ドラマの書庫−『二千年の恋』 21:00〜(フジテレビ)


キャスト、脚本家紹介

キャスト

野上浩(金城武)
真代理得(中山美穂)
佐伯健志(宮沢和史)
今富成次(東幹久)
ナオミ・ナーギン(Fayray)

脚本

藤本有紀

あらすじ

 平凡な日常を送るシステムエンジニア・理得(中山美穂)と、アジア某国の工作員(金城武)とが織り成す異色のラブストーリー。理得は工作員の身分を隠す謎の男に想いを寄せ始めるが、彼が理得に接近していたのは、任務に必要な情報を得るためであった。。。

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第1話(2000/01/10)

あらすじ

 1999年12月24日、謎の工作員(金城武)とその弟を乗せた飛行機は日本へと向かっていた。これから起こそうとすることにためらいを見せる弟に対し、飢えた同胞を救うために、たとえ相手が父であっても、最後の扉を開けなければならないと兄は力強く言った。

 日本人としての偽装パスポートを手に、税関を抜けようとした二人であったが、警備員に呼び止められ、やむなく逃亡を図る。空港を出て林に逃げ込んだ二人であったが、弟は足を撃たれ、自決を図ろうとする。止める兄に対し、捕まり本国に送り返されたときに多くの人間が死ぬことになるからと、弟は決意を見せる。兄は弟のナイフをとりあげ、背後に回り込み、弟の喉元を掻き切った。そして形見として、弟の髪を切りさいた。

 クリスマスパーティーに来ていた真代理得(中山美穂)は、言い寄る男をそそのかし、自らの職場に飲み物を運ばせた。理得はシステムエンジニアで、職場はクリスマス返上で2000年対応に追われていた。チャットをしている同僚が、何千、何百万の人と繋がっている感じがすると言ったのに対し、理得は、「何千、何百万。。繋がり過ぎ。。」とポツリと言った。

 帰宅した理得は、切れかかっている電球を消し、ローソクに灯を燈した。

 翌日、警察は死体を検証し、犯人は日本人ではなく、そして鍛えぬかれた軍人のような強さを持つ男であると判断をくだした。

 仲間のもとに逃げ込んだ工作員は、同朋のナオミ(Fayray)にハンバーガーを薦められるが食べようとしない。弟を殺してきた彼に食欲はなかった。しかし、日本人になりきるための見本として、ハンバーガーをごみ箱に捨てるナオミを見て、彼はごみ箱からハンバーガーを取り出し毅然とした態度で食べるのだった。彼は外務省アジア局員の野上として任務を行うことになった。

 警察は某国の科学者のもとを訪ね、殺害された男との関係を問いただした。係長の佐伯は執拗にテロの可能性があると言う。彼はテロで親を亡くしていたのだ。科学者は、殺害された男の写真にかすかに驚きの表情を見せ、恐らく自分を殺しにきたのだろうと静かに言った。

 大晦日に職場で待機している理得のもとに、2000年対応が済んでいないコンピュータがあると、外務省から電話が入った。外務省に赴き、コンピュータシステムにアクセスしようとしている野上と出会った。野上は理得からパスワードを聞き出そうとしたが、近づいてくる足音を聞き、姿を消した。

 作業を終えた理得は、帰宅するためにエレベータに乗ろうとした。そのとき、野上がそのエレベータに入ってきた。野上は理得からパスワードを聞き出すため、理得と親しくなろうと話をする。途中でエレベータが止まるというアクシデントに見舞われたが、野上は難なく潜り抜け、理得を救い、姿をくらました。理得は、野上の落とした、弟の髪の入った包みを拾った。

 理得のパスワードを手に入れるため、野上の同朋の一人が理得を襲った。はじめは静観していた野上であったが、彼を殴り、理得を助けた。そして、野上は理得を食事に誘った。

 レストランで、野上は食事を残す日本人に敵意の目を向ける。不思議に思う理得に対し、野上は外務省として飢えた国を見てきたからだと答えた。そのとき、理得に電話が入った。電話は野上の同朋がかけたものであった。その隙に、野上は理得の持ち物を調べ、外務省のIDカードとパスワードを盗み出した。

 食事の後、理得と野上はローソクの燈された教会を目にした。「ローソクは我が身を燃やして、何を求めているの?」と問い掛ける理得に、野上は「何も求めていない。最後に燃え尽きたときに得る誇りの他には。」と答えた。理得は、外務省で拾った包みを野上に返した。

 警察では、犯人のモンタージュが作成され、佐伯が檄を飛ばしていた。佐伯は、テロであることを確信し、犯人がテロを起こすのではなく、犯人そのものがテロなのだと言った。

 深夜、野上は理得のIDを使って外務省に侵入し、コンピュータシステムにアクセスし、科学者の居所を付きとめた。

 理得は、家でローソクを燈し、野上のことを考えていた。しかし、そのとき野上は、理得のIDカードを燃やし、タバコを吸った。

寸評

 「二千年の恋」というタイトルに似合わず、始まりはサスペンス映画のようであった。金城武を映画で見ているせいか、この作品がドラマであるという印象を受けなかった。しかし、その後、中山美穂のクリスマスパーティーのシーンを見て、連続ドラマの世界に帰ってきた。このギャップは大丈夫なのだろうか、と少し心配したのだが、現在のところバランスを保てているようである。金城武の演技が、映画からドラマへと、うまい具合にシフトしていった感じがする。

 今回のドラマは、数ヶ国で放映されるらしいが、某国の工作員という設定が、かなり政治色の入った作りになっている。「飢えた同胞のために」というセリフや、日本人になりきるためだとハンバーガーをごみ箱に捨てるシーン、食事を残すシーン、それらに対する工作員の反応など、かなり重たいテーマが課されている。国内の問題を取り上げるドラマは、数多く放映されてきたが、海外と比較し、問題提起するドラマは初めてでないだろうか。

 もう一つ設定されているテーマは、情報化社会に対してのものである。システムエンジニアという職業に就きながら、携帯電話を持たず、チャットなどの繋がりを嫌う理得。情報化社会の対極としてのメタファーを担い、頻繁に登場するローソクの灯。このような社会の中で、人と人との繋がりをどうやって築き上げていくのか。これも上のテーマに負けないくらい重要である。

 二つのテーマが、どのように融合していき、そして、どのような解決策が提示されるのか。このドラマの今後の展開に期待したい。

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第2話(2000/01/17)

あらすじ

 外務省のIDを紛失した理得(中山美穂)は、新しいIDを発行してもらう。帰り際に、アジア局の職員とすれ違った。理得は気付いていなかったが、ネームプレートには野上と記されていた。

 工作員・野上(金城武)の父・ビクトル・マロエフは、ホテルの食事以外のものを調達してくると言う警察に対して、「この国の方は気付くべきだ。食べられるだけで幸せだということを」と意味ありげに呟いた。マロエフは、警察に、オペラ鑑賞へ出掛けると話し、そのときの警護は必要ないと念を押した。警察は、マロエフが何か行動を起こすのではと、彼の真意を探ろうとしていた。

 理得の職場に、家を捨てて出て行った父が尋ねてきた。子供のときからジグソーパズルに熱中し、見守ることしかできなかったなどと昔の話をした後、新しい家庭が壊れるからと、母親の法事の連絡はしないでほしい、と理得に言った。そんな父親に対して、理得は、子供のときは何もしてくれなかったけど、あのときは最後までそばにいてくれた、と悲しそうに言うのだった。

