テキスト ボックス: 千葉県自閉症協会では、平成18年10月の「障害者自立支援法」本格実施により、発達障害児者の支援サービスに関する影響を把握するため、千葉県在住の発達障害児・者1042名を対象にアンケート調査を実施し、525名から回答を得ました。
ここでは、回答者の属性と回答結果の概要につきご説明します。詳細な結果分析は次章以下をご覧ください。

                     ◆◆アンケート回答概要◆◆
                      
1.回答者の属性
【年齢構成】
 未就学児6%、小中高生徒61%、18歳以上33%
【障害の種類】
 自閉症77%、高機能自閉症10%、アスペルガー6%、LD・ADHD1%、
 その他の障害4%、不明2%
【手帳の有無】
 重度(○A〜A2)49%、軽度(B1、B2)36%、療育手帳なし16%
 尚、療育手帳なしのうち2名は精神障害者保健福祉手帳を受領

2.受給者証受領状況
旧法の支援費給付決定受給者証を受領していたもの320名のうち、新法の障害福祉サービス受給者証を受領できていない者が31名いる。
また、旧法で受給を受けていないもので、新法の受給者証を受領したものは51名いる。
新法の受給者証交付率は、18歳未満64%、18歳以上67%と大差ない。

3.療育手帳の障害区分と自立支援法の障害程度区分認定
【18歳以上】
○療育手帳がA2以上の人で、自立支援法の障害程度区分3までの軽い認定を受けた人は24名、29%を占める。(うち、自閉症理解の高い医師の意見書を提出した人は4名、それ以外の医師の意見書は20名)
○療育手帳がB1・B2の人で、自立支援法の障害程度区分4の認定を受けた人は5名、18%。
【18歳未満】
○療育手帳がA2以上の人で、自立支援法の障害程度区分1の軽い認定を受けた人は3名、3%。
○療育手帳がB1・B2の人で、自立支援法の障害程度区分3の認定を受けた人は7名、10%。
【医師の意見書の影響】
意見書を提出した医師の自閉症理解度による、障害程度区分認定結果の差が大きく出ている。
○理解度の高い医師の意見書を取り付けた人のうち74%は区分4以上の重度判定を得ている。
○それ以外の医師の意見書を取り付けた人の場合は区分4以上の判定は32%に止まっている。

4.障害程度区分認定に対する満足度
障害区分認定に対する満足度は、軽度認定(18歳以上で区分1,2、18歳未満で区分1)を受けた人では4%、中度認定(18歳以上で区分3,4、18歳未満で区分2)を受けた人で22%、これに対し、重度認定(18歳以上で区分5,6、18歳未満で区分3)を受けた人では41%と高くなっている。
 
テキスト ボックス: 5.市町村の認定調査状況について
「認定の意義・手順につきよく説明してくれた」自治体の調査員は全体の45%にとどまり、過半数の調査員は障害程度区分認定につき、被調査者が満足する十分な対応ができていない。また、調査員の調査結果につきフィードバックを受けた人は26%にとどまる。

6.自立支援法サービスの認定状況について
【サービスメニュー】
支援費サービスと自立支援法のサービスメニュー体系が異なるため、単純比較は難しいが、主要なサービスについては、ほぼ同数の人に引き継がれて認定されていることが見て取れる。
【支給量】
支給量についても、支援費サービスでの総量が引き継がれている人が大勢ではあるが、支援サービスに比し増加した人が減少した人より多い傾向にある。
(短期入所:増加者17%VS減少者4%、移動支援:増加者20%VS減少者7%、児童デイサービス:増加者16%VS減少者3%)
【前年比較と満足度】
自立支援法のサービス認定によって、「前年よりサービス項目が増加した人」が、 有効回答者の10%、「前年より支給時間が増加した人」が、同13%いる。
しかし、「前年よりサービス項目が増加した人」の内、満足している人は50%、「前年より支給時間が増加した人」の内、満足している人は38%と、サービス項目の増加・支給時間の増加が、必ずしも利用者のニーズにマッチしていない実態を読み取ることができる。

7.自己負担額の変化と対応策
自立支援法施行により、支援サービスの利用に対する自己負担額が増加したと答えた人が、有効回答者の58%を占めた。
増加者のうち、対応策を回答した170名において、約3割の人が、利用日数・頻度を減らすか、サービス利用そのものを停止しており、自己負担額の増加がサービス自体の利用に制約となっている。

8.実施して欲しい地域生活支援サービス
地域生活支援事業に対する要望73件のうち、「送迎」に関する要望が41%、「デイサービス」に関する要望、「余暇支援」に関する要望がそれぞれ15%、「一人暮らし支援」に関する要望が7%、「短期入所」に関する要望が5%と続いている。
【送迎に関する要望】
○学校・施設・病院等への送迎・介護タクシー事業の給付等、送迎サービスの充実を望む声が非常に高い。
【デイサービスに関する要望】
○幼児・中高生・卒業後も利用できる放課後・土日のデイサービスへのニーズも大きい。
【余暇支援に関する要望】
○卒業後のオフタイムに余暇活動を支援するサービスへの期待。
【一人暮らし支援に関する要望】
○親を離れて一人暮らしができるよう、金銭管理・家事生活指導・健康指導等の成年総合後見制度。
【短期入所に関する要望】
○緊急の一時預かりサービスの充実。
テキスト ボックス: 9.支援費サービスと自立支援法サービスを比較して
【デイサービス】
○旧法のデイサービスが、新法では18歳未満の障害児は介護給付の「児童デイサービス」、18歳以上の障害者は、地域生活支援サービスの「日中一時支援」に分離されたが、以下のような利便性の低下の声が多い。
 「利用時間が短縮された」
 「長期休暇中の時間調整がきかなくなった」
 「施設への送迎がなくなった」等、
【移動支援】
○旧法で居宅介護に位置づけられていた「移動介護」が、新法では、地域生活支援サービスの「移動支援」に移行したため、自治体によりサービスレベルが異なり、「利便性がアップした」という声と「削減された」「送迎がなくなった」という評価が2極化した。
【自己負担増】
○自己負担増を訴える声は多く、利用サービスを減らした人もいる。
【事業者】
○事業者の対応が変化することに対する心配等の声も多い。

10.自立支援法に対する総合意見
【在宅の自閉症児者の意見】
○自立支援法の新支援サービスに関する行政の説明不足からくる不満が非常に大きい。そのため、十分なサービスの認定を受けられていない人もいる。
○自立支援法の制度全般・区分認定手法・利用者負担・サービス運営に関する不安が多く寄せられている。
○市町村行政に対する要望としては、地域間格差を無くして欲しい、自閉症への理解、移動支援・放課後支援の利便性強化が求められている。
○せっかくサービス認定されても、事業者が近所に無い、事業所存続が危ぶまれている等、支援サービスの根幹を揺るがす問題が指摘されている。
○親の高齢化・親亡き後、本人の卒業後等、将来への不安も多く寄せられている。

【在宅高機能自閉症児者】
○希望する支援施設・支援サービスがない、制度の対象になっていない、学校・療育の充実を!
【在宅アスペルガー症候群】
○受けられる支援サービスがない、学齢期終了後の支援を!
【施設入所自閉症児者】
○自立支援法に対する強い不満・疑問が特に多く、自己負担増も含め施設入所を継続できなくなるのではとの不安、帰宅日数を減少せざるを得ない状況、施設運営の困難さ等、多くの不安が訴えられている。
【グループホーム入所自閉症児者】
○軽度区分認定者では支援費が低く施設運営ができず、処遇の質が低下してしまう。

                                                    
                                                    以上