安上がりMTG原論
安上がりにMTGを楽しむ方法
1.基本
MTGを安上がりに楽しむ方法はたくさんありますが、MTGで安上がりに他人を打ち
負かす方法はほとんどありません。しかしこれによって、この文章の読者が失うも
のは、平均的にはごくわずかでしょう。
プロツアーに参加できるような人たちでも、同じような実力の人同士で友達づき
あいをしているのが、雑誌記事などから良く分かります。もし勝つことだけがMTG
の魅力だとしたら、MTGはここまで広がらなかったでしょう。
MTGは友達を増やす道具であり、友達と遊ぶ道具です。こういう考え方をまったく
持っていない人は、高額なレアカードを何枚持っていても飢餓感から抜け出すこと
はできないでしょう。もちろん友情を壊さないような正々堂々とした方法で、互い
に相手を出し抜こうと努力するから、MTGは面白いのですが。
2.Apprentice32
インターネットを使ってMTGの遠隔対戦を行うためのフリーウェアとして有名なの
がApprentice32です。このソフトは英語版しかないので、マジックで使われる程度
の英語を覚えないと楽しむことができません。
これを使った大会を主催しているページもあります。この世界では、自分が持っ
ているカードの枚数に制約されることはありません。ただし絵柄なしなのでちょっ
と殺風景ですが。
日本語版のカードでないと受け付けない人をよく見かけますが、だんだんに英語
にも慣れていくことをお勧めします。各種の大会では英語版カードは普通禁止され
ていませんし、最新のルール裁定は常に英語で出ます。カードをたくさん買う人は
英語版を直輸入などでごっそり買うことが多いので、コモンをもらえるチャンスも
増します。
3.コモンをもらう
同じデュエルスペースを使っている相手などに、コモンをくれる人はいます。
こういう人は、相手が(広い意味で)仲間だと思うからコモンをくれるわけです。
みんなが使う場としてのデュエルスペースでの、普段からの態度が物を言います。
大会に行くと、コモンを持ち寄ってもらって希望者に配布していることがありま
す。
コモンを郵送すると、カードの市場価格より郵送代が高くつきます。不定形郵便
物や小包になるので、郵便局や宅急便を扱う店へ行かないと費用がわからないこと
が多く、手間もかかります。カードは濡れても曲がっても価値を失うので、梱包に
は気を遣います。
コモンを送料実費に近い切手で配布しているサイトもありますが、相当量の労働
をくっつけて配布しているのですから、基本的に赤字経営です。もしコモンを受け
取る郵送トレードを申し出るのであれば、こうしたことを考えて、「公平な」トレー
ド条件を考える必要があります。
一般に、大会などで提供されるコモンは、ランダムではありません。みんなが欲
しがるようなコモン(例えばラノワールのエルフ)はほとんど提供されないからで
す。各種のエキスパンションに繰り返し収録されているようなカード(例えば解呪)
は利用頻度が高くても提供されることがありますが。
4.コモンを買う
1枚10円くらいで、コモンを箱入りで売っている店がありますが、みんなが欲しい
と思うコモンはすぐに売れてしまいます。
シングルカードを売っている専門店では、レアとアンコモンを取ったあとのコモ
ンを袋詰めや箱詰めで売っていることがあります。いちいち仕分けするのが面倒だ
からこういう売り方をするわけで、有用なコモンが入っているチャンスはかなりあ
ります。ただ基本セットや独立型エキスパンションと違って、エクソダスやウルザ
ズレガシーのような独立型でないエキスパンションはカードの種類数が少ないので、
コモンを箱単位で買うと10枚くらいのダブリはよく出ることを頭に入れておきましょ
う。
ラノワールのエルフを200円くらいで売っているのを見たことがあります。その
店でコモンやアンコモンがどういう風に売られているか、まずざっとショーウイン
ドウを見ておきましょう。そこに100円以上で並んでいるものは、ランダムパック
には入っていないと思ったほうがいいですね。
5.シングルカードを店で買う
デッキをひとつふたつ作る程度なら、シングルカードで欲しいものだけ買うほう
が安上がりなことが多いのですが、ブースターを開ける楽しみを覚えてしまうとな
かなか理性に本能が従ってくれません。
シングルカードを買う前に、プロクシを使ってデッキを組み、一見強力なカード
が本当に役立つかひとり遊びで試してみると、無駄な投資を防げます。Apprentice32
が使えるなら、ウインドウをふたつ立ち上げてソリテアしてみることもできます。
