<姑獲鳥の夏 京極 夏彦 講談社>
総合評価 ★★★★★
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完成 ★★★★★
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創造 ★★★★★
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残留 ★★★★
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衝撃 ★★★★★
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価値 ★★★★★
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鋭敏 ★★★★★
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強烈な作品。
いや、本当に面白いよこの本は。
ミステリと言っても他の本格ミステリ等とは完全に異分野だと思う。
あくまでも一つの物語として読むことをお薦めする。
とにかく圧倒的な物語と個性的な登場人物が魅力だ。
もう質量というか密度が凄い、ものすごい重力を感じる文章。
京極堂と言う主人公が語る蘊蓄がなんとも重厚な内容なのだが非常に考えさせられる上に
なんとなく説得力がありおもしろい、そしてそれらの蘊蓄は事件への細かい伏線になっている。
恐ろしく繊細で精密、そして複雑。
読み手の力量がなければただの分厚い本になってしまうかもしれない。
「姑獲鳥の夏」に関してはミステリ小説という分野には属さないと思う。
作者の民間信仰、神社仏閣、故事来歴の知識の深さには驚かされるばかりだ。
それが作中の京極堂の知識とそのままかぶってくるわけだ。
にしても半端じゃない知識と広さと量にはただただ驚くしかない。
普通のミステリ小説だと思い読んだ人は最期の結末はおそらく納得いかなかもしれない。
最後まで読んでトリックが気に入らないと言う感想があるならばちょっと悲しい。
逆にいったい何よ読んだのだ?と聞き返したくなる。
最初の会話のくだりで嫌気がさし挫折した人もいるかも知れないが
とにかくこの本は読み切ることが肝心だ。
とにかくとんでもな作家が現れたなという感じ。
もう、この作品で完全に京極夏彦の虜なってしまったのだ。
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