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追いやられる鳥

冒頭のシーン。次々にさばかれていく鳥たち。その中で、逃げ出した鳥をスラム街の少年ギャングの一団が銃を片手に追いかけていく。通りで衝突した通行人に対し銃口を向ける一団の長。道行く車の車輪の間をすり抜けていく鳥。映像と音楽が一体となった、独特のリズム感に多くの方が引き込まれていくに違いない。そんな印象的なシーンで本作は幕をあける。

本作のテーマとなっているのは貧困、ドラッグ、少年犯罪、殺人、ギャング等である。コミュニティーが拡大再生産していく伝統、掟という鎖の中で成長していく子供たちの姿が、時には無邪気に、そして時には冷酷に、生々しく描写されている。

出演している子供の多くは素人だという事は本作を見る以前に知ってはいたが、彼等の表情には驚かされた。最近アエラの表紙にもなった某大学の研究者が近著のインタビューで、著書の中にも出てくる黒澤明の七人の侍の役者の表情に触れていた。それは、戦争を経験した世代にしか出せない、人を殺す時の表情というものが出ている、という内容だが、本作の子供達の姿にも彼が感じたものと同じものを感じた。

本作を見終わってから、例の冒頭のシーンは何かのメタファーなのかもしれないと考えさせられた。終盤にも同じシーンが再び現れる。それは途上国や貧困そのものの様で、暴力の前提になっている暴力の姿、つまり必要悪としての暴力の必要性の象徴であるかのようであった。それをどう感じるかは各人次第であるとは思うが。

個人的には時が経つのを感じさせないテンポのよさが好ましかった。



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