レアカードに比べて、アンコモンの値段は店によって大きく違っていることが多
いことも書き添えておきましょう。
6.通信販売で買う
通信販売の場合、日本では郵便局や銀行に振り込むことが多いようです。相手の
口座を持っている銀行の支店に行って振り込むと105円くらいで済むこともありま
すが、一番近い金融機関に飛び込んだりすると手数料を420円くらい取られることも
ありますから、ある程度まとめて注文した方がよいでしょう。送料もたいてい別途
かかります。
安さだけを求めた海外発注はやめておいたほうがいいでしょう。海外発注は郵送
時の事故、高い送料の見落とし、間違った品物の発送などトラブルの種が多く、結
局高くつくこともしばしばです。友人と一緒に発注してトラブルに巻き込まれると
厄介なので、なるべくそういうときの注文は単純にして(あれは届いたがこれが届
いてない、という状況を生じさせない)、リスクを誰が負うのかはっきりさせてお
いた方がいいですね。業者の状況も刻々と変化するので、この前大丈夫だったから
今度も、と言い切れません。
7.構築済みパックを買う
まったく初めての場合、現行基本セットの構築済みパックは役に立ちます。大判
のルールブックが入っていますし、よく使われるコモンが1枚ずつ含まれているから
です。
ウルザズ・サーガやウルザズ・レガシーといった各エキスパンションの構築済み
パックは、特定のセットからすべてのカードを選んで作られているので、ゲームで
はあまり強くありません。しかしとりあえずデッキの見本をひとつ持つのは良いこ
とですし、追い追い強化していくベースにもなります。
特定の構築済みパックだけが売り切れていたり、逆に売れ残っていたりするのを
よく見かけます。これは、中に入っている特定のレアを目当てに買いあさられたり、
逆に高額レアがまったく含まれておらず見捨てられたりしたためです。初心者の出
発点という観点からすると、いつもおすすめの速攻型デッキから順に売り切れる傾
向があるのが困り物です。
8.安上がりのデッキタイプを選ぶ
いろいろなタイプのデッキを作ることはMTGの楽しみです。極端に言えば、プレイ
をしないでひたすらデッキを組んでいくのも、パズルのようなものでそれなりに楽
しいものです。他人とゲームをしないならカードは1枚も要りません。
ですからせっかく本物のカードでデッキを作るなら、レアカードのたくさん入っ
たデッキにもたまには勝てるデッキが作りたい、と誰でも思うでしょう。
特定の勝ち方を追求する、いわゆる「尖った」デッキほど、あるカードを引くこ
とが勝利の条件になります。ですからそのようなデッキは、絶対に引きたいカード
をライブラリから早く手札に(あるいは直接、場に)持ってこられるように工夫さ
れています。しかし何回もデュエルしていれば、ひどい不運に見舞われることはあ
ります。
MTGで勝つということは、自分が勝てる条件を揃えて、相手が勝てる条件を妨げる
ということです。勝負が長引くほど、デッキ全体の力の差が顕れ、相手は重要なカー
ドを確実に引き当てます。安いデッキで高いデッキに勝つには、速いデッキにして
相手が事故を起こす(狙ったカードが来ない)ことを期待するのが一番です。その
ためには、4マナ以上のマナ・コストを持つ呪文やクリーチャーは、なるべく少数に
とどめるようにしましょう。
初心者は単色デッキを作りたがる傾向があります。確かに単色デッキは土地事故
を起こしにくく、デッキのコンセプトを容易に理解できます。もし友人にコモンデッ
キをひとつあげるような機会があれば、単色で作ってあげるのも良いでしょう。し
かし、単色デッキに必要なカードを独力で集めるのは大変です。もしまとまった数
のコモンカードを入手する当てがなければ、最初のデッキは2色で作るのをお勧めし
ます。伝統的には赤緑デッキが最初のデッキとしてよく選ばれます。ただ第6版の
カード構成から言って、赤では再生クリーチャー対策が不十分なので、赤黒か緑黒
か白黒がむしろ適しているように思います。
よく火力呪文を攻撃の主体にしたバーンデッキを作りたがる人がいますが、これ
は初心者向きとは言えません。バーンデッキは本当に危険なクリーチャーだけを除
去しながら相手のライフを削っていくデッキで、最初は勝っているように見えても
急速に手札を消耗します。ぱっと見たクリーチャーがどれだけ危険か判断できない
初心者は、結局相手のクリーチャーを除去しきれずに負けることが多いのです。
最初のうちは、1種類のカードを4枚揃えるのに苦労するものです。同じ予算を使
うなら、基本セットや独立型エキスパンション(テンペスト、ウルザズサーガなど)
