<絡新婦の理 京極 夏彦 講談社> 完成 ★★★★★ 創造 ★★★★ 残留 ★★★★ 衝撃 ★★★★★ 価値 ★★★★★ 鋭敏 ★★★★ 今のところシリーズ中もっとも手の込んだ作品だろう。 前作の「鉄鼠の檻」と同程度の厚さだが、内容はやや軽いかもしれない。 つまり読みやすいのではないかと思う、しかし、一番内容が複雑で難しい。 読みやすいと感じたのは事件によって場面が細かく分割されているせいかもしれない。 混乱して読みにくいと言う意見もあるかもしれないが・・・・。 構成がいままでと変わっていていきなり冒頭に物語のラストシーンを持ってきている。 ここだけ読んでも話の内容までは解らないのだが、なんとなく物語のシステムのようなものは 感じ取ることが出来る、それを意識させつつ物語に取り込んでいく。 そんな意味では全体像を常に意識でき混乱も少ないようにするための親切な配慮なのかもしれない。 当然の事ながら冒頭のラストシーンは2度読むことになる。 テーマは「操作」であってまたそのシステムのようなものだ。 蜘蛛の巣のように張り巡らさせた構造で連続目潰し魔事件と女学院でおこる教師殺人と売春疑惑 が絡み合いひとつの物語へと発展する。 また女性解放運動もまた1つのテーマだ。女性が話の中心であり、生殖、性衝動が絡むことにより 1作目の「姑獲鳥の夏」も大きく影響してくる。 登場人物も前作の「鉄鼠の檻」にまして総出演。 レギュラーメンバーの他に過去の妖怪シリーズメンバーが続々登場。 傑作と言う意味ではこの作品がナンバー1かもしれない。 とにかく驚愕の1作だ。
京極堂シリーズ5作目。