ワールドトレイドセンターのテロに続くアフガン二スタンの戦争は、ヨット、ボート
業界にも深刻な問題を投げかけた。中でも直接影響を受けたのはチャーターヨット業
界で、これから冬のチャーターシーズンに入る矢先、航空機旅客が激減し、冬場を売
り物にしている目的地までの足を空に頼る南海、カリブ、南太平洋はキャンセルが相
次いだ。 作年の同時期に較べ予約は50−65%も減少している。
この全世界的な不況のなかで、高級ヨット、メガヨットの受注は以前にも増して好況
で、2年待ちは当たり前、老舗、Baltic,
Royal Huisman などは2005年引渡しで
ある。
イタリア ファッション界の勇、フラガモがNautor
Swanを買い、次々と新しい企画
を打ち出している。その一つが、Volvo世界一周レースへ、企業としての参加だが、
2隻のレース艇はフィンランドのNautor社ではなく、フランスで建造された。 また
Nautor Swanはイギリスの老舗、1782年創設のCamper & Nicholsonをも買い
取った。ここに数々の歴史的銘艇を造ってきた造船所がまた一つ消えたのだ。 Swan
はフィンランドの造船所スペースを倍近くにしたが、スペースを倍にしても、即、倍
に増やせないのが船大工、造船技師だ。SwanのCamper
&
Nicholson買収は技術者確保
の意味と、いよいよ100フィート、200フィートのメガヨットの建造に乗り出す
意向がみえる。
イタリア、PeriniNaviは171フィートのケッチ、Liberty、Andromeda
の姉妹艇133フィートのThetisを進水させた。セールボートとしては異様なフライ
ブリッジとフルビームのデッキサローンを持ち、セールボートの内装は、同程度のパ
ワーボートに較べ、非常に狭いと言う常識を破ったデザインである。
1992年にヨット界に新風を吹き込んだ、Wallyはこれまで総てセミカスタムの建
造であったが、プロダクションラインで60フィートと80フィートの製造を開始し
た。ともにBruce
Farr
の設計で、80のキールオプションは固定、カンチング、リ
フチングだが、60は固定のみ。デッキは例のWally独特の究極と言えるほどスッキ
リしたレイアウトである。80の1号艇は2002年夏竣工予定。60はアメリカ、
キャロルマリンが建造に当り、これも2002年夏の予定である。
Wallyの大ヒットは、その洗練されたスマートなデザインが誘引であることは明らか
だが、近年特に、大レースは高級を取るプロのクルーで固めなくては勝てない、風潮
が増し、オーナーに膨大な支出を強いていた。又ヨット自体もフルクルーが揃わなけ
れば、ウィークエンドセーリングにも出ることが出来ない奇形化したレースボートが
多くなってきた。 レース、スピードは楽しみたいが、大勢のクルーを抱えるのはシ
ンドイという、メガ、マキシヨットのオーナーの不満にジャストミートしたと言え
る。 Wallyはメガ、マキシサイズのヨットをレース可能なスピードで、しかも2人で
のセーリングを可能にした。 秘密はMagic Trimと名付けた油圧ポンプをコン
ピューターでコントロールシステムにある。
Swanの新シリーズ70と80もショートハンドのコンセプトを可能な限り取り入れた
今までのSwanとは全く異なったデッキのレイアウトを持つ。あまりにWallyに似てい
るところから、WallyタイプのSwanと呼ばれている。ちなみに両者ともGerman Frers
のデザインである。
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