野沢享司の絵本・STUPIDE CHUKLE-スタパイド・チャクル-1

 利口な少年の話

皆さんクリニエル君のことはご存じでしょう?彼は今日も大好物のジャムスティックをほおばりながら通りを歩いておりました。
 すると7丁目の煙草屋の角の方から見知らぬ男が自転車に乗ってやってきました。
“ああなんてこった、私の人生は優しい妻とかわいい子供たち、愛につつまれ縛られ、いましめられながら幸福のうちに毎日が過ぎてゆく(突然太郎冠昔風にしゃべり出す)ええ私このあたりにて雪隠の修繕を営んでいる「雪隠修繕屋さん」と申す者にて候う。むむ!おや?!これは拝啓クリニエル君。この頃めっきり冷え込みますおり御体お変わりありませんか?この私も毎日元気で雪隠の修繕に励んでおります。それではお家の方々によろしく 敬具。”
そう言って見知らぬ男は3丁目のバス停留所の方へ去って行きました。
“変な奴だなあ。両腕とも無いくせに僕に話しかけたりして”
クリニエル君は又こうも言いました。
“そうだ僕もあの男みたいになった時のために自転車の練習をしましょう。”
なんて素晴らしい事を考えるのでしょう。本当に利口な少年ですね。
彼はトラックやチンチン電車を避けて裏通りを選びました。

裏通りはとても静かで自転車は一台も通りません。でも裏通りは静かなばかりではなく凸凹道でもありました。
 両手離しで練習していたクリニエル君。とても上達したのですが、自転車から落っこちで怪我をしてしまいました。
 それは「大怪我」という怪我だったのでお医者のロバートさんは言いました。
 “これは両腕切断せねばなりません。”
 彼の練習はリッパに役に立ちました。本当に利口な少年ですね。
クリニエル君のお母さんは、あさってのクリニエル君の誕生日にと一生懸命編んでいた毛糸の手袋が台無しにいなってしまい、新しいプレゼントを考え直さねばなりません。
 でもクリニエル君が利口な少年であるという点においては、クリニエル君のお母さんも認めているところなのですよ。

文と絵・野沢享司


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