 野上は、同朋のナオミ(Fayray)に、マロエフを殺害せずに本国へ連れて帰ってもよいかを、本国と相談したいと言うが、電話や無線は傍受されるので使用しないように言われた。野上は、マロエフがやろうとしている家族より大事なものは何なのかを知りたかったのだ。

 熱を出し家で静養していた理得のもとへ、野上から電話がかかってきた。野上は、頼みたいことがあるので、今から家へ行ってもいいかを、理得に尋ねた。野上を待つ理得の家へ、妹のまりあ(仲間由紀恵)が帰ってきた。まりあは、健康保険証を持ち出し家を出ようとするが、理得は、まりあの顔の傷に気付き、呼び止める。そのやり取りの中、野上がやってきた。野上はまりあを引き止め、「殴られてるな。男に容赦なくだ」と言って、掴んでいた彼女の腕を放した。

 公園で、野上は理得から、暗号ソフトを受け取った。まりあのことを話し、昔はやさしかったのに、と父親の話をする理得に、野上は、そう信じたいだけじゃないのか、と冷静に分析するのだった。

 本国からの指令は、マロエフの殺害であった。野上はナオミに銃を手渡される。オペラの会場に同席しようとするナオミに、野上は、盾になる女が必要なので理得を連れて行くと言った。野上は理得を誘い、オペラ会場で待ち合わせをした。オペラ会場に現れた理得は、亡くなった母親のドレスで着飾っていた。ドレスアップした理得にみとれる野上であるが、会場の強化された警備に気を引き締める。そして、席上に父の姿を見つけたとき、オペラは始まった。

 途中休憩の際、席を立ったマロエフは、外国人の子供が落としたぬいぐるみを拾ってあげる。そのとき、ぬいぐるみの中にMDを忍び込ませた。野上はそれを目撃し、複雑な面持ちでじっと父を見続けた。理得は、飲み物を買いに席を立ち、それを見計らってきたナオミは、野上に銃を手渡した。

 銃を懐に隠し、階段を下りていく野上の先には父・マロエフがいた。眼鏡をはずし、蝶ネクタイをはずし、懐に手を忍ばせる。歩きながら、野上はじっと父を見つめていた。マロエフも息子に気が付き、張り詰めた空気がその場を支配した。そこに駆け寄る理得。理得は、バッグの中から、なくしたと思っていたジグソーパズルが見つかったと、野上に無邪気に報告した。野上はついに父を撃つことができなかった。マロエフは野上のそばを通り、会場へと戻る。不信に思った佐伯(宮沢和史)が近づいてくるのを察し、野上は理得にキスをし抱きしめた。なぜと尋ねる理得に、「キスでも迫らなければ帰れない顔をしているから」ときつい言葉を浴びせ、その場を去った。

 ナオミは、マロエフはCIAに本国の情報を流し、亡命の受け入れを承認させたと結論付けた。なぜ撃たなかったのかを尋ねるナオミに、「俺の父親だぞ」と野上は答えた。同じ頃、佐伯は、この国にとって取り返しのつかない何かを起こそうとしていると、警備に気を緩めないよう指示をだしていた。

 理得は、部屋のロウソクを消し、ライトを付けた。そして、「バカみたいね」と一人呟いた。そのとき、窓の外を見ると、野上が立っていた。家の外に出た理得は、微笑を持って野上を迎えた。「君のことを傷つけたのになぜ?」と尋ねる野上に、理得は、「悲しそうに見えたから」と答えた。そして、「何があなたを苦しめているんですか?」と理得は尋ねるが、野上は、「しょせん、別の世界に生きている」とだけ答えた。そして、「今日、君と話せてよかった」と言い残し、その場を立ち去ろうとした。理得は、「帰れそうにないから」と野上の頬にキスをした。

寸評

 飢えた同胞のため、という設定を前にして、まりあや成次(東幹久)らの問題は、如何に機能するのだろうか。どちらも大切な問題なのだろうが、同軸に並べてしまうと、バランスがとれない。それは、戦争のニュースを聞いた後に、コンビニ強盗のニュースを聞くようなものだろう。問題の重要性に優劣をつけることはできないが、一緒に扱うことによって、問題の焦点がずれなければいいのだが。

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第3話(2000/01/24)

あらすじ

 理得(中山美穂)は、アジア局の野上(金城武)に電話をかけるが、外出していると告げられる。その頃、野上は、廃屋で銃の訓練を行っていた。同胞からは、飢えた同胞を救うためには、お前をあてにする他はないと声をかけられる。しかし、野上は、「何があなたを苦しめているのですか?」という理得の言葉を思い出していた。

 理得の家に妹のまりあが(仲間由紀恵)訪ねてきた。まりあは成次(東幹久)から、キャバクラの仕事を辞めていいと言われたと言い、理得に野上との関係を問いただすほどの余裕を見せていた。しかし、外では、成次がまりあの出てくるのを待っていて、まりあに「先方を待たせたらどうする」と意味深な言葉をかけるのだった。

 野上がアジトに帰ると、ナオミ(Fayray)がテレビを指差した。テレビのニュースでは、ビクトル・マロエフのアメリカ亡命が伝えられていた。家族の安否が気遣われているとのニュースの言葉に、「長男が元気に殺しに来ている」とナオミは笑った。

 野上からメールの返事がこないことに心配した理得は、直接外務省へと足を運んだ。理得は、外務省の入口で野上と会い、喫茶店でお茶を飲むことになった。野上は、父親とけんかをして会えないが、弟が死んだことを伝えたいので手紙を渡してほしい、と理得に頼んだ。

 マロエフの元に電話がかかってきた。誰だと問いただす警察に対し、マロエフの命を狙う者だ、と野上は答えた。野上はマロエフとロシア語で話しをし、ホテルで落ち合うことを約束した。ロシア語を理解できなかった警察は、本部にテープを回し、自らはホテル内を虱潰しにあたっていった。マロエフのいるプールに向かうエレベーターを、警察は待ち構えていたが、中から出てきたのは理得であった。その頃、野上は屋上へと向かっていた。

 理得から手紙を受け取ったマロエフは、階段で屋上へと向かう。屋上で二人は再会し、野上は弟・サミュエルの死を伝えた。そして、自らが殺したことも。なぜ家族を死に追いやることをするのかと問う野上に、マロエフは、この国の人を同じ目に合わすことはできないと答えた。マロエフは、1月30日に留学先の大学へと移動するので、そこで私を殺しなさい、と息子に伝えた。そして、息子を抱きしめ、私はお前を愛していると言った。

 ホテルの外で待っていた理得は、野上に、父親と仲直りできたのかを聞いた。野上は父の気持ちを理解できなかったと答え、振り返らず、急ぎ足で歩いていた。「一人一人の気持ちなどはどうでもいい」、「それを抑えてもやらなければならないことがある」、「人を心配してますという顔をしないでくれ」と畳み掛ける野上に、理得は、「それなら、そんな後姿を見せないでください」と言うのだった。

 ホテルの防犯カメラに、手紙を持った女性が写っていた。封筒を拡大していくとネズミの絵が映し出された。それはマロエフへの手紙を入れていた、理得のビッグマウスシステムの封筒であった。

