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2001年宇宙の旅

6年間かけて制作されたSF映画を根本から変えた傑作

オリジナルはシネラマ(若い方はご存じないかもしれませんね。普通の映写機3台で超ワイドスクリーンを実現した。「西部開拓史」もそう)で、構想から実に6年もかけて、キューブリックが「後世に残るSF映画を作りたい」という希望から制作が始められた作品。左右の画像をカットして、シネマスコープサイズで、一般の映画館で上映された事を知っているのは、40代後半の人でしょう。当時日本には、シネラマで映写できる映画館は、テアトル東京(今は無い)と大阪に1館あったのみ。とうわけで、本当のオリジナル作品を見た人は一握りしかいないでしょう。シネラマでDVDにしたら、ワイドディスプレーでも、中央に帯状にしか映らないでしょうね。当時難解と言われた映画もほぼ同時に早川書店からクラークの原作本が出版され、読むと理解可能な作品です。キューブリックの映像は、原作の細かな説明を「俳句」のように、簡潔に表現していますが、原作の重要なポイントは短いシーンで表現されています。原作を後から読んだ方が、謎解きパズルの様な楽しみ方ができるでしょう。私も公開当時、まず映画を見てから本を読みました。40年後の未来を二人は、かなり的確に描いています。60年代前半は、まだジェミニ計画からアポロ計画への移行途中でした。月面のシーンは、アポロ11号の映像を先取りしています。ただ、ソビエトが崩壊する事、パンナム(宇宙旅客機のマークは今では懐かしい)が倒産してしまう事は、60年代には予想も出来なかったでしょう。ソビエトとは、キューバ紛争もあり、冷戦のまっただ中だったのですから。宇宙ポッドから、ヘルメット無しでディスカバリー号に飛び込むシーンはさすがに無理が有るところ。一瞬でも真空状態になれば、頭が爆発するはずです。ポッド内とディスカバリー号の部屋の空気だけで、生きていられるものでしょうか?なんてあげつらうのは、野暮でしょう。当時、合成で、宇宙船や基地の窓に動いている人間が違和感なく表現されたのは、この映画が最初でしょう。同時代の東宝映画のSFは、アマチュアの作品に思える程、先進的な映像表現でした。当初、デザイナーとして、手塚治虫さんにキューブリックから依頼があり、手塚氏は、自分のアニメ制作に忙しく、断り、後に映画を見て、承知していれば、エンドクレジットに自分の名前が記されたのに、と後悔したと言っていました。


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