悪しき海客としての烙印を押され、自らが積み上げてきた信条の脆弱さ、
生き方すら失いかけていた陽子が、己の意思に忠実で曇りのない半獣の

容姿を持つ楽俊を通じて人を信じること、そして人が自分を裏切ること
とは本質的に無関係であり、他人に対しての優しさや奉仕に見返りが無く、
褒め称えられずとも潔しとする自己本性に目覚めるという、現代人にも
相通ずるイディオムを鋭く描写しています

　現代社会とは懸け離れた志向性を持つ物語であるにも関わらず、これ程

現代人が凡庸として認識することの無かった基本的な「施し!対価」構造
を根本から洗い直す名シーンはありません

　ビジネスに於ける離反や猜疑は茶飯事であり、自覚している事柄である
が故、前述のシーンは余りにも骨身に滲み、暫く忘我となりました

　そして何より、この物語を通じて改めて自分の於かれた状況を理解する

と共に、自分自身が身勝手に描いていた他人に対する「施しの対価」を
見つめ直す事が出来ました。この作品に巡り会えた事、誠に幸いです

　大袈裟なことは何一つ述べてません。とにかく是非ご覧下さい