<ルー=ガルー 忌避すべき狼  京極夏彦 徳間書店>

 

 

総合評価 ★★★★

完成 ★★★★★

創造 ★★★★★

残留 ★★★★

衝撃 ★★★★

価値 ★★★★

鋭敏 ★★★★★

 

近未来のSF小説で一般読者から本書の設定を公募するという形で制作された。

本書の巻末に「従来、小説は、作者から読者に一方的に物語を提供する片方向のものでしたが、

本作品は双方向の試みを取り入れて誕生したのです」と書かれている。

双方向小説としては完全とは言えないまでも面白い企画であったと思う。

おそらく同じような企画は既に誰かがやっている事とは思うのだが。

 

舞台設定もなかなか凝った設定、うまく表現もされている。

近未来の話なのだが、実際ここまで行くかな?とちょっと疑問符な場所もあるのだが。

設定された年は明確にではないが登場人物等から割り出すと2020年〜35年程度の年代だと勝手に推測しました。

端末等のハードはまだしも、組織的な社会体制や、建築物等はちょっと20〜30年ではあそこまで

変わらないのではないかな?と思ったりする。

 

ちょっとした社会への主張みたいなものを「少女」からの視点で描くことによって

ちょっと違う伝わりかたになり新鮮味を感じた。

キャラクターが全体的に冷めている感じもあるが、それも時代の違いをあらわす表現の一種なのか?

というか、小説の中の社会背景で人間が育てば、普通なのかもしれないね。

 

物語序盤は登場人物や世界背景の描写、物語後半でいっきに話が進む。

最初の方は少し退屈かもしれないが、少し我慢して最後まで読むべし。

私が作者のファンだからかもしれないが、長いとは全く思わなかった。

 


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