<だから、あなたも生きぬいて 大平 光代 講談社>
小さな頃にいじめをうけ、それを苦に登校拒否、自殺をはかるなど苦しんだあげく 非行に走り、はてには極道の妻にまでなってしまう。 そんな時に父親の友人の励ましで、何かに向かって生きようと進み出す。 目標が何もない状態であったが、些細なきっかけで宅建の資格を目標にして勉強を始め、 見事に合格、その後、司法書士、そして最難関の資格と言われる司法試験に合格。
この本を読む直前に柳、美里の”命”を読んだばかりだった。 途中でなんか内容が少しかぶっているなーと思った(2冊を比べる事に意味は特にないが)。 2冊ともエッセイであるが、同じような不幸(?)に対する感じ方や考え方にあまりにも違いがあった。 前向きな大平氏、支離滅裂な柳氏。
ただ、この本は読み始めてあきらかに作家の本でない事は直ぐにわかった。 文章がとても幼稚で魅力がないし、おもしろみもない、そしてなによりも違ったのが細部のディティールだ。 たしかいい話だ、でもなんかいまいちそれを実感出来ない、現実味が薄い。 それがこの本の欠点、ディティール不足なのだ。 読んでいると、記述不足で不思議なところがたくさん出てくる。 司法試験の勉強をしているときなど、ただ寝る時間以外勉強していたと記述されているが、 ではいつ仕事をしていたのか?、仕事をしていないのならどのように生活費を捻出していたのか?等々。
ただ、それでも読んでいるうちにこみ上げてくるものはあった。 すこし目の内側が熱くなる感じで・・・・さすがに涙は流さなかったが(笑)。 いじめられていたり、不毛な生活の泥沼にいたり、人生やり直ししたいと考える事が あるならば、この本を読んでがんばるのもいいだろう。 字も大きく、文字数も少ないので、余裕で1日読む事が出来る。 会話部分が関西弁(?)で書かれているのがちょっと新鮮。 あくまでもこの本はエッセイというジャンルではなくメッセージというジャンルだろう。
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