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時計じかけのオレンジ

鼻歌でバレる過去の悪事

私にとってキューブリック監督のベストは、
2001年・・・ではなくて、確実に、絶対に、間違いなく、この作品です。
脚本、撮影方法、俳優の演技、アートワーク、台詞、予算的な面、
どれをとっても文句ナシのレベルです。
運命の皮肉、意地悪なストーリー展開、インチキな寓話的な狂気の世界が、
楽しく、美しく展開されていますので、身を委ねて楽しんでください。
やり過ぎのブラック・ユーモアというか、
観客はエンターテーメントを理解する広い心がないと、
楽しめない作品なのかも知れません。
でもハマル人は確実にハマリます。
この映画は一見、女性軽視、悪趣味、変態的に映るのですが、
決してソレが作者の狙いではなく、単なるひとつの引出しとして、
例えているだけなのです。
そこを理解できなくて、この作品に嫌悪感を覚えるタイプの人の
ほとんどが、可哀相なほど、了見と視野が狭いタイプの人達でありました。
やはり全てのものには、表と裏があることを理解しなくてはなりません。
背後にある巨大なモノ(例えば政治権力)を痛烈に茶化して、批判している
ところが、イギリス人特有の反骨精神なのでしょうか。
重要なシーンでの音楽の使い方が特に凄いです。
ブルーベルベット(Dリンチ監督)のロイ・オービソンの曲での暴行シーン
のルーツは、明らかにこの作品の『雨に歌えば』ではないか?と推察されます。
その他、(ベートベンの第九)が象徴的に使われています。
そして風呂での鼻歌で、過去の悪事がバレてしまうのが、
かなり間抜けです。
大好きな第九を死にたくなってしまうのですから、最大の皮肉ですね。
とにかくこんなリーズナブルな価格で、このDVDが買えるのは、
大変幸せなことではないでしょうか。
とにかく、もっとも影響を受けた作品のひとつです。お奨めします。


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