80年代の韓国で実際に起こった連続強姦殺人事件をモデルに作ったとあって、その猟奇性に目がゆきがちだが、じつに見事なエンターテイメントに仕上がっている。映画としての面白さが最高だ。主演ソン・ガンホの存在感がすごい。何より監督ポン・ジュノの念入りな演出が、ガンホはじめ、俳優陣の見事な個性をひき出している。一人ひとりのキャラクターが豊かで、観ていて最後まで飽きない。
　ジュノ監督いわく、映画のテーマは、事件そのものではなくその時代背景にある。だからこの映画の二人の刑事は、もっと大きなものに立ち向かっているのだ。無力感と挫折に苛まれながらも、ガンホ扮するパク刑事はしっかりと成長する。ラスト近くの雨のシーンは、誰もが胸を熱くするだろう。

　けっしてカタルシスを与えるような映画ではない。しかし、ズシリとした手ごたえを感じさせてくれる傑作だ。