客室に残り、ベッドの上で抱き合う老夫婦。
銃を片手に、客を脅しながらボートに誘導する船員。
生き延びるために、我先にと救命ボートに必死でしがみつく３等客。
今から沈没しようという船の上で走り回って逃げ場所を求める人々。
その心を和ませようと、最後まで演奏を続けた楽隊。

この映画で感動を覚えるのがローズとジャックの色恋だけだというのなら、それは間違いです。

タイタニック沈没事件で助かったのはわずか７００人余り。

残りの１５００人以上の人々は、自分の運命を１隻の豪華客船に断ち切られてそのまま死んでいったのです。
沈没するまでの２時間余り、１５００通りのドラマがあったのです。
ローズとジャックの物語は、そのひとつに過ぎません。

この映画の後半、約２時間は、タイタニックが氷山にぶつかって沈没するまでの間とほぼ同じ時間を使って描かれています。
そこからの人物描写のリアリティは、二人の恋を彩るためのオプションに過ぎないと、あなたはそう思いますか？