許容錯乱円について




写真雑誌の半分くらいはピンボケ写真だと思う。写真を撮ることなどまったく興味のない女房に見せてもそうだという。でも98年2月号のカ○メラマンの154ページ「ギョーカイ通信」に「写真てのはピントが合っていて、ブレていなくてはじめて写真なんだ。 ...そこはゆずれないね。」というのが載っていた。おいおい、確かにブレてはいないようだがピントが合っているとは言い難い写真ばかりの雑誌でそんなことをいうなよ。と、言いたい。
もともと、フィルムサイズからして引き延ばしに無理があるものを引き延ばして掲載するからピンボケに見えるのである。プロならピントが合って見えるフィルムを使って欲しい。私もピントが合った写真をみたいのだから。
そういうピントの合っている写真という意味においては営業写真館のプロ達は立派なものである。結婚式の写真しかり、七五三の写真しかり、である。アイドル写真家や風景写真家も見習って欲しいものである。

ピントが合っているかどうかのひとつの目安として「許容錯乱円」という単位(?)がある。通常、許容錯乱円は画面対角線長の1/1000〜1/1500ぐらいで、35mm判では1/30mmというのをよくみかける。

私としては雑誌などで許容錯乱円について言及した記事をあまり見かけない。
写真工業1992年9月号に畑鉄彦氏の富士フィルムクイックロードの記事中で「一般的には35mmにおける錯乱円の大きさは0.035mmくらいに設定してあることが多い。しかしこの値は10×12”、あるいは8×10”くらいのプリントサイズを考えると少し大きい。だいたい満足のできる値としてはその半分くらいだろうか。」という記述があったのを覚えているぐらいである。

友人から聞いた話であるが、「人間は25cm離れた場所の0.2mm離れた物体(2本の棒?)を識別できる」という話が「写真の事典」(だったかな?)に載っていたという。
その友人は膨大な量の許容錯乱円と被写界深度を手計算(電卓計算?)していたが、それをまねて計算してみた。
フィルムサイズとプリントサイズ、そして0.2mmから必要な許容錯乱円の大きさ(?)を計算するプログラムを作成し、計算したのが下の表である。

 
 
八つ切り
四つ切り
判切り
全紙
 
 
(165×216mm)
(254×304mm)
(356×432mm)
(457×560mm)
35mm
倍率
6.875
10.58333
15.20833
19.4167
(24×36mm)
許容錯乱円(mm)
0.02909
0.01890
0.01315
0.01050
6×7
倍率
3.13043
4.61818
6.47273
8.30909
(55×69mm)
許容錯乱円(mm)
0.06389
0.04331
0.03090
0.02407
4×5
倍率
1.78512
2.64583
3.70833
4.76042
(96×121mm)
許容錯乱円(mm)
0.11204
0.07559
0.05393
0.04201

(注:6×7、4×5のフィルムサイズは実測、プリントサイズはCAPA別冊「図解フィルムとプリント」による)

上の表の計算ではフィルムとプリントサイズで縦横比の合わない場合は切り捨ててある。
つまり、35mmフィルムでは大抵横方向が長いので無駄になっている。
実際のプリントを見て、上の表より自分の我慢できる許容錯乱円の大きさを実感して欲しい。
ちなみに、私は(ベルビアでは)6×7の四つ切りで十分だと思う。4×5の四つ切りも6×7の四つ切りも大して変わりはないように思う。と言うことは私の許容錯乱円は0.43mm程度ということである。
つまり、4×5なら、全紙までOKで全倍は無理、8×10なら全倍でも大丈夫ということがわかる。
35mmフィルムでは127×178mmの2Lではちょっときびしく、89×127mmのLサイズでは十分ということになる。
しかし、ここでまた問題がある。それはプリントの解像度の問題である。確か、CAPAの「交換レンズ」(西平英生氏)だったと思うがプリントの解像度はミリ10本とあったように記憶している。つまり、通常大きなプリントは離れて鑑賞し、小さなプリントは近づいてみることを考えると小さなプリントではもともと解像度が足らないのかもしれない。
また、私としては25cmで0.2mmという値も少々大きすぎるのではないかと思う。