会報みちNo.51から

  『20才のコンサート』へのあゆみ

 

 13年前,平岡あや子先生に巡り合わなければ,息子の明之はピアノは弾けなかったと思います。

 当初はリトミックの教室でしたから,明之も出来ると思いお願いしました。6人の障害児とその弟妹の10人で始まったのですが,その中でも多動でこだわりも強く目が離せませんでした。それでもリトミックは体を動かしますので,多動な明之でもなんとかついていけるようになり,一安心と思った頃からピアノの練習が始まり,それからがまた大変でした。10秒座らせるのがやっとで,それもお尻の半分を椅子から外しいつでも逃げられる姿勢でいるのです。10分間座っていられるのに2年近く掛かりました。

 若菜元樹君は幼い頃から音楽が好きで,音楽に合わせて踊ったり気分がむけば練習もしました。二人にとって初めての発表会は,親が背後についてピアニカによる「かえるの歌」の合奏でした。

 それから10年,平成7年二人は成人式を迎え,平岡先生から記念のコンサートの話が持ち上がりました。普段コンサートヘ連れて行きづらい障害を持つ子ども達にも,聞く練習の場があったら,又障害児でもあきらめずに指導を受ければ,その子どもの能力なりに弾けるようになる事を見てほしい。そして大人になった障害者の活躍の場を作りたい。そんな先生の思いと親の願いでコンサートの計画が始まりました。

 しかし3月頃から明之は不安定になり会社でも荒れていて,その時の私はそれどころではないという気持でした。そんな中でも明之は週一回の練習日を楽しみにしていました。平岡先生に誉められたり励まされるのが嬉しかったのだと思います。目的が出来たこともあってか,会場と日時が決まると少しずつですが安定してきました。

 元樹君はピアノ以外にも,いろいろ趣味があり,そちらの方が楽しくなっていたのですが,コンサートとなると又練習に励むようになり,二人とも,目的を持つ事により頑張れたと思います。

 そして二人の先輩で5才年上の角口隆司さんが応援してくれることになり,「コンサート」の名称を付けても恥ずかしくない形になりました。隆司さんは幼小の頃から,ピアノで片手遊びをしていて,音階にも敏感でした。その才能とセンスを見逃さなかったお母さんも素晴らしいと思います。小二から本格的に習い始め,中三で中断し,今回の機会に練習を再開,基本ができていたこともあり,平岡先生に初めてレッスンを受けたにも拘らず,とても素敵な演奏でした。

 伊藤久雄さんは当日の司会を担当してくれて,舞台の雰囲気が一層盛り上がりました。リトミックを一緒に始めたのですが,途中で時間が合わなくなり,止められたのですが,水泳やマラソンを得意とする24才のスポーツ青年です。4人は水泳教室の仲間でもあります。

 平成7年11月11日,会場は松戸市民劇場で,私達の予想以上に大勢の方々がいらしてくださり,とても感激しました。演奏曲は,エリーゼのために,渚のアデリーヌ,ジプシーロンド他八曲,合い間に会場のみなさんと一諸に唄うコーナーと母親達の話を入れました。

 決して上手な演奏ではありません。まして大勢の方に聞いていただくことなど大それた事です。しかし,彼等の一生懸命な姿と素直な心は感じていただけたと思います。終って,昔お世話になった幼稚園や学校の先生,水泳のコーチそしてお友達の励ましや暖かいお言葉を頂き,4人がどんなに皆様に育てられたかを感じました。

 また当日,平岡先生の生徒さんがボランティアとして応援して下さったり,市民劇場の皆様にも何かと心配りをしていただき,心温まるコンサートになリました。

 障害を持つ子ども達に「なせばなる」という事を教えて下さいました平岡あや子先生,そして今日まで支えて下さった皆様に心から感謝しております。

(松戸市分会 須郷和子)

98/09/01 up