ファンタジーとしての側面が物語全体に強い意味を持っていた「月の影」の章を発展させ、より人間の内面−嫉妬と羨望、嗜虐と厚遇、欲望と裏切りといった私達の日常生活に!関連のある人間本性的なキーワードを前面に押し出した「風の万里　黎明の空」。この物語の魅力は「月の影」で押し広げられた十二国という世界の中で翻弄される三人の少女と関わりを持つ人達との温度差、それぞれがその役目と宿命、或いは思い込みを探りながら歩む道、それらが渾然一体となる宿命が織りなす人間模様がリアリティを持って活き活きと語られているところにあります。

　地上波放送でこの章よりファンになった方でも充分見応えのある作品ですが、前述の「月の影」章とあわせてご覧になって頂くとこの物語を深く知る上で役立つ予備知識となるばかりでなく、本編の主人公として登場する少女の一人として重要な位置にある景王−中島陽子の素性と本編への関係性も明瞭となるはずです、勿論「月の影」!も素晴らしい物語です。この機会に揃えられては？