 理得の家にまりあと成次が来ていた。法事のときに持ち出したお金を返しにきたのだ。しかし、まりあが2階に行っているとき、成次は理得に、まりあが体を張って稼いだお金だと言って、まりあのアダルトビデオを見せるのであった。ビデオを止め、蹲って泣いてしまうまりあを見て、理得は、成次に抗議をするが、まりあは、「もういいの」としか言えなかった。

 アジトでは、サンプルが届いたので、あの女に運ばせよう、とナオミは野上に言うが、あの女はもう利用しない、と野上は言った。そして、次の朝、野上は理得と会い、自らの皮の手袋を渡し、密かに別れを告げるのだった。

 理得は、外務省に呼び出される。そして、深夜にアジア局の端末が使用され、理得のIDが使用されていたと言われた。理得は、その晩は野上と食事をしていたと言い、外務省は確認のため、アジア局の野上を呼んだ。しかし、そこに現れたのは、理得の知っている野上ではなかった。

 警察はインターネットを使い、ネズミのロゴを探していたが、遂に、あのネズミが、ビッグマウスシステムのものだと突き止めた。

寸評

 今回は前回と同様のストーリー展開だった。野上は、飢えた同胞のためにと言いつつも、父・マロエフや理得に対して冷酷になれないでいる。妹のまりあは、成次にいいように使われていて、そこから抜け出せないでいる。前回からの進展と言えば、マロエフが祖国を裏切ったのは、日本のためということがわかったことだけかもしれない。そして、マロエフが息子を愛していたことも。

 第一話の寸評において、このドラマは、「国際社会の問題」と「情報化社会の問題」が提起されていると述べたが、どうやら見当はずれだったようだ。ドラマは、謎の工作員の心のゆれへと焦点を移し始めている。同胞への愛、家族への愛、異性への愛。これらの愛の比重をどのようにシフトしていくかが、これからのテーマになるだろう。

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第4話(2000/01/31)

あらすじ

 理得(中山美穂)は、外務省の野上が、彼女の知っている野上(金城武)ではないと知る。そして、警察は、理得とその周辺を探り始めた。理得は、工作員(金城武)に教えられた携帯へ電話をかけてみるがつながらなかった。その頃、工作員は、父・マロエフが予定を変更して立ち寄ると言った大学を下見していた。

 アジトでは、同朋のナオミ(Fayray)が工作員を後ろから抱きしめ、慰めようとするが、彼は受け付けようとはしない。ナオミの、体が嫌なのか、私が嫌なのか、理得じゃないとだめなのか、との問にも、工作員は、誰の慰めもいらない、と答えるだけだった。

 ナオミは同胞のカイに、理得を襲うように指示した。しかし、カイは、警察が理得を尾行していることに気付き、ナオミに電話をかける。ナオミは、「久しぶりに拳銃を撃ってみる?」とカイに言った。

 工作員は、自分の銃がなくなっていることに気付き、ナオミを問い詰める。理得が狙われていることを知り、彼は、慌ててアジトを後にした。その頃、カイは、モンタージュの男を上野動物園で見たと、警察に偽の情報を流していた。警察は、理得から離れ、動物園へと急行した。

 カイは理得の後ろから銃を突きつけ、引き金を引こうとする。そこに、工作員が現れ、間一髪で理得を救った。工作員は、二度とこのような真似をしないように、カイを痛めつけた。

 工作員は、理得のそばへ駆け寄り、体を起こそうとするが、理得は、それを受けようとしない。どこの誰かもわからない人に、これまでだまされてきたことを、理得は、納得できなかったのだ。理得は、工作員のことを知りたがったが、彼は、何も答えなかった。知りたいのが当たり前と言う理得に、言えないのも当たり前だと工作員は答えた。立ち去ろうとする工作員に向かって、「呼び止める名前も教えてくれないなんて」と悲しげに言った。

 マロエフの出国の日、佐伯(宮沢和史)は理得を訪ね、工作員のモンタージュを見せた。混乱する理得に、佐伯は、これまでの経過を一から話して聞かせた。彼がある国の工作員であること、ある人物の命を狙うために日本に来たこと、そして、その工作員が既に仲間を一人殺していることを。佐伯は、工作員がこの先も何かをたくらんでいるだろうと言い、理得に向かって、「あなたは利用された被害者だ」と言った。

 その晩、工作員は、大学の研究室の中でロウソクの灯を見つめ、理得は、自分の部屋で同じくロウソクの灯を見つめていた。そこに電話のベルが鳴った。電話の相手は、工作員だった。工作員はロウソクの灯を見ていたら、理得の姿が浮かんできたので電話をかけたと言い、理得も、ロウソクの灯を見ていたと答えた。でも、あなたのことがわからなかったと付け加えた。工作員は、理得に、君には笑っていてほしいと言う。理得は、弟を殺し、父親を殺し、どうしてそんなにつらい思いをしなければならないのかわからない、と言った。そのとき、工作員は「理得」と彼女の名を呼んだ。そして、「一度そう呼んでみたかった」と言い、電話を切った。

 マロエフは、予定を変更し、工作員の待つ、留学先の大学へと向かった。工作員は、教室で、静かに待っていた。理得は、タクシーを拾い、横田基地へと向かった。

 マロエフと護衛の刑事が構内へ入ったとき、仕掛けていた爆弾が爆発した。しかし、それは誘導のためであり、その間に、工作員はマロエフを実験室へと連れて行った。

 一緒に死のうと考えていた工作員に、マロエフは、家族を救うためにも生きなければならないと諭した。工作員は、マロエフが阻止しようとしていた計画の実行を任されていると、悲しそうに言った。そして、家族のためにも断ることができないということも。家族を犠牲にしてでも、人の道を選んだマロエフは、工作員の銃を自分の胸にあてた。そして、「お前は俺の自慢の息子だ」との言葉をかけ、引き金を引いた。

 タクシーに乗っている理得の横を救急車が駆け抜ける。そして、臨時ニュースが、マロエフの死を告げていた。さらに、マロエフを殺害した工作員が警察の銃で負傷していることも。

寸評

 飢えた同朋のため、と口癖のように言っていた工作員だが、彼が本当に守りたかったのは家族であった。しかし、家族を救うために、彼は弟と父親を殺すという矛盾を犯してしまう。平和な国に住む私たちには考えられないことである。しかし、平和でない国にとって、このようなことは、そんなに常軌を逸している話しではない。異なる主義のもと、親子が殺し合い、兄弟同士が殺し合う日常。。

 ドラマであるが故に、枠組みの中で最後を迎えなければならない。しかし、平和な国の常識を平和でない国に当てはめることはできず、また、その逆も不可能であろう。どのように、この物語が閉じていくのか。このドラマは何を用意してくれているのだろうか?

