逞しさ、強さというよりもむしろ、多くの人に助けてもらえないと
決して生きてはいけない、人間の弱さというものを見せつけられた気がした。
隠れ家で物音を殺して暮らす中、弾きたくても決して弾けなかった、
そして自分の存在理由とも言えるピアノを、ついに弾く時がやってくる。
その旋律に込められたシュピルマンの想い、亡くなった家族や友人、

破壊し尽くされた街、戦!を通じて失われた物に対する、切なさや悲しさが、
美しい音色の中からこれでもかと迫ってくる。
名誉のために戦って生命を捨てた者も大勢いる、しかし、
だからと言って何も出来なかった者を攻められるはずがないのだ。
彼は生き延びた、そしてまたピアノを弾くことができた。

戦局の推移に伴い、因果の如く、ドイツ軍もまた恐怖に脅かされる側に回っていく...
戦争のやりきれなさ、というものが終始感じさせる、
作り手の技と想いが見事に結実した傑作である。