観るなら完全版でなくてはならないだろう。公開当時カットされた部分が加わって、単純な寓話の背後にある、複雑な人間模様が浮き彫りになる。アルフレートがただの好々爺ではないことがわかり、映画の主題そのものが深みをましている。

　それにしてもモリコーネの音楽が無常に美しい。イタリア出身の映画音楽の先達カステルヌーヴォ・テデスコを思わせる曲想が、シシリアの風景に見事にあっている。
　文句はひとつだけ。キュートなシシリア少年が、なぜか見まごう事なきフランス顔に成長するのはいくら映画とはいえもう少しなんとかならんか。