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第5話(2000/02/07)

あらすじ

 マロエフの死の翌日、理得(中山美穂)の職場に佐伯(宮沢和史)がやってきた。必要以上に同情を見せている、と佐伯は忠告するが、自分の父親を殺したくて殺す人はいない、と理得は工作員(金城武)をかばうのだった。

 仕事帰りに、教会へ立ち寄る理得。その教会は、以前、工作員と来たところであった。理得は教会のロウソクの灯を見つめ、工作員のことを思う。そして、立ち去ろうとしたとき、足元の血痕に気付いた。血痕は教会の奥へと続き、奥の部屋には、工作員が蹲っていた。工作員は意識を失い、理得は彼を家へと運んだ。

 工作員の手当てをしようと、理得は彼の服を捲り上げる。服の下は血で染まっていて、その傷を塞いでいたのは理得のIDカードだった。理得は友人の医者に連絡を取り、手当ての方法を聞き看病をはじめた。

 出社すると、職場に部長が来ていた。部長は警察へ提出するために、理得のメールをすべて印刷していたのだ。そして、その側では、化粧品のセールスに扮したナオミ(Fayray)が、理得の住所を探り出していた。

 寝ている工作員の顔にナオミは銃を突きつける。ナオミは次の仕事は父親の尻拭いではなく、革命行為だと告げた。そして、「あなたは裏切らない。いや、裏切れない」と言葉を続け、工作員に、祖国に人質にとられた家族のことを思い出させるのだった。

 警察はマロエフがアメリカに渡したものが、何らかの起爆装置に関するものだと突き止めた。それを聞いた佐伯は、真代理得がホシに近づく唯一の道だと次長に申し出る。

 工作員は、ガーゼを取り替えようとする理得の手を握り、どうしてそんなに優しくしてくれるのかと尋ね、理得を抱き寄せた。しかし、そのとき、チャイムがなった。顔をこわばらせ玄関に出た理得だったが、家に来たのは妹だった。工作員は、警察が踏み込んできたら、銃で脅されたと言えばいい、と言ったが、理得は、はっきりと、あなたといたいからいるのだと答えた。

 佐伯は、父親が殺されたときの爆弾テロと、マロエフの殺害を重ね合わせていた。DNA鑑定の結果、マロエフと工作員とは、極めて近い親族関係にあることがわかった。そのとき、理得の家に男の影が見えたとの、連絡が入った。

 佐伯は令状なしに家に入り込み、男の影に銃を向けた。しかし相手は、理得の妹の男・今富(東幹久)だった。今富は、工作員の残したライターを拾い上げ、理得を見て不敵に笑った。

 佐伯は、父親を殺したやつに同情する必要なんかないと、再度、理得に忠告するが、理得は、あの人のことは何も知りませんと答えるだけだった。

 理得と佐伯のやりとりを聞いていた工作員は、亡命者を殺すために日本に来たこと、家族が人質にとられていることを理得に話した。立ち去ろうとする工作員に、理得は、自らのマフラーを工作員の首にかけ、「死なないでください」と言った。

 警察をひきつけるために、外出しようとする理得に、工作員は、「ユーリ。俺の名前はユーリ・マロエフ」と自らの名を明かした。

寸評

 「たとえ家族を人質にとられても、父親を殺害したことを正当化できない、親の愛の前では。。」と佐伯は工作員を糾弾していたが、どうもそのあたりがよくわからない。佐伯は父親を爆弾テロで亡くしているが、明らかにそれとは状況が異なる。家族を人質にとられ、父親殺害を強要されたとき、いったいどのような行動をとればいいと言うのだろうか?

 日本にいて、このような選択を迫られることは、まずあり得ない。しかし、考えてみると、どのような基準にたって答えを導き出せばいいのかわからない選択である。答えの出ない問から何を得るのか。たとえ答えは出なくとも、そのようなことを一度でも考えてみるということが、おそらく大切なのだろう。

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第6話(2000/02/14)

あらすじ

 謎の工作員(金城武)からユーリ・マロエフと、本当の名前を告げられ動揺を隠せない理得(中山美穂)。一方、ユーリと接触を持ったことで理得があやしいとにらんだ刑事の佐伯(宮本和史)は、同僚の刑事たちの忠告も聞き入れずに、単独で理得をマークする。執拗に理得を追いまわし、様々な人に聞き込みをする佐伯のせいで、取引先の会社から理得を担当からはずして欲しいという注文が会社にはきていた。

 そのため、理得は取引先の会社一軒一軒に謝罪して回った。そんな理得がいつかユーリと接触するのではないかと思い、佐伯は理得をずっとつけまわす。

 ユーリは隠れ家で包帯を取り替えていると、仲間のナオミ(Fayray)が入ってくる。そして、絶対に計画を成功させて祖国の土を踏もうと励ます。

 理得は自分の家の扉を開けて呆然と立ち尽くしてしまう。つけまわしていた佐伯は、理得の様子がおかしいのに気づき家の中を見ると、家の中のものがすべてなくなっていたのだった。これはユーリの指紋や痕跡が残らないようにと、ユーリの仲間がやったことだった。そう感づいた佐伯は呆然としている理得に対し、「あなたは利用されただけだ」と言い、何かユーリの物を持っていないか尋ねられるが、ユーリをかばって持っていないと答える。

 そして、窃盗事件として捜査が始まった。佐伯の願いもむなしく家からは何も出てこなかった。そのため、捜査は打ち切られることになった。しかし、指紋を消す必要があったのはまだ出国していないからだといって、ユーリのことをあきらめた訳ではない佐伯であった。

 その頃、理得の妹の恋人である成次(東 幹久)は、妹まりあ(仲間由紀恵)を見つけ、もう一度やり直したいと謝って来た。しかし、まりあは「子供は一人で育てる。」と言って口論していると、あやまってまりあは階段から転落してしまう。恐くなった成次はまりあを放ってその場から逃げ出す。

 電話で連絡を受けた理得はすぐに病院にかけつけた。奇跡的にまりあもお腹の赤ちゃんも無事だった。目が覚めたまりあは自分がどれほど馬鹿だったか思い知り、赤ちゃんだけは守っていくと理得に誓う。

 理得のところから家財道具一式を、仲間たちが持って帰ってきたのを知り困惑するユーリ。理得に情が移ったのではないかという仲間たちの問いに対し、そんなことはないとユーリは答えながら、時限爆弾を作っていた。

 理得はまりあと会わないで欲しいと成次に頼みに行く。理得が帰った後に、「麻雀の負けたお金はどうやって払うんだ」と聞く友人たちに「新しい金づるを見つけたから大丈夫」と言う。

 理得は両親の墓参りに行く。そこで、盗まれたはずの母の写真が墓の前に置かれてあることに気づく。ユーリが返しに来てくれたと思い、周りを見渡すがそこには誰の姿もなかった。

 会社に行くと理得のことを同僚たちは温かく迎えてくれた。そんな理得のところに「きみには悪いことをしたと思っている。これまでのお詫びをきみの家に送っておいた。傷兵より」というメールが届く。

 そのお詫びとは、ユーリの仲間たちが理得に宛てた時限爆弾入りの荷物だった。それを知ったユーリは荷物を取り返しに、理得の家に向かう。

 理得は家に帰ってその荷物を見つける。箱の中を開けると、そこにはマグカップ、ランチョンマット、フォーク、ナイフ、アルミ缶が入っていた。そしてアルミ缶を手にとった瞬間、時限爆弾は作動し始めた。しかし、ユーリが間一髪で家に飛び込んできて、その時限爆弾を止めることができた。そして、自分が理得の生活、仕事をめちゃくちゃにしているのに、なぜ警察に自分のことを言わないと理得に対して尋ねる。それに対して理得は「生活や仕事よりもあなたが大切だから」と言う。そんな理得にユーリは「ここは危険だから一緒に逃げよう」と言う。

