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ほみの美穂 最新刊・アニメDVD/ビデオ
He His Him     片手にピストル心に花束    
耳をすませば

何とまっすぐな物語である事か。

くじけそうになった時、逃げ出したくなった時、忘れかけていた何かを思い出させてくれる何とまっすぐな物語である事か。SF作品のように目を見張る映像がある訳ではないのに、身のまわりのあちこちで見ることの出来る風景が驚くべき緻密さで美しく描かれています。父親に立花隆さんというキャスティングの慧眼には脱帽の他ありません。立花さんの素人っぽい声の演技が雫の父の実直さと、雫を信じる包容力の深さをそのまま表現しているかのようです。加えて大学院生として勉強する母親の室井滋さんの声の演技は、この人以外にこの役はあり得ないと思わせられるくらい見事。やや理解のあり過ぎるこの両親の代わりに口うるさく小言をいう姉の存在がまたいいですね。この家族の中でこそ主人公の雫はまっすぐに成長する事が出来た。そのまっすぐな雫と同じくらいまっすぐな聖司との出会いから物語は始まります。聖司がバッハ無伴奏の出だしを少しだけ弾いて見せた後、曲をカントリー・ロードに転じ、それに合わせて雫が歌う。地球屋の主人と音楽仲間がアンサンブルに加わる。珠玉のような数々のシーンの中でも最高の場面ですね。野見祐二さんの音楽の見事さにも言及しないではいられません。言い尽くせないけれど、胸がキュンとなるようなたくさんのシーンでちりばめられたこの作品に、どんなに歳を取っても感激できる自分でいたい、そう思わせてくれる名作の一つです。


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