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パッション

ピエタを、映画を通して描くとこうなるのかナ…

…よく話題になる時代考証が正確か、「客観的」かどうかについては、史実家でも神学者でもない小生には、よく分かりません。しかし、ただ英語でやってしまうのではなく、登場人物によって、アラム語、ラテン語、ヘブライ語と、キチンと台詞を分けて役者に喋らせようとする製作者の姿勢から、単なるハリウッド映画でない真剣さは垣間見れるのではないでしょうか?

…キリストの受難(パッション)のシーンは、目を背けたくなることもしばしばですが、時折挟み込まれる、神格化された「聖母マリア」と言うより、より普通の?母親に近い姿のマリア…傷付いた息子を抱こうとしたり、可愛かった小さな頃のイエスを回想する場面に、身近さや共感を感じた人も少なくないのでは…と思います。

…ヨーロッパの教会を訪れると、キリストの受難を主題とした、絵巻物のような祭壇の周囲を取り囲む彫刻を少なからず目にしますが、今では誰も名を思い出すことの無いような数百年前の石工たちも、この映画の製作者たちも、見る人々の心にこの一連の物語を焼きつけたいと願う情熱には、共通のものがあるような気がします。その背景に、宗教的な情熱(これもパッションと言って良いのでしょうか?)が無い筈は無いでしょう。内容が客観的かどうかは、そこでは大して問題ではないと思います。芸術を前にした時、作り手の気持ちの伝わってこない「客観的」な作品って、見る人の心に残るものでしょうか?

…この映画は、古くからキリスト教社会の芸術で大きな主題となっているピエタを、現代の技術でリアリスティックに映画と言うメディアを通して描いた表現の一つ、それも、なかなかよく出来た感動的と言って良い表現の一つと言えるのではないでしょうか。


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