当におかしな議論をしていると思います。

よって、裁判公開の原則は、
経済産業省のように形式的な考え方でなく、
実質面を考えて実現すべきです。

ゆえに、従来どおりの完全に公開した刑事裁判を踏襲していくべきです。
この点、法改正などすべきではありません。
このことを強く主張したいと思います。


参考URL~技術情報の保護等の在り方に関する小委員会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_1/12.html
上記URLをスクロールして一番下ね。


★2008年12月1日(月)★

 
冤罪製造制度、そして、技術者抹殺制度

 改めて言いたいのですが、現在、経済産業省で検討されている営業秘密保護法制の改悪案は、
 冤罪製造制度、そして、技術者抹殺制度、であることを指摘せざるをえません。

 経済産業省や賛成派の人々、審議会の言い分は、
 営業秘密が外部に漏れてしまうから、刑事告訴できない。
 だから秘密裁判をやれ、という主張です。

 しかしながら、私がいうように、秘密裁判で人を監獄に送ることができるのです。
 こんなにこわい制度はない。
 しかも、善良な技術者が、営業秘密漏洩の嫌疑を捏造され、でっち上げられて、
 刑事告訴される可能性が非常に高いわけです。
 こんなおそろしいことを本気で導入しようとしているのに、世の中きわめて鈍感です。

 裁判公開の原則は、憲法で規定されているわけであり、
 憲法違反を堂々とやろうとしている。

 あまり人権という言葉を多用すると、言葉が軽くなってしまい、好きではないのですが、
 でも、本当にこわいです。
 秘密裁判にて人権侵害が多く行われた過去の反省から法制度が定まっているのですが、
 まったくもって過去を学ばない人たちです。
 もっとも、技術者を葬り去りたい人たちばかり審議会に呼ばれているのかもしれません。

 いいんですかね、こんな調子で。

参考URL~技術情報の保護等の在り方に関する小委員会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_1/12.html
上記URLをスクロールして一番下ね。


★2008年11月24日(月)★
 このホームページをやり始めてから、はや8年か。早いなあ。
 とはいえ、なかなか更新できない時間が多くてすみません。

 しかしながら、細々とカウンターは回る。
 細々と見てくれている方がいらっしゃるんですね。
 見ていただいてありがとうございます。マメに更新しなくてすみません。

 こうやってホームページで、私も毒を吐き続けているわけですが、
 すべては知的財産政策がよくなれば、の想いからです。

 多くの知的財産関係者とは言っていることが異なっていることも多いと思うわけですが、
 自分が学んできたこと、自分が体験したことから、
 そういうものに裏打ちされて私の思想が形成されています。

 どうかご理解あれば幸いです。

 自分がみていなくても、カウンタが少しずつ進んでいる。
 そういった多くはないけど、コアなみなさん、私は心の支えにしております。

 いつもありがとうございます。


★2008年11月16日(日)★
 やはり、現在の審議会における営業秘密強化論はおかしい。
 営業秘密の刑事罰に係る刑事裁判を秘密で行うというのは、
 実に危険な話であり、
 善良な技術者に濡れ衣を着せるための政策論議が進んでいる、といわざるをえない。
 隠蔽体質だ。ああ、こわい。

 この政策の方向性だと、
 善良な(企業の)技術者が営業秘密漏洩の嫌疑をかけられた場合、
 たとえそれが無実であっても、
 第三者は誰もそれを検証できない。
 これはまさに冤罪奨励政策だ。

 もっと冷静に考えるべきではないか。
 裁判の公開、刑事裁判の公開をいう憲法法文がなしくずしだ。


 ※なお、そういうへんな営業秘密の強化論を推進しようとしているのが丸島儀一さん達ね。
  自分達さえよければ、技術者はどうなってもいいのか。

  弁理士会会長選挙も、ねえ。


 過去の日記2~もろもろに関して(2007年6月~10月)はこちら。

 過去の日記~弁理士試験制度関係、等はこちら。

 過去の日記



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★オピニオン★

1、新特許法35条「事例集」に対する特許庁へのパブリックコメント。
(20040825)

2、審議会の報告書は新法の立法趣旨ではない。
(20040825)

3、審議会に対するパブリックコメント(過去提出分)


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