よりも、それ以外のエキスパンション(ストロングホールド、エクソダス、ウルザ
ズレガシー、ウルザズデスティニーなど)を買った方が、カードの種類が少ないの
で早く4枚揃います。こうしたカードからデッキの中心となるカードを選べば良いで
しょう。
ただし、基本セットや独立型エキスパンションも、カード全体のバランスを取る
ためには必要です。例えばウルザズレガシーには赤の火力呪文は2種類しかありませ
んが、どちらもあまりデッキに入れたくなるカードではありません。
9.プロクシを使う
プロクシとは、持っていないカードや、持っていても傷めたくないカードの代わ
りにデッキに入れる代理カードのことです。基本地形や余ったコモンカードにマジッ
クでカードの名前だけを書いたものがよく使われますが、絵やカードテキストを紙
に書いて貼ったものもあります。使い慣れないカードのプロクシには、カードテキ
ストを書き写しておいた方が便利でしょう。
プロクシカードは多くの場合、トーナメントでは使うことができません。
苦手なタイプのデッキをインターネットで探して、そのプロクシデッキを作り、
自分のデッキとひとりでテスト対戦させてみると、デッキの働きが理解でき、弱点
や戦い方も分かってきます。
プロクシカードは互いの同意に基づいて使うものです。自分と同じくらいカード
を持っていない友人が近くにいるときは、使えるプロクシの上限数をあらかじめ約
束しておいて、ゴージャスなデッキ同志で戦ってみるのも面白いでしょう。
<MTGデッキタイプのいろいろ>
手札破壊(ハンデス)デッキ
相手の手札を捨てさせることを攻撃/防御手段とする黒単または黒青のデッキ
です。手札を捨てさせることをダメージに変えるため、偏頭痛がよく使われます。
偏頭痛は今年の10月いっぱいでスタンダードから落ちますが、メルカディアン・
マスクにこの種のカードが含まれるかどうかが注目されます。これからマジック
を始めるなら、手札破壊デッキを作るのはもう少し待った方がいいでしょう。も
ちろん、偏頭痛がたまたま安く売られていれば別ですが。
土地破壊(ランデス)デッキ
土地破壊カードは赤に多く、黒と緑にもいくらかあります。土地破壊カードを
多く含んだ、狭い意味での土地破壊デッキは、たいてい赤単または赤を主体にし
たデッキです。
土地破壊デッキは、相手のランドを破壊し尽くすことを目的としているわけで
はありません。土地破壊カードのコストは一般に高く、相手が土地を置いていく
スピードに勝つことは、普通できません。土地破壊デッキは、相手が一度に出せ
るマナを制限し、その間に勝つ体制を整えるデッキです。目安として、相手の土
地を2枚までにとどめられれば成功と言えるでしょう。
土地破壊カードを多く入れる必要上、ダメージ源となるカードを多く入れるこ
とが出来ません。ですからダメージ源は時には2枚しか入っていないこともあり
ます。陶片のフェニックス、ボガーダンの槌など、墓地から自分で戻ってこられ
るクリーチャーや、再利用可能なダメージ呪文がよく使われます。土地破壊デッ
キは安いカードだけでは組みにくいのですが、それはこうしたダメージ源のカー
ドが高くつくからです。
土地破壊カードはマナコストが高いので、土地は24枚程度必要と思われます。
また、サイドボードつきで戦う場合、赤対策のエンチャント(特に聖なる場)へ
の対策として、黙示録を入れることが多いようです。
最近は樹上の村などのクリーチャー化する土地や、マナを一度に多く出すガイ
アの揺籃(ようらん)の地などを壊すために、何らかの土地破壊要素をメインボー
ドにもサイドボードにも入れることが多くなっています。デッキの色に関係なく
投入でき、どんなときにも無駄にならない不毛の大地を使う人が多いのですが、
広い範囲の脅威に1枚で対応できる忍び寄るカビもこうした用途に適しています。
ライブラリ破壊デッキ
石臼や丸砥石などを使って、相手のライブラリをすべて(自分より先に)消費
させてしまうデッキです。ライブラリ消費を加速させるために、吠えたける鉱山
がよく併用されます。最近では、スタンダードで久しぶりに禁止カードが出るきっ
かけとなったターボ・ジーニアスデッキが一種のライブラリ破壊デッキです。
ユニークなデッキですが、ターボ・ジーニアスがそうであったように、特定の
高額レアを多く使うデッキになりがちです。
赤緑ステロイド
赤の火力呪文、緑のクリーチャーとパンプアップカードを組み合わせた攻撃的
なデッキです。クリーチャーは比較的小型のものが選ばれます。パンプアップカー
ドとしては巨大化や怨恨がよく使われますが、複数のクリーチャーを使うことが