 その頃、ユーリの仲間たちは任務が終わったらユーリを片付けると話し合う。一方、警察ではこれ以上理得を追っていても意味がないと判断するが、佐伯一人がユーリにたどりつくには理得しかいない、と長年の勘から思っていた。

寸評

 今回は今廣にかわって金曜日担当の三好がお送りしております。「二千年の恋」はとびとびで見ていました。だから、論じられるほどではありませんので、感想にとどめておきたいと思います。

 第一回、第二回の初回の方では、ユーリ(金城武)は理得(中山美穂)のことを利用しようと思っていただけですが、それが理得のやさしさに触れ、だんだん恋に変わってきています。こんな恋ってあるんでしょうね。理得がとても寛大だからこそ、その居心地のよさにユーリが惹かれてしまうんでしょう。こんな美人で性格のいい人が、29歳まで独身っていうのはいささか納得できませんがドラマなのでよしとします。

 このドラマは妹と見ていたのですが、妹は「たぶん最後金城武は死ぬと思う」と言っていました。果たしてそのとおりになるのでしょうか?ハッピーエンド好きの私としては、その予言が気になって仕方がありません。二人が逃げきれることを祈ります。

執筆者

三好(miyoshi_t@anet.ne.jp

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第7話(2000/02/21)

あらすじ

 ナオミ(Fayray)からの手を逃れるため、ユーリ(金城武)は、理得(中山美穂)を連れて、ラブホテルで身を隠すことになった。恐怖で一人でいることに耐えられない理得は、ユーリに一緒にいてくれるように頼む。部屋の隅に並んで座り、ユーリは、自分の国がユーラル共和国であることや、家族のことを理得に話し始めた。そして、自分は、国を守るため、人質に捕られた家族を解放してもらうために任務を遂行しなければならないことも。

 「自分のことは?」と尋ねる理得に、ユーリは、「大事な人たちが笑って暮らせればいい」と答えた。ロウソクのように身を潜めて、燃え尽きようとするユーリに、理得は、「どうして私にはやさしいの?」と尋ねる。「答えれば保てないものがある」と言って、ユーリはその言葉を言えないでいた。

 翌朝、ホテルに電話が入る。警戒しながら、ユーリは受話器を取った。相手は、理得の友人の女医・ゆうこであった。理得は、ゆうこから、入院しているまりあ(仲間由紀恵)の周りに不審な男がうろついていると知らされた。電話を切り、病院へ向かおうとする理得をユーリは止め、自分が見に行くと言った。「家族を心配する気持ちは同じ。君を危険な目に合わせたくない」との言葉を付け加えて。

 その頃、警察は、工作員の家族構成を突き止め、工作員の名前がユーリであることを知った。

 まりあの病室へ入ろうとする男を、ユーリは非常階段へと連れて行き、誰に頼まれて来たのかを聞いた。しかし、その不審な男は成次(東幹久)だった。ユーリは、理得からまりあの入院の理由を聞いていたので、成次の腹を思いっきり殴り、去っていった。

 まりあが心配で、我慢できなくなった理得は、ユーリとの約束を破り、タクシーで病院へと駆けつけた。病院では、成次が理得を待っていた。成次はユーリのライターを取り出し、お返しはきっちりとすると言って、その場を去っていった。

 アジトへと戻ったユーリを待っていたのは、上司の銃口であった。上司は、ユーリの忠誠心を尋ねた。ユーリは、銃を自らのこめかみへとあて、「命令されれば引き金を引く」と答えた。上司は、ナオミに、理得には手を出さないことを命令したが、それは、理得を切り札として置いておくためであった。

 ユーリからの連絡を受け、理得は、家へ帰ることができた。理得は、パソコンでユーラル共和国について調べ始めた。しかし、ユーラル共和国は、日本と友好関係を築いておらず、領事館もない国であったので、情報を集めることができなかった。理得は、佐伯(宮沢和史)へと電話をかけ、ユーラル共和国について、何かわからないかを聞いた。

 理得の家に佐伯が訪ねてきた。佐伯は、警察が入手した、ユーラル共和国の国営放送の記事を、理得に見せた。それを見た理得は、その場に蹲ってしまう。

 悩み続けた理得は、結局、ユーリと連絡をとる。佐伯の手を逃れ、ユーリと再会した理得は、佐伯から渡された記事をユーリに見せる。その記事は、ユーリが日本に来た、12月25日の記事であり、国への背信行為により、数十人の人が処刑されたことが載っていた。そして、その処刑者リストの中に、ユーリの家族の名が記されてあった。「そんなことあるわけないだろ。家族を守るために、サミュエルを、お父さんを。。」ユーリは、その場で泣き崩れた。

寸評

 今回は、佐伯に、ユーラル共和国の記事を見せられたときの、「日本人には考えられないことですね。」と言った理得の言葉が印象的だった。理得は、ユーリと接することにより、ユーリの言動や振る舞いから、新しい世界の見方を手に入れた。このような言葉を発することができたのは、そのためであろう。

 それに引き換え、佐伯の言動は、どうも一つの見方に固執し過ぎているように思える。それは、「テロ=絶対悪」という見方である。家族が人質に捕られようが、そのようなことは考慮されない。しかし、そこには、もし自分が同じ立場に立たされたら、といった視点が欠けている。当然、日本では、そのような自体は起こりえないことであり、しかし、だからこそ、「日本人には考えられないことですね。」という理得の言葉が光っている。

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第8話(2000/02/28)

あらすじ

 家族の処刑を知り、茫然自失とするユーリ(金城武)。「私がいる。あなたは一人じゃない。」と慰める理得(中山美穂)の腕の中で、ユーリは静かに泣いた。

 佐伯(宮沢和史)は、次長から理得に構い過ぎであると非難される。しかし、家族の死を知ったユーリが、自暴自棄になるだろうと踏んで、チャンスは今しかない、と佐伯は考えていた。

 理得は、どうにかユーリを慰めようと努力をするが、その想いはユーリには届かなかった。「あなたはもう、戦う理由はない」と言う理得の言葉に対しても、ユーリは一人になって考えるとだけ答えて、その場を去っていった。

 警察内部の内通者の報告で、組織はユーリが家族の死を知ったことを知り、ユーリを消すためにアジトへ呼び戻した。家族からのクリスマスプレゼントをユーリに見せ、上司はユーリの反応を確かめる。家族だけが希望だと言うユーリの言葉に、上司は引き金を引こうとするが、その後の、家族のためにも戦わなければならないと言う言葉を聞き、ユーリを許すのだった。

 まりあ(仲間由紀恵)や佐伯の話しから、ユーリが自殺をしてしまうのではないかと思った理得は、インターネットでユーラルについて調べ始める。そして、ユーラル友好協会というサイトを見つけ、問い合わせのメールを出すことに。しかし、そのメールの受け取りは、ナオミ(Fayray)であった。

 その頃、成次(東幹久)が佐伯のもとを訪れ、理得の周りでユーリを見たことを教えていた。

 佐伯は理得の家に行き、成次から聞いた話しを告げた。理得は、「今は何も言えないが、これ以上、大事な命が失われないようにと考えている」と答えて、家を出た。そして喫茶店でユーラル友好協会の川辺と名乗るナオミと会う。

