ユーモアのセンスが盛りだくさんで随所で笑える。グイドは友人からショーペンハウアーの意思の力の話を聞いて、心で願ったことが実現できると理解(誤解?)する。「こんにちわ、お姫様(ドーラ)」のキャッチフレーズで、偶然の出会い(?)を重ねて、意思の力で次々と身近な奇跡(?)を起こし、彼女を魅了する。

二人は結ばれてかわいい息子(ジョズエ)までできる。そこでめでたしならよかったのだが、イタリアの降伏により、トスカーナを含む北イタリアはドイツ軍に占領される。ユダヤ人のグイドと息子は収容所に送られる。それを知ったドーラも同じ道を選ぶ。収容所では息子に「競争」に勝てば戦車がもらえると励ます。離れているドーラにも、また奇跡(?)を起こし励ましのエールを送る。

ラストでも奇跡は起こり、約束どおり息子は戦車を手に入れ、その後「これが僕の父親だ」というモノローグで締めくくられる。二人の男女が出会う確率は祖先がずっと続けてきた何十億分の一の奇跡のような偶然の積み重ね。自分が今この世界にいるのは、実は奇跡の積み重ねによるのだと気づかせてくれる感動の名作である。