世界のヨットニュ−ズ NO.2

 

ヨットが大型かするに従って、造船設備も拡張しなければならない。オランダを代表

するJongert の泣き所は、外海に出るための水門の幅であった。Jongertの造船所で

は150フィート、200フィートの船を造れる設備がありながら、外の海に持ち出

すことが出来なかったのだ。Jongertは昨年末、138フィート、幅28フィートの

Passe Partoutを進水させたが、船を一度乗架しトラックで水門を回りそこでもう一

度水に戻しギ装すると言う手順を踏み、ヨットを外洋に出したのだ。

 

ヨットのチーク マホガニー、ローズウッドは、仏壇の紫檀、黒檀のようなものなの

だろうか。チーク、マホガニーに対する信仰は消え去ることがないようだ。たとえ薄

皮を張ったベニアであっても内装は、チーク、マホガニー仕上げが好まれる。モダン

な内装、明るい松、柏材の内装のヨットが増えつつあるがまだマイナーだと言ってよ

い。実際には、50フィート以下の小型艇にチーク、マホガニーは暗すぎ、結果、狭

く感じるのだが。

ニュージーランド、オーストラリアは既に優れたヨット造船で定評を得ていたが、内

装の木工がヨーロッパの老舗造船所に一歩譲ると見なされていた。 しかし、Alloy

 Yachtsが完成させた130フィートのケッチ、Victoria Of Stratbearn は戦前

の豪華ヨットの再現と思えるほど、徹底して、ソリッドチーク、マホガニーを使った

重厚な仕上げで、まるで伝統あるイギリス片田舎のヴィクトリア調のパブのようなの

だ。インテリアデザイナーはAndrew  Winch.   私達だってこんな事、やろうと思え

ば出来るのさ、と言う声が南半球から聞こえてくるようなヨットである。

南半球といえば、ニュージィーランドの英雄、Peter Blakeが殺された。

ヨット界の3冠王、と呼んで差し支えないだろう、ウィツブレッド世界1周レース、

ジュールベルヌ トロフィー、それにアメリカズカップを手にした最初で恐らく最後

のヨット乗りだ。2度アメリカズカップを手中にした後、カップレースに固執するこ

となく、視点をレースから、自然保護に移し、クストー協会の理事を務めた。その

後、自分で119フィート、のSeamaster号を組織し海洋汚染の大きなファクターと

みられる、大河の汚染の調査を開始した。その一環としてアマゾン川調査のため、河

口近くのAmapaにアンカーしていたところ、強盗団が襲ったのだ。享年53歳。 

ニュージィーランドではエヴェレストの初登頂者、Edmund Hillary郷と並ぶ国民的な

英雄であり、我々ヨット乗りにとっても、彼の海への情熱を具象化した生き様は航路

を導く澄んだ星のような存在であった。偉大な海の魂が、潮の間に、壮大な朝焼け

に、セールをはらませる潮風の中に、安らかに眠ることを、祈らずにはいられない。


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