 「具体的に知りたいことは?」との問いに、「ある人の消息を知りたい」と理得は答えた。そして、ユーラルの人が集まりそうな場所を教えて欲しい、とナオミに頼んだ。ナオミは長く日本に滞在している人を紹介すると言って、理得を家へと招待した。

 家に招待したナオミは、理得に粉薬の入ったコーヒーを差し出す。その頃、ユーリは自分の携帯電話にメッセージが入っているのを見つけ、それを聞いていた。メッセージは理得からのもので、理得は、友好協会の人の家に行くと伝言していた。ユーリは、それがナオミであると気付き、慌ててナオミの携帯に電話を入れる。「女に手を出すな」と言うユーリに、ナオミは「ご期待には添いかねます」と答えて電話を切ってしまう。そのとき、理得は、自分の会社のロゴの入ったファイルを見つけ、お手洗いを借りるといって、間一髪でナオミの家から逃げ出すことができた。

 ナオミから逃げていた理得は、道路の向こうに、こちらへ走ってくるユーリを見つける。見つめ合う二人。しかし、理得は、その背後に警察の姿を目にする。そして、ユーリは銃口を理得に向けたナオミの姿を。ユーリはナオミが引き金を引くと同時に、理得をかばい道路にひれ伏す。佐伯は、ユーリに銃を向けるが、人ごみの中で銃を撃てないでいた。二人は走り出す。

 ホテルに身を隠す二人。理得は、突然笑い出す。ユーリと会うといつも走ってる自分がおかしかったのだ。死にそうになっても死ぬのなんて実感できないと言う理得。死ぬよりもあなたを見失うのが怖い、と理得は言った。ユーリは、戦うべき相手が見えてきたので、君のことを考えているひまはない、と理得を突き放したが、君を失いたくないから死ぬなんてことを言わないように、と言葉を付け加えた。いつのまにか、理得、ユーリと呼び合う二人。手を取り合った二人は、警察のサイレンが響く中、熱いキスをかわした。

寸評

 今回、警察内部に内通者がいることが話に出ていました。恐らくは、あの次長なんでしょうが、今はまだ動機が不明です。でも、これで、ドラマ全体に厚みが出たように思います。ユーラルの組織と日本の警察の対立の構図が、次長の動きでどのように変わっていくのか、そして、その中でユーリと理得がどのように愛を成就するのか、来週以降が楽しみです。

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第9話(2000/03/06)

あらすじ

 ホテルで一夜を明かした二人は、波止場へ来ていた。理得(中山美穂)は、警察もユーリ(金城武)の本国の人間も追いかけてこない、どこか遠くへ行ってしまいたいと、ユーリに夢物語を語った。ユーリは、再びこのような時間を過ごせたことで、理得に「ありがとう」と言う。これが最後だから?、と言う理得の言葉にユーリは言葉を噤んでいた。

 そのとき、ナオミから電話が入った。電話を切ったユーリは、行かなきゃならない、と言って車に乗り込む。慌てて助手席に乗る理得に、ここで降りてくれ、とユーリは言った。しかし、理得はシートベルトを締め、車を降りようとはしなかった。ユーリは仕方なく車を走らせる。

 川辺についたとき、ユーリは車を止め、理得に、ここにいてくれ、と言って川辺へ走っていった。晴れた休日の川辺には、多くの親子連れやカップルがいた。しばらく車に残っていた理得だが、車を降りて川辺へ向かおうとする。そのとき、川辺から爆発音が聞こえた。

 多くの人が逃げてくる中、理得は、ユーリを探しに川辺へと走っていった。ユーリは爆破された小屋の前で静かに立っていた。理得に気付き、理得を連れてその場を立ち去ろうとするユーリ。そのとき、二人は、「パパ−」と叫ぶ子供の声を聞いた。子供の父親は、爆破の巻き添えを食らい鉄筋の下敷きになっていた。ユーリは慌てて父親の下へ駆け寄り、鉄筋をどかして、手当てをする。ユーリは、川辺の向こうに、こちらを監視するナオミの姿を見ていた。

 親子は救急車で運ばれた。それを見守った後、理得はユーリがいなくなっていることに気付く。ユーリを探しに人ごみを抜けたとき、理得は警察に呼び止められた。

 佐伯(宮沢和史)は、なぜ理得があの場にいたのかを厳しく追求した。理得は、ユーリがナオミの狙撃から助けてくれたことを持ち出すが、佐伯の耳には届かない。子供は軽症だが、父親の方は重体だと聞き、理得は顔を曇らせる。

 民間人を巻き込んだことに、ユーリは大佐に疑問を投げかける。ユーリは、すべてを知った上で、作戦を遂行する方が効率的だという理由で、作戦の全容を知りたい、と大佐に持ちかけるが、一兵士が全てを知る必要はない、と断られる。

 警察から戻った理得は、ユーリと連絡をとろうとするが、ユーリの携帯には繋がらない。理得は、留守番電話にメッセージを残し、ナオミと会った、彼らのアジトへ行くことを決心する。アジトであるマンションの一室に来た理得は、ドアを開けようとするが、そのとき、横から男に手を掴まれた。佐伯だった。警察は、銃を構え、ドアを開け、部屋の中へ押し入った。しかし、部屋の中はもぬけの殻だった。

 ナオミらは、一戸建ての家にアジトを替えていた。そこでは、ユーリとナオミが夫婦を演じていた。ナオミは、大切な人を殺そうとした私を殺したいでしょう?、とユーリに尋ねる。しかし、ユーリは何も答えない。ナオミは続けて、もうすぐ殺されるかも知れないけど、あの女をぬくぬくと生かしてはおけない、とユーリを奪った理得への嫉妬をあらわにした。

 大佐が遂に作戦を語り始めた。ユーリの父親・マロエフの妨害により、日本にウィルスを拡散させるという計画は頓挫した。それに替わる計画は、連続爆弾テロを行い、日本政府から金を引き出す、というものだった。そして、手始めとして、日本とユーラル共和国の国交を樹立するための会合での爆破を宣言し、その会合に出席する穏健派のブラノフ副書記長の暗殺をユーリに命じた。

 ユーリは、爆破テロの被害にあった親子の容態を探りに病院へと向かった。子供に飛行機をプレゼントしたユーリは、父親の容態が良くなってきていることを聞かされ安心する。そして、その後に、理得が佐伯の警護のもと病院へと訪れた。しかし、そのとき、父親が亡くなったことを聞かされる。ユーリが病院へ来ていたことを知った理得は、病院を飛び出し、ユーリの携帯へ電話をかける。しばらくして、ユーリから電話が入る。理得は、あの少年の父親がなくなったことを告げた。

 車の中で、警察に行かなければ、あなたから離れない、と理得はユーリに迫った。ユーリは、ナオミから聞いた、「理得の存在が障害となったとき、大佐から殺すように命じられる」との言葉を思い出していた。そのとき、理得の携帯にまりあ(仲間由紀恵)から電話が入る。ユーリの指紋と爆弾から検出された指紋が一致したのだ。それを聞いた理得はユーリに説明を求める。ユーリは、爆弾は自分が作ったものだから、指紋が付いていて当然だ、と答えた。そして、同朋を救うためには、この国の人間がどうなっても構わない、と言った。理得は、あなたを信じていたのに、とだけ言って、ユーリから離れていった。バックミラーに写る理得を見ながら、ユーリは車を走らせる。車の助手席には、理得が持っていた皮の手袋が置かれてあった。

