古 流 居 合 劍 術 保 存會

指 導 方 針


 日本全国には、数多くの剣術流派が、その流儀を伝承すべく、日夜、活動を続けておられると思う。

しかしながら、果たしてどれほどの流派が、「形」や「組太刀」以外に、実戦剣術としての斬り方「巻藁斬り・細竹斬り・孟宗竹斬り・体捌き斬り等」を、教義の中に取り入れているだろうか。

「形」と「組太刀」の伝承のみに重点を置く流派もあれば、「物斬り」のみに重点を置く流派もある。

各々、伝承するという理念からすれば、決して間違いではないが、何か不足してはいないだろうか。

剣術の真の理念とは、「物斬り」から基本刀法を学ばせ、「組太刀」から実戦刀法を学ばせ、「形」から戦術刀法を学ばせ、各々を並行して教えることではないだろうか。

しかも、「物斬り」を重点に置く流派でも、真実の斬り方を伝承している流派が、どれ程あるだろうか。

それでは、何をもって真実の斬り方と言うのか、簡単に数例を上げると、次のとおりである。


<斬る前後の体勢>


( 誤 )腰が高い。(多く見受けられる。)
( 正 )腰を低くする。
(理由@)重心が不安定、斬った後、刀をしっかり止めることができない。
(理由A)素早い動きを得るには、バネを利かせることが肝心。



<斬った後の剣先>


( 誤 )正面、袈裟斬りで剣先を下げ過ぎている。(多く見受けられる。)
( 正 )剣先は床面と平行に。(稽古風景での下げは次の斬り返しの体勢。)
(理由@)剣先の下げ過ぎは隙だらけ、次の動作(防御・攻撃)に即応不可。
(理由A)低い所を斬れば、地面をたたいてしまう。



<脇差でも斬る>


( 誤 )大刀のみで斬っている。(多く見受けられる。)
( 正 )大刀のみならず、脇差でも斬れるように鍛錬するべきである。
(理由@)一本差のみでは、浪人か長脇差を許された町民である。
(理由A)二本差(大刀・脇差を帯刀する)は、武士の作法である。



<斬る物を選ぶ>


( 誤 )熱湯で柔らかくした巻藁を斬っても、上達はしない。
( 正 )一昼夜水漬けの半巻、全巻の巻藁から、細竹、孟宗竹まで斬らせる。
(理由@)初級から上級まで、力量に合った物を斬らせなければ、向上しない。
(理由A)さらに順手、逆手でも斬らせなければ、真の刀法修得は不可。



習い始めの頃は、「重い刀」を素早く振らなければ斬れないという「思い入れ」から、皆、腕力を鍛えようとするが、それはそれで間違いではなく、半巻から斬り始め、全巻を斬り、全巻三本を体捌きで斬り、細竹を斬り、孟宗竹を斬り、脇差でも、順手から逆手で斬れるようになると、「足腰の切れ」が大事であるということに気付く。

さらに、正面斬りも、左右袈裟斬りも、左右逆袈裟斬りも、左右横胴斬りも、逆手斬りも、無固定瞬間斬りも、斬り覚えて行く内に、「足腰の切れ」が皆同じであるということに気付くものである。

そこで自ら見出す結論は、鋭く斬るには、腕力のみに頼ることから脱し、「足腰の鋭い切れ」に「気」を合わせ、「一瞬」に集中することにより、最小限の力で最大限の加速を生み出せるまでに至ることで、おのずと、無駄のない鋭い動きができるようになるのである。

以上から、当会では、無駄のない素早い動きを「一瞬」にして出せるようになるためには、基本こそが原点であるということから、基本刀法である物斬りに重点を置き、鍛錬を重ねるよう指導しているのである。

さすれば、おのずと「組太刀」や「形」にも鋭い動きが表れ、実戦味が出てくるというものである。


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