<詩的私的ジャック -JACK THE POETICAL PLIVATE- 森 博嗣 講談社>

  

 

総合評価 ★★★

完成 ★★★★

創造 ★★★★

残留 ★★★

衝撃 ★★★

価値 ★★★

鋭敏 ★★★

 

犀川&萌絵シリーズ4作目にして完全に異色作だと私は思っています。

この萌絵&犀川シリーズ全10作の中でも「今はもうない」とは違った意味で何かが違う(?)。

でも、私の中では実は一番印象が薄い作品なのだ、つまり好きではない作品でしょうか?

 

構成はやはり理系タイプなのだけど。どこかに文系が潜んでいるような感じで、

いつのまにそれが逆転していたような感じで気分が悪い。

密室については犀川助教授は厳しい発言をしていらっしゃいましたね、

たしかに全ての物に対する密室などあり得ないのでしょう。

登場人物にミュージシャンが絡んだり、歌の詩がキーワードになったりと

詩的なんですね、メインに来るものが物理的な塊(個体)じゃないような不安定さがあって

そこがその他の作品との一番の違いなのかなぁ〜と。

 

牧野洋子、金子勇一といった萌絵の同級生の登場して広がりが見えてきた一方で

萌絵はとくに作中では不安定で弱さのようなものを多く露呈しています。

これが次回作のあれに繋がったんでしょうか(笑)。

森ミステリでは動機云々と言うのはそれほど重要ではないのですが、

何かこうしっくりこないような感じなんですね、たとえ動機があろうがなかろうが些細な事であっても

人を殺すのはもの凄い大きなエネルギーを使用するわけです(物理的にも精神的にも)。

(↑実際に人を殺したことはないので想像ですが、でもそれはそれほど難しく想像ではないはず。

もちろんここでは、弾みとか、間違ってとかそんなのは除外しますが、つまり計画的にってことです。)

動機というのはつまりそのエネルギーの源なわけで、それが薄いと現実味が極端に薄まる

感じがします、それがこの作品をもっとも印象を薄くしている原因なのかなと?


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