寸評

 これまで毎回のように登場してきたロウソクが、今回はどの場面でも使われませんでした。そして、その代わりとして、理得は、まりあから携帯電話を渡され、その携帯電話が、いくつかの場面で重要な役割を演じました。これは何を意味するのでしょうか?ロウソクから携帯電話の流れ。このドラマは何を語りかけているのでしょうか。

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第10話(2000/03/13)

あらすじ

 理得(中山美穂)は、迷惑をかけたことを理由に会社を退職した。その頃、まりあ(仲間由紀恵)は、成次(東幹久)からユーリのライターの在り処を問い詰められていた。まりあは、ライターのことで、成次が理得を脅迫していることを知ったため、成次のマンションに忍び込んで、そのライターを盗み出していたのだ。まりあがしゃべらないことに苛立ちを感じた成次は、強い調子で責め始めたが、理得を張り込んでいた警察により、その場は何事もなく治まった。

 警察は、イギリス大使館で、日本とユーラル共和国との親善パーティーが行われることを知り、テロ組織が何か行動を起こすのではないかと考えていた。しかし、大使館は治外法権が適用されるため、表立った行動をとることはできない。佐伯(宮沢和史)は、親善パーティーの用紙をじっと見つめ、あることを考えていた。

 ユーリ(金城武)とナオミ(Fayray)は、親善パーティーに出席するブラノフ副書記長の暗殺を検討していた。前回の爆弾テロで、わざとユーリの指紋を残したナオミを、ユーリは責めようとはしなかった。あの女の国に寝返る不安があった、と言うナオミに、国に勝るものはないとユーリは答えるのだった。

 相変わらず金の無心にくる成次を、まりあは毅然とした態度で追い払った。それを見ていたナオミは、成次に5万円手渡し、真代理得について調べて欲しいと依頼するのだった。

 佐伯は理得の家へ訪れ、パーティーへ同伴することを理得に頼んだ。佐伯は、ユーリを認識する自信がないと言い、間近でユーリと接していた理得に助けを求めたのだ。しかし、妹と生まれてくる赤ん坊と静かに暮らしていきたいと言って、理得は佐伯の申し出を断った。

 成次は、理得が警察と会っていることを報告する。理得は教会に、家にまりあしかないことを確認したナオミは、成次の電話を切り、同朋にまりあを殺害することを命じた。

 ドアの開く音を聞いたまりあは、理得が帰ってきたのだと思い玄関へと歩いていった。まりあは、突然、後ろから口を押さえつけられ、ソファーに投げ出された。男はナイフを構え、まりあへと近づいていく。そのとき、成次が駆け付け間一髪でまりあを救った。しかし、まりあは男に突き飛ばされたときにお腹を強く打ち、そのまま病院へと運び込まれるのだった。

 理得の友人の医者から、まりあが流産したことを告げられる。成次がやったことだと勘違いしている友人に、私のせいだと理得は言った。そして、意識を取り戻したまりあに、理得は、涙を流し、「ごめんね、まりあ」と言うことしかできなかった。

 決意を固めた理得は、佐伯に電話をし、親善パーティーに出席することを伝えた。あの人に罪があるとすれば、自分にも罪はあると気付いた、と言う理得に、佐伯は、ユーリを見かけたら報告するように強く頼んだ。

 パーティーには、ブラノフ副書記長が夫人と出席していた。ユーリの姿はない。ユーリは外でナオミらが行動を起こすのを待っているのだ。パーティーに出席していたナオミは、会場で突然倒れ、警察の注意をひきつけることに成功した。佐伯も理得をおいてナオミのもとへ駆け付ける。そのとき、理得の目の前にユーリが現れた。ユーリは何も言わず理得を見ていた。そして、理得も何も語りかけることができない。ユーリは姿を消し、ブラノフを連れ出した。

 殺すなら殺せというブラノフに、殺す気はないとユーリは答えた。連れ出したのは、安全に逃がすためだと。そして、家族を全て失って、血では国を救うことはできないことがわかった、とユーリは続けた。ブラノフはユーリを見て、「ユーリ・マロエフ。君はお父さんに良く似ている」と言って、パーティー会場を後にした。

 帰途につく理得は、ユーリの気配を感じ足を止める。木陰からユーリが現れた。これまで、ユーリが、何を考え、どこに行こうとしているのかわからなかった理得だが、パーティー会場で、ユーリを一目見た瞬間、理得には、すべてがわかった。ユーリは嘘をついている、と理得は確信していた。理得を見るユーリの優しい目が、すべてを物語っていたのだ。

 あなたは一人で何を見て戦っているの?という理得の問に、ユーリは答えることはできなかった。死ぬつもりなの?との問にも、沈黙で答えた。ユーリは、理得に悲しみばかりを与えてしまったが、幸せになって欲しい、と言って、理得の額にキスをして、その場を去った。

 任務を遂行できなかったユーリは、仲間に捕まり、大佐のもとへ連れて行かれる。大佐は、次の任務からユーリを外すと言ったが、どうせ死ぬなら、国のために死にたいとユーリは作戦への参加を希望する。それを聞いた大佐は、忠誠の証として、公安とつながりのある理得の暗殺をユーリに命じるのだった。

 理得の携帯電話が鳴る。電話をとった理得に、もうすぐユーリがあなたを殺しにやってくる、とナオミは笑いながら言った。

寸評

 これまで別路線を歩んできた成次とまりあですが、今回、遂に本線と合流することになりました。まりあの流産という悲しい巡り合いでしたが、ドラマの構成としては、上手くやったなという気がします。きっと多くの視聴者の方が、「まりあが流産するなら成次のせいだろう」、と思っていたことでしょう。そして、まりあの流産を契機に、パーティーへの参加を決める理得。いい流れだと思います。きっと、ドラマの展開を考える上で、今回の一件は、前前から練り上げ温存してきたことだと思います。筆者は、すっかりはまってしまいました。

 今回、もう一つ気になったのは、暗殺計画の現場が、前回の会議場から、大使館の親善パーティーへ移ったことです。かなり不自然な流れだったように思うのですが、会議場での撮影許可が下りなかったのでしょうか?皆さんはどう思われましたか?

