史実を云々する向きもあるが、あくまでも娯楽映画としてみれば良いのではないか。『暴れん坊将軍』『水戸黄門』『子連れ狼』に史実と違うと文句を言う人はいまい。それに当時の時代背景と比較しても、断髪令や廃刀令で士族の不満は最高潮に達していたし、戊辰戦争・西南戦争などを除いた２〜４００名規模の士族の乱の多くは刀や弓矢が主な武器であったろう。それに大砲と大砲では画にならない。敢えて「武士」を際立たせるには、この方法しかなかったのではないか。

渡辺謙が最高！「世界で最も美しい５０人」に選ばれたのも頷ける。助演男優賞に選ばれなかったのは、真に残念。トム・クルーズは抑えた演技が良かった。非戦闘員の女子どもを虐殺したことによるＰＴＳＤに苦しむ姿から、やがて誇りを持った武士に育っていく過程が丁寧に演じられいた。小雪もキャストとして最適。バタ臭い女優でなくて良かった。惜しむらくは髪型がそれらしくないこと。女が髪を結わないのは病気の時と洗う時だけだろう。戦場に向かう男を送り出す時には正装して本式の髷で送り出して欲しかった。真田・大村役・福本清三も良かった。

勝元は自らの死によって、天皇に米国との協定を拒否させた。「日本人たることを忘れてはならぬ。この国の歴史と伝統を。」という言葉が心に響いた。何事も米国追随の小泉首相にも必ず見て頂きたい佳作だ。