多いので共生もよく使われます。
赤緑の組み合わせは土地・エンチャント・アーティファクトのすべてを壊すこ
とができますので柔軟な対応が出来ます。
現在、このタイプのデッキの悩みは、再生クリーチャーに対する有効な対策カー
ドがないことです。
スライ
もともとは赤単で、マナ・カーブ(ターン数と出せる平均土地数の関係)に忠
実に構成されたクリーチャーデッキを言いましたが、現在では赤単の小型クリー
チャーデッキをみんなスライと呼ぶ人たちもいます。
土地は18〜20枚、クリーチャーは22〜27枚というところでしょうか。
現行スタンダードでのスライデッキは、たいていゴブリンデッキになります。
赤単ゆえエンチャント対策カードがなく、長期戦は一般に不利です。第6版にな
るまではネビニラルの円盤が最後の手段でしたが、いまやそれは失われました。
バーン
赤単で、火力呪文を主なダメージ源とするデッキを言います。
ミラージュブロックに火炎破というこのデッキに適したカードがあり、一世を
風靡しました。初心者が作りたがるデッキですが、実際には中盤以降手札不足に
陥りやすく、本体へのダメージを通しながら本当に危険な少数のクリーチャーだ
けを除去するバランスが難しい、上級者向けデッキです。
パーミッション
カウンターカードを多く含み、相手の行動をいちいち許可(パーミッション)
するかどうか決めるデッキをパーミッションデッキといいます。ヨーロピアン・
ブルー(ユーロ・ブルー)は18枚前後のカウンターカード、わずかなダメージ源、
そしてネビニラルの円盤を持った典型的なパーミッションデッキでした。比較的
危険のないカードをカウンターせずに通し、それらが場に多くなってくるとネビ
ニラルの円盤で一挙に除去しようとします。
ネビニラルの円盤が第6版から落ちたとき、青使いたちは悲鳴を上げました。
純粋な形では、ヨーロピアンブルーはいまやスタンダードに生き残っていません。
現在では、神の怒りや火力呪文で都合の悪い状況をしのぐトリコロール(赤白青)
デッキ、または青白デッキがこのコンセプトを引き継いでいます。
カウンターフェニックス、カウンターボガーダン
陶片のフェニックスなど墓地から蘇るクリーチャー、土地がたくさん場にあれ
ば繰り返し使えるボガーダンの槌とカウンターカードを組み合わせた赤青デッキ
には様々なバリエーションがあります。真鍮の都などの多色マナ源を入れて、火
力呪文や除去呪文を加えたものが最近では多いようです。カウンターカードを消
費する関係で、ドロー強化カードもよく併用されます。
ロック
相手が何も出来ない状態にしてから、ちびちびダメージを与えたり、ライブラ
リを消耗し尽くすのを待ったりするデッキをロックデッキといいます。ロックデッ
キの多くは特殊なレアカードを多数必要とします。
バウンスロック
ロックデッキの一種で、相手のパーマネントを手札に戻す(バウンスする)こ
とによって、最後には土地すら場から手札に戻してしまうデッキです。
転覆などいくつかの青カードを使います。相手の青デッキが6マナ出せる状況に
なったら、転覆をバイバックされる可能性を考えなければなりません。
ゲドンデッキ
白デッキで4マナが出せるようになると、ハルマゲドンが出てくるかもしれませ
ん。すべての土地を墓地に送るハルマゲドンが出ると、すでに場に出ているクリー
チャーだけでしばらく戦うことになるので、展開の早いデッキに有利です。白ウィ
ニー(小型クリーチャーデッキ)にハルマゲドンが入ったウィニーゲドンは、代表
的なゲドンデッキです。
ハルマゲドンは土地しか壊さないので、マナ源をクリーチャーやアーティファク
トに頼っているデッキにも有利です。序盤に土地をモックス・ダイヤモンドに替え、
ハルマゲドンを使い、以後の戦いをモックス・ダイヤモンドのマナで有利に進めよ
う、というモックスゲドンはその典型です。ひどくお金がかかりますが。
青白のプロパゲドンは、攻撃するときにマナが必要となるプロパガンダを張って
おいてハルマゲドンを使い、一方的に攻撃しようというデッキです。
NWO
禁止カードなどが出てオリジナルと随分変わってしまいましたが、キーカード
は適者生存とグールの誓いです。適者生存や吸血の教示者でライブラリから強力
なクリーチャーを引いてきて手札に入れ、墓地に落ちたらグールの誓いで手札に
戻してまた適者生存を起動します。墓地に十分に強力なクリーチャーが落ちたと
ころで生ける屍を出し、勝負を決めます。高額レアが非常に多く必要です。
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