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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第11話(2000/03/20)

あらすじ

 流産をしたまりあ(仲間由紀恵)は、苦しむなら勝手に苦しんで、と姉・理得(中山美穂)を責めた。そこに、家を出て行った二人の父親が現れる。まりあは、理得の前では流すことのない涙を、父親の前で見せるのだった。

 大佐は、明日の日本とユーラルの国交折衝の会議の最中にテロを起こすことを同胞たちに伝えた。そして、今日中に理得を殺害し、国に忠誠を示すことをユーリ(金城武)に通告した。その頃、警察にはマロエフの名で予告状が届いていた。そして、CIAからの情報で、ユーラルの首相が危篤状態にあることを知る。

 佐伯は理得の家へ訪れた。明日の重要な任務の前に、理得に会っておきたかったのだ。佐伯は、自分の国を守るという部分では、ユーリに共感していると告白した。そして、ユーリの自国に対する信念の強さが理得を苦しませているのだ、と言った。「ユーリが間にいなかったら、私とあなたとの関係は・・」、と佐伯は切り出したが、「きっと会うことはなかったでしょうね」と自らの気持ちを押し込め、理得の家を後にした。

 その夜、ユーリとカイは、理得暗殺のために、理得の家へ向かった。後で確認しに行くと言って車で待機するカイ。ユーリは一人で理得の家へ忍び込んだ。そして、ソファーで眠っている理得を見つけ、じっとその寝顔を見つめていた。そして、目を覚ました理得に、祖国よりも理得のことが大事だと告げ、理得の家を後にした。

 理得を殺していないと、カイは知っていたが、大佐には、ユーリが忠誠を示したと嘘の報告をした。カイは、ユーリに借りを作り、いざというときに活かそうと考えていたのだ。

 次の日、国際会議場では、国交折衝の会議が開かれていた。ユーリとカイは貨物トラックに身を潜め、作戦の場所へ移動した。しかし、そこは国際会議場ではなく、八景島であった。ターゲットはブラノフの夫人の方だと、カイはユーリに伝えた。

 理得のもとに佐伯から電話が入る。国際会議場で警備をしている佐伯は、ユーラルの軍事政権が崩壊したことを理得に伝えた。理得は、ユーリが殺されなくても済むことに、胸を撫で下ろしたが、ユーリがそのことを知らないことに不安を覚えた。電話を切った理得は、ブラノフの夫人が八景島に訪れるという記事を目にする。理得は、佐伯の留守電にメッセージを残し、一人で八景島へと向かった。

 ユーリとカイは、建物に上がり、夫人の乗る船にライフルを合わせていた。船には密かに大佐も同乗していた。ユーリは、拳銃を取り出し、その銃口をカイに向けた。カイは命乞いをし、ナオミの持つデータを差し出した。ユーリは、この国の人間にまぎれて生きていけ、とカイを逃がすのだった。そして、船上の大佐に向けて、ライフルの引き金を引こうとする。そのとき、ナオミから連絡が入る。夫人の暗殺を契機に、遊園地に仕掛けた30個の時限爆弾のスイッチを入れると。爆弾の存在を知らされたユーリは、ライフルを置き、ナオミを探しに遊園地を走り回るのだった。

 国際会議場にいる佐伯は、携帯電話に理得から留守電が入っていることに気付く。理得は、証拠はないが、八景島にいる夫人の方が狙われる気がするので、一人で八景島に向かうことをメッセージに入れていた。佐伯は、次長の命令を無視し、八景島へと向かった。

 八景島へ着いた理得は、遊園地内を探し始める。ユーリはナオミを探し、そこで理得が遊園地にいることを見つけた。理得はユーリに駆け寄り、ユーラルの書記長が亡くなった事を伝え、ユーリにも未来があることを教えた。ユーリは、時限爆弾のスイッチが押されれば、3分で30個の爆弾が一斉に爆発することを理得に教え、爆弾の在り処を示すCD-ROMを理得に手渡した。ユーリは、未来があるのなら、そこに君もいて欲しい、と理得に告白し、理得も、あなたを信じてあなたについて行く、と返した。二人は熱いキスを交わし、その場を後にした。

 ユーリは、時限爆弾のことを理得に任し、再び船上の大佐を狙いに、建物の屋上へ戻ろうとした。そのとき、「動くな」との声が背後から聞こえた。佐伯だった。「行かせろ」と言うユーリに、「テロにか」と佐伯は返す。「テロを止めにだ」とユーリは言うが、佐伯は信じようとはしない。しかし、愛する女性に必ず成し遂げると約束した、とのユーリの言葉に、佐伯は銃を下ろすのだった。

 理得は、バッグからパソコンを取り出し、ユーリから預かったCD-ROMの中身を見た。そこには、遊園地の地図が描かれており、そして、爆弾の在り処を示す30個の赤い印が光っていた。理得は、爆弾の在り処を知らせるため、警察へ電話をかけ、警察のメールアドレスにそのファイルの送信を始めた。そのとき、理得の背中に銃口が突きつけられる。それはナオミだった。

 ユーリは船上の大佐に銃口を向け、狙いを定めていた。そのとき、船上の警備員の無線に、警察からの連絡が入った。それに気付いた大佐は銃を取り出し、夫人の方へ走り出した。大佐は銃を構え、引き金を引こうとする。間一髪で、ユーリのライフルは、大佐の銃を撃ち落した。そして大佐は警備員に取り押さえられた。

 ホッと息をついたユーリの無線に、「やっぱり裏切ったのね」とナオミの声が入る。ナオミは理得を人質に捕り、時限爆弾のスイッチを押した。タイマーは3分。そしてナオミは、理得の胸の高さにそのスイッチを掲げ、時限爆弾を止めるためには、このスイッチを撃ち抜かなければならない、とユーリに迫った。スイッチを撃ち抜けば爆発を防ぐことができる。しかし、その銃弾は理得の心臓に届いてしまう。ユーリは迷い、時間だけが過ぎていった。

 ライフルのスコープで見る理得は、ユーリに微笑んでいた。ユーリは涙を流しながら、ライフルで狙いを定める。残り2秒。銃口が火を噴いた。銃口は爆弾のスイッチを貫いた。ナオミはその衝撃で海へ放り出される。そして、理得はその場に倒れた。

 理得のもとに放心状態で駆け寄るユーリ。機動隊はユーリを囲み銃を構える。銃弾はユーリの足をかすめるが、ユーリは足を引きずりながら理得のもとへ向かう。駆け付けた佐伯は、「撃つな」と叫ぶが、次の銃弾がユーリの胸を貫いた。ユーリは理得の側に倒れこみ、「理得」と静かに名前を呼んだ。理得は目を開け、ユーリの姿を目に留め、再び目を閉じた。ユーリは、静かに息を引き取った。

 救急車で運ばれた理得は、重体であった。そしてお腹の子も。理得はユーリの子供を身ごもっていたのだ。

 2000年12月27日。佐伯は花束を抱え、理得の病室へ訪れる。しかし、病室は空であった。そこに理得の友人の女医が現れ、佐伯に事情を説明した。子供は無事出産されたこと。しかし、出産と同時に理得が息を引き取ったことを。

 佐伯は、タクシーに乗り病院を後にする。タクシーのラジオは、日本と国交を結んだユーラルの子供たちが、新しく開通した日本とユーラルを結ぶ直行便で、成田空港に到着したことを告げていた。

寸評

 連続ドラマでは、最終回でその世界を閉じてしまわなければならないので、通常の2倍は良く作らないと、視聴者を満足させることはできないと思います。で、「二千年の恋」ですが・・・。あの二人の死に方はちょっと・・・。

 死ぬ必要はない、と言っているわけではありません。ドラマを完成させるためには、きっと二人の死を必要としているのだと思います。問題なのは、死に方です。涙を流しながら理得の胸に掲げられたスイッチを撃つくらいなら、ナオミを撃った方が、どれほどマシな選択か・・・。機動隊が、何も持たずに歩いてくるユーリを撃つのも不自然な気が・・・。

 きっと、前回までにも、こういった粗は、探せば山ほど出てくるのでしょうが、最終回の粗は、なぜだか目立ちます。ドラマの全体を閉じる最終回の存在意義。もう少し重要視して欲しかったです。

執筆者

今廣(imahiro_t@anet.ne.jp

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