みち58号から 99.09.20 up

第8回自閉症に関する実態意識調査報告

−学校教育について−

教育研修部 松井宏昭


 

 自閉症の現実の姿、教育や福祉、労働に対して、アンケートを通じて会員の皆様方から貴重なご意見やご要望をいただきました。ご協力いただいた方に心からお礼を申上げるとともに、ここでは「教育」に関係した設問にスポットをあててその結果の一部をご紹介致します。詳しい内容は機会を改めてご報告致します。今回の調査では、卒業生の保護者から在学中の教育や家庭での対応など詳しく回答を得ていますが、現役の児童・生徒の保護者からいただいた回答に限定して紹介致します。

<調査の概要>

○調査実施時期   1999年5〜6月

○調査方法     郵送または手渡しによる選択及び記述回答方式

○調査対象     千葉県支部保護者会員(調査票配布数559名)

○回答者数     339名 (回答率61%)

 


●回答者の子どもの所属・年齢構成

 

 回答者の2人に1人が在学中または就学前の子どもの保護者です。その内訳は、小学校24%、就学前9%、中学校7%、高校6%となっています。

 通学している学校は、小学校では養護学校小学部、特殊学級、普通学級がそれぞれ31%、54%、14%。中学校では養護学校中学部が71%、特殊学級が29%であり、普通学級はなし。高校では95%が養護学校高等部で、普通高校は1名のみでした。療育手帳の判定では、小学校、中学校、高校ともに判定Aと判定Bの所有者の割合がほぼ同程度であることから、学歴が進むに連れて、普通学級から特殊学級へ、そして養護学校へと進路を変えていっているものと推察されます。

 


 

●子どものことで現在困っていること

 「コミュニケーションをとりにくいこと」や「固執・こだわり」に困っていると答えた人は、子どもの年齢にかかわらず最も多く全体の60%を占めています。

 しかし一般に、子どもの年齢によって、困っている内容や、その困っている度合いは大きく異なります。就学前の回答者では、「食事障害」、「身辺自立」など生活する上で最も基本的なことや「多動」で困っている人が多く、小学校以上では「自傷」等の二、三次障害や「1人で留守番ができない」、「何もすることがない」、「思春期」といった就学前にはまだ顕在化していなかった新たな問題に遭遇していることがわかります。

 高校では、いずれの項目も困っている人の割合が減り、一見安定した生活を送っているように見うけられますが、これは問題行動が激減したというよりも回りが彼らの行動に慣れた結果とも言えます。

 

これら、子どもの抱える困難性はそのまま教育の課題に直結しており、子どもに対する悩みはライフステージごとの教育目標と相まって学校教育に対する親の要望の根拠になっていると考えられます。

 


 

●学校生活

 

  学校生活に対して「不満である」と回答した人が多く、驚かされます。

 『満足』と回答した人の理由は、子どもの年齢にかかわらず「嫌がらずに学校へ行っている」、「授業の内容や先生の指導に満足」という答えが支配的でした。

 一方、『不満』とする回答理由は、逆に「授業の内容や先生の指導に不満足」という答えに代表されます。

また、『満足していないが不満はない』の回答理由は、「本人が嫌がらずに学校へ行っている」からでした。

このように、学校生活に満足しているか不満であるかは、「授業の内容や先生の指導」に大きく影響されていることがわかります。

満足している人と不満をもっている人の割合が年齢・学校種によって異なっており、的確な教育ニーズを探るためには、この違いについて詳しく分析する必要があります。

 


 

 それでは、保護者の「学校」に対する希望のうち回答率の高かったものを具体的に紹介します(5つまで選択可)。もちろん子どもの年齢や学校種によって要望の内容が異なっています。ここで示した数値は就学前から高校までを平均した回答率です。

 

●学校の教育システム・制度についての希望

1 担任が替っても前年度の教育がスムーズ引き継げるよう、学年の引継ぎはきちんとやってほしい(67%)

2 学校に心理療法士などの専門家を配置してほしい(52%)

3 教育指4 導要領で知的障害と同5 じく自閉症を発達障害として位置付けてほしい(41%)

4 小・中・高の連携が希7 薄なので十分な連携をとってほしい(33%)

5 療育機関と十分な連携をとってほしい(30%)

*このほか、小学校普通学級で「通級制度を取り入れてほしい」、小学校特殊学級や中学校特殊学級で「高等学校に特殊学級を設置してほしい」が高い支持を得ています。

 


 

●学校の教育内容についての希望

1 一人ひとりの能力を引き出してほしい(65%)

2 将来を見据えた個別の教育計画を親の参加のもとで作成してほしい(53%)

3 夏休みなど長期休暇の指導を充実してほしい(プールなど)(46%)

4 子どもに様々な社会体験をさせてほしい(45%)

5 集団の中で社会性を意識した教育をしてほしい(42%)

6 TEACCHプログラムを導入してほしい(29%)

 


 

●教員についての希望

1 深い専門知識や技術をもつ(56%)

2 問題行動の原因の分析と適切な対応ができる(55%)

3 子どもの課題を的確に分析できる(50%)

4 子どもの個性や人権を尊重する(46%)

5 親がささいなことでも相談ができる(38%)

6 親からの情報を大切に扱える(34%)

7 常に子どもの立場、視点を重視する(32%)

*このほか、就学前や小学校普通学級では「いじめの問題にき然と対応する」が約4割の高い支持を得ています。