第2章「メガゾーン23」

(鹿賀丈史風に)私の記憶が正しければ、
私がはじめて見たOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)は、
1985年頃レンタルビデオで借りた「メガゾーン23」である。
この作品の注目すべき点は、ふたつある。
ひとつは、「イヴ」というアイドルが劇中に登場したくさんの曲が紹介される点である。
つまり、「アニメ」というメディアを通じ「音楽ソフト」も売ってしまおうという「コンセプト」にある。
(ちなみに、この作品は「ビクター音楽産業」)
現在日本の多くのアニメは「音楽」「出版」と緊密に結びついている。
(例:「新世紀エヴァンゲリオン」の場合は「出版:角川書店」「音楽:KING RECORD」
「アニメグッズ:GAINAX」、当時「ゲーム:SEGA」)
このシステムは、杏里の「キャッツアイ」がヒットし、
アニメ雑誌が創刊されたこの頃から、その「意識」ははじまっていた。
もうひとつは、「主人公」の「キャラクター」である。
古くは「鉄腕アトム」「巨人の星」最近でも「ポケモン」「ワンピース」にもいえるように
主人公は物語の中心人物であることはもちろんのこと
視聴者が「あこがれ」「同感」「カリスマ」等なんらかの「魅力」を感じるものであるが
(私だけかもしれないが)この主人公にはなんの魅力も感じない。
「エヴァ」の「シンジ」も「魅力」は薄いかもしれないが、
どこか「同感」するところがあるし、なにより確実に「物語の中心人物」である。
今回は後者について執筆したいと思う。
というのも、前者については、
それよりも2年程前に放映された「マクロス」というアニメの
「リン・ミンメイ」によってすでに用いられていた手法であるからだ。
(「マクロス」については、
5年ほど前に「マクロス7」という作品がリリースされているので
ここでは語らない。)

今回ご紹介する「主人公」の「矢作省吾(以降「彼」)」は
どこにでもいる「バイク好き」「ちょぴり不良」で「軟派」な兄ちゃんだ。
1980年代の東京、彼は偶然「ガーランド」という「バイク」を手にする。
それ以降「謎の組織」から追われる。
その道中、その「バイク」がロボットに変形し、軍用のマシンであることを知る。
また、この「東京」という街が実は「巨大な宇宙船」の中で
実際は「1980年代ではなく、はるか未来」という事実を知る。
昔「地球」が崩壊したために、何隻かの宇宙船で「地球人」が脱出した。
それから、その宇宙船の中で何世代もの時代が過ぎ
その「悲しい事実」を忘れるため、宇宙船の「コンピューター」が
過去で「いちばん平和な時代」である「1980年代」を設定したのであった。
アイドル歌手でさえ、実は「宇宙船」の「コンピューター」が創りだした
「ヴァーチャアイドル」だったのである。
「組織」とは、一般人にその事実を隠して
宇宙船を動かす「スタッフの軍事部門」だったのだ。
彼が真実を知った時、昔地球を脱出した「他の宇宙船」と接触しようとしていた。
「組織」はクーデターで「軍事部門」にのっとられ、「接触」は「戦争」となっていく。
戒厳令は敷かれるが、もちろん一般大衆には事実は告げられない。
そんな時、主人公である「彼」は恋人とホテルの一室で一夜を過ごしていた。
「真実」に対してどう対処していいのか解らないのである。
朝になって「彼」は「ガーランド」で組織に戦いを挑むが
逆にボコボコにされて、街をさ迷うところで、この物語は終わる。

「彼」は"時代を変える""物語をハッピーエンドに終わらせる"「資格」を持ちながら
それを行使できなかった。いやできる器ではなかったのだ。
そんな「彼」を主人公として抜擢し、それでも主人公と視聴者に認識させた作り手は
すばらしい「アーチスト」であると私は思う。
「アメリカ映画」なんかでは、
「組織」と戦う主人公がラストシーンで殺さるようなものもあったと思うが、
(最近のドラマでは、月9で放送された「あなたしか見えない」が近い)
青少年に勇気と希望を与える「アニメーション」では例外的な作品といえる。
特に後半の「時代が動く夜」に「クーデターを起こす敵キャラ」と
「ベットで恋人を抱く彼」の演出は「視聴者」の苛立ちを煽っているようにさえ思える。
当時は、「ビデオソフト」の価格が下落し「レンタルビデオ」が始まったころで
保存する「映像コンテンツ」が急激に必要とされる時期であった。
そこで過去の映画・テレビでのアニメ作品以外の作品として
「OVA」が作られはじめた頃で、「テレビ・映画」にできない「作品」を作ろうとした
「スタッフの意気込み」や「チャレンジャー精神」を感じることができる。

追伸 先日この作品に登場するアイドル「イヴ」が歌ってた「風のララバイ」という曲を
カラオケのリスト(もちろんアニメコーナー)で見つけ、感動しました。

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おまけのクイズ::「メガゾーン23」のヴァーチャアイドル「イヴ」や
「週刊少年ジャンプ」に連載されていた「ウイングマン」に登場するアイドル「くるみ」など
当時頻繁にアイドルキャラのモデルとしされていた芸能人は誰でしょうか?
名前でお答えください。

こたえはこちら(第2問)まで