← アマゾンの検索結果を「お気に入り」に登録。
いつでも最新作品をチェックできます。
立迫文明 最新刊・アニメDVD/ビデオ
仰天人間バトシーラー 1 (1)     面白いほどよくわかる日本経済入門 円高円安編     仰天人間バトシーラー 2 (2)     仰天人間バトシーラー 3 (3)    
飢餓海峡

悲しく、暗い話しですが、そこに日本的な情の世界を感じる。

40数年前に見た名画。内田吐夢の代表作でしょう。はじめて見たのが学生時代、。今という時代に、60近くなってみると見え方も変わってくるものです。青函連絡船の遭難という実際起きた事故に想を得、戦後の混乱と貧しさの中で起きた暗く、悲しい故・水上勉が書いたお話です。なによりも、キャスティングが良かった。まず、伴淳三郎。この作品は伴淳の代表作ではないでしょうか。上手い。群を抜いた存在感。昔はああいう刑事がいたんでしょうね。ついで、娼婦を演じた左幸子。強盗殺人の犯人・三國廉太郎が逃走中、ふと出逢い、娼家で一夜を共にする。三國は女の身の上を聞き、奪った金から数万円(いまの金にしたら100万近いか)を渡す。このあたり、三國廉太郎もよかった。女はその夜切った男の足の爪を後生大事に、その男を思い続ける。女は東京に出るが、結局、もとの娼婦稼業に。売春禁止法が施行されるころ、女は新聞に出てた篤志家の美談記事で偶然あの時の男を見つける。一目会いたくて女は男を訪ねる。ただそれだけだったのに、男は過去の自分の犯罪の露見を怖れ、とっさに女を絞殺してしまう。女と男の接点を探っていくうち、昔の事件が俎上にあがる。すでに退職していた伴淳の元刑事が捜査に参加。男を一気に追いつめていく。爪が決定的な物証になる。殺される娼婦の純な悲しさ、いまは更生して懸命に働き、篤志家となった男も悲しい。今とは違う、ある意味で人間的な情の濃さや業というものを考えさせる、そして、それはとても日本的な世界にも思えるのです。16mm撮影のものを35mmにブローアップという手法が終戦直後という時代のリアリティを感じさせてくれました。


隆慶一郎   ホーム